2023年05月23日

U型糖尿病の飲み物の影響

U型糖尿病の飲み物の影響

Beverage consumption and mortality among adults with type 2diabetes
: prospective cohort study



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 甘い飲み物は心血管疾患に悪影響を及ぼすと言われていますが、U型糖尿病患者に限定して
飲み物の影響を調べた研究は、あまりありませんでした。
飲み物の種類による心血管疾患と死亡率に関する論文が掲載されていましたので、ブログ
します。
最近、本院の糖尿病患者さんで、食欲がなくなり甘い飲料水を飲みすぎ悪化してしまうケースが
ありましたので注意が必要です。


1) 15,486名のU型糖尿病患者が対象です。1980年から2018年までの調査です。
   アンケートにより飲み物のデータを2〜4年ごとに更新しています。
   経過観察は平均で18.5年間です。3,447名(22.3%)が心血管疾患を発症し、
   7,638名(49.3%)が死亡しています。


2) 飲み物としては砂糖を含む甘い飲み物(SSBs)、代替としての人口甘味料でノンカロリー
   の飲み物(ASBs)、フルーツジュース(オレンジジュース、リンゴジュース、グレープ
   フルーツなど)、コーヒー、お茶、低脂肪ミルク、全脂肪ミルク、天然水(plain water)
   を比較検討しています。
   ASBsとしてはノンカロリーのコーラを含む低カロリーの飲み物です。





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      糖尿病患者においては、コーヒー、お茶、天然水は死亡率、心血管疾患の
      危険率を下げます。





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         ASBsはフルーツジュースよりは危険率が低いようです。






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    SSBs,ASBs,フルーツジュース,全脂肪ミルクはJカーブを呈していますが、
    量が増すと危険率は上がっています。




3) 考察
  SSBsをASBsに替えることにより、危険率の減少につながります。更にコーヒー、お茶、
  天然水とASBsを併用すること事も有効です。
  ASBsが肥満と関連するとの論文もありますが、本研究では耐糖能に悪影響は認められません
  でした。SSBsのフルクトースがインスリン抵抗性を促進し、糖尿病の悪化に繋がるものと
  理解されます。
  コーヒーやお茶のカテキンなどの成分がオキシダントストレスと炎症の抑制し、糖尿病患者
  のリスク軽減となります。







私見)
 私も仕事中には原則としてお茶を飲んでいますが、甘い飲み物も飲みたくなります。
 ノンカロリーのコーラをたまに併用する事は、却っていいかも。







Beverage consumption and mortality among adults with type 2 diabetes_ prospective cohort study.pdf










posted by 斎賀一 at 19:06| 糖尿病

2023年05月20日

糖尿病患者に解熱鎮痛薬は注意

糖尿病患者に解熱鎮痛薬は注意

<短 報>
 Heart Failure Following Anti-Inflammatory Medications
in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus


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 糖尿病は腎機能と心不全の危険因子です。解熱鎮痛薬そのものが腎機能低下、体液貯留、
心不全の悪化に関与します。
糖尿病と解熱鎮痛薬との関連性を調べた論文がデンマークからあります。


1) 1998年から2021年に糖尿病と診断され、且つ以前に心不全、関節リウマチ、120日間
   解熱鎮痛薬を服用した既往歴のない人が対象です。
   331,189名が登録されています。平均年齢は62歳。
   観察期間中に23,308名(7%)が心不全で入院しています。
   期間中に少なくとも1回は解熱鎮痛薬を服用した人は、52,990人(16%)でした。
   解熱鎮痛薬服用期間は29日以内として、心不全で入院との関連性を調べました。

2) 結果
   解熱鎮痛薬を比較的短期間服用で心不全入院の危険率は、1.43です。
   特に80歳以上での危険率は1.78
   糖尿病治療薬が1剤以下で、糖尿病のコントロール不良(A1cが高い人)の場合、
   危険率は1.68です。
   以前に解熱鎮痛薬の服用がなく初めて使用した人では、2.71と高い傾向でした。

