2020年01月14日

75歳以上の高齢者における脂質異常症の治療

75歳以上の高齢者における脂質異常症の治療

 
The Association Between Low‐Density Lipoprotein Cholesterol
and Incident Atherosclerotic Cardiovascular Disease in Older Adults
    <短 報>



 以前の私のブログでも高齢者の脂質異常症に関する治療効果について掲載していましたが、(下記に
掲載します。)今回は、75歳以上に於いては脂質異常症と心血管疾患との関連はないとする論文が掲載
されていました。


1) 心血管疾患の既往のない75歳以上の高齢者が対象です。
   悪玉コレステロールLDLが130以上か、脂質異常症の治療薬を服用していない人が対象です。
   2,667名で59%が女性、平均年齢は78歳です。

2) 他の危険因子として喫煙、糖尿病、高血圧を含めて調べています。

3) 心血管疾患がフリーで75歳以上の脂質異常症の人は、心血管疾患の危険率が1.022でした。
   結局は一次予防効果は無いとしています。
   この傾向は他の危険因子(喫煙、糖尿病、高血圧)があっても同様でした。
   (一つの危険因子がある場合は12.8%対15.0%、二つの危険因子がある場合は
    21.9%対24.0%でした。)
   つまり75歳以上の場合は血圧、糖尿病、喫煙の治療が大事なようです。





私見)
 最新の医学情報を職員及び患者さんに伝えるのが主たる目的のブログですが、論文により見解が
 異なり右往左往する事が多々あります。
 本論文の様に対象が、75歳と高齢者の為でしょうか?
 
 初心に戻ってブログ作成を本年は心掛けます。
 また、時間をかけて書籍コーナーも新生してみます。








高齢者 LDL.pdf

1 スタチン(脂質異常症治療薬)は高齢者でも継続服用を!_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_.pdf

2 スタチン(脂質異常症治療薬)は高齢者に効果がない?_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_.pdf

3 高齢者にメバロチン(脂質異常症治療薬)は有効か?_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_.pdf











posted by 斎賀一 at 20:00| Comment(0) | 脂質異常

2019年12月09日

non-HDLコレステロールと心血管疾患のリスク管理

non-HDLコレステロールと心血管疾患のリスク管理
 
Application of non-HDL cholesterol for population-based
cardiovascular risk stratification
  thelancet.com Published online December 3, 2019
 


1209.PNG
 

  

 総コレステロールから善玉のHDLコレステロールを引いた値がnon-HDLコレステロールです。
最近では健診でもこのnon-HDLコレステロールを採用している機関が多くなっています。悪玉と言われているLDLコレステロールの測定との整合性に混乱してしまいます。



         1209-2.PNG 
             ネットより引用



 今回雑誌Lancetより、non-HDLコレステロールがその後の心血管疾患の発生に対して有効な指標となるという内容の論文が掲載されました。現に10年リスクの算定には、このnon-HDLコレステロールを
採用しています。
 non-HDLコレステロールは動脈硬化促進リポ蛋白(proatherogenic lipoproteins)の全てを含んでおり、特に重要なApo-Bも勘案しています。
コレステロールの治療に関しては、一次予防と二次予防とに関して意見の乖離があります。
またコレステロール全般の値と疾患との関係や全年齢層における長期予後に関してのデータは、あまり
十分にはないとの事です。
 今回の論文では若い人を含めた累積危険率を算定しており、このnon-HDLコレステロールの高い人は
生涯を通じてその危険に晒されているとの指摘です。


本論文を纏めますと

1) 1 mmol / Lには38×67 mg / dLのLDLコレステロールと非HDLコレステロールが含まれると仮定
   して、閾値濃度をmmol / Lで報告しています。
   日本で馴染みのデータ値に換算しますと
    ・<100 mg / dL [< 2・6 mmol / L];
    ・100から<145 mg / dL [2・6から<3・7 mmol / L];
    ・145から<185 mg / dL [3・7から<4・8 mmol / L];
    ・185から<220 mg / dL [4・8から<5・7 mmol / L]、
    ・および 220 mg / dL [.5・7 mmol / L]
  本論文で採用しているカットオフ値(治療の基準)は
  130 mg/dL(3・4 mmol/L) から 145 mg/dL(3・7 mmol/L)としています。

2) ヨーロッパ、オーストラリア、アメリカで、既往歴に心血管疾患が無い人を登録しています。
   主要転帰は心血管疾患として冠動脈疾患、脳梗塞です。
   経過は75歳までとしています。
   non-HDLコレステロールを50%減少したと仮定しての心血管疾患の発生抑制も算定しています。

3) 524,444名が対象で398,846名が登録して調査しています。
   登録時の48.7%が女性で平均年齢は51.0歳です。調査期間は最大で43.6年です。
    (平均13.4年)
   調査期間中に54,542例の心血管疾患が発生しています。

4) 結果は男女共に30歳以降はnon-HDLコレステロールが増加するに従って心血管疾患が増えて
   います。
   女性では non-HDL cholesterol 140以下(2.6 to <3.7 mmol/L)で
   危険率は 1.1, 220以上(≥5・7 mmol/L)で危険率1.9
   男性では non-HDL cholesterol 140以下で危険率は 1,1
   220以上で危険率は2.3でした。
   推定計算ではnon-HDLコレステロールを50%削減すると、生涯に亘って75歳までに心血管疾患を
   抑制出来ました。

