2025年02月28日

NHK番組「桐島聡 “仮面”の逃亡劇」

NHK番組「桐島聡 “仮面”の逃亡劇」




 先日「桐島聡」の番組を見ました。連続企業爆破事件に関与後、半世紀にわたり逃亡し、
去年死亡した桐島聡には若干の関心がありました。
番組では、桐島を企業爆破事件に誘った共犯者や20年以上親交があった男性、桐島の最期を
知る人々らを取材しています。
「やみだ やみが人間を創造する」「暗闇の中で考えないと、仮面が消えてしまう」
といった意味深なメモ書きも紹介しています。


 番組を観て、学生時代を思い出しました。
大学3年の時、私の学校も学生運動の熱気に包まれていました。そんな時、ノンポリの私が
学年委員の1人に選ばれてしまいました。集会ではいつも「ナンセンス」の怒号が吹き荒れて
いました。その頃、良寛に傾倒していた私は、委員会で学生の本分の自説を述べると
「ナンセンス、引っ込め、委員を止めろ」の集中砲火を浴びるのが常でした。
学校全体として、ストに突入するかの最終会合にうんざりしていた私は欠席を決めていました
が、責任感からちょっとだけ最後に出席しようと会場に入った瞬間に、会場から割れんばかり
の拍手を浴びました。
あと一人の出席で、採決の有効性が決まるギリギリの状態だったようです。
残念ながら私の一票は空しく、翌日からは6か月間の授業ボイコットとなりました。
戦犯は私となり、あるグループからは「ノンポリのくだらないやつ」とのレッテルを貼られ
ました。

その後、数年たってあっという間にあの熱気は大学から消えていました。
あの当時、私をナンセンスと言っていた同期は大学に残り、出世して立派になりました。
私はといえば、卒業後直ぐに母校を飛び出し、その後はバンカーの連続です。
私は同窓会には中学、高校はそれぞれ1回だけ、大学は1回も出席していません。


 桐島を本当に理解したのは、20年来の友人で盲目のマッサージ師と、湘南鎌倉総合病院で
最期を看取った看護師だと思いました。
医療従事者として、あの看護師のようにしなやかに仕事をしたいものです。
そして、喧騒の中で暮らしている私には見えない大事な何かを、あの盲目のマッサージ師は
見つめているのかもしれません。私もそのような静かな心で日々を送りたいものです。

ちなみに、元日本赤軍の足立正生氏と高橋伴明氏の桐島映画も控えているとの事ですが、
多分私は観ないでしょう。













posted by 斎賀一 at 18:38| 日記

2025年02月27日

リンパ球性間質性肺炎・シェーグレン症候群

リンパ球性間質性肺炎・シェーグレン症候群

Lymphoid Interstitial Pneumonia
[n engl j med 392;8 nejm.org February 20, 2025]


     
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 雑誌NEJMに、リンパ球性間質性肺炎の症例報告がありましたのでブログします。


1)37歳の男性です。
  10か月続く乾性咳嗽、倦怠感、ドライマウスを訴えています。
  タバコは長年吸っていません。口腔粘膜と結膜はドライです。

2)胸部レントゲンは、下肺野に網状陰影を呈しています。
  両側に嚢胞性透亮像も認められます。
  CTでは明瞭に境界された薄い壁の気管支周囲の嚢胞が、下肺野を中心にあります。
  同時に下肺野には、擦りガラス状の陰影、胸膜下の網状陰影も認められます。

3)肺生検では肺間質にリンパ球の浸潤が集積しており、肺胞壁も著明に肥厚しています。

4)診断は、シェーグレン症候群によるリンパ球性間質性肺炎でした。 



   
     (左のレントゲンの印の部位が透亮像です。右のCTでは明瞭です。)


