2021年08月27日

もともと小児は感染源だった

もともと小児は感染源だった

 
Association of Age and Pediatric Household Transmission
of SARS-CoV-2 Infection



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 昔は感染症においては大人から子供に伝染すると考えられていましたが、インフルエンザを含め感染症
の多くが子供から大人への広がりを指摘されています。
デルタ株が子供にも感染しやすいことから、家庭内感染の危険が騒がれています。
デルタ株が蔓延する前の子供を中心にした、新型コロナの伝搬に関する論文が雑誌JAMAに掲載されています。


1) カナダからの報告です。(引用文献に日本発が一つもないのは寂しいです。)
   2020年6月1日から12月31日までの18歳以下の家庭内発生の新型コロナ患者を登録しています。
   その最初の患者をインデックスケイスとして、0〜3歳、4〜8歳、9〜13歳、14〜17歳の
   4つのグループに分けて調べています。
   家庭内感染の定義はインデックスケイス発生後の1〜14日において、1人以上の家庭内コロナ患者
   の発生としています。

2) 結果
   インデックスケイスは6,280例で、その中で家庭内二次感染したのは1,717例(27.3%)でした。
   詳しくは下記のPDFのグラフで説明します。




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   先ず簡単に上の表で説明しますと、0〜3歳での伝搬は13.6%で9〜13歳では29.1%ですが、
   統計処理(検査の遅れ、集団でのクラスターなどを調整)を行いますと、それでも0〜3歳では、伝搬
   の危険率は1.43と高値です。
   統計処理をしますと、インデックスケイスが無症状か有症状かの違いよる感染伝播の影響はありま
   せんでした。  
   また学校や保育所での流行とも関係はありません。更に学校と保育所の再開とも無関係でした。
   小児の感染力が強いのは、ウイルス量が多く輩出するため、小児ほど家族とのコンタクトが強い、
   症状が多岐にわたるなどが考えられます。
   ある研究によると、5歳以下の小児では鼻咽頭にウイルスが多くいるとの報告です。
   小児では症状が軽微のため、検査が遅れる結果となり伝播しやすいと推定されましたが、それ等の
   因子を統計学的に処置しても、0〜3歳と4〜8歳の伝播の危険率は高い結果です。

3) 新型コロナ感染が流行した当初は、都市のロックダウン、3密を避ける、家庭内自粛、
   検査は基礎疾患のある高齢者優先とされており、結果的には症状の軽症な小児は検査対象から
   外され調査も対象外でした。
   今後、小児の隔離、マスク着用など根本的な対策の変更が必用となります。







私見)
 小児の新型コロナは症状が軽い人もいますが、感染源としても特段の注意が必要です。
 グラフ解説は下記のPDFにて掲載します。






小児のコロナ.pdf

jamapediatrics_paul_2021_oi_210047_1628263996.00852.pdf












posted by 斎賀一 at 21:02| Comment(1) | 感染症・衛生

2021年08月24日

コロナ禍での小児の重症糖尿病の発生

コロナ禍での小児の重症糖尿病の発生
 
The SARS-CoV-2 pandemic is associated with increased severity
of presentation of childhood onset type 1 diabetes mellitus:
A multi-centre study of the first COVID-19 wave



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 若い人のT型糖尿病(インスリン注射が絶対的に必要な糖尿病)は、ある日突然発症します。
T型糖尿病は、膵β細胞の破壊によるインスリンの絶対的不足が原因です。自己免疫機序の関与する
自己免疫性(1A型)と、自己免疫機序の関与が明らかでない特発性(1B型)に分類されています。
また、1A型をさらに急速進行型(rapidly progressing form)と、緩徐進行型(slowly progressing form)に分類することもあります。
一般的なU型糖尿病は体質、つまり遺伝的要因が強いのですが、T型糖尿病は感染症が原因との事も
指摘されています。

uptodateによりますと
(ウイルスは、直接感染してβ細胞を破壊するか、これらの細胞に対する自己免疫攻撃を誘発することに
よって、動物モデルで糖尿病を引き起こす可能性がある。1型糖尿病を発症してから、数週間以内に死亡
した75人の患者の膵臓組織におけるコクサッキー、EBウイルス、流行性耳下腺炎、またはサイトメガロ
ウイルスからの急性または持続性感染の証拠は見つからなかった。
しかし、いくつかの異常な形態の糖尿病は、多数のβ細胞におけるコクサッキーウイルスの存在と関連
している。)

このコロナ禍で、重症T型糖尿病が見過ごされている可能性を指摘した論文が発表になっています。
簡単に纏めますと


1) 18歳以下に発生したT型糖尿病を調べています。
   期間は2019年7月1日から2020年3月22日までのコロナ流行前と
   2020年3月23日から2020年6月30日のコロナ流行時での発生を比較しています。
   通年で1年間を調べています。


2) 結果はグラフで示します。




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  T型糖尿病の発生は、コロナ流行前は3.5例/月に対して、コロナ流行時では4.9例/月と増加傾向
  ですが、問題なのは重症例、つまりケトアシドーシス症例(DKA)が流行時において、10%から47%
  に増加している点です。





