2019年09月25日

積極的降圧治療と脳の白質病変の関係

積極的降圧治療と脳の白質病変の関係
 
Association of Intensive vs Standard Blood Pressure
Control With Cerebral White Matter Lesions



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 降圧目標を140以下にする標準的治療と120以下とする積極的治療に関して、大脳の白質病変
を主体に研究した論文が掲載されています。
白質病変は色々な疾患でも起きますが、脳梗塞の予備病変としても重要です。


アブストラクトより纏めますと

1) 糖尿病と脳卒中の既往の無い50歳以上の人を対象に82,010人を抽出しています。
   MRIを実施した670名を登録して、4年間の経過観察をしています。
   2016年まで調査出来た人は449人でした。
   標準的治療群が315人で、積極的治療群が355人に振り分けて研究しています。

2) 主要転帰はベースラインからの白質病変の変化です。
   二次転帰は大脳の容量の変化です。

3) 登録した670人の平均年齢は67.3歳です。
   完全に経過観察できた449人の平均経過観察期間は3.40年です。

   結果として
   ・ベースラインからの白質病変の増加は積極的治療群が4.57~5.49㎤
    標準的治療群では4.40~5.85㎤
    両群の差は0.54㎤で積極的治療群が優位
   ・全大脳の容量減少は積極的治療群が1134.5~1104.0㎤
    標準的治療群では1134.0~1107.1㎤です。
    両群の差は3.7㎤で、積極的治療群が優位

4) 論評では、糖尿病患者と脳卒中既往歴の場合の結果が待たれるとしています。






私見)
 日本では両群で差が無いとしていますが、概ね積極的治療が推奨されるようです。
 本院もほどほどに積極的に診療してまいります。







1本論文.pdf

2 積極的降圧療法は脳卒中再発を抑制|医療ニュース|Medical Tribune.pdf

3 白質とは.pdf

4 白質病変とは.pdf













  
posted by 斎賀一 at 18:59| Comment(0) | 脳・神経・精神・睡眠障害

2019年09月14日

菜食主義者は脳卒中の心配?

菜食主義者は脳卒中の心配?
 
Risks of ischaemic heart disease and stroke in meat eaters,
fish eaters, and vegetarians over 18 years of follow-up:
results from the prospective EPIC-Oxford study



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 菜食主義者ベジタリアンにも、魚は食べるが肉は食べないペスカタリアンから、完全菜食主義者の
ビーガンまで幅が広いようです。
イギリスからベジタリアンと非ベジタリアンの比較検証した論文が、BMJに掲載されました。



纏めますと

1) 1993~2001年に、心血管疾患の既往のない48,188人が登録しています。
   対象者にはアンケート調査を行い、次の3つのグループに分けて18.1年間追跡調査を行いました。
   ・肉を食べる群  (魚、乳製品、卵を摂取するかは無関係)
   ・魚を食べる群  (魚は食べるが肉は食べない)
   ・ビーガンを含めたベジタリアン群
   ※ 低カロリー食を行っている人は除外しています。
     ベジタリアン群はそもそも人数が少ないので、ベジタリアン協会や専門雑誌と協力しアンケート
     を配布しています。

2) 主要転帰は、2016年までの虚血性心疾患と脳卒中(虚血性と出血性を含める)の発生です。

3) 全体で虚血性心疾患の発生は2,820例、脳卒中は1,072例で、その中の虚血性が519例
   出血性が300例でした。
   ・虚血性心疾患の発生の危険率は、肉群を1として其々の群の危険率を割り出しますと
    魚群が0.87、ベジタリアン群が0.78でした。
   ・それに対して脳卒中発生の危険率は、肉群を1とすると、ベジタリアン群は1.21です。 
    (脳出血の危険率は更に高い1.43)

4) 結論的には、ベジタリアン群は肉群と比較しますと、10年間で虚血性心疾患の発生は1,000人中
   10人少なくなりますが、逆に脳卒中は1,000人中3人増加する事になります。
   差引で、ベジタリアン群の方が7人多く助かる事になります。






私見)
 アンケート調査のための研究には限界があり、交絡要因(confunder)も考慮しなくてはなりませんが、
 肉食で元気な政治家を見ますと、ベジタリアンだけが良いとは言えない感じがします。







vegetarians.pdf












posted by 斎賀一 at 17:21| Comment(1) | 脳・神経・精神・睡眠障害

2019年05月29日

塞栓源不明脳梗塞発症後の脳卒中予防にDOACは?

