2024年01月13日

治療歴のある進行性子宮内膜がん(子宮体がん)に対するレンビマ+キイトルーダ併用療法

治療歴のある進行性子宮内膜がん(子宮体がん)に対するレンビマ+キイトルーダ併用療法

Lenvatinib plus Pembrolizumab for Advanced Endometrial Cancer
[n engl j med 386;5 nejm.org february 3, 2022]




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 子宮体部癌に対して分子標的薬のレンビバと、チェックポイント阻害薬のキイトルーダの併用の効果を示した研究が2022年の雑誌NEJMに載っていましたのでブログします。


 1) 方法
    
    第 3 相試験で、プラチナベースの化学療法のレジメン(Platinum-based
    chemotherapyは、がん治療の一形態であり、癌細胞の成長を抑制し、
    破壊するために、プラチナという金属元素を主成分とする化学薬剤を
    使用する治療法を指します。これは主に、固形腫瘍やがんの治療に用いられて
    います)を 1 種類以上受けた進行子宮内膜癌患者を、レンビバ(20 mg を
     1 日 1 回経口投与)と、キイトルーダ(200 mg を 3 週ごとに静脈内投与)
    の併用療法を行う群と、治療担当医が選択した化学療法(ドキソルビシン
    60 mg/m2体表面積を 3 週ごとに静脈内投与、または、パクリタキセル
    80 mg/m2 を週 1 回静脈内投与 [3 週間の投与と 1 週間の休薬で 1 サイクル])
    を行う群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた。ミスマッチ修復機能欠損なし
   (pMMR)の癌患者(免疫チェックポイント阻害薬の効果が少ないと思われる
    ポピュレーション)と、すべての患者で行った。安全性も評価した。

 2) 主要エンドポイントは、無増悪生存期間と、全生存期間の 2 つとした。
    827 例(pMMR 癌 697 例、ミスマッチ修復機能欠損癌 130 例)が、
    併用群(411 例)と化学療法群(416 例)に無作為に割り付けられた。

 3) 結果
 
    827 例が(pMMR 癌 697 例、ミスマッチ修復機能欠損癌 130 例)
    併用群(411 例)と化学療法群(416 例)に無作為に割り付けられた。
    無増悪生存期間の中央値は、併用群が化学療法群よりも長かった。
   (pMMR 集団:6.6 ヵ月 対3.8 ヵ月、増悪または死亡のハザード比0.60
    ;全体:7.2 ヵ月 対 3.8 ヵ月、ハザード比 0.56)
    全生存期間の中央値は、併用群が化学療法群よりも長かった。
   (pMMR 集団:17.4 ヵ月 対 12.0 ヵ月、死亡のハザード比 0.68
    ;全体:18.3 ヵ月 対11.4 ヵ月、ハザード比 0.62)
    グレード 3 以上の有害事象は、併用群の投与を受けた患者の 88.9%と
    化学療法群を受けた患者の72.7%に発現した。
   (pMMRポピュレーションは、がん患者の中で、ミスマッチ・リペア機構が
    正常に機能しているとされるグループを指します。ミスマッチ・リペア機構が
    正常に働いている場合、DNAのミスマッチや、小さな挿入/欠失などのエラーが
    適切に修復され、がん細胞は相対的に安定していると考えられます。
    pMMRポピュレーションに属する患者は、がん組織中でミスマッチ・リペアが
    効果的に行われているため、治療法や予後が一般的ながん患者とは異なる
    可能性があります。pMMR状態のがんは、通常は免疫チェックポイント
    阻害薬に対する感受性が低い傾向があります。これは、免疫チェックポイント
    阻害薬が、主にミスマッチ・リペア機構が不全ながんに対して効果的であるため
    です。)
 

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 4) 考察

    併用群は、pMMR(免疫チェックポイント阻害薬が効果が少ないと思われる人)にも、
    全体にも効果がありました。

 5) 結論

    進行子宮体部癌は、レンビバとキイトルーダ併用療法により、化学療法と比較して、
    無増悪生存期間と全生存期間が有意に延長した。



私見)
 進行性子宮体部癌の治療のベースとなった論文の様です。
 癌治療の進歩に期待したいものです。
 下記にメーカーの説明のPDFを掲載しました。
 尚、低アルブミンの場合には治療が延期され、アルブミンの改善が必要となります。
(免疫チェックポイント阻害薬(ICIs)の投与において、低アルブミン血症が問題となる
 可能性があります。アルブミンは、血液中の主要なタンパク質であり、様々な生体機能に
 関与しています。低アルブミン血症は、体内の免疫応答や薬物代謝に影響を与える可能性が
 あります。ICIsは、免疫系を活性化させ、がん細胞への攻撃を増強する働きがあります。
 しかし、低アルブミン血症があると、薬物の代謝や分布が変化し、副作用のリスクが増加する
 可能性があります。また、低アルブミン血症は、免疫系の機能にも影響を与え、ICIsの効果が
 低下する可能性も考えられます。)





