2019年10月24日

心血管疾患に対する脂質異常症の管理

心血管疾患に対する脂質異常症の管理
 
Lipid Management for the Prevention 
of Atherosclerotic Cardiovascular Disease
  n engl j med 381;16 nejm.org October 17, 2019
 


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 心血管疾患の予防のための脂質管理に関する総説が、雑誌NEJMに載っていましたので纏めてみま
した。


1) 心血管疾患のリスクを軽減するために、悪玉のLDLコレステロールだけを漫然と管理していては
   不十分である。冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)を発症した人の40%はLDLが200mg以下でした。
   逆にLDLが中等度に高い人が必ずしも冠動脈疾患を発症はしません。
   最近ではハイリスクの患者さんは、LDLの更なる低下を目標にする傾向です。

2) 患者のリスク評価に、10年リスクを採用するのが一般的です。
   分類としては
     低リスク : 5%以下、境界リスク : 5~7.5%、中等度リスク : 7.5~20%、
     高リスク : 20%以上
      (下記にAHAのアクセスを掲載します。)
    ・低リスク患者には生活習慣の改善
    ・中等度リスク患者にはスタチン服用でLDL、30%減少を目標
    ・高リスク患者にはスタチンでLDL、50%減少を目標とします。

    リスクを増悪する因子にも考慮すべきである。
    ・妊娠中毒症 ・早期閉経 ・関節リウマチ ・家族歴 ・慢性腎臓病(CKD)
    ・持続する高中性脂肪血症 ・アキレス腱肥厚 ・アポB ・高感度CRPの高値
   CT検査による冠動脈石灰化のスコアー化が、境界〜中等度リスクの治療評価には最適である。
   40歳以下や40~60歳の10年リスクが7.5%以下の場合は生活習慣の改善が有効であり、最初に
   試みる戦略である。

3) 75歳以下で心血管疾患を有する患者は、LDLを50%減少が目標
   ストロングスタチンを処方してもLDLが70mg以下にならない場合は、ゼチーアを追加する。
   75歳以上の場合、スタンダードスタチンを継続処方する。

4) スタチンについて
   一次予防効果は同等に認められている。 (前日のブログと、やや趣が異なりますが)
   副作用としての横紋筋融解症は0.1%以下で、重症の肝障害は0.001%と極めて低い。
   スタチンによる糖尿病の誘発は0.2%/年であり、スタチンの利点の方が上回る。
   筋肉痛に関しては論争があり「nocebo effect」の一面もある。
   5年間スタチンを服用し続けると、レガシー効果としてその後20年間も効果の持続が認められる。
   スタチンが不耐用の場合とは、2回の異なるスタチンを使用した場合です。
   この中には用量を減少した場合も含まれます。

5) ゼチーアについて
   メバロチン単独ではLDLが70mgであったのが、ゼチーアを追加する事により54mgまで低下する。
   ゼチーア単独での心血管疾患の予防効果は、エビデンスとしてはない。 
   通常はスタチンに追加する薬剤である。

6) N-3fatty acids(エパデール等)
   中性脂肪が500mg以上ではエパデール4gr/日が適応
   20~30%の減少が認められる。
   日本からの報告(JELIS研究)では心血管疾患のリスク減を認められているが、最近の研究では
   著明な効果が認められないとする報告もある。
   しかし、反対にリスクの高い患者や糖尿病患者を登録したREDUCE-IT研究ではエパデール4gr/日
   で、心血管疾患を25%減少させている。
   この場合はスタチンでLDLがコントロールされているが、中性脂肪が135~500mgと高値の患者で
   ある。
   サプリメントではその効果が無い。
   また、エパデールには抗血小板作用や抗炎症作用も期待されている。
   (私のブログの “エパデール” で検索してください。)

7) フィブラート型
   (残念ながら本論文からは省略され、supplementに追い出されています。)
   中性脂肪が500以下では、スタチンと生活習慣の改善を指導する。
   持続して中性脂肪が500以上の場合は、スタチンに追加する。
   トライコアがスタチンに追加する場合に副作用が最も低い。
   ACCORD研究ではスタチンにトライコアを追加しても心血管疾患のリスク減に繋がらなかったが、
   サブグループ解析では、スタチンを服用している患者で中性脂肪が高値で、しかも善玉のHDLが
   低値の場合は、トライコア追加による効果が認められています。

