2025年03月10日

一酸化炭素中毒とは

一酸化炭素中毒とは

What Is Carbon Monoxide Poisoning?


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 先日、一酸化炭素中毒の報道がされていました。
雑誌JAMAに啓蒙記事が載っていましたので、ブログします。


一酸化炭素は、木炭、ガス、ガソリン、石油、木材などの物質を燃焼させることで発生する
無色、無臭、無味のガスです。
一酸化炭素を吸い込むと、酸素を重要な臓器に運ぶ事が出来なくなります 。
アメリカでは火災とは無関係の一酸化炭素中毒で、毎年400人以上が死亡しています 。
一酸化炭素中毒症例は、アメリカで救急外来受診が年間100,000件以上、入院は14,000件
以上に亘ります。


一酸化炭素中毒の一般的な原因
一酸化炭素中毒は、ガス器具(ストーブ、オーブン、給湯器、乾燥機、炉)、ポータブル発電機、
暖炉、炭火焼き、芝刈り機、車両の排気ガスなど、一般的には密閉された空間で煙を吸入する
事により発生します。


症状と合併症
一酸化炭素中毒の症状は特異的ではないため、特定する事が困難です。
これは「インフルエンザ」にかかったようなものだとよく表現されます。
多くの場合、家族や同じ場所にいた複数の人が、頭痛、吐き気、倦怠感、めまい、胸痛、
胃の痛み、協調運動障害、精神錯乱などの同じ症状を訴えます 。
高レベルの曝露では、一酸化炭素は心臓発作、脳損傷、及び死を引き起こす可能性があります 。
一酸化炭素の重症化リスクは、乳児、幼児、妊婦、基礎疾患のある人、高齢者です。


一酸化炭素中毒の診断と治療
一酸化炭素検出装置を使用して、一酸化炭素に結合した赤血球の割合であるカルボキシヘモ
グロビンを測定することによって診断されます 。
非喫煙者で5%以上、喫煙者で10%を超えるカルボキシヘモグロビンは、一酸化炭素中毒の
診断を強く支持しています。
治療は通常、症状が治まるまでの約4〜5時間、フェイスマスクで100%酸素を投与します 。
カルボキシヘモグロビン値が高い患者や重篤な症状のある患者、子供、高齢者、妊娠中の人は、
加圧チャンバーで100%酸素の高圧酸素療法を受けることが勧められます。


一酸化炭素中毒のリスクを減らす方法
・各家庭では、すべての寝室に一酸化炭素検出器が必要です。
 これらの検出器には、国の試験機関からのシールが必要です。
 電池は少なくとも年に2回チェックする必要があります 。
 警報が鳴った場合は、近くにいるすべての人がすぐに避難する必要があります 。
 症状が出ている人は、すぐに医師の診察を受ける必要があります 。
・暖房システム、給湯器、およびその他のガス器具はメーカーの指示に従って設置し、毎年保守
 点検されていることを確認してください。
・ガス器具、薪ストーブ、暖房システムの周囲では適切な換気を確保してください。
 屋内で木炭を燃やしたり、ポータブル発電機を使用したりは絶対にしないでください。
・オーブンやガスストーブを使用して家を暖めるなど、本来の用途以外で電化製品を使用しない
 でください。
・煙突と暖炉は毎年チェックして、掃除をする必要があります 。
・自動車などのガソリンエンジンを、換気の悪い場所で操作しないでください。
 自動車を始動する前にガレージのドアを開け、ガレージの中でエンジンを始動しないでくだ
 さい。







私見)
 一酸化炭素検出器をネットで調べましたら、多種類あります。
 どれが良いのかAIで調べました。下記のPDFをご参照ください。
 あくまでも自己責任にてお願いします。
 私はそれなりに安価なものを選んでみます。






本論文 一酸化炭素中毒.pdf

一酸化炭素濃度測定器.pdf








posted by 斎賀一 at 18:41| その他

2025年01月25日

ビタミンD剤のガイドライン

ビタミンD剤のガイドライン

Vitamin D for the Prevention of Disease:
An Endocrine Society Clinical Practice Guideline



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ビタミンD剤のガイドラインが載っていましたのでブログします。ザックリとパネル中心の記載となりますので、興味のある方は下記の本論文を参照ください。但し、本ガイドラインは健康者を対象にしたビタミンD剤の服用であり、骨粗鬆症、吸収障害の人、慢性腎臓病は除外している点に注意が必要です。


