2020年10月12日

サイトメガロウイルス雑感

サイトメガロウイルス雑感



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 サイトメガロウイルス(CMV)は実地医家にとって稀な感染症ですが、鑑別疾患としては重要な疾患
です。
しかし、捉えどころが難しく常に想定しなくてはなりません。様々な文献から紐解いてみました。


1) まずはmedical practiceより総論的に調べますと
   サイトメガロウイルス(CMV)はヘルペス科に属します。
   感染は乳幼児期に成立し、通常は無症状です。
   感染経路は母子感染(経胎盤、母乳)、唾液、尿の接触、輸血、性交渉などです。
   初感染後はIgG抗体で中和されますが、その後はlatent infection(既感染、潜伏感染)として
   単球、CD34陽性細胞、内皮細胞、などの種々の細胞に潜伏感染しているため、全臓器において
   再活性化が起きます。 (PDF1参照)
   敗血症、外傷、熱傷、多臓器不全、輸血、移植での炎症性サイトカインが再活性化を誘発します。
   その他の誘因はPDF1参照   その他の特徴もPDF1参照
   要は不明熱、リンパ節腫大、肝障害、原因不明の消化器症状などの曖昧模糊としたときにはCMV
   でしょうか。

2) 伝染性単核球症の原因としてEBウイルスとともにCMVがあります。
   ・3日以上の発熱
   ・抗生剤で改善されない
   ・頚部リンパ腺の腫大
   ・脾腫
   ・白苔が扁桃腺に附着
   ・ペニシリン系で薬疹が出る
   以上の症状の時に伝染性単核球症を疑いますが、CMVでは頸部リンパ節腫大、脾腫、扁桃腺の
   白苔などはEBVより軽度と言われています。
   しかし小児の場合は、やはりそれなりに認められるようです。
   本院では次のステップとしては菊池病を疑いますが、文献的にはその他疾患を鑑別する必要がある
   との事です。下記の伝染性単核球症PDFを参照ください。

3) 消化器症状を呈するCMVが注目されています。
   腹痛、下痢、血便など多彩な腹部症状です。
   鑑別に苦慮することが多々ありますが、逆に原因が不明の場合は常にCMVを想定します。
   胃から大腸、直腸に至る多発性の潰瘍が認められます。潰瘍性大腸炎の増悪時には、特に注目
   されています。
   総論としてクリーブランドジャーナルの文献と、胃と腸より図譜をPDFにしました。

4) 不明熱の鑑別の病名に常に挙がります。
   一つのキーポイントとして白血球減少、リンパ球減少、異形リンパ球がありますが、EBVほどには
   著明でないとも言われており、実地医家としては、発熱疾患なのに白血球が増えていない場合を
   チェックしたいと思います。
   下記に、書籍から白血球減小と随伴症状をお借りしてPDFにしました。

5) 症例集より拝借しました。
   1例目はEBVと思ったらCMVであった。
   2例目は感染性胃腸炎から劇症心筋炎に至ったCMVも想定される症例
   3例目はHIVとの合併例です。
   何れもライブ感を重視するあまり、書籍より拝借してしまいました。




◆参考文献

 ・最近話題のウイルスおよび原虫感染症
  Medical Practice vol.33 110.1 2016
 ・誰も教えてくれなかった[風邪の診かた]   医学書院
 ・知っておきたい小腸疾患  胃と腸  v54 n4 2019
 ・知っておきたい直腸肛門部病変  胃と腸  v53 n7 2018
 ・腸管感染症 最新の話題を含めて 胃と腸  v53 n4 2018
 ・消化管の病理 医学書院
 ・カンファレンスで学ぶ診断力向上の『極意』  日経BP社
 ・帰してはいけない小児外来患者   医学書院
 ・見逃し症例から学ぶ日常診療のピットフォール   医学書院
 ・不明熱の診断学   文光堂
 ・その他文献は直接下記にPDFとして掲載します。






1 PDF1.pdf

2 伝染性単核球症.pdf

3 CMVと消化管1.pdf

4 不明熱.pdf

5 症例集.pdf

6 サイトメガロウイルス(CMV)腸炎合併 潰蕩性大腸炎[症例集].pdf

7 Cytomegalovirus colitis.pdf

8 サイトメガロ 新規検査.pdf














posted by 斎賀一 at 19:54| Comment(0) | 感染症・衛生

2020年10月09日

サイトメガロウイルスと心血管疾患

サイトメガロウイルスと心血管疾患

 
Associations of Cytomegalovirus Infection With
All-Cause and Cardiovascular Mortality in Multiple
Observational Cohort Studies of Older Adults



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 サイトメガロウイルスは、EBウイルスと同様に幼少期に感染し殆どが無症状です。
成人では70〜100%の人が抗体陽性です。成人になって感染するとEBウイルスと同様に伝染性単核球症を引き起こします。EBウイルスは慢性持続感染症があり、サイトメガロウイルスでは再活性化が問題になります。
サイトメガロウイルスは成人において新規感染か再活性化かはなかなか鑑別が付きません。
再活性化は人生のいかなる時にも起きます。以前よりサイトメガロウイルスの不顕性感染が心血管疾患の増悪因子となり、死亡率を押し上げるのではとの懸念がありました。
今回サイトメガロウイルスの不顕性感染と心血管疾患との関連性を調べた論文が載っていましたので、
紹介します。


1) ヨーロッパでの59〜93歳の10,122人を対象に調べています。
   サイトメガロウイルスの抗体はELISA法でIgG抗体を調べています。
   陽性率は地域により差はありますが47〜79%でした。
   経過観察期間は2.8〜11.4年間です。

