2025年05月16日

羊水過多・過少について

羊水過多・過少について

<院内勉強用>


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 「今日の臨床サポート」より抜粋し、勉強します。


1)羊水過多・過少は妊娠第2三分期など早い時期からの発症のほうが児予後不良例が多くなる。

  補足説明;
  妊娠三分期の区分(一般的な定義):

   区分          週数           期間の目安
  第1三分期(初期)   妊娠1週〜13週       受精〜約3ヶ月
  第2三分期(中期)   妊娠14週〜27週       約4〜6ヶ月ごろ
  第3三分期(後期)   妊娠28週〜出産まで    約7ヶ月以降〜出産

  羊水過多・過少は重症なほど児予後不良例が多くなる。
  胎児発育過剰例などに伴う軽度の羊水過多で第3三分期に軽快してくる例は、児予後良好な
  ものが多い。
  羊水量は産生(胎児尿がほとんど)と吸収(主に胎児燕下→消化管吸収、または破水により
  失う)のバランスにより決まる。
  羊水過多・過少は産生から吸収までのどこかの異常を表している。
  母体・胎児・付属物のいずれかの異常を示唆している。
  羊水過多では、軽度のもの、程度が軽快していくものは原因不明で児予後が良好なことが
  多いが、高度なものほど原因は判明しやすく、児の予後不良な可能性が上昇する。
  羊水過少では、一般に発症が早期であるほど児予後が不良である。(胎児異常、肺低形成
  など)
  羊水過多では子宮増大による早産や破水のリスク、過少では子宮収縮時の臍帯圧迫、第2三
  分期からの過少では、児の肺低形成などのリスクがある。
  妊娠第2三分期より発症した過多・過少では第3三分期発症の例より重症であることが多く、
  胎児異常など児の予後が不良である例が多い。
  過多・過少を疑った場合は、4週空けずに1、2週後に再検するなどの対応がよい。
  破水を原因とする羊水過少の場合はただちに入院管理となることが多いので、破水の除外
  診断は重要である。


2)診断・エコー
  羊水過多・過少の診断は超音波断層法で行うのがよい。
  羊水量の測定はAFI(amnioticfl uid index)または、羊水ポケット
  (maximum vertical pocket、MVP)の計測によるのが一般的。
  正常値は8cm≦AFI≦20cm、2cm≦MVP<8cm。
  AFIのほうがやや優れるとされるが、どちらも精度はあまり高くない。
  AFI≧25(24)cm、またはMVP≧8cmのとき、羊水過多と診断する。
  AFI<5cmまたはMVP<2cmのとき、羊水過少と診断する。

  日本産科婦人科学会では、羊水量が800mL以上の場合を羊水過多としている。
  (日本産科婦人科学会用語集改訂4版、2018)
  羊水過多に腹部膨満感、腹部緊張感・疼痛、呼吸困難、切迫早産などの症状を伴う場合を
  羊水過多症と呼ぶ。
  AFIは仰臥位の妊婦の腹部を、臍部を中心とした母体からみた上下左右の4区画に分ける。
  それぞれの区画内で、母体矢状断面に平行な断面として描出できる、羊水腔の床面に垂直
  な距離の最大値を測る。
  4区画の値を合計したものがAFIで、正常値はおよそ8〜20cmである。
  計測の際は、臍帯や胎児部分を含まない羊水腔の深さを測る。
  AFI≧25cm(論文によっては24cmを採用)を羊水過多、AFI<5cmを羊水過少とすること
  が多い。
  妊娠後半での計測を想定しているため、子宮底が臍高に達しない時期は、子宮を上下左右に
  分けて測るか、羊水ポケットで評価するとよい。
  羊水ポケットは一般に、仰臥位の妊婦の子宮内を全域観察して、描出される羊水腔の床面に
  垂直な方向の距離の最大値(最大[深]羊水ポケット:Single Deepest Pocket[SDP]、
  Maximum VerticalPocket[MVP])である。
  この際、計測する範囲内には臍帯や胎児部分を含まず、水平方向は少なくとも1cm以上の
  幅がある部位を計測する。
  胎児体表に平行で床面に垂直方向には、広くても胎児体表に垂直な方向(水平方向)には
  ごく薄い羊水腔を誤って計測しないように、計測部位を3次元的に観察して確認する必要が
  ある。羊水ポケット≧8cmを羊水過多、羊水ポケット<2cmを羊水過少とすることが多い。