 1) 一般的に、臨床家は血液検査でビタミンD値を30ng/dL以上にするために、サプリ
    メントを処方しています。しかし、血液検査25(OH)Dと、疾患との関連性は明白に
    証明されていません。
    結論的に本ガイドラインでは、血液検査を推奨していないようです。

 2) 調査においては、参加者の個々人の裁量に任せてビタミンD剤の用量をセッティング
    していますので、本ガイドラインでの用量は自由裁量となっています。
    経験的に(empiric)ビタミンD剤を服用する事は、経済的でもあり、リーズナブルと
    しています。

以下はパネルを記載します。

 3) 1歳から18歳の子ども、及び青少年において、栄養性くる病を予防し、呼吸器感染症
    のリスクを低下させる可能性があるため、経験的にビタミンD補給を行うことを推奨
    します。

 4) 50歳未満の一般成人において、この年齢層に推奨される栄養所要量(Dietary
    Reference Intake)を超えた経験的なビタミンD補給を行うことは推奨しません。

 5) 50歳から74歳の一般集団において、この年齢層に推奨される栄養所要量(Dietary
    Reference Intake)を超えた定期的なビタミンD補給を行うことは推奨しません。
   (定期的でなければ良いのかも知れません)

 6) 一般的に75歳以上の人では、死亡リスクを低下させる可能性があるため、経験的に
    ビタミンD補給を行うことを推奨します。

 7) 妊娠中においては、子癇前症、胎内死亡、早産、在胎週数に比べて小さい出生
    (SGA)、および新生児死亡のリスクを低下させる可能性があることから、
    経験的にビタミンD補給を行うことを推奨します。

 8) 高リスクの前糖尿病を有する成人において、生活習慣の改善に加えて、糖尿病への
    進行リスクを低下させるために、経験的にビタミンD補給を行うことを推奨します。

 9) ビタミンD補給、または治療の適応がある50歳以上の成人においては、不定期に高用量
    ビタミンDを服用するよりも、低用量ビタミンDを毎日服用する事を推奨します。


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 (補足説明;1)
   
   ビタミンDが豊富な食品

   〇 魚類
    ・サケ、サバ、イワシなどの脂肪の多い魚
    ・特に天然の魚にはビタミンDが多く含まれます。

   〇 卵黄
     鶏卵の黄身にビタミンDが含まれています。
   
   〇 きのこ類
     しいたけやマッシュルームは、特に日光を浴びたものがビタミンDを多く含みます。
   
   〇 強化食品
     牛乳やシリアル、オレンジジュースなどには、ビタミンDが添加されているものが
     あります(主に海外で普及)。

 (補足説明;2)

   本院では、骨粗鬆症に活性型エディロールを使用していますが、活性型ビタミンDは、
   腸管でのカルシウム吸収を促進し、骨の形成と吸収のバランスを改善します。同時に
   血中カルシウム濃度が適正に保たれるため、骨から過剰にカルシウムを動員する
   (骨吸収)必要がありません。この結果、骨密度が保たれるか、むしろ増加します。
   しかし、活性型ビタミンDを過剰に摂取すると、腸管でのカルシウム吸収が極端に増加
   し、血中カルシウム濃度が上昇します(高カルシウム血症)。
   血中カルシウムが高い状態では、副甲状腺ホルモンのPTHの分泌が抑制され、通常は
   骨吸収(骨からのカルシウム放出)が抑えられますが、更に過剰なビタミンDとなると
   骨吸収のメカニズムを直接刺激する可能性もあり、場合によっては骨からのカルシウム
   放出が増加し、骨代謝のバランスが崩れることがあります。このため、過剰なビタミンD
   投与はむしろ骨代謝を乱し、長期的には骨粗鬆症のリスクを高める可能性が出てきます。



私見)
 上記のガイドラインで適応する人には、サプリメントとして、ビタミンDの低用量を定期的に
服用する事をお勧めします。
 骨粗鬆症として活性型を処方する場合は、定期的に血液検査を行い、高カルシウムになっていない事に注意が必要です。




本論文 D.pdf

活性型.pdf

ビタミンd .pdf

ビタミンdの可能性.pdf











 
posted by 斎賀一 at 16:52| その他

2024年11月05日

夜間下肢痙攣にはビタミンK2が有効・納豆も?

夜間下肢痙攣にはビタミンK2が有効・納豆も?