       70227-2.PNG







私見)
 私はシェーグレン症候群で間質性肺炎の経験がなく、上記のレントゲンで透亮像の嚢胞性
 陰影を見逃してしまわないか心配になりました。
 最近、関節リウマチの患者さんで間質性肺炎を指摘されていましたので、次回のブログで
 勉強して掲載します。











posted by 斎賀一 at 11:45| 喘息・呼吸器・アレルギー

2025年02月25日

成人における脂質異常症の薬剤管理のガイドライン・米国

成人における脂質異常症の薬剤管理のガイドライン・米国

American Association of Clinical Endocrinology Clinical Practice Guideline
on Pharmacologic Management of Adults With Dyslipidemia



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 長文のガイドラインのため「サマリー」だけをブログします。


1)成人脂質異常症の一次予防について、AACE(American Association of Clinical
  Endocrinology)は、治療に関する患者との意思決定のため、ASCVD(動脈硬化性心血管
  疾患)イベントの将来リスクを予測する有効なツール、または計算機の使用を推奨する。


2)最大耐用量のスタチン投与を受けている成人の脂質異常症患者で、ASCVDを発症している、
  またはリスクは高いが目標値(LDL-C< 70mg/dL)に達していない場合、AACEは通常に
  加え、エボロクマブまたはアリロクマブの使用を提案する。
  (補足説明;エボロクマブ(Evolocumab)商品名: Repatha(レパーサ)はPCSK9を阻害
   することで、LDL受容体の数を増加させ、LDLコレステロール(LDL-C)の血中濃度を
   下げます。
   投与方法:140mgを2週間に1回、または420mgを4週間に1回皮下注射する。
   アリロクマブは、日本では発売されていません。)


3)ASCVDを発症していない成人の脂質異常症患者において、AACEは通常の治療に加えて
  エボロクマブまたはアリロクマブを使用しないことを勧めます。

  ・現在のところ、エボロクマブとアリロクマブを比較した直接的なエビデンスはない。
  ・ほとんどの試験参加者はASCVDのリスクが高いか、二次予防のための治療を受けて
   います。
   ASCVDリスクの低い成人で、有益性が有害性を上回るかどうかは不明です。


4)成人の脂質異常症患者におけるインクリシランの使用については、推奨または反対ともに
  十分な証拠がないです。(推奨なし、証拠不十分)

  ・全体としてはスタディの数も少なく、心血管疾患のイベント発生の症例数も非常に少ない
   ため、通常の治療に加えてインクリシランを使用することの潜在的な有益性と、有害性の
   バランスを決定できない。
   (補足説明;インクリシラン(商品名:レクビオレジスタードマーク)は日本で利用可能です。
    2023年9月25日に製造販売承認。レクビオレジスタードマークは、家族性高コレステロール血症や高
    コレステロール血症の患者さんで、心血管イベントのリスクが高く、スタチン(HMG-
    CoA還元酵素阻害剤)では効果が不十分、またはスタチンの使用が適さない場合に使用
    されます。
    投与方法は、初回投与後3カ月後に2回目を皮下投与し、その後は6カ月毎に1回の投与
    となります。)


5)スタチン不耐容でASCVDを有するか、リスクが増加している成人の脂質異常症においては、
  AACEは通常の治療に加えてベムペド酸の使用を推奨する。
  (補足説明;ベムペド酸は、HMG-CoA還元酵素の上流に作用する経口脂質低下薬で、スタ
   チンが使えない患者向けの新しい経口脂質低下薬。
   LDL-Cを約15〜25%低下させ、スタチンと併用可能。
   筋肉痛のリスクが低いが、尿酸値上昇に注意が必要。日本では未承認)


6)ASCVDを発症しておらず、他の脂質低下薬に耐容性がある成人の脂質異常症患者において、
  通常の治療に加えてベムペド酸を使用する事は勧めていない。

  ・患者には、ベンペド酸は心筋梗塞をわずかに減少させるかもしれないが、潜在的な有害性
   (痛風、胆石症、腱断裂)のリスクがある。従って、潜在的な利益と害についての議論を
   含む共有意思決定アプローチが必要となる。
  ・低用量のスタチンを含めた不均一な被験者(heterogeneity)のスタディである事に注意
   が必要。
  ・一次予防に関するエビデンスは限られている。
   最も大規模な臨床試験の二次解析によると、一次予防に有益である可能性が示されたが、
   被験者数が少なく、参加者全員がASCVDの高リスクであった。


