2020年07月16日

原発性硬化性胆管炎(PSC)

原発性硬化性胆管炎(PSC)



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 前のブログで紹介しました原発性胆汁性胆管炎(PBC)と間違えやすい病名の原発性硬化性胆管炎に
ついても簡単に解説します。


Uptodateから簡単に纏めてみますと

・PSCは、肝内または肝外の慢性進行性の胆汁うっ滞を呈する炎症性疾患である。
・潰瘍性大腸炎(UC)との合併例が散見される。
 報告によると、25~90%と幅が大きいPSCの患者に大腸ファイバーを詳細に実施すれば、90%近い
 合併が推測されている。
・PBCやAIH(自己免疫疾患肝炎)と異なり、本疾患は男性が70%である。
・原因は潰瘍性大腸炎との合併が多いことより、腸内細菌説、自己免疫疾患説、虚血性説などが推測
 されている。


いつものように「今日の臨床サポート」を拝借して纏めてみます。

・原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis、PSC)とは、原因不明の慢性胆汁うっ滞性
 の肝疾患で、肝内外胆管のびまん性の炎症と線維化により徐々に胆管狭窄を来たし、病態が進⾏する
 と胆汁性肝硬変となり、門脈圧亢進や肝不全に⾄る疾患である。

・原発性硬化性胆管炎(PSC)の診断基準に沿って診断する。
 特に、胆管癌、IgG4関連硬化性胆管炎および⼆次性硬化性胆管炎との鑑別が最も重要である。

・PSCに特徴的とされる胆管像を確認する。
 @ 帯状狭窄(band-like stricture) ︓⻑さ1〜2mmの狭窄
 A 数珠状所⾒(beaded appearance)
 B 剪定状(枯れ枝状)所⾒(pruned-like stricture) ︓肝内胆管分枝の減少
 C 憩室様突出(diverticulum-like outpouching)

・⼀般に、PSCの病状は数年から数⼗年にかけて緩やかに進⾏する。
 その臨床経過は各症例によってさまざまであり、慢性の胆管炎の程度や合併しやすい胆管癌の合併が
 予測困難であることから、その予後を推測することは容易ではない。

・進⾏例では肝移植が唯⼀の救命法であり、⽣体部分肝移植が⾏われる。

・胆道の画像診断が重要であり、IgG4関連疾患との鑑別をする。

・2015年に⾏われたPSC患者435名の全国調査[3]によると、男⼥⽐は263 ︓172と男性(60%)に
 やや多く、年齢分布は20歳代と60歳代に2つのピークがみられた。
 また、診断時の初発症状は⻩疸が19%で、無症状な症例が62%を占めた。
 潰瘍性⼤腸炎などの炎症性腸疾患の合併を40%に認めた。したがって、上記のことを念頭に置き
 ながら、以下の項目に注意して、問診と診察を⾏う必要がある。

・⾎液⽣化学検査により、ALP、γ-GTP、AST、ALT、T.Bilなどの肝胆道系酵素の持続する異常⾼値を
 認める。また、好酸球増多や抗核抗体陽性がみられることがある。

・腹部超⾳波検査(US)またはCTで、胆管の拡張や胆管壁の肥厚を認める。

・肝⽣検による組織検査では、門脈域の慢性炎症細胞浸潤、線維性拡⼤、隔壁胆管や⼩葉間胆管の
 胆管周囲の線維化がみられるが、特異性に乏しい。
 ⽟葱状(onion skin fibrosis)と呼ばれる層状の胆管周囲の線維化は、診断的意義が⽐較的⾼い。





私見)
 AIH、PBC、PSCの三疾患は肝障害の患者さんの鑑別の際に重要ですし、似て非なる疾患でも
 あります。
 またIgG4関連疾患も鑑別を要するようです。下記に掲載しました。
 職員の皆さんも十分に理解して、患者さんには検査の手順についても納得してもらってください。
 病理も下記のPDFに掲載しました。





1 PSCまとめ.pdf

2 PSC 消化器病理の見かたのコツ.pdf

3 I gG4  消化器病理の見かたのコツ.pdf










posted by 斎賀一 at 13:23| Comment(0) | 消化器・PPI

2020年07月14日

新型コロナの解剖例 微小血管の新生

新型コロナの解剖例 微小血管の新生
 
intussusceptive angiogenesisの見解
  Pulmonary Vascular Endothelialitis,Thrombosis,
and Angiogenesis in Covid-19
    n engl j med 383;2 nejm.org July 9, 2020



