2018年08月25日

睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)に対する新たな警告

睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)に対する新たな警告
 
The risk of Alzheimer's disease associated
with benzodiazepines And related drugs



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 ベンゾジアゼピン系の睡眠導入薬と認知症に関しては、広く関心が持たれています。また厚労省より、
本薬剤は30日以上の連続した長期処方が出来ないとの通達も出ました。
 今回、ベンゾジアゼピン系と認知症(アルツハイマー病)との関係について、新たな研究論文が出て
いましたので掲載します。


纏めてみますと

1) 不眠症の治療に、このベンゾジアゼピン系の睡眠導入薬が多く処方されています。
   しかし、睡眠時間の全体をカバーする事は出来ないのに、代わりに副作用の問題が残ってしまう。

2) 本薬剤の分子構造においてはそれぞれ異なっているが、その作用はほぼ同じで、眠気、異常行動、
   転倒、骨折といった副作用も同様である。

3) しかもその処方は高齢者の9~32%に及んでいる。

4) 2005~2011年に掛けて、フィンランドの34~105歳のアルツハイマー病患者70,719人を対象に
   しています。コントロールとして282,862名が登録されました。

5) ベンゾジアゼピン系の睡眠導入薬の暴露は1日〜1カ月、1カ月〜1年、1~5年、5年以上に分けて
   います。

6) アルツハイマー病と診断される以前の1995年からの5年間に限り、本薬剤の使用を調べています。

7) 結果は、本薬剤を服用していない人に比べて、服用するとアルツハイマー病の危険率は1.19でした。
   本薬剤を服用すると、5.7%がアルツハイマー病を併発する可能性が出るとの事です。

8) 上記の様にその危険率や発生頻度は意外に低いのですが、1か月以上の服用や高齢者に多く処方
   されている現状が問題だとしています。

9) アルツハイマー病は認知症のリスクを意味しますが、現在のところアミロイドーシスやタウ蛋白との
   関連を証明した論文は出ていません。
   本薬剤が、直接認知機能に関与するかは明白でありません。
   それでも高齢者に本薬剤を長期に処方する事は、避けるべきとしています。





私見)
 本院でもベンゾジアゼピン系の睡眠導入薬を、長期に服用している患者さんがおります。
 ガイドラインに沿って離脱を試みますが、難儀をしています。
 患者さんも医療従事者も、その認識を持って共同作業をしていきたいと思います。





The risk of Alzheimer's disease associated with benzodiazepines.pdf












posted by 斎賀一 at 14:46| Comment(0) | 脳・神経・精神・睡眠障害

2018年07月26日

軽症脳梗塞と一過性脳虚血発作に対する併用抗血小板療法の有用性と安全性

軽症脳梗塞と一過性脳虚血発作に対する
併用抗血小板療法の有用性と安全性
 
Clopidogrel and Aspirin in Acute
Ischemic Stroke and High-Risk TIA
N Engl J Med 2018;379:215-25.


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 雑誌NEJMに、軽症脳梗塞と高リスクの一過性脳虚血発作(TIA)の発症後に、抗血小板薬のアスピリンとプラビックスの併用と、アスピリン単独との比較試験が掲載されていました。

 軽症脳梗塞とは、NIHSSスケールで3点以下、高リスクのTIAはABCD2スケールで4点以上としています。
以前より軽症脳梗塞とTIAは、発症後90日間で3~15%に脳梗塞の再発があるとされています。
アスピリンとプラビックスの併用は、急性冠動脈症候群ではその有効性が証明されています。

今回はTIAと軽症脳梗塞に対して研究されました。POINT研究と命名されています。
同時期に中国でも同様の研究発表がされていて、CHANCE研究と命名されています。このCHANCE研究では、発症後24時間以内に治療を開始したところ、併用療法の方がアスピリン単独より32%のリスク軽減があり、出血などの合併症は同程度であったとの報告です。


本研究を纏めてみますと

1) 2010年から2017年にかけて、10か国で登録された18歳以上の4,881名が登録されました。
   登録と除外のクライテリアは下記のPDFをご参照ください。
   82.8%がアメリカ人でした。
   無作為化試験において、軽症脳梗塞または高リスク TIA の患者に、クロピドグレルを 1日目に
   負荷用量 600 mg、その後は75 mg/日投与し、アスピリン(50〜325 mg/日)を併用する群と、
   アスピリンのみを同じ用量範囲で投与する群に割り付けました。
   主要有効性転帰は、90日の時点での主要虚血性イベントの複合リスクとし、脳梗塞、心筋梗塞、
   虚血性血管イベントによる死亡と定義しています。

