2018年09月04日

少量アスピリンは一次予防に効果があるか?ARRIVE研究

少量アスピリンは一次予防に効果があるか? ARRIVE研究
 
Use of aspirin to reduce risk of initial vascular events in
patients at moderate risk of cardiovascular disease (ARRIVE)
         

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 今回は、雑誌LANCETからの報告です。
前回の雑誌NEJMのブログと異なり、中等度のリスクを有する糖尿病でない患者での、心血管疾患に対
する少量アスピリンの一次予防効果を調べています。


纏めますと

1) 心血管疾患の既往は無いがリスクが中等度ある人で、糖尿病を罹患していない12,546人を登録
   しています。
   具体的には、男性は55歳以上でリスクが2~4ある人、女性は60歳以上でリスクが3以上です。
   糖尿病や胃潰瘍の既往のある人は除外しています。
   ベースラインとして、75%が降圧剤を服用しており、43%がスタチンを服用していました。

2) 少量アスピリン(100mg)を服用している群と服用していない群に分けて、5年間調査をしています。
   主要転帰は、心筋梗塞、不安定狭心症、脳梗塞、一過性脳虚血発作、その他の心血管疾患関連の
   死亡です。

3) 結論的には、少量アスピリン群での発生は4.3%で、コントロール群では4.4%と差はありません
   でした。
   しかも、サブグループとしての性差、年齢、喫煙の有無、肥満度、10年リスクに関しても、少量
   アスピリンの効果はありませんでした。
   一方で、消化管出血は少量アスピリン群で1%に対して、コントロール群では0.5%との結果でした。





私見)
 以前の日本からの報告では、少量アスピリンは肥満者には効果が低いとされていましたが、本研究では
 BMIが25以下でも効果なしとの報告です。
 何れにしましても、少量アスピリンは一次予防効果には乏しいようです。






LANCET論文.pdf















posted by 斎賀一 at 18:57| Comment(1) | 循環器

2018年09月03日

少量アスピリンは糖尿病患者の心血管疾患を予防できるか? ASCEND研究

少量アスピリンは糖尿病患者の心血管疾患を予防できるか? ASCEND研究
 
Effects of Aspirin for Primary Prevention
in Persons with Diabetes Mellitus
This article was published on
August 26,2018, at NEJM.org



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 糖尿病患者においては、心血管疾患のリスクは2~3倍あると言われています。
その予防のために少量アスピリンがありますが、一方で少量アスピリンの抗血小板作用は、糖尿病その
ものにより減弱されるとの推測もあります。
 以前の研究で有名なATC研究後に、4つのアスピリンに関する研究報告があるとの事ですが、何れも糖尿病患者に限定した研究ではない様です。
 今回雑誌NEJMに、心血管疾患の既往歴のない糖尿病患者に対して、少量アスピリン(100mg)を服用した群と服用しないコントロール群で比較検討した論文が掲載されていました。つまり一次予防研究です。(心血管疾患の既往のない人が対象です。二次予防とは、疾患を起こした人の再発予防のための研究
です。)


纏めてみますと

1) 糖尿病患者で心血管疾患の既往の無い15,480名を登録して7.4年間追跡調査しました。
   主要転帰は心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作、何らかの血管疾患による死亡です。
   一方、主要副作用は脳出血、消化管出血、視力障害を起こすほどの眼底出血、その他の重大な
   出血としています。

2) 重大な心血管疾患の発生は少量アスピリン群では658名で、8.5%に対してコントロール群では
   743名で9.6%でした。
   逆に主要副作用転帰では少量アスピリン群で314名の4.1%に対してコントロール群では245名
   の3.2%でした。

3) 結論的には、少量アスピリン群の効果は12%の心血管疾患のイベント減少でした。
   これを患者数で勘案すると、100名の患者に少量アスピリンを投与すると1人の心血管疾患を予防
   できるが、1人に重大な出血(殆どが消化管出血)が発生します。
   つまり利害が相殺されてしまうのです。
   下記のPDFをご参照ください。

4) 有効率は以前の研究と比較して同じであるが、今回の研究ではATCを含めた以前の研究とは異な
   り、多くの登録者が降圧剤やスタチン系の治療薬を服用しており、本研究は少量アスピリン単独の
   効果と見られています。
   更に本研究が終了する時点で、PPI(胃酸抑制薬で、少量アスピリンを服用する際には併用を推奨
   されています。)の服用率は1/4でした。




私見)
 胃潰瘍予防のためのPPIを服用していたら別の結果が出たかもしれませんが、糖尿病患者ですら少量
 アスピリンは一次予防にはそれ程の利点は無いようです。しかし二次予防に関しては有効との論文が
 多くありますので注意してください。
 糖尿病患者さんにおいては、ライフスタイルを含めた総合的な治療戦略が転ばぬ先の杖です。






本論文より.pdf










  
posted by 斎賀一 at 20:28| Comment(0) | 循環器

2018年08月31日

鎮痛解熱剤(NSAIDs)と心筋梗塞の関係

鎮痛解熱剤(NSAIDs)と心筋梗塞の関係
 
Risk of myocardial infarction with use of selected
nonsteroidal anti-inflammatory drugs in patients
with spondyloarthritis and osteoarthritis


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 古くて新しい話題が、雑誌BMJに掲載されていました。
私のブログもご参照ください。 (NSAIDで検索)


纏めてみますと

1) 対象疾患は、SpA(脊椎関節炎)とOA(変形性関節症)です。
   SpAは炎症性疾患であり、心筋梗塞も炎症の側面があります。更にNSAIDsを服用すると、心血管
   疾患を誘発するとのデーターもあり、注意が必要です。
   炎症性の意味合いが強いSpAが、NSAIDsに晒されるとどうなるかを、退行性疾患のOAと比較対象
   で調べています。
   そこで、比較的選択制のあるナイキサンとボルタレンを用いて、心筋梗塞発生の危険率を調べて
   います。

2) SpA患者8,140人と、OA患者244,339人を登録しています。
   其々115人と6,287人の心筋梗塞患者が発生しています。

3) ナイキサンの危険率は1.19で、ボルタレンの危険率は3.32でした。
   ボルタレン服用に関して見ますと、SpAはOAに比較して2.64倍の心筋梗塞発生でした。





私見)
 心血管疾患の危険がある人や少量アスピリンを服用している人には、従来通りにナイキサンかセレコックスを処方して、しかも長期処方は避ける選択肢が良いかもしれません。





NSAIDs.pdf











posted by 斎賀一 at 19:09| Comment(2) | 循環器