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 以前のブログでも剖検例を紹介しましたが、新型コロナにおける肺病変の特徴は、
肺胞壁の破壊(DAD)とそれに続くヒアリン膜(hyaline membrane)の形成と器質化にあると記載
しました。肺の細血管の血栓症はそれによる二次的な病変と捉えています。
 今回はアメリカからの新見解の報告です。新型コロナと以前にインフルエンザで亡くなった方のそれぞれ
7例を肺疾患以外で亡くなった方と比較しています。


 簡単にまとめてみました。

1) 新型コロナで死亡した7例、インフルエンザによるARDS(急性呼吸不全)で死亡した7例、
   肺移植ドナーの非感染性肺組織を年齢補正して、組織病理、免疫化学染色、電子顕微鏡、
   血管鋳型による走査顕微鏡、遺伝子発現解析を行い解析しています。

2) 結論
   ・インフルエンザ群は間質浮腫があり他の群と比較して重量が多い。
   ・新型コロナ群とインフルエンザ群では従来の報告のようにDAD関連の病変が認められた。
   ・新型コロナウイルスが侵入する時に関係するACE-2は、肺胞上皮細胞と血管内皮細胞に
    新型コロナ群とインフルエンザ群に認められたが、コントロール群には稀であった。
   ・炎症関連遺伝子(血管新生関連遺伝子)を調べると新型コロナ群とインフルエンザ群では
    共通の部分もあるが、新型コロナ群特有の遺伝子も明らかになった。
   ・肺血管の血栓は新型コロナ群とインフルエンザ群ともに認められたが、肺胞における
    毛細血管の微小血栓数は、新型コロナ群の方がインフルエンザ群の9倍多かった。
   ・肺の微小血管を精査すると新型コロナ群の特徴は血管新生である。(angiogenesis)
    それには2つの要素があり一つは発芽(sprouting)と嵌入(intussusception)である。
    発芽は内皮細胞が血管のない部分に伸びている所見で、嵌入は拡張した血管腔に隔壁が生じて
    複数の血管に分離する所見です。



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 (上のイラストはNEJMにはありません。オリジナルから削除され様ですが筆者の思いが伝わると考え
  掲載します。)


 嵌入性血管新生は新型コロナ群はインフルエンザ群の2.7倍でしかも入院期間が長いほど程度は
増加していた。発芽性血管新生も新型コロナ群の方がインフルエンザ群より多い傾向でした。
・血管内皮細胞内に新型コロナウイルスが存在する事はウイルスの直接的な障害を推測されます。

 これらのことから以下が新型コロナの特徴となります。

 @細胞内のコロナウイルスが直接作用した内皮細胞障害と内皮細胞間の断絶
 A肺胞の毛細血管の微小血栓
 B嵌入性血管新生
 


私見)
 詳細には下記のPDFの図で説明します。
 私のインプレッションを述べますと、ACE-2はウイルスの侵入の場合にも関与しますが、肺においては
 炎症を抑えるために戦っている援軍と思われます。ただし過剰に反応しているかもしれません。
 また、新型コロナはインフルエンザの場合のARDSと異なり新型コロナウイルスが直接的に血管内
 皮細胞に潜り込んで、特異的な血管新生を起こす不気味な存在です。
 その反応は、遺伝子学的に血管新生関連に関係しています。
 この遺伝子発現は従来からあるものなのか(ファクターX)または疾患により発現したものかは
 門外漢にはわかりません。
 ともかく、本論文のために費やされた決死の努力には町医者の身でも感動します。




新型コロナの血管新生1.pdf








posted by 斎賀一 at 11:42| Comment(1) | 感染症・衛生

2020年07月11日

原発性胆汁性胆管炎(PBC)

原発性胆汁性胆管炎(PBC)



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 外来患者さんで、胆道系酵素のみが上昇してエコー検査では閉塞性疾患が認められない時、更に
肝炎ウイルスが陰性ならば、PBCを疑います。
本疾患の原因は、リンパ球のT細胞が肝内細胆管を攻撃する自己免疫疾患です。
倦怠感、皮膚掻痒症、ドライマウス、甲状腺疾患が初発症状で来院する事もあります。