3) 結論
   高齢者で糖尿病のコントロール不良で初めて解熱鎮痛薬を服用する場合には、特に
   注意が必要となります。







私見)
  心血管疾患に解熱鎮痛薬(NSAIDs)の服用には以前より注意勧告が出ていますが、
  糖尿病の場合にも、やはりナイキサンが無難でしょうか。









心不全 NSAIDs.pdf








posted by 斎賀一 at 16:46| 糖尿病

2023年05月19日

乳がん検診のガイドラインの草案・USPSTFより

乳がん検診のガイドラインの草案・USPSTFより

New USPSTF Draft Suggests Mammography Start at 40, Not 50
 


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アメリカでは乳がん検診のガイドラインが2009年に刊行され、2016年に改定されています。
50歳から74歳がマンモグラフィーの対象でしたが、今回のガイドラインの草案では、40歳に
引き下げる事を検討しているとのレポートがMedscapeにありました。

 アメリカでは乳がん全体として45歳以下の乳がんの発生は9%との事で無視できない数字です。
しかし本草案では、マンモグラフィーの検診は隔年を予定しています。
現在は75歳以上が対象外になっている点と、検診が隔年で実施している点に明白なエビデンスが
ないとして、反対意見があるようです。

・黒人の方が乳がん発症年齢が低い。
・高濃度乳房dense breastは、マンモグラフィーでの診断が難しくリスクが高い。
 よって臨床医と相談し追加検査が必要。
・リスクのある人は、特に黒人は30歳から検診の準備と教育を受けておかなくてはならない。



高濃度乳房に関してuptodeteより引用します。

・乳房の濃度の増加は、マンモグラフィーの異常の検出を損ない乳がん診断の精度を落とし
 ますが、乳がんそのもののリスクとは関連していません。
・乳房の密度は、月経周期に影響される可能性があります。
・乳房の密度は患者の年齢と反比例し、高濃度乳房は50歳未満の女性または閉経前の女性に
 最も多い傾向です。
・マンモグラフィーは乳がん検診で、最大20%を見逃す可能性があります。
・デジタルマンモグラフィーは、高濃度乳房に対してフィルムマンモグラフィよりも感度が高く
 乳房の密度が増加した女性には有効です。
 米国では、更にデジタル乳房断面合成(DBT)が利用され始めています。
・マンモグラフィーに超音波を追加すると、小さな癌に対する感度は高まりますが、特異度は
 大幅に低下します。
・MRIは、乳がんリスクの遺伝子変異(BRCA20またはBRCA25変異など)を有する女性、
 乳がんまたは卵巣がんの家族歴がある女性、その他の乳がんのリスクが高い女性の場合
 には推奨されます。




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今日の臨床サポートより引用

・日本人女性の乳癌罹患率は、30歳代後半から急増し40歳代後半から70歳代はほぼ同率で、
 80歳以降緩やかに減少する。
・日本の対策型検診は、40歳以上に対して問診およびマンモグラフィーによる隔年検診が推奨
 されているが、欧米に比べて受診率が低いことが問題となっている。
・40歳代もしくは乳腺組織が多い受診者に対して、マンモグラフィの精度はやや低い。
・日本では40歳代に対してマンモグラフィーに超音波検査を上乗せするRCTが行われているが、
 まだ死亡率減少効果は証明されていない。
・厚生労働省の推奨方法は、問診およびマンモグラフィーであるが、一部の自治体(岩手県、
 栃木県、茨城県など)ではマンモグラフィーと超音波検査の併用が行われている。
 検診間隔は費用効果分析から隔年(2年に1回)で行われているが、自治体によっては逐年で
 行っている所もある。


市原市の乳がん検診

 乳がん検診(女性)
超音波検査(30歳代・40歳代奇数歳):500円
マンモグラフィ検査(2方向)(40歳代偶数歳):500円
マンモグラフィ検査(1方向)(50歳以上偶数歳):500円



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私見)
 周回遅れではありますが、ある意味で日本は医療環境に手厚い様な気がしますが ...。









乳がん検診New USPSTF Draft Suggests Mammography Start at 40, Not 50.pdf











posted by 斎賀一 at 19:07| 癌関係