2020年11月16日

脳梗塞患者に小さな未破裂脳動脈瘤ある場合はアスピリンを服用しても安全

脳梗塞患者に小さな未破裂脳動脈瘤ある場合はアスピリンを服用しても安全
 
Safety of aspirin use in patients with
stroke and small unruptured aneurysms



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 脳ドッグなどでMRIを実施して、偶然に脳動脈瘤が発見される場合が多くなりました。
疾患の早期発見、早期治療の観点からは有益性があるのですが、悪く言えば患者さんにとって心配が
増えてしまいます。
小さな未破裂脳動脈瘤に対する治療方針は、色々な文献やネットでも参考になりますので調べて下さい。
Uptodateより表を拝借し、ネットでも調べた資料を下記に掲載します。
 実地医家にとってラクナ梗塞や脳梗塞、一過性脳虚血発作の患者さんが頭部MRIを行って、たまたま
未破裂脳動脈瘤が見つかることがあります。抗血小板療法を続けるか中止するか迷う点です。

 今回雑誌neurologyより示唆に富む論文が掲載されていますので纏めてみました。


1) 今までの報告では、短期間のアスピリン服用で未破裂脳動脈瘤からくも膜下出血の危険があると
   する一方で、アスピリンの抗炎症作用によりその危険は低下するとの逆の論文もあります。

2) 今回は中国からの報告です。
   7mm以下の未破裂脳動脈瘤で、同時に一過性脳虚血発作、脳梗塞、無症状のラクナ梗塞を合併
   している患者が対象です。
   また未破裂脳動脈瘤の形態がdaughter sacやfusiformの場合は除外しています。





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          ブレブとdaughter sacは同じです。



   1,730人が登録して、アスピリン服用群は37%、非服用群が63%です。

3) 結論
   31か月の経過観察です。未破裂脳動脈瘤の破裂は全体で12例(0.7%)でした。
   内訳はアスピリン服用群で1例(0.16%)、非服用群で11例(1.01%)です。

4) アスピリン服用は一過性脳虚血発作と脳梗塞の虚血増悪のイベント減少には繋がりましたが、
   無症状のラクナ梗塞のさらなるイベント防止には効果は認められませんでした。






私見)
 無症状のラクナ梗塞の患者さんには、あえてアスピリン服用は必要でないかもしれませんが、一過性
 脳虚血発作や脳梗塞の二次予防に、小さな未破裂脳動脈瘤があってもアスピリンは服用すべきかも
 しれません。
 患者さんとのインフォームドコンセントが重要になります。
                                         Uptodateより




              21116-3.PNG  ←クリックで拡大







本論文 脳動脈瘤 アスピリン.pdf

1 noushinkeigeka_.pdf

2 Unruptured Intracranial Aneurysms.pdf













   
posted by 斎賀一 at 18:30| Comment(0) | 脳・神経・精神・睡眠障害

2020年10月04日

うつ病治療薬と糖尿病の関連性

うつ病治療薬と糖尿病の関連性
 
Association of Selective Serotonin Reuptake Inhibitors
With the Risk of Type 2 Diabetes in Children and Adolescents 



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 若い方がうつ病治療薬のSSRIを処方され、体重が増えてきたためにネットで調べたらSSRIと糖尿病
の関連性が書いてあったと言って心配になり、本院に相談に来ることが時々あります。
特に若い女性の場合は尚更です。
関連性は乏しいと説明していましたが、今回若い人に限定しての論文が出ていましたので、ブログして
みます。


1) 一般論としてSSRIの服用で若干の糖尿病の増加を認めていますが、1,515人の治療に対して
   糖尿病の発生者数は1人と言われています。

2) 今回の論文の対象は10〜19歳のSSRI処方の適応者です。
   調査は公的医療保険と個人医療保険より調べています。

   【日本は世界に冠たる皆保険ですが、アメリカでは受給資格がある人のみ公的医療保険制度に加入
   できます。主な公的医療保険制度として、メディケア(Medicare)とメディケイド(Medicaid)
   があります。
   メディケアは、65歳以上の高齢者、身体障碍を持つ人、および透析や移植を必要とする重度の
   腎臓障害を持つ人を対象とした連邦政府が運営する制度で、メディケイドは、低所得者を対象に
   州政府と連邦政府によって運営されています。 そのためこれらの制度の対象外となる人は民間の
   保険への加入を検討する必要があります。】

3) 結論的には
   2〜3年の経過観察期間です。公的医療保険からのデータでは危険率は1.13です。
   2年間で1,000人中6.6人の糖尿病発生でした。個人保険加入者では危険率は1.01と低率です。
   (きわどい言い方をすれば、公的医療保険加入者は医療環境も個人保険加入者より劣ります。)
   総合的に判断してSSRIの有益性が勝るとしています。
   しかし詳しく見ますと、公的医療保険加入者は導入初年度では13%の増加ですが、慢性処方により
   33%の増加率となります。
   また心理療法との比較では、公的医療保険加入者は44%の増加で、個人医療保険加入者では
   21%の増加でした。
   代謝に関して影響のないとされているbupropionと比較しますと、増加率は同じでした。





