2020年08月03日

新型コロナの臨床症状・スマホからの回答

新型コロナの臨床症状・スマホからの回答
 
Real-time tracking of self-reported symptoms
to predict potential COVID-19



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 すでに多くのネットでも紹介されていますが、英国とアメリカでスマホのアプリを用いた新型コロナの
可能性がある人の追跡調査を、リアルタイムで自己申告した報告がありました。

日本では第二波が問題となっており、その多くが若者で軽症者とのことです。
本院でもブログしてみました。
もちろんスマホを利用した人は新型コロナを心配して登録していますので、他のウイルス性疾患も含まれ
ます。しっかりした登録基準がない代わりに、リアルタイムで実態を把握できます。
登録者の中で、新型コロナのPCR検査を受けて診断できた人だけを調査しています。


纏めてみますと

1) 登録者は2,618,862人(イギリス人は2,450,569人でアメリカ人は168,293人)です。
   PCR検査までいった人は、イギリス人は15,638人でアメリカ人は2,763人です。
   そのうちでPCR陽性者は、イギリス人が6,452人でアメリカ人は726人でした。




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2) 結論
   下記の図からわかるように、軽症者の場合は味覚嗅覚異常、倦怠感、持続する咳、食欲低下の
   組み合わせが診断に有用でした。




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私見)
 以前の私のブログで紹介した味覚嗅覚異常の集団とは異なり、一般外来で風邪症状の患者さんに匹敵
 すると思われます。
 十分に心して診療にあたりましょう。
 昨日のNHK「小さな旅」で、集落の農村家庭工場で元気に働くお年寄り達を紹介していました。
 その中に感動的な言葉がありました。


「辛抱仕事」






本論文.pdf

ブログ1.pdf

ブログ2.pdf

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posted by 斎賀一 at 20:14| Comment(2) | 感染症・衛生

2020年07月31日

新型コロナの抗体は早期に減退?

新型コロナの抗体は早期に減退?
 
Rapid Decay of Anti–SARS-CoV-2 Antibodies
in Persons with Mild Covid-19
This letter was published on July 21, 2020,
and last updated on July 24, 2020, at NEJM.org


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 報道でもされていますが、新型コロナの抗体は期待するほどには持続せず、再感染の危険やワクチンに
対する効果も疑問視され懸念されています。

 今回雑誌NEJMより、カリフォルニアから具体的症例集が短報(correspondence)として掲載されて
いましたのでブログしてみます。


1) 抗体検査は、新型コロナウイルスの表面にあるスパイク抗原に対するIgG抗体検査をELISA法で
   調べています。(以前の私のブログでも紹介しましたが、スパイク抗原に対する抗体は必ずしも
   ウイルスの防御に働く中和抗体を調べてはいません。中和抗体を正式に調べるには、動物実験が
   必要なようです。)

2) 34名の対象者はほとんどが軽症者としています。  平均年齢は43歳(21~68歳)
   34人中31人は時間をあけてIgGを2回測定し、3人は3回測定しています。
   最初の測定は発症後平均37日後(18~65日)  最終測定は平均86日(44~119日)です。

3) 結果的にはIgGの半減期(半分に減少する期間)は、平均で36日でした。
   つまり、1ヶ月もすると抗体は半分に減少してしまいます。
   筆者は「スパイク抗原がウイルスの侵入に重要な働きがあるので、これに対する抗体は中和抗体
   (病気の予防効果)に匹敵すると警告しています。



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論評)
  論評では、必ずしも直接的な中和抗体を調べていない点に注意が必要としています。
  本論文も、中国からの報告でも、新型コロナウイルスに対する本来の、免疫機能のT-細胞
  に関しては調べていないとしています。



私見)
 ワクチンの効力に関して、今現在判断するのは早計だと思いますが、少なくとも抗体のIgGを
検査して、今後の免疫力を判断するのは控えた方が良さそうです。




抗体検査1.pdf

抗体検査 2.pdf

抗体検査3.pdf

ブログ1.pdf

ブログ2.pdf

ブログ3.pdf

ブログ4.pdf














 
posted by 斎賀一 at 12:19| Comment(0) | 感染症・衛生

2020年07月29日

インフルエンザ治療薬のゾフルーザの予防効果

インフルエンザ治療薬のゾフルーザの予防効果
Baloxavir Marboxil for Prophylaxis against
Influenza in Household Contacts



