2018年07月13日

心血管疾患のリスク評価 : USPSTFより

心血管疾患のリスク評価:USPSTFより
 
Risk Assessment for Cardiovascular Disease With
Nontraditional Risk Factors US Preventive Services
Task Force Recommendation Statement



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 米国予防医療専門委員会(USPSTF)から、心血管疾患の危険予測因子評価に対して雑誌JAMAに
記載されていました。
対象は明確な症状のない人に対し、どのような検査を実施して心血管疾患の予測をしたらよいかの点で、費用対効果は勘案していません。利点と害(benefit and harm)を基準にしての評価です。その際にエビデンスばかりでなく、より多くの点を考慮して臨床的な決定をすべきとしています。


結論を纏めますと

1) 従来のリスク検査に対して、最近追加承認されている下記の検査は十分な価値は無く、積極的に
   施行する際は総合的な判断が必要としています。
   a ; ABI検査   b ; 高感度CRP   c ; CACスコアー   以上の3点です。
   ABIは上肢と下肢の血圧を超音波ドプラーなどを用いて比較する検査で、一般的には脈波伝達速度
   も測定し、血管年齢などの判定をするようです。
   高感度CRPは炎症の程度を測定する血液検査です。
   動脈硬化は本質的に炎症であるとの概念からですが、一般的なCRP検査も高感度と同等の結果
   報告が現在では行われています。
   CACスコアーとは、冠動脈石灰化をCT検査で調べます。

2) 上記検査は、動脈硬化の危険因子として本院では採用していないので、詳細は省略いたします。
   しかし、本論文の価値はその内容よりも精神といっては大袈裟かもしれませんが、その考え方にある
   のではないかと思いブログしてみました。

3) 当該検査や方針が有害か(potential harms)どうかは、直接的観点ばかりでなくそれに誘導され
   引き継がれる検査が侵襲的なこともあり、更に治療方針が決定されれば、それは患者にとっては
   重大な利害問題が生じる分かれ道になりかねない。

4) 繰り返しになりますが、臨床家が検査を選択しそれによって方向を決定する場合は、単に費用対効果
   やエビデンスだけでなく、それによってもたらされる利害(benefitとharm)を常に念頭に置かなくて
   はならない。





私見)
 私にとって大変示唆に富む論文でした。
 下記のPDFに、ABIと脈波伝達速度を推奨する論文を掲載しました。
 エビデンスは十分にあるようですが、その検査により血管年齢まではじき出されると、やや抵抗感が生じ
 ます。せいぜい10年リスク程度で良いのではないでしょうか。
  最近、全国の地震確率が発表され予知連の委員長が解説していました。
 「必ずしも確率の高い所が地震の被害が大きいとは限らず、確率が低いところでも注意が必要です。
  ただ国民に分かりやすくするために公表しました。」
 ならば比較できるほど細かいパーセントまで示さなくても良いのでは、と思いましたが...。
 私個人的には評価されることを好みません。評価するには十分な配慮を願います。
  (妻に対しては、心の中で高い評価をしています!)

 



jama_Curry_2018_us_180016.pdf

脈波.pdf













posted by 斎賀一 at 21:12| Comment(1) | 循環器

2018年07月10日

糖尿病の診断:一回の採血での診断の意義

糖尿病の診断:一回の採血での診断の意義

 
Prognostic Implications of Single-Sample
Confirmatory Testing For Undiagnosed Diabetes
Ann Intern Med. doi:10.7326/M18-0091



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 糖尿病の診断の王道は75gr糖負荷試験だと思いますが、吐き気を呈する人や簡便さから、本院ではあまり積極的には行っていません。日本での診断のガイドラインでは欧米と歩調を合わせる形で、空腹時血糖とヘモグロビンA1cの組み合わせを推奨しています。基本的にはA1cは治療のコントロールを見る指標であり、空腹時血糖を診断の主体と捉えています。(詳細は下記のPDFを参照)

 今回、アメリカの雑誌Annals of internal medicineより、一回だけの採血で空腹時血糖とヘモグロビンA1cを同時に検査して、糖尿病を診断する提案がありました。


纏めてみますと

1) 2009年以降、ヘモグロビンA1cを診断に取り入れようとの傾向が多くなり、その方向で診断基準が
   作成されています。その正常値は6.5%以下となっていますが、これは糖尿性網膜症の発生との
   関係です。

2) 1987~1989年にARIC(atherosclerosis risk in communities)を受診した、まだ糖尿病と
   診断されていない14,348名が登録されました。
   ヘモグロビンA1cが利用出来るようになった1990~1992年にARICを2回受診した人を最後に選ん
   でいます。最終的には13,346人です。

3) ○ 確定型(confirmed) : 空腹時血糖が126mg/dl以上で、且つA1cが6.5%以上の人
   ○ 不確定型(unconfirmed) : 空腹時血糖か又はA1cが高値の人
                         実際は空腹時血糖だけが高い人が多くA1cだけが高値の人は
                         少なかったようです。
   ○ 糖尿病型 : 自己申告制で、糖尿病と診断されているか糖尿病の薬を服用している人