私見)
 Uptodateによりますと、基本的にはSSRIと糖尿病との因果関係は明白でないとしています。
 若干の発生増加はうつ状態の改善、運動の低下などが関係しているものと推定しています。
 論評では、公的医療保険加入者では肥満や糖尿病の進展を予防する何かが欠けている可能性を指摘
 しています。ともあれ有益性が勝るといえども、しっかりしたエヴィデンズが求められるとしています。






本論文.pdf

1 SSRIの種類.pdf

2 SSRIの体重増加・Uptodate より.pdf










posted by 斎賀一 at 15:24| Comment(0) | 脳・神経・精神・睡眠障害

2020年05月22日

一過性脳虚血発作(TIA)について・NEJMより

一過性脳虚血発作(TIA)について・NEJMより
 
Transient Ischemic Attack
      n engl j med 382;20 nejm.org May 14, 2020



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 雑誌NEJMに一過性脳虚血発作(TIA)に関する総説(vignette)が掲載されていましたので纏めて
みました。


1) 脳卒中の前触れとして、TIAが20~25%認められる。
   TIAの発作時間は殆どが数秒から数分だが、1時間持続する事もある。
   以前にはTIAは24時間以内に消褪すると定義されていましたが殆どが10分以内の持続で、しかも
   現在では6時間以内の入院治療を要するとされていますので、TIAの持続時間に関しては、誤解を
   防ぐ意味でガイドラインの見直しが検討されています。

2) 現在はTIAと軽症脳梗塞は、ほぼ同じ疾患と捉えられています。
   CT検査では診断が出来ず、MRI特に拡張強調画像が有効です。
   (下記のPDF参照)

3) TIAを治療しないと3か月後には脳卒中に20%移行すると言われていますが、殆どは10日以内
   特に2日以内に脳卒中を発症するリスクがあります。
   早期診断、早期治療により3カ月時点での脳卒中発症を、80%低下出来ます。

4) TIAの症状
   程度の差はありますが、運動神経障害、知覚神経障害、視覚障害、構音障害です。
   軽症には注意が必要です。
   めまい(dizziness,vertigo)、複視、ふらつき(unsteady gait)、健忘なども認められることも
   ありますが稀です。(一般外来ではTIA以外で多い症状のため、鑑別に注意が必要です。)
   また他の疾患の鑑別疾患も多くあり、更に注意が必要です。

5) CT検査では診断が出来ず、MRI、特に拡張強調画像が有効です。
   (下記のPDF参照)
   拡張強調画像では最大50%まで診断できます。所見としてはbright spotサインです。
   頸動脈エコー検査も有力です。
   ホルター心電図もスクリーニング検査として必要となります。

6) 脳卒中への再発予防のためには、ABCD2スコアーが有効です。
   (一応はスコアーの4が境目の様です。)
   しかしABCD2スコアーが4以下の中には心房細動、頸動脈硬化(IMTの肥厚)が20%程度あり
   この場合は脳卒中のリスクは高くなります。
   最近ではABCD2スコアーのみでは治療戦略に落とし穴が生じますが、専門医のいない救急では
   ABCD2スコアーは未だに有効です。




         20522-2.PNG



    
7) 治療
   心房細動があればDOACが適応となります。
   非心源性の場合は抗血小板治療が基本です。
   治療方法は色々な研究がなされていますが、本論文では下記のレジメを勧めています。
   ・TIAが疑われたら、先ずアスピリン300mg服用し入院精査
   ・拡張強調画像で所見が無ければ、TIAとしてプラビックス300mg追加服用
   ・ホルターなどで心房細動の有無をチェック
   ・心疾患が無ければ退院し、その後はアスピリン75mg+プラビックス75mgを21日間服用
   ・安定していたらアスピリンもしくはプラビックスを90日間服用
    90日を過ぎてからのエビデンスはない。

8) その他の治療
   ・血圧は140以下、副作用もなければ130以下を目標
   ・脂質異常は強化療法。LDLは70mg以下を目標
   ・糖尿病のチェック
   ・睡眠時無呼吸発作の有無
   ・禁煙、運動(週に4回)

9) 今後の課題
   TIA専門病院の必要性





私見)
 微細な所見に細心の注意が必要です。
 また、初期でのアスピリン服用も有効の様です。
 迅速な画像診断もしくは2次施設への転送が大事です。
 下記に以前のブログも掲載します。







1 TIA 本論文より.pdf

2 臨床医のサポートより.pdf

一過性脳虚血発作(TIA)の5年間の予後_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_.pdf

一過性脳虚血発作(TIA)又は軽症脳卒中から1年後の 脳卒中リスク.pdf

軽症脳梗塞と一過性脳虚血発作に対する併用抗血小板療法の有用性と安全性.pdf

エフィエント.pdf
















  


posted by 斎賀一 at 20:12| Comment(0) | 脳・神経・精神・睡眠障害