2018年05月26日

一過性脳虚血発作(TIA)の5年間の予後

一過性脳虚血発作(TIA)の5年間の予後
 
Five-Year Risk of Stroke after TIA or Minor Ischemic Stroke
This article was published on May 16, 2018,at NEJM



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 以前よりTIAの予後に関して、発症後1年の経過観察での論文が多くありましたが、今回はNEJMより
比較的長期の5年間での調査論文がオンラインで発表になりましたので、纏めてみました。
尚、TIA疾患の定義と予後判定に有用なABCD2スコアに関しては、下記のPDFをご参照ください。


1) 調査方法はsuppleより下記のPDFに掲載しました。
   2009~2011年に発症したTIA患者で、発症後1年間の経過観察が出来た症例を更に5年間調査
   しています。1年間の調査の中で50%以上が、5年間も経過観察出来たsite(施設データ)のみを
   採用しています。
   3,847名が最終的に登録されました。

2) 主要転帰(primary outcome)は心血管疾患による死亡、非死亡の脳卒中、非死亡の心筋梗塞
   です。
   主要転帰の発症は469名、その中で2〜5年間には235名が発症しており50.1%でした。
   脳卒中に関しては5年間で345名でしたが、2〜5年間では149名(43.2%)の発症です。つまり1年
   経過後でも同数のイベント発生です。 (この数字の解析はグラフにて説明しますが、英語圏でない
   私にとってやや不親切ではとの印象です。)

3) ABCD2スコアで、4以上がその後の脳卒中発症に関与していました。

4) TIA発症後、1年以内に脳卒中を含めた心血管疾患の発症は6.4%ですが、2〜5年の経過でも
   6.4%と同程度の頻度で発症しています。
   この発症率が以前の報告よりも少ないのは、治療の積極的介入としています。

5) 再度解説しますと、以前からTIA発症の1年以内が重視されているが、その後も注意が必要との
   事です。






私見)
 TIA発症後に積極的な介入治療にもかかわらず、2〜5年の間にも同程度の発症をする事には落胆
 しますが、驚くべきことではないとの論評もあります。
 如何にライフスタイルの改善つまり禁煙、減量、運動が大事かとコメントしています。
 TIAの予後に関する以前の論文も含めて、下記にPDF化しました。






本論文より.pdf

以前のNEJMの論文.pdf

TIAのネット情報.pdf











posted by 斎賀一 at 15:04| Comment(0) | 脳・神経・精神・睡眠障害

2018年01月19日

多発性硬化症

多発性硬化症
 
Multiple Sclerosis
n engl j med 378;2 nejm.org January 11, 2018



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 NEJMに多発性硬化症(multiple sclerosis)の総説が載っていましたので、勉強しながら纏めてみま
した。



1) 初期には中枢神経系の白質に脱髄病変、炎症、グリア病変が起る。
   (神経細胞は灰白質にあり、軸索(神経線維)は白質を通ります。これらの神経細胞やそこから伸びて
   いる軸索(神経線維)の形態、機能の維持に関与しているのがグリア細胞です。
   軸索はミエリン鞘によって保護されています。グリア細胞にはミクログリア、アストロサイト、オリゴ
   デンドロサイトの3種類があります。

2) ミエリン鞘は白質のみにあるのでなく、灰白質にもニューロピルとして存在する。 (下記PDF参照)
   よって脱髄は灰白質(大脳皮質)でも起こる。
   (神経系は外胚葉なので中胚葉の結合組織に対しての接触は血管系のみとなります。よって灰白質
    の脱髄は軟膜直下の血管より病変が始まります。)
   以上より大脳皮質の脱髄病変はその半分は血管周囲に起きています。
   しかし皮質では血管の透過性亢進も軽いので炎症所見も白質よりも軽度です。
   時に皮質病変は血管周囲以外にも軟膜下より起きます。そして洞(sulcus)の周辺に炎症所見と
   して、まるでリンパ濾胞様の形態を呈する事もあります。  
   脊髄の病変は生活機能に重要な影響を及ぼします。
   血管周囲ばかりでなく脊髄の灰白質(つまり脊髄神経細胞の多い所)も脱髄病変が生じます。
   その結果脊髄の横断病変が出現します。
   脳神経である視神経も重要な病変部位です。