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       本研究では、実際にコロナに感染した人は確信例で1人/17人でした。





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3) 考察として
   新型コロナウイルスが何らかの免疫機能により、膵β細胞に働きT型糖尿病を発症したことも想定
   されますが、多くはコロナ流行により医療機関の受診を手控えることに起因するものと思われます。





私見)
 小児のT型糖尿病は、一歩間違えば死に至る病です。
 しかしその診断は重症例なら尚の事、苦慮することがあります。
 コロナ禍では疾患の診断の遅れが他にも多くあるものと思われます。
 新型コロナは実地医家にとって、忍耐と知略を振り絞る段階を迎えようとしています。







コロナ 小児 糖尿病.pdf









posted by 斎賀一 at 20:43| Comment(2) | 小児科

2021年08月21日

アストラゼネカ・ワクチンによるワクチン起因性免疫性⾎⼩板減少症/⾎栓症(VITT)

アストラゼネカ・ワクチンによるワクチン起因性免疫性⾎⼩板減少症/⾎栓症(VITT)
 
Clinical Features of Vaccine-Induced Immune Thrombocytopenia and Thrombosis
 This article was published on August 11,2021,
and updated on August 12, 2021, at NEJM.org



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 アストラゼネカ・ワクチンの副作用として懸念されている、ワクチン起因性免疫性⾎⼩板減少症/⾎栓症(VITT)は、ヘパリン療法によって誘導されるHITに類似した病態です。
しかし、VITTはヘパリン療法を受けていない人でも発生しています。
血小板の抗体であるPF-4が関与していないか検討されていますが、抗体値が上がっていなくてもVITTは
発症しています。
 ファイザーワクチンの品不足のためにアストラゼネカ・ワクチンが採用されたのではないと思うのですが、アストラゼネカ・ワクチンの副作用となる血栓症に対する治療方針が確立されたので、感染爆発の地域に
まず使用するとの説明ですが、その点を含めてワクチン起因性免疫性⾎⼩板減少症/⾎栓症(VITT)の
論文がNEJMに掲載されていますので、纏めてみます。


1) 2021 年 3 ⽉ 22 ⽇〜6 ⽉ 6 ⽇に英国の病院を受診し、VITT が疑われた患者を対象とする
   前向きコホート研究を行っています。
   事前に規定した基準に基づき、症例を VITT 確定例、VITT ほぼ確実例に分類しました。




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   VITTの起こる部位は、通常とは異なり診断し難い様々な血管に発症しています。
   細静脈にまで血栓が生ずるため、血行停滞から出血が起きます。
   さらに血小板減少が拍車をかけます。

2) 評価された 294 例のうち、170 例が VITT 確定例,50 例が VITT ほぼ確実例と判定されました。
   全例が アストラゼネカ・ワクチンの1 回目の接種を受けており、接種後 5〜48 ⽇(中央値 14 ⽇)
   の時点で受診しています。

3) 年齢範囲は 18〜79 歳(中央値 48 歳)であり、性による優位性はなく、同定し得る医学的危険
   因⼦もありません。
   全死亡率は 22%でした。死亡の危険率は、脳静脈洞⾎栓症を有する患者で 2.7 倍、
   ベースラインの⾎⼩板数が 50%低下するごとに 1.7 倍、ベースラインの D ダイマー値が
   フィブリノゲン当量で 10,000単位上昇するごとに 1.2 倍、ベースラインのフィブリノゲン値が
   50%低下するごとに 1.7 倍上昇しています。




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   あらゆる年齢層で発生しています。血小板低下plateletが指標になります。
   本ワクチンは高齢者優先に接種されたにもかかわらず、85%が60歳以下に発生しています。
   残念ながら50歳以下の年齢層別化はなされていないため年齢との関係は解析できていません。






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   更にD-dimer値も有力な判断基準となります。
   ベースラインの⾎⼩板数および頭蓋内出⾎の存在が死亡と独⽴して関連することが明らかになり、
   ⾎⼩板数 30,000/mm未満で、頭蓋内出⾎を有する患者で観察された死亡率は 73%でした。


4) VITT に関連する⾼い死亡率は、⾎⼩板数が低く、頭蓋内出⾎を有する患者でもっとも⾼かった。
   治療法は依然不明である。
   ・免疫グロブリンが72%の患者さんに点滴されています。
   ・重症例の17例に血小板交換療法を行い90%に効果がありました。
   ・ステロイドの全身投与は26%に実施されています。
   ・ヘパリン以外の抗凝固薬が68%に投与されています。
    死亡率は20%から16%に低下しています。
   ・死亡率は22%です。
   現段階では免疫グロブリン点滴と血小板交換療法が中心です。
   以前懸念されたヘパリン投与は害はないようです。
    (日本版: 一部コピペ)








私見)
 1回目の接種後5日から1か月は注意が必要です。血小板とD-dimerが指標となります。
 実地医家にとっては抗凝固薬の投与とその後の専門的治療の紹介が大事です。










posted by 斎賀一 at 17:40| Comment(0) | ワクチン