2018年10月31日

小児の軽度頭部外傷の保護者に対する説明

小児の軽度頭部外傷の保護者に対する説明
 
Effect of the Head Computed Tomography Choice Decision
Aid in Parents of Children With Minor Head Trauma



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 アメリカでは、小児の軽度の頭部外傷に対して37~50%が頭部CT検査を行っています。
しかし、CTで所見がある脳外傷(脳損傷)は10%以下で、しかも外科的治療が必要な例は0.2%との
ことです。
小児にCT検査をする事は将来問題があるとの指摘もあり、厳格な適応基準が求められています。
 現在ではPECARNの判定基準が一番用いられています。 (以前のブログ及び下記のPDFをご参照
ください。)
PECARNでリスクがゼロの場合はCT検査は必要ありません。2以上の時はCT検査の適応です。1の時が中間(intermediate)で、CTを実施するかどうか判断に迷う所です。
そのintermediateの時に、保護者に対して普段の言葉で教育し説明して、双方向でCT検査の必要性
を判断するという援助(aid)で、その後の効果がどうなっているかを調べた論文が、JAMAに掲載されて
います。

結論的には
中間(intermediate)でaidを実施しても、その後のCT検査の実施頻度に差はありませんでした。
しかしCT検査実施に関する保護者との論議は減少し、臨床家に対する信頼が増えました。
更に受傷後の7日間は、医療機関に対する不要な受診も減少していました。





私見)
 全ての医療に関係する問題提起と感じました。
 本論文から患者さん用のパンフを作成し、またUPTODATAを基に本院でのPECARNの説明パンフも
作成しました。以前のパンフと併せ、軽度の頭部外傷と判断したら、職員の皆さんで事前に事故の経過やGCSを判定しておいてください。
実地医家の場合に「生兵法は創の基」との狭間でいかに踏みとどまるかが問題と認識しています。


 Pecarnのアルゴリズムのネットも利用しましょう。



  https://www.mdcalc.com/pecarn-pediatric-head-injury-trauma-algorithm


jama 頭部外傷.pdf

頭部外傷の説明.pdf

PECARNのルール.pdf










  
posted by 斎賀一 at 20:30| Comment(0) | 小児科

2018年10月29日

PPI(胃酸分泌抑制薬)と低ナトリウム血症

PPI(胃酸分泌抑制薬)と低ナトリウム血症
 
Associations of proton pump inhibitors and hospitalization
due to hyponatremia: A population–based case–control study



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 PPIは、汎用されている強力な胃酸分泌抑制薬です。潰瘍、逆流性食道炎、抗血栓薬の出血性潰瘍に対する予防等、適正に処方する限り安全で有効な薬剤の一つです。
 今回、極めて稀ながらPPIの処方初期に(3か月以内)低ナトリウム血症を誘発すると言う論文が発表されました。


纏めますと

1) 低ナトリウム血症で入院した14,359名と、3か月以内にPPIを服用した57,383名のコントロール群
   を比較して、その危険率を割り出しました。
   72%が高齢の女性との事です。

2) タケプロンは危険率が1.19、オメプラールは2.67、ネキシウムは2.89でした。

3) 論者は、高齢の女性ではタケプロンが安全としています。
   しかし、この研究は現在進行していますが、前向き試験での結果が出ていない様です。






私見)
 PPIに関しての疑惑は消えては現れの繰り返しですが、高齢者での使用に関しては注意が必要なようです。
 本研究ではパリエット、タケキャブは含まれていませんでした。
 取りあえず、稀ながら本リスクはPPI全般と解釈します。





ppi 低ナトリウム血症.pdf












posted by 斎賀一 at 19:50| Comment(0) | 消化器・PPI

2018年10月27日

COPDの急性増悪の予防にテオフィリンは有効か? 【考察その1】

COPDの急性増悪の予防にテオフィリンは有効か?
                 【考察その1】 

Effect of Theophylline as Adjunct to Inhaled Corticosteroids
on Exacerbations in Patients With COPD A Randomized
Clinical Trial JAMA. 2018;320(15):1548-1559
 


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 テオフィリン(テオドール、ユニフィル、ネオフィリン等)は、気管支拡張薬として喘息やCOPDには以前
より汎用されていましたが、少量でもその抗炎症作用により他の気管支拡張薬とは異なる併用の利点があります。特にステロイドとの併用では安価のため、今後も有用性が期待されています。
本論文でも記載していますが、ステロイド吸入とテオフィリンを併用すると、その抗炎症作用は100倍以上にもなるとの事です。
 雑誌JAMAに研究TWICSの結果が掲載されています。



纏めてみますと

1) 呼吸機能検査でFEV1/FVC(一秒率、下記のPDFを参照)が0.7以下のCOPD(閉塞性肺疾患)で、
   登録前、年に2回以上急性増悪の既往があり、その後吸入ステロイドを使用している40歳以上の
   方を対象にしています。本研究では更にテオフィリンを追加する事により、その後の急性増悪の回数
   を減らせるかを調査しています。
   急性増悪の定義は、抗生剤や経口ステロイド薬を必要とした場合としています。(2回とは少ない
   感じですが、研究の対象規模との関係のtrade-offを勘案し決めたとの事です。)
   登録は2014~2016年で、その後1年間の経過観察をしています。
   1,567名が登録して、平均年齢は68.4歳で54%が男性でした。

2) 低用量のテオフィリン投与群(200mgを1日1回か2回)とプラセーボ群に振り分けました。
   テオフィリン群は772名、コントロール群は764名です。
   主要転帰(main outcome)は、その後1年間の急性増悪の回数としています。

3) 結果は全体で3,430回の急性増悪が発生していますが、テオフィリン群では、1,727回
   (平均:2.24回)、コントロール群では1,703回(平均:2.23回)でした。 結局効果なし。
   副作用として、心臓関連はテオフィリン群で2.24%、プラセーボ群で3.4%、 胃腸関係はテオフィ
   リン群で2.7%、プラセーボ群で1.3%、頭痛はテオフィリン群で9.0%、プラセーボ群で7.9%
   でした。
   つまりテオフィリンを追加しても効果はありませんでした。
   (心臓関連の副作用がテオフィリン群で少なかったのは意外です。少量の為でしょうか。)

4) GOLDステージ(最重症:FEV1が30%以下、重症:FEV1が30~49%中等度:FEV1が50~79%、
   軽症:FEV1が80%以上)のベースラインに関係なく、吸入ステロイドにテオフィリンを追加しても
   急性増悪の予防効果には寄与関与していませんでした。 (下記にグラフをPDF化しました。)






私見)
 色々な意味で、テオフィリンは逆風が吹いていると感じています。
 Real worldの世界では(僕の世界)効果を実感していますが、暫くは反論が出るのを期待するもの
 です。 それまではUPTODATEの記載を頼りにします。
 下記に要約のみをPDFしてみます。
 (吸入ステロイドの喘息における早期介入は失敗に終わりましたが、テオフィリンのCOPDに対する急性
 増悪には効果は無いが、その都度使用することにより炎症をある程度抑制し、肺のリモデリングを予防
 できるのでは、と期待しているのですが...。)





本論文及びUPTODATEから.pdf











posted by 斎賀一 at 15:20| Comment(0) | 喘息・呼吸器・アレルギー