2018年08月22日

コレステロールの更なる低下は有効だ?

コレステロールの更なる低下は有効だ?
 
Efficacy and Safety of Further Lowering of
Low-Density Lipoprotein Cholesterol in Patients
Starting With Very Low Levels A Meta-analysis

JAMA Cardiology Published online August 1, 2018



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 雑誌JAMAに、私にとっては衝撃的な論文が出ました。
悪玉と言われているLDL-コレステロール(以下LDL)は、正常範囲(140以下、下記のガイドラインを参照)にすれば欧米並み(二次予防といって、疾患を既に発症した人に対しての今後の更なる予防はLDLを70以下)にしなくても良いのではと思っていましたが、その 70 の人を対象に更にLDLを低下させたら、その効果と安全性はどうなるかとの論文がでました。(メタ解析)
 スタチン系のCTTC研究のサブ解析(LDLが70以下を開始としたグループ)とスタチン系にゼチーアを追加したIMPROVE IT研究等を調べています。


纏めますと

1) スタチン系のCTTC研究ではスタートの平均はLDLが65.7ですが、1,922例の心血管疾患が発生
   しています。LDLが38.7減少する毎にリスクも0.78に減少していました。HOPE研究は除外されて
   います。

2) スタチン系に他の脂質異常症治療薬(ゼチーアなど)を追加した研究でも、スタートが63~70でしたが
   9,570例の心血管疾患が発生しており、LDLが38.7減少する毎にリスクも0.79減少していました。
   この際、LDLは11~45まで減少しています。
   ちなみにゼチーアのIMPROVE-IT研究では18,144例が登録され、LDLは70がスタートです。
   結果はLDLを13まで減少させることが出来、リスクも7.5%減少出来ていました。

3) 厳格治療による重大な副作用も増加していませんでした。

4) 結論としてLDLが63でも更に21まで減少すれば、その効果は出現し副作用は増加しなかった。
   つまり、経験則としてLDLを40減らせば心血管疾患は20%減少する。





私見)
 目がクラクラする論文です。結果は下記のPDFをご参照ください。
 コレステロールをコントロールできたと思っても、心血管疾患を起こす患者さんがいます。
 更なる厳格治療が必要だったのでしょうか。

 (遠い昔に恋人と喧嘩をして、これで本当の恋人になれたと思った瞬間に振られた経験があります。
  更なる壁を超える必要があったのかもしれません。  ・・・ 関係ないか?)





本文論文 脂質異常腫.pdf

脂質異常症ガイドライン.pdf











posted by 斎賀一 at 20:40| Comment(1) | 脂質異常

2018年06月11日

肥満者におけるメタボの危険予測マーカー

肥満者におけるメタボの危険予測マーカー

 
Central adiposity markers, plasma lipid profile and cardiometabolic
 risk prediction in overweight-obese individuals
R. Barazzoni et al. / Clinical Nutrition xxx (2018) 1-9




 BMIが25以上の人は、インスリン抵抗性との関係でメタボリック症候群に繋がります。最近ではメタボリック症候群の予測マーカーとしていろいろ提言がなされていますが、未だに明白ではない様です。

マーカーについて若干復習をしてみます。
a)WC(腹囲)、b)BMI、c)身長関連として、WTH(weight-to-heigh)、BRI、 ABSI(脂質を含めない)、
VAI(脂質を含む)があります。


 計算式は下記の通りです。



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 最近の論文では、WCの疑問視やそれに代わるABSIの有効性が議論されています。
今回、雑誌Clinical Nutritionより論文が出ましたので纏めてみました。


1) イタリアからの報告です。
   1,965名の肥満者を対象に、5年後のメタボリック症候群の変動を調べています。
   メタボリック症候群はインスリン抵抗性をもって診断しています。
   平均年齢は49歳、平均BMIは26.7
   5年間観察できたのは263名で、平均年齢は55歳、BMIは30.7でした。