私見)
 門外漢の私も、知識として知っておく必要があります。
 下記にエコー所見を掲載します。





        

 羊水 今日の臨床サポート.pdf









posted by 斎賀一 at 20:39| 婦人科

2025年05月14日

羊水過多は産後出血リスク

羊水過多は産後出血リスク

Risk factors for postpartum hemorrhage in pregnancies complicated
by polyhydramnios





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羊水過多は、産後出血のリスク因子とする論文が載っていました。

フランスからの報告です。
産後出血(PPH)は、分娩後24時間以内の性器出血が500 ml以上と定義され、世界的に妊産婦
死亡の主要な原因の一つです。
フランスにおいては、現在妊産婦死亡原因の第4位に位置しており、全体の11.6%の分娩にPPHが
合併すると報告されています。
羊水過多は、胎児の周囲に存在する羊水が過剰となる状態であり、羊水の産生過剰または吸収
障害によって起こるとされています。
国際データを用いたメタアナリシスによれば、羊水過多は全妊娠の0.2〜2%に合併するとされて
います。羊水過多はPPHの危険因子として文献において指摘されており、その病態生理は羊水の
過剰貯留による子宮の過伸展が子宮弛緩(アトニー)を引き起こすことにあるとされています。


1)方法
  2015年から2022年の間にルーアン大学病院産婦人科において、羊水過多(臨床的に
  2リットル以上、または超音波で羊水インデックスAFI>25cm、あるいは最大羊水
  ポケットDVP>8cmと定義)と診断されたすべての妊婦を対象に、後ろ向き単施設研究
  を実施しました。
  多胎妊娠および妊娠32週未満の早産例は除外しています。
  対象者は、分娩後24時間以内の出血量が500ml以上であるか否かにより、PPH群と非PPH群
  に分け、母体・妊娠・分娩の特徴を比較しました。
  分娩時に羊水過多を呈した437人のうち、32人は多胎妊娠、18人は極早産または非常に
  早期の早産であったため、除外されています。
  最終的に387人が研究対象として含まれ、平均年齢は31.8歳です。
  妊娠32週以上で単胎妊娠です。
  主要転帰はPPHの頻度。二次転帰は羊水過多の診断のタイミングです。

  PPHの有無により、以下の2群に分類されました。
  • PPHなし群:356人
  • PPHあり群:31人
  分娩方法では見ますと、帝王切開率はPPH群:61.3%、非PPH群:43.5%でした。
  オキシトシン使用(分娩中)で見ますと、全体:49.6%、PPH群:54.8%、
  非PPH群:49.2% (p = 0.54)です。
  投与量(単位/ml)は、平均 2.0〜2.4(差はなし)です。
  予防的オキシトシン未投与でみますと、PPH群:9.7%、非PPH群:2.3%(p<0.05)で
  有意差あり、未実施率はPPH群で4倍以上高い結果です。
  羊水過多の主な原因(病因)は特発性(参照群)、胎児奇形:OR=0.7、母体糖尿病:
  OR=1.2、巨大児(Macrosomia):OR=2.8です。
  巨大児が主因である場合、PPHリスクが約2.8倍に上昇(有意)しています。


2)結果
  2015年から2022年までの全妊婦において、羊水過多妊婦におけるPPH発生率は
  8.0%(35/437)であり、非羊水過多妊婦の5.1%(1,107/21,633)と比較して有意差が
  あった。(p=0.01)
  除外基準を適用後、387人のうち31人(8%)がPPHを経験した。
  PPH群では、予防的オキシトシン未使用率が有意に高かった。(2.3%vs9.7%, p<0.05)
  また、PPH群では帝王切開率が高かった(43.5%vs61.3%, p=0.06)が、有意差はみられ
  なかった。
  多変量解析では、帝王切開がPPHの独立した危険因子(OR=2.5[1.1–5.8])、予防的オキシ
  トシン投与が独立した保護因子(OR=0.1[0.1–0.4])であることが示された。


