2021年06月03日

新型コロナ症状は小児の場合は典型的でない

新型コロナ症状は小児の場合は典型的でない
 
A retrospective cohort study of 12,306 pediatric COVID‑19
patients in the United States



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 アメリカからの報告です。

新型コロナと診断された12,306人の小児患者を解析しています。

・呼吸器症状は16.5%
・消化器症状(吐き気、嘔吐、下痢、腹痛)は13.9%
・発疹などの皮膚症状が8.1%
・頭痛などの神経症状が4.8%
・その他(筋肉痛、関節痛、倦怠感)が18.8%


発熱だけの診断でスクリーニングをしては誤診に繋がります。
発熱は各年齢層で様相が異なる感じです。下記のグラフをご参照ください。
なんと半数以下は発熱がありません。
672人(5.5%)が入院しています。
入院の中で118人(17.6%)が集中治療室で、38人(4.1%)が人工呼吸器を必要としていました。
小児の場合は診断基準を下げなくてはなりません。




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私見)
 変異株は若年者に感染しています。
 今までの戦略が通用しなくなることも危惧されます。







A retrospective cohort study of 12,306 pediatric COVID-19 patients in the United States.pdf










posted by 斎賀一 at 16:39| Comment(0) | 感染症・衛生

2021年06月01日

アストラゼネカのワクチンと血栓症

アストラゼネカのワクチンと血栓症

ChAdOx1-S in Denmark and Norway: population based cohort study
 


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 アストラゼネカのワクチンも承認されました。
しかし海外で血栓症の副作用報告があり、日本では公的に使用しないとの事です。
意味不明の対応ですが、雑誌BMJより論文が掲載されていますのでブログします。
以前の私のブログもご参照ください。


1) 欧州医薬品庁の声明によると、2021年3月10日までに当時のヨーロッパでアストラゼネカのワクチン
   を接種された500万人のうち、主に静脈血栓塞栓症の30例が報告されました。
   その後の欧州医薬品庁の声明では、血栓症の頻度は自然発生とそれほど差はないとしていますが、
   報告は過少評価の可能性もあります。

2) 2021年2月から2021年3月までに、デンマークとノルウェーで実施されたアストラゼネカのワクチン
   接種者282,572人の解析をしています。





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   動脈性の血栓症は自然発生率と差はありませんが、明らかに静脈性の血栓症は多い傾向です。
   静脈性血栓塞栓イベントは、ワクチン接種10万回当たり11件(5.6-17.0)の超過イベントに
   相当します。脳静脈血栓症の発生率は、ワクチン接種10万回当たり2.5件(0.9-5.2)の超過
   イベントでした。ワクチン接種群の15例が死亡し、一般集団の予想死亡者数は44例でした。

   纏めてみますと

   ・静脈性の血栓症は2倍の危険率
   ・脳静脈血栓症は20倍の危険率
   ・稀な部位に静脈性の血栓症が発生
   ・重篤な血小板減少症が接種の5~24日後に発生
   ・副反応は50歳以下の女性に多い

3) 結論
   アストラゼネカのワクチンは70%の有効率があります。
   リスクよりその効果の方がはるかに勝ります。
   流行の推移、地域性、接種の汎用性、そして社会と個人の問題を含めてその活用が求められて
   います。







私見)
 日本ではファイザーのワクチンが大量に手に入りました。インセンティブなどあらゆる手段をかけて
 政府は実地医家にストレスをかけています。
 ワクチン確保の担保の意味で、アストロゼネカとも契約したと思います。
 余り始めたワクチンは、世界のワクチン格差の解消に使われるのは仕方がないかもしれません。
 国内のワクチン格差を生じないよう、我々は努力しなくてはいけない段階です。







Arterial events, venous thromboembolism, thrombocytopenia, and bleeding after vaccination with Oxford-AstraZeneca ChAdOx1-S in Denmark and Norway_ population based cohort study.pdf









posted by 斎賀一 at 19:10| Comment(2) | ワクチン

2021年05月31日

血圧の強化療法と標準療法の比較試験の最終報告 Sprint研究の完全版

血圧の強化療法と標準療法の比較試験の最終報告
 Sprint研究の完全版
 
Final Report of a Trial of Intensive
versus Standard Blood-Pressure Control
N Engl J Med 2021;384:1921-30.



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 以前の私のブログでも紹介しましたが、収縮期血圧は120を目標にしたほうが予後が良いとするsprint研究の最終報告が、今になって雑誌NEJMに載っています。
多分、研究終了後に予後が判明する場合もあり、今回の最終報告となったものと思います。
本研究は2010年11月より2015年8月20日のまでの平均で3.33年の経過観察を行っていますが、更に試験終了後の2016年7月29日まで追跡し、追加で解析しています。


纏めますと

1) 50歳以上の収縮期血圧が130から180の人で、且つ一つ以上の心血管疾患のリスクのある人
   (心血管疾患を有する、eGFRが20から59の慢性腎臓病、10年リスクが15%以上、75歳以上)を
   対象にしています。
   75歳以上が28.2%、慢性腎臓病が28.3%、心血管疾患は20.0%でした。
   除外基準は糖尿病、脳卒中の既往、認知症です。
   9,361人を血圧の目標を120以下とした強化群と、140以下とする標準群に1対1で振り分けて
   います。
   主要転帰は、⼼筋梗塞、その他の急性冠症候群、脳卒中、急性⾮代償性⼼不全、⼼⾎管死の複合
   としています。

2) 結果
   主要転帰の発⽣率と全死因死亡率は、強化治療群のほうが標準治療群よりも有意に低かった。
   (主要転帰の危険率は0.73、全死因死亡率の危険率は0.75)




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          追跡調査後(2016年7月29日まで)のデータは下記
          この場合は実地医家が年に4回診察しています。



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          介入試験中の最初のデータは下記(2015年8月20日まで)



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 最初の報告と追跡調査後を比較しますと、その違いは

・追跡調査後の方が血圧が6.9上がっている。
 強化群と標準群の差は少なくなっており、非代償性の心不全に関しては強化群の方で多くなって
 います。

・慢性腎臓病のある人では強化群と標準群で差はないが、腎機能が正常の場合は強化群の方が危険率
 が高く、その低下は早期に認められている。しかし追跡調査後ではその危険率は下がっている。
 強化群での服薬の減少が原因としています。
 更に薬剤による腎障害は、強化群の方で頻度が高い。

・心不全に関しては追跡調査後で強化群の方が危険率が上がっている。
  (2つの上の表の赤線部分を比較してください。)
 0.63から2.34と増加しています。その説明として追跡調査後では強化群で服薬の減少、特に降圧
 利尿薬の中止が関与しているものと推測していますが、明白なエビデンスはないとしています。

3) 副作用
   低血圧、電解質異常が主な原因です。
   症状としては失神発作が一番多く報告ですが、特に慢性腎臓病の人に認められています。







私見)
 高血圧治療における本院の戦略は
 ・原則として目標血圧は120以下ですが、高齢者に関してはテイラーメイドの対応が必要
 ・強化療法の場合は定期的な腎機能検査が必須
 ・強化療法では、当然ながら降圧利尿薬は併用薬の有力な薬剤
  標準治療に戻す場合は腎機能、心機能、代謝を総合的に勘案する。
 ・心血管疾患のリスク評価を定期的に行う。








ブログより.pdf

ブログより 2.pdf









posted by 斎賀一 at 21:49| Comment(1) | 循環器