8) 結論として、筆者はスタチンを服用してなお中性脂肪が高値の場合は、エパデールを追加するのが
   心血管疾患の予防になるとしています。





私見)
 前日のブログと相まって、ややすっきりした感じです。
 多剤併用が社会的に問題視されています。


   「飲んだら乗るな。使うなら貯めろ。注意するなら最初は褒めろ。増やしたら減らせ!」






 http://www.cvriskcalculator.com/










posted by 斎賀一 at 14:49| Comment(0) | 脂質異常

2019年10月23日

脂質異常症治療薬・スタチンの一次予防効果

脂質異常症治療薬・スタチンの一次予防効果
 
Statins for primary prevention of cardiovascular disease



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 これまでもスタチンに関してはブログで多々紹介しました。
医療全般に関して積極的な意見と、やや控えめに構える考えがありますが、今回のスタディ紹介の論文
はスタチンに対して控え目の立場です。 (スタチンで検索)
 最近、高齢者でもスタチンの継続服用を勧める論文を紹介しましたが、今回はスタチンの一次予防効果
 (既往歴に心血管疾患はないが、脂質異常があるために服用して疾病予防する。)は余りないとする
論文です。


1) 脂質異常症の治療においてスタチンは重要な位置にありますが、医療費問題に関しての側面では
   その効果、特に一次予防においてのメリットを検討する必要がある。
   最近のデータでは、スタチンを一次予防目的で服用している人は男性で57%、女性で73%です。
   1987年からガイドライン変更の2016年に掛けて、スタチン処方の割合は8%から61%に増加して
   います。そして、その殆どが一次予防目的です。
   従って低リスクの患者さんが服用している数は、40から400に増加しています。その結果、低リスク
   でのスタチン効果も10倍以上薄まってしまいます。

2) 多くの研究論文が二次予防効果(心血管疾患の既往のある人が再発を予防するために服用する)と
   一次予防効果を混合している。
   一次予防と二次予防を完全に分離している研究は、3論文程度しか見られなかった。
   その代表がCTT研究である。




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 上の表より、スタチンの一次予防効果は全体の死亡率を0.91に減少し、心血管疾患も0.85になって
います。
しかし注意が必要なのは、心血管疾患の10年リスクのベースラインを見てみますと、10年リスクの5%
以下の低リスク群でも心血管疾患を0.80に減少していますが、interval(0.43~1.47)と幅が広いよう
です。
この事は、リスクが最大で57%減少するが逆に47%増加している事も想像できるわけで、その効果は
不確かとも言えます。
 また女性のリスク減少が多いように見えますが、相対的リスクを見ますと問題点が浮き彫りになります。



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4) 結論として、論者はスタチンを一次予防で処方する場合は下記の点を考慮して、患者とコンセンサス
   をとるべきだとしています。
   ・年齢 ・性差 ・喫煙 ・コレステロール値 ・血圧






私見)
 スタチンには脂質を低下させる効果と多面的作用(pleio- tropic effect)があります。
 一概にスタチンに一次予防は無いとは断言できないと思いますが、単にコレステロール値のみでの適応
 には問題が多いようです。






Statins for primary prevention of cardiovascular disease.pdf










posted by 斎賀一 at 19:37| Comment(1) | 脂質異常

2019年08月22日

スタチン(脂質異常症治療薬)は高齢者でも継続服用を!

スタチン(脂質異常症治療薬)は高齢者でも継続服用を!
 
Cardiovascular effect of discontinuing statins for
primary prevention at the age of 75 years:
a nationwide population-based cohort study in France
 


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 75歳でもスタチンを継続服用していないと、その後に心血管疾患を起こす可能性が増すとの論文が、
フランスより発表になりました。


纏めますと

1) 登録者は2012〜2014年に75歳になった人で、更に下記の条件をクリアーした人です。
   ・心血管疾患の既往がない人 (つまり一次予防効果)
   ・試験(トライアル)の2年前まで、スタチンを正確に80%以上服用していた人

2) トライアルは、その後もスタチンを継続服用した群と、連続して3か月間以上服用を中断した群で
   比較検討しています。

3) 主要転帰は心血管疾患による入院率です。
   全体で120,173名が登録しています。
   両群の比較期間は、平均で2.4年間です。
   中断した群は、17,204名(14.3%)です。
   心血管疾患で入院した人は、5,396名(全体の4.5%)です。

4) 中断した群の危険率は
   ・全ての心血管疾患では、1.33
   ・冠動脈疾患では、1.46
   ・脳卒中では、1.26
   ・その他の心血管疾患では、1.02 でした。

5) 結論として
   75歳になったからと言って急にスタチンを中断すると、そのリスクは33%も増加する。






私見)
 以前の私のブログで紹介しましたスタチンのレガシー効果(遺産効果)に対して、高齢者の場合は
 「そんなのないよ。」と言いたいような結論です。
 「なんなんだよ。年寄はたったの3か月以上何もしなかったら遺産はパーかよ!」
 75歳を迎える私としましては、この論文はまるで僕の事みたい。






effect of discontinuing statins.pdf










posted by 斎賀一 at 14:53| Comment(0) | 脂質異常