塞栓源不明脳梗塞発症後の脳卒中予防にDOACは?
                   ・Rivaroxaban for Stroke Prevention 
                    after Embolic Stroke of Undetermined Source
                   ・Dabigatran for Prevention of Stroke
                    After Embolic Stroke of Undetermined Source

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 虚血性脳梗塞の原因としては、頭蓋内外の動脈硬化性疾患、細動脈閉塞や心源性の血栓がありますが、原因が不明な場合も20~30%存在します。
英語ではCryptogenicとしますが、最近ではundeterminedと記載される傾向です。
 ガイドラインでは、脳梗塞の2次予防には抗血小板薬(少量アスピリン、プラビックス、パナルジン)が推奨されています。しかし原因不明の場合、その多くは心房細動を代表とする心源性が疑われます。
そこで、2次予防の目的で抗凝固薬(DOAC)を投与した場合の効果を研究した(study)論文が、雑誌NEJMに2つほど発表になっています。

a) 2018年6月に発表されたイグザレルトに関する論文と、
b) 2019年5月に発表されたプラザキサに関する論文です。

結論としてはDOAC(イグザレルトとプラザキサ)は少量アスピリンと比較して、塞栓源不明脳梗塞の初発後の脳卒中再発予防に関しては優越性を示さず、出血リスクがより高い傾向でした。


1)イグザレルトの論文を纏めますと
  ・脳梗塞の再発率は、アスピリン群とイグザレルト群では5%/年と同等でした。
  ・重大な出血の症例は、イグザレルト群の方が1.1%/年増加していました。
   内訳として脳内出血は、イグザレルト群が0.3%/年に対してアスピリン群では0.1%/年でした。
  ・ホルター心電図を用いて6カ月間調べていますが心房細動の発生は両群合わせて3%でした。
   以前の研究ではイグザレルトは心房細動を有する患者の脳梗塞の再発に予防効果ありとされて
   いました。この事から推測しますと塞栓源不明脳梗塞においては、心房細動は主たる原因疾患では
   ないとしています。


2)プラザキサの論文を纏めますと
  ・脳梗塞の再発率はプラザキサで4.1%/年、アスピリン群で4.8%/年
  ・重大な出血はプラザキサで1.7%/年、アスピリン群で1.4%/年
  ・事後分析によると、プラザキサは1年後から脳梗塞再発の予防効果が出始めるようですが、事後
   分析のため明白ではない。
  ・本研究(RE-SPECT)は他の研究(CRYSTAL-AF、FIND-AF)と同様に、心房細動の発生は
   10~15%/年と推定していますが、本研究ではホルター心電図での検査がたったの14%しか実施
   されていませんでした。
   塞栓源不明脳梗塞発症後の脳卒中予防にDOACが効果があるかは、現在進行中のARCADIA
   研究の結果が待たれるとしています。


私の印象では、1)よりも 2)の論文の方がDOACにやや期待感を持っている感じです。
 
研究の内容は下記のNEJMの日本語版を参照してください。
グラフは下記のPDFに掲載します。





私見)
 塞栓源不明脳梗塞に対して心房細動が想定されDOACの投与の誘惑に駆られますが、DOACの費用
 対効果も勘案するとリスク評価のCHA2DS2-VAScだけでDOACを処方するのも躊躇します。
 結論としては今後の研究が待たれるとします。






1 イグザレルトとアスピリンの再発率の効果比較.pdf

2 塞栓源不明脳梗塞発症後の脳卒中予防に対するリバーロキサバン |.pdf

3 塞栓源不明の脳塞栓症発症後の再発予防のためのダビガトラン.pdf

4 DOAC.pdf













posted by 斎賀一 at 19:31| Comment(0) | 脳・神経・精神・睡眠障害