2018年06月11日

肥満者におけるメタボの危険予測マーカー

肥満者におけるメタボの危険予測マーカー

 
Central adiposity markers, plasma lipid profile and cardiometabolic
 risk prediction in overweight-obese individuals
R. Barazzoni et al. / Clinical Nutrition xxx (2018) 1-9




 BMIが25以上の人は、インスリン抵抗性との関係でメタボリック症候群に繋がります。最近ではメタボリック症候群の予測マーカーとしていろいろ提言がなされていますが、未だに明白ではない様です。

マーカーについて若干復習をしてみます。
a)WC(腹囲)、b)BMI、c)身長関連として、WTH(weight-to-heigh)、BRI、 ABSI(脂質を含めない)、
VAI(脂質を含む)があります。


 計算式は下記の通りです。



         0611.PNG


 
 最近の論文では、WCの疑問視やそれに代わるABSIの有効性が議論されています。
今回、雑誌Clinical Nutritionより論文が出ましたので纏めてみました。


1) イタリアからの報告です。
   1,965名の肥満者を対象に、5年後のメタボリック症候群の変動を調べています。
   メタボリック症候群はインスリン抵抗性をもって診断しています。
   平均年齢は49歳、平均BMIは26.7
   5年間観察できたのは263名で、平均年齢は55歳、BMIは30.7でした。

2) ベースラインではWTHとBRIは同等に、インスリン抵抗性と関連性がありました。
   5年後の予測マーカーとしては全て同様に有効でした。

3) VALに脂質因子(HDLと中性脂肪)を含めないと診断価値は下がりますが、逆にABSIに脂質因子を
   加算しますと診断価値は上がります。つまり脂質因子が決め手となります。

4) 詳細は下記のPDFをご参照ください。

5) 結論的には腹囲やBMIに代わる色々なマーカーが提案されていますが、それ程代替するだけの価値
   はないようで、脂質因子(中性脂肪、HDL)をそれらのマーカーに加算してこそ診断の価値があるとの
   事です。





私見)
 日本での特定健診は上記の理由からも理にかなっています。
 また、統計学は下記の書籍より抜粋しPDF化しました。


 ○ ゼロから学ぶ医学統計 ; 能登洋氏   ナツメ社



 下記はABSIの計算のネット情報です。


http://www.absi-calculator.com/



メタボ文献.pdf

感度と1−特異度.pdf

メタボリックシンドローム.pdf

特定健康診査 市原市.pdf














posted by 斎賀一 at 19:21| Comment(0) | 脂質異常

2018年03月20日

高齢者ではコレステロールが高い方が認知症にならない?

高齢者ではコレステロールが高い方が認知症にならない?

Outcome age-based prediction of successful
cognitive aging by total cholesterol
Published by Elsevier Inc. on behalf
of the Alzheimer’s Association



0320.PNG



 この件については、テレビなどでまことしやかに語られたり、脳は脂肪で出来ているからコレステロールを薬で下げると認知症になってしまう、とか言う話が流布しています。
一般的には高いコレステロールによる動脈硬化で、認知症にも負の影響があると懸念されています。
 今回の論文では高齢者、特に85歳以上を対象(outcome-age)にフラミンガム研究より、統計学的に調べています。


纏めますと

1) outcome-ageとは最終の調査対象年齢、threshold-ageとは認知機能が正常な最後の年齢、
   entry-ageとは中年で、コレステロールを最初に測定した年齢
   entry-ageからoutcome-ageまで、約40年前後となります。
   last cholesterolはthreshold-ageまでで最後に測定したコレステロール値、正常コレステ
   ロールは200mg以下で、高コレステロールは200mg以上を指します。

2) フラミンガム研究から5,079名を対象に、最終的に1,897名に絞りました。
   (早期の認知症発症例は除外していますので、小規模の人数となっています。)
   2つのグループ(outcome-age)に分けて検討しました。
   75~84歳(1,041名)の10年間と85~94歳(391名)の10年間です。

3) entry-ageからthreshold-ageまでのコレステロールの変化を、5つに分けました。
  (entry-ageで高コレステロール値、threshold-ageで高コレステロール値、平均値、直線状に増加、
   2次関数的に増加 : low もあり。)