5) フラミングガム研究の算定方法は主に60歳以上を対象にしており、危険率の算定も2,7,10年と
   短期間です。
   本論文では45歳以下の若い人も対象にしていますが、長い期間ではコレステロールと心血管疾患の
   関係が若い人でも認められました。
   60歳以上ではnon-HDLコレステロールのリスクが低いようですが、それは若い人に比べて絶対的
   危険率が高いからで、75歳までの累積危険率を調べると、non-HDLコレステロールとの関連性が
   明らかとなります。
   つまり10年リスクでなく30年リスクを計算すると、そのリスク率は10倍までになります。
   non-HDLコレステロールを50%削減の推定表も併せて、結果は下記のPDFのグラフをご参照
   ください。

6) 結論として、若いころからnon-HDLコレステロールに介入治療を勧めています。







私見)
 蟻さんの様に若い頃からコツコツと貯金をして老後に備えるのが理想ですが、気が付いたらこの歳に
 なっても借金があるのです。キリギリスの様に遊んではいなかったのですが、それが現実です。
 若い人に借金はするなとはとても言えません。
 取りあえず、non-HDLコレステロールが140以上の人には生活習慣の指導(バランスシート)を勧め、
 180~200の人には治療対象として、200以上の人には「孫さん」の様にならないよう積極的に指導
 します。
 尚、前回のブログでも紹介しましたが治療介入を考えるときはnon-HDLコレステロールを、治療目標や
 達成を調べるときはLDLを測定として、使い分けをしてみます。






HDL 本論文.pdf

ブログより.pdf














posted by 斎賀一 at 20:26| Comment(1) | 脂質異常

2019年11月29日

脳梗塞後の至適コレステロール値は?

脳梗塞後の至適コレステロール値は?
 
A Comparison of Two LDL Cholesterol
Targets after Ischemic Stroke
 This article was published on November 18, 2019, at NEJM.org 




1129.PNG



 脳梗塞/一過性脳虚血発作(TIA)を発症した後にコレステロールをどの程度低下させるべきか、
はっきりしたデータがありませんでした。しかも、あまりコレステロールを下げ過ぎると脳出血の危険が
生ずるとの警告もあり、又スタチン系薬剤(コレステロール降下薬)が新規の糖尿病を誘発するとの心配と
相まって、意外に中途半端な対応をしてきました。 (私事ですが)


 今回雑誌NEJMより積極的治療(lower-target;より低めに)とやや穏やかな治療(higher-target;
マイルドに)の比較試験が掲載されていましたので、纏めてみます。

1) 地域学的な差をなくすため、フランスと韓国での調査研究です。
   研究期間は平均で3.5年間ですが、韓国での開始が遅れたためと研究のファンド(製薬メーカの
   サポート)が中断したため、両国の調査期間に若干の相違が生じています。

2) 対象者は脳梗塞発症の3か月以内、又は一過性脳虚血発作(TIA)の15日以内の患者として
   います。
   又全ての患者は脳血管と心血管の動脈硬化症を伴っており、且つスタチン、ゼチーア又は両方を
   服用している事としています。
   登録患者を積極的治療群(lower-target);目標LDLを70mg/dLと
   マイルド治療群(higher-target);目標LDLを90~110mg/dLの2群に振り分けています。
   2,860名が登録され、その中1,430名づつが両群に振り分けられました。
   主要転帰はMACE(major adverse cardiovascular event)としての脳梗塞、心筋梗塞、
   緊急の冠動脈及び頸動脈の血管再建術、心血管疾患の死亡としています。

3) 登録者のベースラインの平均LDLは、135mg/dlです。
   研究により達成した積極群のLDL平均は65mg/dl、マイルド群では平均96mg/dlでした。
   期間中に使用した薬剤は、積極群ではスタチンのみが65,9%、ゼチーア併用が33,8%でした。
   一方マイルド群ではスタチンのみが94.0%、ゼチーア併用が5.8%でした。
   つまり積極的にLDLを低下させるためには、ゼチーアの併用も必要なようです。

4) 主要転帰(MACEの発生)は積極群で121例(8.5%)、マイルド群では156例(10.9%)でした。
   懸念されている副作用ですが、脳内出血は積極群で1.3%、マイルド群は0.9%で危険率は1.38
   です。
   しかし95%CI(95%信頼区間)は0.66~2.82と幅がある事を考えると、統計学的にその差は
   少ないとしています。
   更に新規の糖尿病発症は積極群で103例(7.2%)、マイルド群で82例(5.7%)、
   危険率は1.27(95%CI,0.95~1.70)です。やはりその差は殆どないとしています。
   (統計学オンチとしましては、やや強引とも感じるのですが)

5) 結論としては、脳梗塞とTIA後の至適LDL値は70以下としています。
   もしもそのためにゼチーアの処方が必要ならば、それはマイルドな治療(90~110mg)よりも有用
   でした。
   詳細な結果はグラフをご参照ください。






私見)
 今後本院でも、次の点を考慮して参ります。
 ・スタチン服用開始の場合はLDLより総コレステロールの測定を採用していますが、治療後の適正量を
  判定する場合は、論文の関係上LDLを多用しましょう。 (計算式は原則行わない)
 ・厳格なリスク管理をしましょう。
 ・ゼチーアのメーカの人に、これからは少し優しくしましょう。






本論文より.pdf








 


posted by 斎賀一 at 22:29| Comment(0) | 脂質異常