Vitamin K2 in Managing Nocturnal Leg Cramps
A Randomized Clinical Trial



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 夜間下肢痙攣nocturnal leg cramps(NLC)は、生涯で50〜60%の人が経験します。
20%の人がNLCに悩んでいるとも言われています。
雑誌JAMAに、サプリメントのビタミンK2が予防に有効との報告がありました。


ビタミンK2についておさらいをしますと
最初に発見されたのはビタミンK1(フィロキノン)です。
1930年代にデンマークの科学者ヘンリック・ダムが、ビタミンK1の働きが血液凝固に関与
していることを発見しました。
この発見により、ビタミンKの「K」は、ドイツ語の「Koagulation(凝固)」に由来して
います。
その後、ビタミンKには異なる形態があることがわかり、ビタミンK2(メナキノン)も発見
されました。ビタミンK2は、主に発酵食品や動物性食品に含まれ、血液凝固に関与するだけ
でなく、骨や血管の健康にも重要な役割を果たすことが分かりました。
ビタミンK2が下肢の痙攣に有効とされる理由には、カルシウム代謝と筋肉機能に関連する
働きが考えられます。

カルシウムの適切な利用:
 ビタミンK2はカルシウムの代謝に関与し、骨にカルシウムを取り込み、血管や軟組織に
 カルシウムが過剰に蓄積するのを防ぐ働きがあります。
 カルシウムが筋肉や血管に過剰に蓄積すると、筋肉の緊張や収縮に影響を与え、痙攣が
 起こりやすくなりますやすくなります。
 ビタミンK2がカルシウムの適切な分配を助けることで、痙攣の発生を抑えることができる
 と考えられています。

筋肉機能の維持:
 筋肉の収縮には、カルシウムとともにマグネシウムやカリウムも重要です。
 ビタミンK2がカルシウムの調節をサポートすることで、筋肉細胞の正常な収縮と弛緩が
 促進され、痙攣の予防に役立つ可能性があります。

血管の健康:
 ビタミンK2は、血管の石灰化を防ぐ働きも持っています。
 血管が健康で柔軟性が保たれていると、血流が改善され筋肉への酸素供給が向上します。
 これも筋肉の健康に寄与し、痙攣を防ぐ要因となります。
 ただし、ビタミンK2だけでなく下肢の痙攣にはカリウムやマグネシウムの不足、脱水、
 血流不足など様々な要因が関係するため、ビタミンK2が全てのケースに効果的であるとは  
 限りません。他の栄養素とのバランスや生活習慣の見直しも重要です。



本論文に戻りますと

1) 中国からの報告です。
   2022年9月から2023年12月までのランダマイズ研究です。
   65歳以上で2週間の観察期間中に、週に2回以上のNLCを起こしている人が対象です。
   疾患のある人や治療中の人は除外しています。
   8週間の観察研究です。K2服用群と非服用群を1対1に振り分けています。
   ビタミンK2は180mgを使用しています。

2) 主要転帰は一週間で、NLCの平均頻度です。
   二次転帰はNLCの持続時間(分)と、発作の強さ(スケールを1−10)です。

3) 結果
   310名中111人が除外されています。199名が登録されました。
   54.3%が女性、平均年齢は72.3歳。
   103人が服用群で、96人がプラセボ群です。
   事前のベースラインでの発作回数は、服用群が2.60でプラセボ群は2.71でした。
   8週間の経過観察の結果では、服用群は週平均で0.96、プラセボ群は3.63でした。
   発作の強さは、服用群では−2.67でプラセボ群は−1.24でした。
   発作の持続時間は、服用群で−0.90分、プラセボ群で−1.24分でした。
   副反応はありませんでした。




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4) 結論
   ビタミンK2のサプリメントはNLCに有効でした。







私見)
 どのサプリメントが良いのか私は周知していません。
 NLCに対して本院では芍薬甘草湯を処方していましたが、いつまでも続けるわけにもいかず
 思案していましたが、ビタミンK2の豊富な食材は何と言っても納豆です。
 その他チーズにも多く含まれているとの事です。
 ビタミンKはワーファリンのアンタゴニスト(拮抗薬)としての性質を持っています。
 従ってワーファリン服用中の人は、納豆は禁忌となります。
 ブロッコリーはビタミンK1が豊富ですのでやはり禁忌ですが、K2はあまり含まれていない
 ようです。
 NLCの患者さんには、今後納豆とチーズを勧めて参ります。






JAMA 下肢痙攣.pdf






 


posted by 斎賀一 at 20:38| その他