2019年06月11日

U型糖尿病の15年間の追跡研究;VADT-F研究 強化療法と標準療法の比較

U型糖尿病の15年間の追跡研究;VADT-F研究
強化療法と標準療法の比較
 
Intensive Glucose Control in Patients with
Type 2 Diabetes-15-Year Follow-up
n engl j med 380;23 nejm.org June 6, 2019



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 U型糖尿病における強化療法と標準療法の比較を10年間追跡研究した論文が、2015年の雑誌NEJMに投稿されています。更に全体で15 年間の追跡研究をして雑誌NEJMに今回掲載しています。
登録された参加者(完全コホート)を観察による追跡研究と、データを提供することに同意するかどうかを尋ねてた(調査コホート)を行っています。
 (ザックリと言いますと、最初がVADT研究で約5年間治療をして5年間の経過観察、今回がVADT-S研究で、5年間の治療後に10年間の経過観察。経過観察中はどちらの治療群になるかは本人次第)


過去に強化療法と標準療法の比較した代表的な研究は下記の4つです。

  ・UKPDS
  ・ACCORD
  ・ADVANCE
  ・VADT

 最初にUKPDSが英国で報告された時には衝撃が走りました。
強化療法は、細小血管疾患には効果があるが大血管障害の予防効果は限定的で、むしろ死亡率などの予後が悪いとの報告でした。その後の研究も上記と似たような結果でした。医師会などの講演会でも上記のスタディがよく引用されましたが、講演者によってその解釈は異なり、全体としては強化療法が勝るとの意見が多くありました。 (下記のPDFを参照)
 UKPDSはその後UKPDS33、UKPDS80と発表になっています。
その内容は試験が終了して血糖管理に差が無くなっても、強化療法の方が心筋梗塞の発症や全死亡が有意に減少していました。これをlegacy effect(遺産効果)と言いますが、その機序は不明です。
VADTにおいても、試験開始から10年経過した時点でlegacy effectがある事を証明しています。
今回のVADT-Fでは、更に15年後にlegacy effectがあるかを調べています。


今回、NEJMからのVADT-Fを纏めました。
(2015年のVADT論文の日本版を下記にPDFで掲載します。)

1) 完全コホートは 1,655 例、調査コホートは 1,391 例であった。
   強化療法群(892 例)と標準療法群(899 例)に振り分けています。
   約5年間の治療により強化療法群では、ヘモグロビンA1cはほぼ正常に到達していますが、
   (平均で6.9%)標準療法群ではヘモグロビンA1cは8~9%でした。
   調査治療後の追跡調査の期間は、両群の治療内容がほぼ同じとなっており、その結果両群のヘモ
   グロビンA1c差は0.2~0.3%/3年づつ減少して、15年後には両群ともほぼ同じの8%でした。
   尚、糖尿病治療薬以外は積極的に両群共に行っています。(例えば降圧薬、スタチン系薬剤など)

2) 15年間の追跡期間(実治療;約5年+試験後の観察;約10年)では、強化療法群における主要
   心血管イベントと死亡のリスクは、標準療法群と比較して低くなかった。
   (主要転帰の危険率 0.91、死亡の危険率 1.02)
   主要心血管疾患のリスクは、ヘモグロビンA1cの差が持続している間は強化療法の方が低かった
   が、(危険率 0.83) ヘモグロビンA1cが等しくなった後はこの利益は持続しなかった。
   つまりlegacy effectは認められなかった。

3) 以前の10年間のVADT研究では両群でヘモグロビンA1cの差が7.1年間持続していたため、心血管
   疾患のリスクが17%減少しており、強化療法の効果が認められた。
   しかし、それに反して今回のVADT-F研究では、両群でヘモグロビンA1cに差が無くなってからは
   心血管疾患に対する効果も消失している。
   VADT-2はACCORDとADVANCEと同様の結果でした。






私見)
 VADT-F研究にはそれなりに限界が指摘されています。 
 対象に男性が多い。 進展した糖尿病患者が主体であったなどです。
 Legacy 効果はそれ程長期には期待できないものです。低血糖に注意しながら日々のヘモグロビン
 A1cの目標を適正に定め、粘り強く治療していく事が大事です。
   (いつまでもあると思うな、親と遺産)

 糖尿病治療薬のSGLT-2阻害薬が、益々期待される結果です。
  (VADT-S研究にはSGLT-2阻害薬は参加していません。)





1 VADT-F.pdf

2 dm study.pdf

3 ukpds.pdf

2 型糖尿病における強化血糖コントロールに関する 10 年間の追跡調査.pdf










 


posted by 斎賀一 at 21:45| Comment(0) | 糖尿病

2019年06月08日

糖尿病と慢性腎臓病の合併にSGLT-2阻害薬とDPP阻害薬の併用は有効?