3) 原因が単独なのか複合的かは議論が分かれています。
   稀ではありますがある種の誘因が想定されています。
   原因病態としては一番可能性として挙げられているのは自己免疫疾患です。
   体質としてはHLA-DRB1*1501が想定されています。
   遺伝子的には200以上が判明されています。
   環境因子としては、日光暴露、ビタミンD、喫煙、肥満、伝染性単核症、EBウイルスも関与が想定
   されています。

4) 病態
   基本的には免疫機能がグリア細胞(ミエリンを形成するオリゴデンドロサイト、ミクログリア、
   アストロサイト)と神経細胞にダイナミックに影響して病変を形成する。
   B細胞、抗体、更にT細胞のhelper(CD4)、cytotoxic(CD8)が関与する。
    (詳細は元文献の図譜を参照)
   血管の透過性亢進が状態の進展に関与している。
   特に血管脳関門(BBB)の破壊が重要な側面となる。
   その結果、ミクログリアの活性化が生じて更なる免疫機能の亢進がカスケード的に発生する。
   これはMRIでも観察できる。

5) 急性期のプラーク形成はオリゴデンドログリアとは関係なく、ミクログリアとアストロサイトの活性化
   で生じる。
   ミクログリアは灰白質では殆ど活性化していないが白質でその活動は顕著である。しかもその作用は
   二面性があり、炎症を促進するがミエリン残渣を掃除(クリアランス)をして再生を促す働きもある。
   ミクログリアは灰白質では機能低下したシナップスを取り除くことによりアストロサイトが誘導する
   神経変性の進展を食い止めている。
   結局、このアストロサイトが急性期のプラーク形成には重要な役割をしている。
   一方で、オリゴデンドロサイトの前駆細胞の再生の役割も注目されてきているが、この点に関しては
   今後の研究課題である。

6) 脱髄した軸索(神経線維)は障害を受けやすくなっていますし、また変性がカスケード状に進展も
   します。しかしミクログリアやオリゴデンドログリアの前駆細胞などの働きで再生も起こるようですし
   緩解と再発を繰り返すのが特徴です。

7) 治療に関しては省略いたします。






私見)
 一般的な解説はネットでも手に入りますが、今回のNEJM 論文ではグリア細胞との関係や病変部位に関して大変参考になりました。大分専門的になってしまいましたが出来る範囲で解説しました。
 結論的には、多発性硬化症は自己免疫疾患で神経線維の衣であるミエリンが破壊されて裸の状態になった疾患で、それにはグリア細胞が深く関与しており、再生と破壊が繰り返されていると理解してくだ
さい。

 下記に私の蔵書とネット解説も掲載いたしますので、職員の皆さん、勉強しておいてください。


 
  宗教を信じている人より宗教的な人の方が、私は好きです。
  疾病とは、人を宗教的にするものと常日頃思っています。



 極論で語る神経内科 : 丸善出版

 下記のPDFを参照、同書籍に視神経の診かたのネットがありましたので併せ掲載します。

   
  http://neuroexam.med.utoronto.ca/








nejm.pdf

極論.pdf

MSはこんな病気です|多発性硬化症.jp 〜多発性硬化症に関する情報を紹介するサイト〜.pdf

慶応大学.pdf

neuropil.pdf

白質 灰白質.pdf

軟膜.pdf





  
posted by 斎賀一 at 19:51| Comment(0) | 脳・神経・精神・睡眠障害

2017年09月22日

ランニングが片頭痛に有効

ランニングが片頭痛に有効

      
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 カナダのバンクーバの学会で、エクササイズ(ランニング)が片頭痛の頻度を減少させるとの報告があったようです。
詳細はmedscapeに載っていましたので紹介いたします。
 片頭痛のある人を其々8名ずつ3群に分けて調査しました。

○ 軽めの有酸素運動(ランニング)を45分間、1週間に2回行うMCT群
○ 4分間の軽めのランニング後に3分間の強めのランニングを行い、続けてそれを4セット合計28分を
  1週間に2回行うHIT群
○ 全然エクササイズを行わないコントロール群の以上3群です。

20人が女性で4人が男性、平均年齢は36歳
結果は下記の表です。




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HIT群は、片頭痛がほぼ月に5回から1回に減少しています。





私見)
 血管の拡張が影響していると推測しています。
 週2回のやや強めのランニングが有効のようです。




High-Intensity Training Bests Moderate Exercise for Migraine.pdf













posted by 斎賀一 at 19:56| Comment(1) | 脳・神経・精神・睡眠障害