ペニシリンアレルギーのある患者におけるセファロスポリン系処方の指針
Navigating cephalosporin prescribing in patients allergic to penicillin
医療ネットでペニシリンアレルギーがあっても、セファロスポリンは安全かもしれないとの
記事が載っていましたので、ブログします。
以前の私のブログでも同様の内容を報告しておりましたが、再確認です。
1)ペニシリンアレルギーの報告は6〜25%と、ばらつきが大きいです。
要因としては、殆どの報告が自己申告の形で、正確な評価はされていません。
ペニシリンアレルギーの報告は、多くが子供の頃です。
そもそもペニシリンアレルギーは、10年以上経過すると80%まで軽減、消失します。
2)セファロスポリン系のアレルギーは、約2%と低率です。
アレルギーに関与するのはベータラクタム環ではなく、側鎖のR1とR2です。
第一世代のセファロスポリンはR1がペニシリンと似ていますが、その後のセファロス
ポリン系のR1はペニシリンと異なっています。
そのためアレルギーの交差反応は殆どありません。
ペニシリンアレルギー患者にセファロスポリン系を処方して、アレルギー反応が起きた
との報告は事例紹介です。
3)ペニシリンアレルギーに対する警告が解除されてからは、セファロスポリン系処方が
17.9%から27%に増加し、ペニシリンアレルギー患者に対してセファロスポリン系の
処方は、47%にまで増加しています。
4)ペニシリンアレルギー患者において、セフェム系抗生物質の使用は多くの場合安全で
あり、適切なリスク評価とアレルギー確認を行うことで、不要な抗生物質回避を防ぐ
ことができます。
医師は慎重なアプローチをとるべきですが、誤ったアレルギー情報に基づく治療制限を
減らすことが重要です。
5)補足説明;
ペニシリンには側鎖Rがありますが、セファロスポリンにはR1とR2があります。
ペニシリンであるサワシリンとセファロスポリンはR1が異なっています。
以上 香長中央病院より
https://ameblo.jp/kachyomasa/entry-12699622037.html
R1は抗菌活性の決定要因でペニシリン結合タンパク質(PBP)との親和性に影響を与え、
細菌に対する抗菌力を左右します。(セファロスポリン系の場合でも)
R2は薬物動態(半減期、排泄経路)の決定要因で、体内動態(T1/2、代謝、排泄)に影響を
与えます。更に組織移行性の調節や、血中濃度の持続性、髄液移行性に関与します。
つまり、ペニシリンアレルギーとセファロスポリンの交差反応性は、R₁側鎖(7位側鎖)の
類似性によって決まります。
第一世代セファロスポリン (交差反応リスク:高い 5〜10%)
第二世代セファロスポリン (交差反応リスク:2〜5%)
第三世代・第四世代セファロスポリン (交差反応リスク:1%未満)
本院で処方するロセフィン、バナン、メイアクトはR2がなく、交差反応リスクは1%とされて
います。(プロドラッグとしての側鎖はあります。)
私見)
サワシリンを処方する場合はアレルギー反応検査を行いますが、セファロスポリンに
対しては行っていません。
幸いな事か分かりませんが、セファロスポリン系の抗生剤は現在でも出荷制限が掛かって
います。
Navigating cephalosporin.pdf
香長中央病院医局勉強会.pdf
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