2) 経過観察中に3519人が死亡しています。その内で579名が心血管疾患でした。
   全死亡のサイトメガロウイルスの危険率は1.05です。
   心血管疾患の危険率は0.97です。
   結論的にはサイトメガロウイルスとの関連性は否定的です。
   ただし、サイトメガロウイルス抗体価が高い群では危険率が高くなり、因果関係もありそうです。
   しかし交絡要因(confunder)(年齢、性差、BMI、教育、喫煙、基礎疾患、服薬、CRP)を
   配慮した後での統計では、危険率は減少します。

3) サイトメガロウイルスの感染症は、加齢による免疫機能の老化と関連して起きると考えられていま
   すが、本研究では心血管疾患の誘発因子とはなっていませんでした。






私見)
 Uptodateより調べますと、相反する論文を紹介しています。
 下記に掲載します。次回はサイトメガロウイルスに関して勉強しましたのでブログします。






Associations of Cytomegalovirus Infection With All-Cause and Cardiovascular Mortality in Multiple Observational Cohort Studies of Older Adults _ The Journal of Infectious Diseases _ Oxford Academic.pdf

Medline レジスタードマーク Abstracts for References 119-122 of 'Epidemiology, clinical manifestations, and treatment of cytomegalovirus infection in immunocompetent adults' - UpToDate.pdf

Medline レジスタードマーク Abstract for Reference 123 of 'Epidemiology, clinical manifestations, and treatment of cytomegalovirus infection in immunocompetent adults' - UpToDate.pdf2.pdf














posted by 斎賀一 at 18:01| Comment(0) | 循環器

2020年10月06日

心房細動に対する早期リズムコントロール療法の有用性

心房細動に対する早期リズムコントロール療法の有用性
 
Early Rhythm-Control Therapy in
Patients with Atrial Fibrillation
N Engl J Med 2020;383:1305-16.



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 心房細動に関連する脳卒中、急性冠症候群、心不全、心血管疾患による死亡などの発生は、年間当り
5%と推定されています。しかも、その発生は心房細動と診断された最初の1年間が一番多いとされて
います。
心房細動そのものに対する治療には、リズムコントロール(洞調律維持)療法つまり心房細動を治す治療と、レートコントロール(心拍数調節)療法つまり脈拍数を正常域にする療法があります。
今までの研究では予後に差はないかあるいはリズムコントロールの方が副作用が多いとされていました。
リズムコントロール療法とレートコントロール療法を比較した研究はAFFIRM研究、RACE研究、
AF-CHF研究、また日本のJ-RHYTHMなどがあり全て同様の結果です。
そのため、ガイドラインではより簡単でわかりやすいレートコントロール療法をにわかに勧めています。
 しかし最近、規模の小さい研究ではありますが、アブレーションを含めたリズムコントロールの方が明らかに予後良好との結果を報告しています。
また、今までの研究では心房細動と診断されてから、年数が経っている症例がほとんどでした。

 今回NEJMで発表になったEAST-AFENT4研究は、心房細動の診断を受けて1年以内の患者で、しかも
リズムコントロールにはアブレーションと積極的な抗不整脈薬を含んでいます。




          20906-2.PNGクリックで拡大されます




纏めてみますと

1) 早期⼼房細動(初めて診断されて1年以内)と⼼⾎管疾患を有する患者を、早期リズムコントロール
   群と通常診療群に、無作為に割り振りました。
   早期リズムコントロール群では、無作為化後に抗不整脈薬投与または⼼房細動アブレーション
   などを⾏っています。
   通常診療群では、リズムコントロールは⼼房細動関連症状を管理する場合に限定しています。

2) 主要転帰は⼼⾎管系の原因による死亡、脳卒中、⼼不全の悪化または急性冠症候群による⼊院の
   複合とし、第⼆の主要転帰は 1 年間、病院で夜を過ごした⽇数としています。
   主要安全性転帰は死亡、脳卒中、リズムコントロール療法に関連する重篤な有害事象の複合と
   しました。副次的転帰として、症状や左室機能なども評価しています。

3) 結論
   2,789 例の早期⼼房細動患者(診断からの期間の中央値 36 ⽇)が無作為化されています。
   追跡期間中央値が 5.1 年の時点で⾏われた 3 回目の中間解析で有効性が示されたため、試験は
   中⽌されました。
   主要転帰イベントは、早期リズムコントロールに割り付けられた患者のうち 249 例(100⼈/年
   あたり 3.9)と、通常診療に割り付けられた患者のうち 316 例(100 ⼈/年あたり 5.0)に発⽣
   しました。 (危険率 0.79)
   重篤な有害事象は、早期リズムコントロールに割り付けられた患者の 4.9%と、通常診療に割り付け
   られた患者の 1.4%に発現しています。




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4) 考察
   研究初期の1〜2年は無症状が両群共に70%以上あり、心機能の変化も両群の差はありません
   でした。
   しかも本研究では以前の研究と異なり、両群共に抗凝固薬の併用、心拍数の調整、心不全の治療を
   行っています。
   さらに診断後早期での無作為化研究を行っています。この事がリズムコントロールに優位に働いて
   いるものと思われます。
   確かに重篤な有害事象はリズムコントロール群に多くありましたが、その頻度は極めて稀でした。

5) 結論
   早期⼼房細動と⼼⾎管疾患を有する患者において早期リズムコントロール療法を行った場合は、
   通常診療を⾏った場合と⽐較して、有害な⼼⾎管転帰のリスクが低いことが証明されました。





私見)
 何事も早期発見、早期治療です。
 今後も心房細動の診断時には、症状がなくても2次施設へのご紹介に努めます。



         














posted by 斎賀一 at 20:14| Comment(1) | 循環器