2) ベースラインではWTHとBRIは同等に、インスリン抵抗性と関連性がありました。
   5年後の予測マーカーとしては全て同様に有効でした。

3) VALに脂質因子(HDLと中性脂肪)を含めないと診断価値は下がりますが、逆にABSIに脂質因子を
   加算しますと診断価値は上がります。つまり脂質因子が決め手となります。

4) 詳細は下記のPDFをご参照ください。

5) 結論的には腹囲やBMIに代わる色々なマーカーが提案されていますが、それ程代替するだけの価値
   はないようで、脂質因子(中性脂肪、HDL)をそれらのマーカーに加算してこそ診断の価値があるとの
   事です。





私見)
 日本での特定健診は上記の理由からも理にかなっています。
 また、統計学は下記の書籍より抜粋しPDF化しました。


 ○ ゼロから学ぶ医学統計 ; 能登洋氏   ナツメ社



 下記はABSIの計算のネット情報です。


http://www.absi-calculator.com/



メタボ文献.pdf

感度と1−特異度.pdf

メタボリックシンドローム.pdf

特定健康診査 市原市.pdf














posted by 斎賀一 at 19:21| Comment(0) | 脂質異常

2018年03月20日

高齢者ではコレステロールが高い方が認知症にならない?

高齢者ではコレステロールが高い方が認知症にならない?

Outcome age-based prediction of successful
cognitive aging by total cholesterol
Published by Elsevier Inc. on behalf
of the Alzheimer’s Association



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 この件については、テレビなどでまことしやかに語られたり、脳は脂肪で出来ているからコレステロールを薬で下げると認知症になってしまう、とか言う話が流布しています。
一般的には高いコレステロールによる動脈硬化で、認知症にも負の影響があると懸念されています。
 今回の論文では高齢者、特に85歳以上を対象(outcome-age)にフラミンガム研究より、統計学的に調べています。


纏めますと

1) outcome-ageとは最終の調査対象年齢、threshold-ageとは認知機能が正常な最後の年齢、
   entry-ageとは中年で、コレステロールを最初に測定した年齢
   entry-ageからoutcome-ageまで、約40年前後となります。
   last cholesterolはthreshold-ageまでで最後に測定したコレステロール値、正常コレステ
   ロールは200mg以下で、高コレステロールは200mg以上を指します。

2) フラミンガム研究から5,079名を対象に、最終的に1,897名に絞りました。
   (早期の認知症発症例は除外していますので、小規模の人数となっています。)
   2つのグループ(outcome-age)に分けて検討しました。
   75~84歳(1,041名)の10年間と85~94歳(391名)の10年間です。

3) entry-ageからthreshold-ageまでのコレステロールの変化を、5つに分けました。
  (entry-ageで高コレステロール値、threshold-ageで高コレステロール値、平均値、直線状に増加、
   2次関数的に増加 : low もあり。)

4) {75~84}ではコレステロールが直線的に増加すると、認知症も36.7%増加する。
   一方、{85~94}では逆にコレステロールが直線的に増加すると、認知症のリスクが23.3%減少
   していた。



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5) つまり経時的なコレステロールの変化と、outcome-age(統計の最終年齢)が変数(独立因子)と
   して重要である。

6) 高齢者では、高コレステロールが認知症の予防にとって有利に働いているのではなく、高齢になって
   も危険因子の高コレステロールに打ち勝つ何かがあるから、認知症にならないと推測しています。
   このような人の解析が今後の課題だと結んでいます。
   (揶揄した意見もありました。若い頃からバンバン、コレステロール値が高いのに、認知症になら
    ない人を研究したほうが良いのではと!)




私見)
 うまくまとめてくれてありがとう! と言いたい論文です。
 表はPDFで掲載します。
 日本の高齢者脂質異常のガイドラインを掲載します。




Outcome age-based prediction of successful cognitive aging by total choleste.pdf

認知症とコレステロール.pdf

高齢者脂質ガイドライン.pdf
















posted by 斎賀一 at 20:41| Comment(0) | 脂質異常