2023年08月25日

コロナワクチンの母乳への移行

コロナワクチンの母乳への移行

Detection of Messenger RNA COVID-19 Vaccines
in Human Breast Milk



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 当初、コロナワクチンのメーカーによる文献によると、ワクチン接種は妊娠中は禁忌および
生後6か月以内の乳児がいる場合にはワクチン接種後の授乳は控えるようにとの事でしたが、
ワクチンの母乳への移行に関しては研究が十分にされていませんでした。
 今回雑誌JAMAのletterに掲載されていますのでブログします。


1) 11人の健康な母親の母乳を採取して冷凍保存し、調べています。
   母乳はワクチン接種前と後の1時間から5日間採取し、比較しています。

2) モデルナ社が5例で、ファイザー社が6例です。
   延べ131サンプルを抽出していますが、結果的には5人の7サンプルの母乳からワクチンが
   同定されています。
   最も濃度が高いのは、最大でワクチン接種後45時間でした。
   しかも全母乳の中よりは、細胞外小胞体の中に多く認められています。
   接種後48時間を超えての同定はありませんでした。

3) ワクチン接種後に、その成分は全身に分布しますが、乳腺もその一つで脂質の
   nanoparticleに分布し、そこから細胞外に細胞外小胞体として分泌されます。

4) 結論
   ワクチンの母乳への移行は殆ど心配なく、安全と言えます。
   しかし本論文も症例が少なく、十分な結論を導き出すには至っていません。
   ただし、生後6か月以内の乳幼児に、48時間以内での授乳は注意が必要かもしれません。







私見)
 授乳はまず心配ないが、48時間経過すれば問題ないと説明するつもりです。









コロナワクチン 母乳 JAMA.pdf










posted by 斎賀一 at 18:35| 感染症・衛生

2023年08月23日

胃酸分泌抑制剤のPPIは幼児に感染症を引き起こす?

胃酸分泌抑制剤のPPIは幼児に感染症を引き起こす?

Proton Pump Inhibitor Use and Risk of Serious
Infections in Young Children



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 フランスからの報告です。
PPIを幼児に使用すると、感染症を誘発するかを検証した論文です。
乳児の場合、逆流性食道炎を鑑別診断するのは大変難しいです。
生後3か月から4か月の乳児の60〜70%に胃酸逆流症が認められますが、ひとり立ちが出来て
歩行も可能となれば、それらの症状は自然に治癒します。
合併症がなければ胃食道逆流症に対してPPIの治療は行わないのが一般的ですが、フランスでは
最近その使用が増加傾向で、2歳以下の乳幼児に対して2010年は3.6%、2019年では6.1%と
なっています。
PPIの使用は小児においても、骨折、急性腎障害、アレルギー、喘息、炎症性腸疾患との関連性
が懸念されています。


1) 2010年1月から2018年12月までに胃酸分泌関連の疾患に関連した乳幼児を登録して
   います。
   1,262,424名が登録し、3.8年間追跡しています。
   606,645名がPPIを服用し(平均年齢は88日)、655,779人がPPIを服用していません
   でした。(平均年齢は82日)

2) 結果
   感染症の発生環境には一定の期間が必要との考えから、調査開始の(インデックス)
   30日間のタイムラグ(乳幼児も出産前の母親ともに30日間の医療機関を受診していない)
   を設けています。
   PPIの暴露期間(服用期間)は6か月以内、7〜12か月、12か月以上に設定しています。
   重症感染症はPPIを服用した群の危険率が1.34、消化器系統の感染症が1.52、
   耳や鼻咽頭の感染症が1.42、下気道感染症が1.22、尿路感染症が1.2、
   神経系感染症が1.31でした。
   細菌感染は1.56、ウイルス感染症は1.30でした。




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3) 考察
   胃酸は胃に入ってくるものを殺菌する作用があります。それが低下すれば直接的にも
   間接的にも感染の機会が増えてしまいます。
   成人でもPPIにより、中枢神経系の感染症が2倍のリスク増との論文もあります。
   また尿路感染症と皮膚感染症も、成人で増加との報告もあります。

4) 乳幼児にPPIを処方する場合は、厳格な適応を考察する必要があります。






私見)
 さすがに乳幼児にPPIを処方した経験はありませんが、PPIの逆風の昨今、成人にも特に高齢者
 には適応と処方期間に関して注意が必要です。







本論文.pdf









posted by 斎賀一 at 19:33| 小児科

2023年08月22日

新型コロナの流行状況

新型コロナの流行状況


<厚労省の報告>


 定点当たりの報告で、新型コロナが流行しています。定点機関の本院でも、報告数が最近増加
しています。インフルエンザも未だ認められています。
 9月21日より生後6か月以上の全ての方に、オミクロン株(XBB.1.5)の1価ワクチン接種が
始まります。
本院でもコロナワクチンの予約の準備をしています。電話での仮予約後に必ず来院し、確認予約
の予約票をもらうか、直接来院にて予約票をお渡するかを考えています。
予約開始の情報はホームページに記載予定です。もうしばらくお待ちください。






コロナワクチン 厚労省.pdf

コロナ 定点.pdf

インフルエンザ 定点.pdf











posted by 斎賀一 at 17:36| 感染症・衛生