7)心血管系疾患を有する、またはリスクが高い人で高中性脂肪(150〜499mg/dL)の成人に
  対しては、AACEはスタチンに加えてEPA(IPE)の使用を推奨する。
  (ただし条件付き推奨でエビデンスの確実性は低い)


8)重度の高トリグリセリド血症(≥ 500mg/dL)の成人におけるEPA(IPE)の使用を推奨する
  が、推奨しない十分な根拠はない。(推奨しない、証拠不十分)

  ・EPA単剤療法は心筋梗塞をわずかに減少させる可能性があるが、潜在的な有害性(心房細動
   の発症リスクや、大出血のリスクがわずかに増加する。)のリスクが存在することを説明
   すべきである。
  ・重度の高トリグリセリド血症(≥ 500mg/dL)を有する患者は、いずれのスタディにも
   含まれていなかった。
   さらに、EPAまたはIPE単剤療法が膵炎に効果があるかも報告されていない。


9)心血管系疾患を有するか、リスクが高い高中性脂肪(150〜499mg/dL)の成人において、
  AACEはスタチン療法に加えて、EPAとDHAを併用する事を推奨しない。


10) 重度の高トリグリセリド血症(≥ 500mg/dL)を有する成人に対するEPAとDHAの併用
  療法を推奨するエビデンスは、不十分である。(推奨しない、証拠不十分)

  ・1.8g/日以上のEPAとDHAの投与では、心血管イベントや死亡率の臨床的に意味のある
   減少は認められず、潜在的な有害性(心房細動や大出血のリスクがわずかに増加する)
   のリスクがあることを患者に説明すべきである。
  ・重度の高トリグリセリド血症(≥ 500mg/dL)の患者は、いずれのスタディにも含まれ
   ていなかった。さらに、膵炎に対するEPAとDHAの効果も報告されていない。


11) ASCVDまたはリスクが高い高トリグリセリド血症(150〜499mg/dL)の成人において、
  AACEは通常の治療に加えて、ナイアシンを使用することを推奨しない。


12) 重度の高トリグリセリド血症(≥ 500mg/dL)の成人に対するナイアシンの使用を推奨、
  または推奨しないことを示す証拠は不十分である。(推奨しない、証拠不十分)

  ・ナイアシンとスタチンとの併用は、心筋梗塞の些細な減少につながるかもしれないが、
   重大な潜在的有害性のリスク(感染症、出血、高血糖の増加)がある。
  ・ナイアシンとスタチンを含む併用薬はFDAでは、もはや承認されていない。
  ・重度の高トリグリセリド血症(≥ 500mg/dL)は、いずれのスタディにも含まれていな
   かった。
   さらに、各スタディでは、EPA(IPE)が膵炎の効果については報告されていない。


13) ASCVDまたはリスクが高い脂質異常症の薬物療法を受けている成人において、AACEは
  LDL-C目標値を70mg以下に設定することを提案している。(条件付き推奨、エビデンス
  の確実性は低い)

  ・2017年に推奨されたLDL-C治療目標値の引き下げ(< 55mg/dL)は、スタチン+
   エゼチミブに関する単一の試験によってもたらされた。
   しかし、その後の多数のスタディのメタ解析では、心血管イベントや死亡率に差は
   示されなかった。
  ・臨床医は、些細な利益や些細な副作用、コスト、患者の嗜好、治療目標が低い場合に、
   患者間の差別化懸念(equity)の影響などを含め、共有の意思決定に患者を参加させる
   べきである。







私見)
 本院でも、スタチンとゼチーアの副反応を心配される患者さんがいます。
 本ブログを参照して、薬を選択します。







脂質異常症ガイドライン.pdf











posted by 斎賀一 at 20:37| 脂質異常