2018年05月10日

前立腺癌のスクリーニング;一般向け

前立腺癌のスクリーニング:一般向け

The US Preventive Services Task Force (USPSTF) has recently
Published recommendations on screening for prostate cancer
in asymptomatic men



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 米国の医師会雑誌のJAMAより、症状のない一般の人用の前立腺癌に対する手引書が出ましたので
掲載します。


1) 前立腺癌とはなにか? 
   前立腺とは膀胱の裏側にあり、精液の液体の一部を形成する。
   前立腺癌の臨床的特徴(生物学的特性)は幅が広い。
   多くの場合は進行が緩徐で死亡の原因にはならず、前立腺癌以外の疾病で亡くなるケースが多い。
   前立腺癌以外で死亡した人の病理解剖で、1/3人に前立腺癌があった。 (潜在癌:オカルト癌)
   従って前立腺癌のスクリーニングに関しては自ずと過剰診断、過剰治療のリスクが生ずる。

2) 前立腺癌のスクリーニング検査は何か?
   PSA検査が有用。
   しかし前立腺肥大、前立腺炎でも高値となるので、基本的には組織を採る生検が必要である。
   (最近では生検の前にMRIを実施)

3) スクリーニング検査の有益性と有害性は何か?
   スクリーニングの主たる目的は、最も進行性の速い前立腺癌を同定する事である。
   その事によって、死亡率や転移の減少を目的としている。
   しかし70歳以上では、有益性よりも有害性が勝っている。
   つまり勃起障害や尿失禁が、副作用に生じてQOLの低下に繋がってしまう。

4) 前立腺癌のスクリーニングに関する勧奨の程度は?
   55~69歳では有益性と有害性のバランスが拮抗しているが、70歳以上では有害性が勝る。
   よって70歳以上でスクリーニングに躊躇する人には勧奨しない。




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私見)
 55歳以上の人を目の前にしてこのように割り切れるのでしょうか。
 特に70歳のあなた、どうしますか?


 私の好きな詩の一節が思い浮かびます。

       「かうして目には見えずに、夜が下りて来る。」

                             ギイ・シャルル・クロス




前立腺癌 患者用.pdf








posted by 斎賀一 at 14:04| Comment(1) | 泌尿器・腎臓・前立腺

2018年05月09日

C型肝炎と新生児

C型肝炎と新生児
 
Hepatitis C Virus Screening Among Children
Exposed During Pregnancy



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 米国での統計によりますと、2006~2014年にかけてC型肝炎の妊婦が出産したのは1,043人(1.2%)で、60%も増加傾向との事です。
DAA治療によりやがてC型肝炎は無くなるものと期待されていますが、一方で米国の事情で刺青や麻薬のために若い世代で未だC型肝炎が流行しており、出産の機会も増加傾向との事です。

日本では保険が進んでいますが米国ではMedicaidと言う保険制度です。
この保険制度に加入して十分な新生児のサービスを受けていながらもC型肝炎のスクリーニング検査をしているのは30%足らずとの事です。

現在、C型肝炎の垂直感染(母親から新生児への感染)は8%程度と低いのですが、適切な早期の検査を勧奨しています。






私見)
 日本と事情は異なりますし垂直肝炎の頻度はB型肝炎より低いのですが、B型肝炎より出産時の管理は希薄ではと感じます。
充分な指導が大事だと考えました。





Hepatitis C Virus Screening Among Children Exposed During Pregnancy _ Articl.pdf








posted by 斎賀一 at 18:50| Comment(0) | 肝臓・肝炎

2018年05月08日

肺塞栓症の診断;YEARSクライテリア

肺塞栓症の診断:YEARSクライテリア

 
Multicenter Evaluation of the YEARS Criteria in Emergency
Department Patients Evaluated for Pulmonary Embolism
Acad Emerg Med 2018 Mar 31



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 日本も欧米化のせいか肺塞栓症が多くなっています。
その原因として、下肢の深部静脈血栓症が多いようです。浅在静脈血栓の場合はその頻度は低いよう
です。
深部静脈の検査はエコーでも3点法などいろいろ工夫されていますが、診断価値としてはCTとなります。
しかしCT検査による暴露も懸念され、肺塞栓症の検査前確率が検討されています。
 有名なのがWELLsクライテリアですが、やや煩雑で簡略されたのも、年齢でD-Dimerを計算しなくてはならず厄介です。
最近では更に簡略化したYEARSクライテリアが推奨され、その有用性を証明した研究が、今回発表されました。
WELLsとYEARSのクライテリアは下記にPDF化しましたので、ご参照ください。




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 取り敢えず、上の赤の項目が一つもなく、且つD-dimerが1000以下の場合はCT検査をしなくてよく、
一つでもあり、且つD-dimerが500以上の時はCTを推奨しています。
 (残念ながら、D-dimerはELISA法でありラッテク法ではありません。両者の換算は出来ませんし
  コマーシャルベースでは扱っていません。)



前置きはそれまでとして、本論文を纏めてみますと

1) 米国の17の救急施設を対象に、肺塞栓症の疑いの1,789名を調べています。
   平均年齢は48歳。
   対象者はD-dimerを実施するためWELLsのスコアー6以上(high)は除外しています。
   またYEARSでは、D-dimerはダブルスタンダードで500と1000に基準設定しています。

2) YEARSクライテリアで、陰性は1235/1789(69%)、陽性は554/1789(31%)
   陽性の中で深部静脈血栓所見は、142(26%)、血痰は49(9%)
   肺塞栓症以外考えられない場合は、403(73%)の比率でした。
   肺塞栓症の確定診断は、84名(全体の4%)でした。
   クライテリアの陽性の場合の確定診断は、84/554(15%)

3) 結論的には肺塞栓症の見逃しは
   WELLsでは2%(2/84)、YEARSでは7%(6/84)とYEARSがやや多いのですが、無駄なCT検査を
   47%から33%に14%減少させています。
   詳細は下記のPDFのグラフをご参照ください。





私見)
 毎回残念な事ですが、開業医の限界でしょうか、D-dimerのELISA方は行う事が出来ません。
 しかし、ラクテック法でも色々と組み合わせる事により検査前確率を上げられるとする文献もあり、
 本院のクライテリアを作るしかありません。
 但し、高齢者では元来D-dimerが高値である点に注意が必要となります。

 尚、本論文中にゲシュタルト的診断法が書かれています。
 そのため、「肺塞栓症以外に考えられない。」とする項目があり、それを解析しています。
 (私が、長い女性遍歴の末に家内を選んで結婚したのではないのです。
  チョッピリ魅了的な彼女と結婚したのは、ゲシュタルト的につまりその時点で全人格的に、彼女以外に
  結婚する相手がいなかったからなのです。)

 岩田氏の著書に詳しく載っていましたので下記に掲載します。
 つまり肺塞栓症は名医、名人の領域のようです。



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 本院クライテリアの試案
   ○ D-dimer(ラクテック法)のcut-off値以下の場合
     ドプラーエコーで陽性所見(深部静脈が圧迫出来ない)の時は紹介
     陰性所見の時は経過観察
   ○ D-dimerがcut-off値以上の場合
     下肢浮腫で紹介
   ○ 高齢者ではドプラー検査で陽性所見の時紹介




★参考文献

 診断のゲシュタルトとデギュスタシオン : 岩田健太郎 編集   金芳堂




1d-dimer.pdf

2PEのアルゴリズム.pdf

3ゲシュタルト.pdf









posted by 斎賀一 at 20:37| Comment(1) | 循環器