 Uptodateによりますと、1/2が倦怠感で、1/3が皮膚掻痒症です。
この倦怠感は、筋肉内のミトコンダリアの機能低下が主とされています。
皮膚掻痒症は夜間に増悪し、乾燥性皮膚とも関係しています。
原因は不明ですが、8~15%に右季肋部痛を認めています。70%に肝脾腫を伴います。
抗ミトコンドリア抗体が有力な診断ツールですが、早期の診断では13%との報告もあり、確定診断に
対しての時期には問題が残ります。
また抗核抗体も70%が陽性です。
95%が女性で、小児や30歳以下では稀としています。


以下は「今日の臨床サポート」を纏め、下記にPDFでも掲載させて頂きます。

・PBCは中高年女性に好発し、胆道系酵素上昇と血清IgM高値ならびに抗ミトコンドリア抗体(AMA)陽性
 を特徴とする。織学的には、慢性非化膿性破壊性胆管炎(chronic non-suppurative destructive
  cholangitis、CNSDC)を特徴とし、小葉間胆管が破壊されることにより慢性進行性に胆汁うっ滞を
 呈する疾患である。

・胆道系酵素(ALP、γ-GTP)の上昇を認め、抗ミトコンドリア抗体(AMA)が約90%の症例で陽性である。
 IgMの上昇を認めることが多い。

・肝組織では、肝内小型胆管(小葉間胆管ないし隔壁胆管)に慢性非化膿性破壊性胆管炎(chronic
 non-suppurative destructive cholangitis、CNSDC)を認める。
 中高年女性に好発し皮膚瘙痒感で初発することが多い。

・皮膚瘙痒感、黄疸、食道胃静脈瘤、腹水、肝性脳症など肝障害に基づく自他覚症状を有する症候性
 原発性胆汁性胆管炎(symptomatic PBC、sPBC)と、無症状の無症候性(asymptomatic)PBC
 (aPBC)に分類される。

・PBC の進展は緩徐進行型、門脈圧亢進症先行型、黄疸肝不全型、の3型に大きく分類される。

・ウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid、UDCA) が第1選択薬である。
 進行した症例では肝移植が唯一の救命手段となる。

・欧州肝臓学会(EASL)、米国肝臓学会(AASLD)にて「primary biliary cirrhosis」から
 「primary biliary cholangitis」へ変更されることが認められた。
 わが国においても「原発性胆汁性肝硬変」の病名が「原発性胆汁性胆管炎」に変更された。

・シェーグレン症候群、関節リウマチ、慢性甲状腺炎などの自己免疫性疾患に肝障害を認めた場合にも
 原因疾患として想起する。診断の際は、50〜60%は無症状であるとの報告がある。

・血液所見で慢性の胆汁うっ滞所見(ALP、γ-GTP の上昇)と AMA陽性(間接蛍光抗体法またはELISA
 法による)(感度 95%、特異度98%)、CT検査等で他疾患が除外され、更に肝組織学的検査で特徴的
 所見(CNSDC、肉芽腫、胆管消失)が確認されればPBCの診断となる。

・現実的には、ALPが正常値上限の1.5倍を認め、AMA抗体が1:40倍以上を認めた場合は、ほとんどの
 場合でPBCの診断となる。

・わが国におけるPBCの全国調査によると、無症候性PBCの10年生存率は98.6%、20年生存率は
 95.9%と良好であるが、症候性に進行したPBCでは不良である。

・血清総ビリルビン値は、予後因子として最も重要な因子である。

・自己免疫性肝炎の病態を合併したPBCにおいては、ステロイド薬が有効である。






私見)
 病理の文献と私のブログも掲載いたします。



 
 ◆参考文献

  ・病理診断アトラス  ベクトル・コア
  ・消化器病理の見かたのコツ  羊土社
  ・一発診断  文光堂
  ・UPTODATE
  ・今日の臨床サポート






11 PBC まとめ.pdf

12 PBC 病理.pdf

13 原発性シェーグレン症候群_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_ (3).pdf

13 原発性シェーグレン症候群_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_ (4).pdf

13 原発性シェーグレン症候群_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_ (5).pdf

14 PBCの検査 (2).pdf

14 PBCの検査 (3).pdf












posted by 斎賀一 at 18:21| Comment(0) | 消化器・PPI