2020年05月22日

一過性脳虚血発作(TIA)について・NEJMより

一過性脳虚血発作(TIA)について・NEJMより
 
Transient Ischemic Attack
      n engl j med 382;20 nejm.org May 14, 2020



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 雑誌NEJMに一過性脳虚血発作(TIA)に関する総説(vignette)が掲載されていましたので纏めて
みました。


1) 脳卒中の前触れとして、TIAが20~25%認められる。
   TIAの発作時間は殆どが数秒から数分だが、1時間持続する事もある。
   以前にはTIAは24時間以内に消褪すると定義されていましたが殆どが10分以内の持続で、しかも
   現在では6時間以内の入院治療を要するとされていますので、TIAの持続時間に関しては、誤解を
   防ぐ意味でガイドラインの見直しが検討されています。

2) 現在はTIAと軽症脳梗塞は、ほぼ同じ疾患と捉えられています。
   CT検査では診断が出来ず、MRI特に拡張強調画像が有効です。
   (下記のPDF参照)

3) TIAを治療しないと3か月後には脳卒中に20%移行すると言われていますが、殆どは10日以内
   特に2日以内に脳卒中を発症するリスクがあります。
   早期診断、早期治療により3カ月時点での脳卒中発症を、80%低下出来ます。

4) TIAの症状
   程度の差はありますが、運動神経障害、知覚神経障害、視覚障害、構音障害です。
   軽症には注意が必要です。
   めまい(dizziness,vertigo)、複視、ふらつき(unsteady gait)、健忘なども認められることも
   ありますが稀です。(一般外来ではTIA以外で多い症状のため、鑑別に注意が必要です。)
   また他の疾患の鑑別疾患も多くあり、更に注意が必要です。

5) CT検査では診断が出来ず、MRI、特に拡張強調画像が有効です。
   (下記のPDF参照)
   拡張強調画像では最大50%まで診断できます。所見としてはbright spotサインです。
   頸動脈エコー検査も有力です。
   ホルター心電図もスクリーニング検査として必要となります。

6) 脳卒中への再発予防のためには、ABCD2スコアーが有効です。
   (一応はスコアーの4が境目の様です。)
   しかしABCD2スコアーが4以下の中には心房細動、頸動脈硬化(IMTの肥厚)が20%程度あり
   この場合は脳卒中のリスクは高くなります。
   最近ではABCD2スコアーのみでは治療戦略に落とし穴が生じますが、専門医のいない救急では
   ABCD2スコアーは未だに有効です。




         20522-2.PNG



    
7) 治療
   心房細動があればDOACが適応となります。
   非心源性の場合は抗血小板治療が基本です。
   治療方法は色々な研究がなされていますが、本論文では下記のレジメを勧めています。
   ・TIAが疑われたら、先ずアスピリン300mg服用し入院精査
   ・拡張強調画像で所見が無ければ、TIAとしてプラビックス300mg追加服用
   ・ホルターなどで心房細動の有無をチェック
   ・心疾患が無ければ退院し、その後はアスピリン75mg+プラビックス75mgを21日間服用
   ・安定していたらアスピリンもしくはプラビックスを90日間服用
    90日を過ぎてからのエビデンスはない。

8) その他の治療
   ・血圧は140以下、副作用もなければ130以下を目標
   ・脂質異常は強化療法。LDLは70mg以下を目標
   ・糖尿病のチェック
   ・睡眠時無呼吸発作の有無
   ・禁煙、運動(週に4回)

9) 今後の課題
   TIA専門病院の必要性





私見)
 微細な所見に細心の注意が必要です。
 また、初期でのアスピリン服用も有効の様です。
 迅速な画像診断もしくは2次施設への転送が大事です。
 下記に以前のブログも掲載します。







1 TIA 本論文より.pdf

2 臨床医のサポートより.pdf

一過性脳虚血発作(TIA)の5年間の予後_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_.pdf

一過性脳虚血発作(TIA)又は軽症脳卒中から1年後の 脳卒中リスク.pdf

軽症脳梗塞と一過性脳虚血発作に対する併用抗血小板療法の有用性と安全性.pdf

エフィエント.pdf
















  


posted by 斎賀一 at 20:12| Comment(0) | 脳・神経・精神・睡眠障害

2020年03月27日

良性頭位変換性眩暈症(BPPV)の問診表

良性頭位変換性眩暈症(BPPV)の問診表
      <業務連絡用> 
Questionnaire-based diagnosis of
benign paroxysmal positional vertigo



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 韓国からの報告です。
本院でも、めまい患者さんの多くはBPPVです。また再発もよく経験します。


ザックリと纏めますと

1) 大学のめまい外来を受診した578名の患者を解析しています。
   結局、32%が最終的にBPPVの確定診断を受けています。

2) スクリーニングとして、先ず問診表を作成しています。
   下記の質問1〜3でBPPVをスクリーニングし、更に質問の4〜6で部位を推定しています。




          20327-2.PNG



  
3) 質問1~3全てにYESと答えた人は80%がBPPVです。
   一方で質問1〜3の中のいずれかがNOと答えたらば、94%がBPPVは否定的でした。
   結論として感度87%、特異度90%と診断の精度は高いようです。






私見)
 初めてのめまい発作では慎重な神経学的診断が必要ですが、何回も発作を繰り返している場合は、
 電話での問診でスクリーニングする事も有効かと思われました。
 今後は、上記の問診を看護師の皆さんで行うストラテジーも予定してください。
 次回のブログでBPPVを勉強して纏めてみます。








1 質問.pdf1.pdf

2 本論文より.pdf

3 本論文 Questionnaire-based diagnosis of benign paroxysmal positional vertigo _ Neur.pdf










posted by 斎賀一 at 18:13| Comment(0) | 脳・神経・精神・睡眠障害

2019年12月27日

脳卒中の再発予防のための血圧管理

脳卒中の再発予防のための血圧管理
 
Effect of Standard vs Intensive Blood Pressure
Control on the Risk of Recurrent Stroke
      短 報



 脳卒中発症後の再発を防ぐには、血圧管理を積極的(目標血圧を120以下)にしても、標準的(目標
血圧を140以下)とあまり差は無かったとの報告が日本からありました。


1) 最近脳卒中に罹患した人約1,300人を登録しています。
   その内訳は85%が脳梗塞、15%が脳出血です。
   積極降圧治療は、目標血圧を120/80以下、標準降圧治療は目標血圧を140/90以下として
   います。

2) 観察期間は平均4年です。
   観察期間の結果、平均血圧は積極群で126.7、標準群では133.2mmHgでした。
   脳卒中の再発は、積極群で6.2%、標準群で8.2%と、統計学上あまり差はありませんでした。
   しかし脳出血では積極群で0.2%、標準群で1.7%に対して、
   脳梗塞では積極群で6.0%、標準群で6.5%でした。
   つまり脳卒中の予防に関しては、積極的治療によって脳出血は軽減できるが、脳梗塞は変わりは
   ありませんでした。

3) 降圧治療の副作用がなければ、目標血圧を120以下にする事が脳卒中の予防に繋がるとして
   います。







Effect of Standard vs Intensive Blood Pressure Control on the R.pdf











posted by 斎賀一 at 20:37| Comment(1) | 脳・神経・精神・睡眠障害