     以上に定義しています。

4) 結論的には
   確定型(confirmed)は経過5年では明白ではありませんが、15年経過すると97.3%で糖尿病の
   診断となっています。
   一方、不確定型(unconfirmed)では15年経過しても糖尿病の診断は71.7%にしかなりませんが、
   心血管疾患や腎障害(CKD)の発生は、確定型とあまり差はありませんでした。
   詳細はPDFのグラフをご参照ください。

5) 筆者は一回だけの採血でも診断価値はあり、また不確定型でも合併症の発生が多く、治療の介入を
   する事が出来るとしています。




私見)
 日本のガイドラインとほぼ同じですが、経過がハッキリしました。
 またUnconfirmedは糖尿病型とほぼ同じのようです。
 本院でも慢性疾患の患者さんで糖尿病を疑う場合は空腹時血糖(場合により食後血糖)とヘモグロビン
 A1cの同時測定を、年に1回は実施したいと思います。



 ◆参考書籍

  糖尿病治療ガイド 2014-2015 : 文光堂
  糖尿病治療のエッセンス 2017年版 : 文光堂
  最近の糖尿病の実地日常診療  medical practice vol.32 no.1 2015 : 文光堂





annal文献.pdf

糖尿病書籍.pdf











posted by 斎賀一 at 20:04| Comment(0) | 糖尿病

2018年07月07日

気管支喘息吸入薬の吸入ステロイド+LABAは安全

気管支喘息吸入薬の吸入ステロイド+LABAは安全
 
Combined Analysis of Asthma Safety
Trials of Long-Acting β2-Agonists
N Engl J Med 2018;378:2497-505



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 長期作用型の気管支拡張吸入薬(LABA)が上市された時は、その効果と使用方法に驚愕を受けたことを覚えています。
しかしその後黒人を中心とした死亡例の報告があり(SMART試験)、アメリカのFDAの警告によりwarning boxに入ってしまいました。その後はLABAと吸入ステロイドを併用すれば重大な副作用は無いとされ、混合薬が使用されています。
しかし、少数例ながら併用でも重大な事象の懸念から、FDAは各メーカーに市販後調査を命令しました。アストラゼネカ(シムビコート)、グラクソスミスクライン(アドエア、レルペア)、メルク、ノバルティスの4社
です。FDAの管理下で同様なプロトコールの基で調査を行いました。この管理委員会に雑誌NEJMも加わっています。
(尚、予め混合したものと別々に併用したのかが明白でないため、ブログでは混合薬とか併用薬と記載しますが、同じ意味に解釈してください。)



論文を纏めますと

1) 主要転帰(一次エンドポイント)は喘息に関連した挿管や死亡、副次的転帰(二次エンドポイント)は
   重篤な喘息関連の状態、喘息発作などとしています。

2) 対象は36,010人を吸入ステロイド+LABAの併用療法の群と吸入ステロイド単独の群の2群に
   分けています。

3) 喘息に関連する挿管が 3件(吸入ステロイド群 2 件、併用療法群 1 件)と、喘息に関連する死亡
   が 2 件(いずれも併用療法群)ありました。
   これは1/7,200人の発生です。
   重篤な喘息関連イベント(入院、挿管、死亡の複合)の副次的解析では、1件以上の複合イベントが
   吸入ステロイド群 18,006 例中 108 例(0.60%)と、併用療法群 18,004 例中 119 例
   (0.66%)で発生し(併用療法群の相対リスク 1.09)、1 件以上の急性喘息増悪発作が、吸入ステ
   ロイド群の 2,100 例(11.7%)と、併用療法群の 1,768 例(9.8%)で発生した。
   (相対リスク 0.83)
   明らかに併用療法の方が有効でした。

4) LABA+吸入ステロイド併用療法では、吸入ステロイド単独と比較して重篤な喘息関連イベントの
   リスクが有意に高まる結果とはならず、喘息発作が有意に少なかった。
   これは併用の方が喘息増悪を17%減少していました。

5) 併用の方で増悪する場合がありましたが、これは治療に対する反応が悪い喘息のパターンもあり、
   対象が多くなればこのような一群が存在するのは仕方ないと説明しています。

6) 結論として、LABA+吸入ステロイド併用療法では吸入ステロイド単独と比較して、重篤な喘息関連
   イベントのリスクが有意に高まる結果とはならず、喘息発作が有意に少なかった。

7) 論文の最後にLABA+吸入ステロイド併用の併用療法はFDAのwarning boxから解き放されたと
   しています。





私見)
 LABA+吸入ステロイドの合剤が無罪放免となり嬉しい限りですが、更に発作の時だけ吸入ステロイドに
LABAを使用したり、更にお許しが出ればLABA単独の発作時使用も可能な時が来ないかと夢見ながら。

お休みなさい。




吸入薬.pdf

配合剤.pdf













posted by 斎賀一 at 15:30| Comment(1) | 喘息・呼吸器・アレルギー