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 2年前に、華々しく本院でも登場した一日一回服用のインフルエンザ治療薬ゾフルーザは、その後
耐性ウイルスや症状の遅延の問題が発生し、逆風に晒されています。
 今回はメーカーの必死の努力により、家庭内感染の予防効果に活路を見いだした論文が雑誌NEJMに
掲載されていましたので、纏めてみました。


1) インフルエンザは3密である家庭内と学校で伝播しますが、特に家庭内に持ち込んで若い兄弟や
   家族に感染を起こしてしまいます。
   タミフルとリレンザの場合にも耐性ウイルスは発生しますが、この場合のウイルスには感染力はなく
   従ってタミフルとリレンザの予防投与は早くから承認されていました。最近ではイナビルも承認を
   受けています。
   しかしゾフルーザによる耐性ウイルスは、その後ゾフルーザに対しての効果(感受性)が10~420倍
   も低下しています。この耐性ウイルスは、ゾフルーザを服用していると2.2~9.8%出現します。
   小児の場合は19.3~23.4%と高率です。
   また厄介な事にこの耐性ウイルスは感染の遷延化を招き、結果的には感染の増加にも繋がります。
   このことを踏まえて、ゾフルーザの予防投与における効果を調べています。

2) 方法
   2018~2019年のインフルエンザシーズンに、主に日本の実地医家で調査が行われています。
   対象者は家庭内で患者(index patient)と接触した人で
   ・インフルエンザの症状がない
   ・体温が37℃以下
   ・index patientと、少なくとも48時間は同居している事が条件です。
   ゾフルーザ群は体重ベースで一日一回ゾフルーザを服用しています。
   主要転帰は観察期間10日間でのインフルエンザの発生です。

3) 結果
   Index patient 545 例の同居家族 752 例が、バロキサビル単回投与またはプラセボ投与に
   無作為に割り付けられました。
   Index patientは、95.6%が A 型インフルエンザで、73.6%が 12 歳未満、
   52.7%がゾフルーザで治療を受けました。
   解析対象者(ゾフルーザ群 374 例、プラセボ群 375 例)のうち確定した臨床的なインフルエンザ
   を発症した割合は、バロキサビル群のほうがプラセボ群よりも有意に低かった。(1.9% 対 13.6%)
   有害事象の発現率は 2 群で同程度であった。 (ゾフルーザ群 22.2%,プラセボ群 20.5%)
   ゾフルーザ群 374 例で、PA の I38T/M 変異ウイルスが 10 例 (2.7%)
   E23K変異ウイルスが 5 例 (1.3%)検出された。
   ゾフルーザの投与を受けたindex patientからの変異ウイルスの伝播は、プラセボ群では認められ
   なかったが、ゾフルーザ群の⼀部ではその伝播を否定できなかった。

4) 考察
   ゾフルーザの迅速な予防目的の単回投与は、インフルエンザの家庭内での感染において有意な
   曝露後の効果を⽰しました。
   特に12歳以下の高リスクやワクチンの接種を行っていないグループには、効果が期待されます。
   ゾフルーザの予防効果は86%と推定されます。
   以前の文献からタミフルの予防効果は68~89%で、リレンザは82~84%と報告されています。
   ゾフルーザの予防投与は家庭内ばかりでなく、他の環境でも効果が期待されます。
   ゾフルーザの予防投与の失敗例では、緊急避難的にタミフルの投与もあり得ると考えています。






私見)
 インフルエンザは小児と高齢者がハイリスクとなります。
 今後新型コロナとのかち合わせも心配されるシーズンでは、ゾフルーザの予防投与はかなりの期待を
 持たせます。










posted by 斎賀一 at 19:02| Comment(0) | インフルエンザ