4) {75~84}ではコレステロールが直線的に増加すると、認知症も36.7%増加する。
   一方、{85~94}では逆にコレステロールが直線的に増加すると、認知症のリスクが23.3%減少
   していた。



         0320-2.PNG



     
5) つまり経時的なコレステロールの変化と、outcome-age(統計の最終年齢)が変数(独立因子)と
   して重要である。

6) 高齢者では、高コレステロールが認知症の予防にとって有利に働いているのではなく、高齢になって
   も危険因子の高コレステロールに打ち勝つ何かがあるから、認知症にならないと推測しています。
   このような人の解析が今後の課題だと結んでいます。
   (揶揄した意見もありました。若い頃からバンバン、コレステロール値が高いのに、認知症になら
    ない人を研究したほうが良いのではと!)




私見)
 うまくまとめてくれてありがとう! と言いたい論文です。
 表はPDFで掲載します。
 日本の高齢者脂質異常のガイドラインを掲載します。




Outcome age-based prediction of successful cognitive aging by total choleste.pdf

認知症とコレステロール.pdf

高齢者脂質ガイドライン.pdf
















posted by 斎賀一 at 20:41| Comment(0) | 脂質異常

2018年02月05日

いわゆる善玉コレステロールHDLと感染症の関係

いわゆる善玉コレステロールHDLと感染症の関係
 
U-shaped relationship of HDL and risk of infectious disease:
two prospective population-based cohort studies



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 善玉コレステロールのHDLは動脈硬化の発生を抑制すると言われており、最近ではnon-HDL(総コレステロール−HDL)が危険因子として扱われています。
しかし、以前よりHDLが100以上ではその効果も減少するという事が指摘されてもいます。
今回の論文では、感染症に関しても低HDLばかりでなく高HDLがその頻度を増すとの報告がコペンハーゲンより報告されました。(U-shaped)



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纏めてみますと


1) 二つの研究を基にしての発表です。

   ●The Copenhagen General Population Study
    2003年に始まり現在進行中の研究で、97,166人が登録
    平均6年間(0~11年)8,282人(9%)が一回以上の感染症を発症

   ●The Copenhagen City Heart Study
    HDLのベースラインの確認解析として、1991年から1994年にかけての9,387人が登録


2) アウトカムとしては、感染性胃腸炎と細菌性肺炎としています。

3) HDLが77を基準として、46以下を低値、93以上を高値としています。
   感染症の合併はHDLが低い場合に21%増加、高い場合は8%の増加でした。

4) ベースラインの解析でHDLが高値の場合に、免疫のパラメータとしてのCRは29%低下しており、
   白血球も減少していました。

5) この論文の結果に対して原因は明白でないとしていますが、推測として下記の事が想定されて
   います。
   HDLは免疫機能の正常化に関与している。
   動物実験では、HDLは骨髄での免疫系細胞の増殖を促進している。そのためHDLが低値の場合は
   免疫低下となる。しかしHDLが高値になると不適切な細胞増殖を避けるために調節が始まり、結果
   的に免疫系細胞の増殖を抑制する。
   更にHDLは炎症性毒素であるLBPの輸送と排斥にも関与しており、複雑に免疫機能と関わって
   いる。

6) HDLの値は様々な遺伝子的影響を受けており、高値の場合はHDLの機能低下も考えられる。
   この事がHDL高値の場合の心血管疾患に対する悪影響と関連しているかもしれない。

7) 中性脂肪との関連性は、アルコール摂取も関与しており一概に解析できない。

8) 結果データは下記のPDFをご参照ください。




私見)
 論者も述べていますが、薬剤によるHDL改善は結果的に不透明であり、現時点では避けるべきという事
 です。
 本院ではHDLが低値の方が問題であり、運動などの生活指導を行っています。
 HDLが100以上の高齢者に対しては、白血球やCRPのベースラインを把握しておくことも大事かもしれ
 ません。




U-shaped relationship of HDL and risk.pdf

HDLと感染症.pdf












posted by 斎賀一 at 20:42| Comment(1) | 脂質異常