2) データ安全性モニタリング委員会が、クロピドグレルとアスピリンの併用は、アスピリン単独と比較
   して、90日の時点での主要虚血性イベントのリスクが低いことと、重大な出血リスクが高いことの
   両方に関連すると判定したため、試験は予定患者数の 84%が組み入れられたあとに中止されま
   した。
   主要虚血性イベントは、クロピドグレル+アスピリン群 2,432 例中 121 例(5.0%)とアスピリン
   +プラセボ群 2,449 例中 160 例(6.5%)に発生し(ハザード比 0.75)、大部分は初回イベント
   後1週間に発生しています。
   重大な出血は、クロピドグレル+アスピリン群の 23 例(0.9%)とアスピリン+プラセボ群の 10 例
   (0.4%)に発生しました。(ハザード比 2.32)

3) 結論的には、90日間の経過で患者1,000人に対して15人の虚血性疾患の予防が出来るが、5人の
   重大な出血性疾患が発生する。
   中国初のCHANCEと異なる結果だが、投与方法が異なっている点やアジア人はプラビックスの活性
   型への遺伝子が多型であるのが原因かもしれない。
   (脳梗塞の発生は1か月以内が多いが、出血の副作用は一貫してある事から、その想定でCHANCE
   は投与方法を設定しています。しかし脳梗塞の発生は1か月過ぎても多いとの報告もあります。
   私のブログをご参照ください。)

4) 軽症脳梗塞または高リスク TIA を起こした患者のうち、クロピドグレルとアスピリンの併用療法を
   受けた患者は、アスピリン単独療法を受けた患者と比較して、90日の時点での主要虚血性イベント
   のリスクは低かったが、重大な出血のリスクが高かった。






私見)
 併用療法の利害に関しては、十分に患者さんとコンセンサスをとる事が肝心ですが、急性期を過ぎて
 逆紹介された時に、併用療法から単独療法に切り替えるかは、かなり思案しそうです。






文献より (2).pdf










posted by 斎賀一 at 14:08| Comment(0) | 脳・神経・精神・睡眠障害

2018年05月26日

一過性脳虚血発作(TIA)の5年間の予後

一過性脳虚血発作(TIA)の5年間の予後
 
Five-Year Risk of Stroke after TIA or Minor Ischemic Stroke
This article was published on May 16, 2018,at NEJM



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 以前よりTIAの予後に関して、発症後1年の経過観察での論文が多くありましたが、今回はNEJMより
比較的長期の5年間での調査論文がオンラインで発表になりましたので、纏めてみました。
尚、TIA疾患の定義と予後判定に有用なABCD2スコアに関しては、下記のPDFをご参照ください。


1) 調査方法はsuppleより下記のPDFに掲載しました。
   2009~2011年に発症したTIA患者で、発症後1年間の経過観察が出来た症例を更に5年間調査
   しています。1年間の調査の中で50%以上が、5年間も経過観察出来たsite(施設データ)のみを
   採用しています。
   3,847名が最終的に登録されました。

2) 主要転帰(primary outcome)は心血管疾患による死亡、非死亡の脳卒中、非死亡の心筋梗塞
   です。
   主要転帰の発症は469名、その中で2〜5年間には235名が発症しており50.1%でした。
   脳卒中に関しては5年間で345名でしたが、2〜5年間では149名(43.2%)の発症です。つまり1年
   経過後でも同数のイベント発生です。 (この数字の解析はグラフにて説明しますが、英語圏でない
   私にとってやや不親切ではとの印象です。)

3) ABCD2スコアで、4以上がその後の脳卒中発症に関与していました。

4) TIA発症後、1年以内に脳卒中を含めた心血管疾患の発症は6.4%ですが、2〜5年の経過でも
   6.4%と同程度の頻度で発症しています。
   この発症率が以前の報告よりも少ないのは、治療の積極的介入としています。

5) 再度解説しますと、以前からTIA発症の1年以内が重視されているが、その後も注意が必要との
   事です。






私見)
 TIA発症後に積極的な介入治療にもかかわらず、2〜5年の間にも同程度の発症をする事には落胆
 しますが、驚くべきことではないとの論評もあります。
 如何にライフスタイルの改善つまり禁煙、減量、運動が大事かとコメントしています。
 TIAの予後に関する以前の論文も含めて、下記にPDF化しました。






本論文より.pdf

以前のNEJMの論文.pdf

TIAのネット情報.pdf











posted by 斎賀一 at 15:04| Comment(0) | 脳・神経・精神・睡眠障害