糖尿病と慢性腎臓病の合併にSGLT-2阻害薬とDPP阻害薬の併用は有効?

   <短 報> 
Albuminuria-lowering effect of dapagliflozin alone
and in combination with saxagliptin and effect of dapagliflozin
and saxagliptin on glycaemic control in patients with type 2
diabetes and chronic kidney disease (DELIGHT):




 糖尿病と慢性腎臓病(CKD)を合併した患者に、糖尿病治療薬のSGLT-2阻害薬(フォシーガ)と
DPP阻害薬(オングリザ)を併用した研究が発表になっています。


纏めますと

1) 約451名をフォシーガ+オングリザの併用群(155名)、フォシーガ単独群(145名)及び
   プラセーボ群(148名)に振り分けました。
   登録基準は、尿中アルブミン/尿中クレアチニン比(UACR)が30~3500、 
   eGFRが25~75、HbA1cが7~11%です。

2) プラセーボ群と比較した24週間の経過観察です。
   UACRの減少率は併用群で38%、単独群で21%。
   eGFRの低下は併用群及び単独群共に、2.4ml/minuteまで低下
   HbA1cの低下は、併用群で0.58%であった。
    副作用は3群とも同じでした。

3) 上記の効果は、治療終了後の3週間で元のベースラインに戻っている。

4) メーカーの見解としては降圧薬のARBを服用していれば、フォーシガはDPP阻害薬を併用しても
   しなくてもCKDの進展を予防できると、どや顔のコメントです。

Jwatchの論評は
  「この研究は期間が短い。CKDの高度低下例には適応されていない。アメリカのFDAは、
   併用はeGFRが60以上としている。 併用療法はコストの面で問題を含んでいる。」





私見)
 併用には問題点もありそうですが、ともあれeGFRが60以上なら蛋白尿の軽減にも繋がる有効な治療
 選択肢のようです。
 (肝代謝のトラゼンタとの併用ならどうなるかと興味が湧きました。)





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Albuminuria-lowering effect of dapagliflozin alone and in combination with s.pdf

1 SGLT2阻害薬一覧.pdf

2 dpp.pdf

3 CKD.pdf


















posted by 斎賀一 at 16:45| Comment(1) | 糖尿病

2019年06月06日

Q熱

Q熱
 
Q Fever in Southern California, a Case Series
of 20 Patients from a VA Medical Center



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 Q熱という病名はQuery fever「不明熱」に由来します。病原菌はコクシエラ・バーネッティイによる動物由来感染症です。急性と慢性があります。
急性Q熱は50%が不顕性感染、40%がインフルエンザ様の一過性の発熱、残りの数%は肺炎型、肝炎型、不明熱型の重症例です。
慢性Q熱は6カ月以上持続する場合で、主として心内膜炎の病型をとり予後が不良です。
 今回アメリカの南カルフォルニアから20例の報告がありました。
以前のCDCからの報告とは異なり、急性から慢性に移行する率は20%で、診断の遅延が予後の不良に繋がると警告しています。
下記の雑誌小児科のPDFにも掲載していて日本では稀な疾患とされていますが、実態はアメリカと同様に氷山の一角かもしれません。


心に留めつつ纏めてみますと

1) 以前の報告では急性Q熱から慢性Q熱の移行は5%以下とされていましたが、本論文では21.4%と
   高率でしかも診断の遅延が予後の不良に繋がり、17年間の経過で死亡率は10%でした。

2) 病原菌のコクシエラ・バーネッティイが、風とほこりに乗って遠くまで到達する可能性がある。
   従って発生は春から初夏が多い。
   30%は動物との接触を証明されていない。




私見)
 下記の文献より抜粋しましたが、日本では診断が保険適応になっていません。
 専門の施設に依頼する事になりますが、数万円かかるとの事です。
 インフルエンザのシーズンでなくインフルエンザ様症状の時にはQ熱も鑑別疾患として捉えるか、経験的
 に抗生剤を投与するかが問題です。

  ・インフルエンザ様症状
  ・肺炎
  ・肝障害
  ・不明熱
  ・心内膜炎、感染性の動脈瘤

 以上の時には鑑別疾患として、Q熱も考慮する必要がありそうです。




◆参考文献

 1) ペットからの感染症 ; 小児科  Vol.54 No.1 2013
 2) 不明熱の臨床 ; Medical Practice vol.33 110.7 2016
 3) 今日の臨床サポート
 4) CDC






1 熱q.pdf

2 本論文の表.pdf

3 Q熱文献より.pdf

4Q4 fever.pdf














posted by 斎賀一 at 15:27| Comment(0) | 感染症・衛生