2023年05月29日

好酸球性食道炎と食物除去

好酸球性食道炎と食物除去
 <短 報>
One-food versus six-food elimination diet therapy
for the treatment of eosinophilic oesophagitis



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 海外から報告の多い疾患ですが、最近では日本でも注目されています。
私も疾患を疑い生検を行いますが、殆どが空振りでそれ程多い疾患とは感じていませんが。
 以前は食物アレルギーとの関連性は乏しいとされていましたが、今回雑誌Lncetから食物除去
に関しての論文がありました。


1) 18歳から60歳で、活動性の好酸球性食道炎患者129人が対象です。
   2016年から2019年まで調査しています。 平均年齢59歳(男性54%、女性46%)

2) 食物除去を1品目(牛乳)と6品目(牛乳、小麦、卵、大豆、魚介類、ナッツ類)の2群で
   比較しています。
   除去後6週間で食道生検を行い、寛解を見ています。

3) 両群共に寛解率は40%でした。
   両群では寛解率に差は認められていませんが、無反応の9人にステロイドのフルチカゾン
   を経口投与により寛解しています。

4) 好酸球性食道炎には、先ず牛乳の除去を推奨しています。
   経口のフルチカゾンは、日本では上市されていません。





私見)
 胸やけがする時には水を飲むことを勧めていますが、好酸球性食道炎の場合には、牛乳を
 飲むのは逆効果のようです。
 次回、日本のデータをブログします。








好酸球性食道炎.pdf








posted by 斎賀一 at 18:34| 消化器・PPI

2023年05月27日

RSウイルス、ヒトメタニューモウイルスと喘息

RSウイルス、ヒトメタニューモウイルスと喘息

臨床とウイルス Vol.49 No.5 2021.12
橋本浩一 福島県立医大 小児科学講座
 


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 最近の日本でのRSウイルス論文を調べてみました。
やはりRSウイルス感染症の重症例と喘息との関連性を調べています。


1) RSウイルス感染症は温帯地方では秋から春に流行しますが、最近の日本では夏から
   12月にかけて流行し、更に通年性の傾向もみられます。
   正期産児であっても、母からの移行抗体が存在する出生後でも早期から感染し、生後1歳
   までに50%以上、2歳までに100%が初感染を受けます。
   1〜2%が入院し、その中の15%が集中治療室での治療となっています。
   毎年6〜63%の小児が再感染を経験します。

2) 接触又は飛沫感染によります。
   4〜5日の潜伏期を経て上気道感染となりますが、更に15〜50%が2〜3日後に下気道感染
   へと悪化します。

3) 感染により種々のサイトカインが誘発され、未発達な乳児の気道が障害を受けます。
   生後6か月以内が重症化し、生後1か月では突然死もあります。
   高齢者も重症化しやすいです。

4) 本論文では3歳以下の下気道炎で入院した412人の内、入院時に喘鳴を呈した80人と
   喘鳴を呈しない136名を3年間追跡調査しています。
   退院後3年間の反復性喘鳴は、入院時に喘鳴を呈した群ではRSウイルス感染症が44%、
   入院時に喘鳴を呈さなかった群では40%でした。
   つまりRSウイルス感染による下気道炎で入院した場合の40〜44%は、その後3年間に
   反復性喘鳴を起こします。

5) 海外の文献も紹介していますが、1歳までに重症のRSウイルスに感染した乳児では
   7歳までに喘息を発症するのは30%前後としています。
   しかし、10歳までには6.2%(対照は4.5%)と減少し、対照と有意差はなくなります。

6) 重症のRSウイルス感染による細気管支炎の全てが喘息を発症するわけではなく、また
   成長に伴い喘鳴は軽快する傾向です。喘息の発症には「2ヒット・シナリオ」が提唱
   されています。
   つまり遺伝的背景とRSウイルス感染の重症とが相まって免疫応答が生じ、未発達な
   乳幼児の肺組織に障害が起こるとしています。





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私見)
  前回の海外の論文主旨は、軽症のRSウイルス感染でも小児喘息の原因となるとの事でした。
  学童になれば軽快しますが、やはり1歳未満でのRSウイルス感染には注意が必要です。
  新型コロナ感染が収束傾向ですが、それに代わって他の感染症が本院外来でも流行して
  います。夏かぜと相まって、5類で“ホット”とはいかないようです。











posted by 斎賀一 at 17:02| 小児科

2023年05月26日

RSウイルス感染と小児の喘息

RSウイルス感染と小児の喘息

Respiratory syncytial virus infection during infancy and asthma
during childhood in the USA (INSPIRE):
a population-based,prospective birth cohort study



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 乳幼児期のRS感染は小児後期での喘息に関連すると言われていますが、軽症のRS感染が喘息と
関係があるかは不明でした。


1) 2012年6月から12月と、2013年6月から12月のRS感染の季節に、アメリカのテネシー州
   の小児基幹病院でRS感染を調べています。PCR法と血液抗体検査を行っています。

2) 主要転帰は5歳での喘息です。
   研究に参加した1,946人の対象となる子供のうち1,741人(89%)に、生後1歳のRSV
   感染状態を評価するデータがありました。
   乳児期にRSV感染を有する子供の割合は、1,741人のうち944人(54%)でした。
   乳幼児期にRSV感染がなかった場合の5年後の喘息有病率は587人中91人(16%)で、
   RSV感染があった場合の子供(670人中139人[21%])に比べて低かったです。
   乳幼児期にRSV感染がなかったことは乳幼児期にRSV感染があった場合と比べて、5年後の
   喘息の有病リスクが26%低いと推定されます。(リスク比0・74)
   乳幼児期のRSV感染を避けることで予防できる5年後の喘息の有病割合は、15%でした。

3) 正常な経産婦に生まれた健康な子供たちの中で、生後1歳にRSV感染がなかったことは、
   児童期の喘息発症リスクの大幅な低下と関連していました。
   調査結果は、乳幼児期のRSV感染と児童期の喘息の間に年齢依存性の関連があることを
   示しています。しかし、因果関係を確定的に示すためには、初期のRSV感染を予防、
   遅延、または症状の軽減を目的とした介入により、児童期の喘息に与える効果を研究する
   必要があります。






私見)
 小児の喘息と本論文では記載されていますが、正確には小児喘息の病名で正式な喘息ではあり
 ません。小児喘息は小学生になると80%程が軽快し、喘息に移行するのは両親が喘息の既往が
 なければ8%程度と言われています。
 勿論両親の喘息も、小児喘息は本院ではカウントしない方針です。
 とはいっても、小児喘息を繰り返すことはかなりの負担です。その意味でもRS感染には注意が
 必要となります。
 なお最近では喘息を誘発する感染症として、RS感染に代わりマイコプラズマ感染が注目されて
 います。






小児 喘息 RSRespiratory syncytial virus 2.pdf









posted by 斎賀一 at 20:28| 小児科