キイトルーダレジスタードマークとレンビマレジスタードマークの働きに.pdf











posted by 斎賀一 at 17:28| 癌関係

免疫チェックポイント阻害薬の肝障害

免疫チェックポイント阻害薬の肝障害

Checkpoint inhibitor hepatotoxicity:pathogenesis and management :Hepatology

     <短報>


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 免疫チェックポイント阻害薬は、免疫応答に影響を与える事があります。
肝障害の副作用が出現した時には、自己免疫性肝炎との鑑別が必要となります。
論文が出ていましたのでブログします。


 1) 免疫チェックポイント阻害薬の出現は、癌治療のゲームチェンジャーとなります。
    しかし、自己抗原に対しての耐性(tolerance)が減少します。その結果、免疫を
    介して組織傷害を引き起こすことがあります。
    免疫チェックポイント阻害薬による肝障害は、2〜25%との報告です。

 2) 免疫チェックポイント阻害薬による肝障害は、本来の自己免疫性肝炎と鑑別する
    必要があります。
    治療は、主に高用量ステロイドですが、約30%が治療に無反応です。
    胆汁閉塞性肝障害や、劇症型もあります。



私見)
 免疫チェックポイント阻害薬は癌治療の主流となっています。
 実地医家にとっても外来での肝障害には注意が必要です。





免疫チェックポイント阻害薬Checkpoint inhibitor hepatotoxicity.pdf











posted by 斎賀一 at 16:34| 癌関係

2023年05月19日

乳がん検診のガイドラインの草案・USPSTFより

乳がん検診のガイドラインの草案・USPSTFより

New USPSTF Draft Suggests Mammography Start at 40, Not 50
 


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アメリカでは乳がん検診のガイドラインが2009年に刊行され、2016年に改定されています。
50歳から74歳がマンモグラフィーの対象でしたが、今回のガイドラインの草案では、40歳に
引き下げる事を検討しているとのレポートがMedscapeにありました。

 アメリカでは乳がん全体として45歳以下の乳がんの発生は9%との事で無視できない数字です。
しかし本草案では、マンモグラフィーの検診は隔年を予定しています。
現在は75歳以上が対象外になっている点と、検診が隔年で実施している点に明白なエビデンスが
ないとして、反対意見があるようです。

・黒人の方が乳がん発症年齢が低い。
・高濃度乳房dense breastは、マンモグラフィーでの診断が難しくリスクが高い。
 よって臨床医と相談し追加検査が必要。
・リスクのある人は、特に黒人は30歳から検診の準備と教育を受けておかなくてはならない。



高濃度乳房に関してuptodeteより引用します。

・乳房の濃度の増加は、マンモグラフィーの異常の検出を損ない乳がん診断の精度を落とし
 ますが、乳がんそのもののリスクとは関連していません。
・乳房の密度は、月経周期に影響される可能性があります。
・乳房の密度は患者の年齢と反比例し、高濃度乳房は50歳未満の女性または閉経前の女性に
 最も多い傾向です。
・マンモグラフィーは乳がん検診で、最大20%を見逃す可能性があります。
・デジタルマンモグラフィーは、高濃度乳房に対してフィルムマンモグラフィよりも感度が高く
 乳房の密度が増加した女性には有効です。
 米国では、更にデジタル乳房断面合成(DBT)が利用され始めています。
・マンモグラフィーに超音波を追加すると、小さな癌に対する感度は高まりますが、特異度は
 大幅に低下します。
・MRIは、乳がんリスクの遺伝子変異(BRCA20またはBRCA25変異など)を有する女性、
 乳がんまたは卵巣がんの家族歴がある女性、その他の乳がんのリスクが高い女性の場合
 には推奨されます。




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今日の臨床サポートより引用

・日本人女性の乳癌罹患率は、30歳代後半から急増し40歳代後半から70歳代はほぼ同率で、
 80歳以降緩やかに減少する。
・日本の対策型検診は、40歳以上に対して問診およびマンモグラフィーによる隔年検診が推奨
 されているが、欧米に比べて受診率が低いことが問題となっている。
・40歳代もしくは乳腺組織が多い受診者に対して、マンモグラフィの精度はやや低い。
・日本では40歳代に対してマンモグラフィーに超音波検査を上乗せするRCTが行われているが、
 まだ死亡率減少効果は証明されていない。
・厚生労働省の推奨方法は、問診およびマンモグラフィーであるが、一部の自治体(岩手県、
 栃木県、茨城県など)ではマンモグラフィーと超音波検査の併用が行われている。
 検診間隔は費用効果分析から隔年(2年に1回)で行われているが、自治体によっては逐年で
 行っている所もある。


市原市の乳がん検診

 乳がん検診(女性)
超音波検査(30歳代・40歳代奇数歳):500円
マンモグラフィ検査(2方向)(40歳代偶数歳):500円
マンモグラフィ検査(1方向)(50歳以上偶数歳):500円



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私見)
 周回遅れではありますが、ある意味で日本は医療環境に手厚い様な気がしますが ...。









乳がん検診New USPSTF Draft Suggests Mammography Start at 40, Not 50.pdf











posted by 斎賀一 at 19:07| 癌関係