3)考察
  PPHリスクに影響する要因として、羊水過多の病因も重要であることが示された。
  単変量解析では、PPH群で巨大児の割合が有意に高かった。
  巨大児では子宮内の胎児体積が大きくなり、羊水による子宮の過伸展がさらに増悪し、
  結果として子宮弛緩(アトニー)による出血リスクが増すと考えられる。
  さらに、分娩管理もPPHリスクに影響する要因であることが示された。
  帝王切開はPPHリスクを有意に増加させる。(OR=2.6)
  この理由として、帝王切開における子宮切開(ヒステロトミー)操作が出血や弛緩を引き
  起こすことが挙げられる。
  本研究では、羊水過多妊娠における帝王切開率が45%であり、一般集団(21.4%)に比して
  顕著に高く、羊水過多そのものが帝王切開の強い適応となっていると考えられる。
  一方、予防的オキシトシン投与は唯一の保護因子として有意であり、PPHリスクを大きく
  低下させる。(OR=0.1)
  この知見は、一般集団でも同様に報告されており、オキシトシンが子宮収縮を促し、子宮
  弛緩を防止する薬理作用を持つことにより、PPHを予防するとされている。
  また、羊水除去術に関しては、羊水過多による子宮過伸展を軽減できるという病態的期待が
  あったが、本研究ではPPHリスクを減らす効果は確認されなかった。


4)結論
  羊水過多妊娠においては、帝王切開および予防的オキシトシン非投与がPPHの危険因子
  でした。
  本研究における母集団全体での産後出血(PPH)の有病率は、8%であった。
  予防的オキシトシン投与は、PPHの有意かつ独立した保護因子であることが確認された。
  リスクは0.1です。したがって、医療従事者は、PPHを予防するためにガイドラインに則った
  予防的オキシトシンの投与を確実に実施すべきであり、特に帝王切開が避けられない症例に
  おいては、オキシトシンの静脈持続投与の開始を検討する必要がある。





私見)
 本院でも感冒の妊婦さんが、婦人科で羊水過多を指摘される事があります。
 十分な管理を行えば心配ないようです。
 次回、門外漢の知識として診断法をブログします。











posted by 斎賀一 at 19:54| 婦人科

2025年03月21日

産後の子癇前症および高血圧性疾患の管理

産後の子癇前症および高血圧性疾患の管理

Management of Postpartum Preeclampsia and Hypertensive Disorders



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 産後の血圧を厳格に管理することが、合併症のリスクを減らし患者の転帰を改善するか
どうかは不明でした。
アメリカでは子癇前症の発症が全妊娠の3〜6%もあり、その中で5〜12%は産後の高血圧障害
で病院を受診しています。産後の血圧管理がその後の人生で心血管疾患の予防に繋がる事は、
十分に推測できます。
アメリカの産婦人科学会のガイドラインでは、150/100を治療のターゲットにしています。
しかしAHAは、血圧全般に対し130/80を目標に掲げています。
出産後の母体の死亡の60%が高血圧関連です。産後の高血圧は殆どが出産後4〜6日です。
4〜6週で、妊娠前の血圧に回復します。
しかし、産後の血圧を自己測定すると、80%以上の人が高血圧状態を維持していました。

本論文では収縮期血圧130/80mmHg未満を目標とした厳格な降圧治療が、産後高血圧患者の
救急外来受診を減少させるかを検討しています。


1)18歳以上の産後高血圧患者を2023年3月〜2024年3月にかけて前向きコホートで募集し、
  遠隔血圧モニタリングを用いて、血圧<130/80mmHgを維持する治療を行ないました。
  一方で、2021年2月から2023年2月までに血圧<150/100mmHgを維持するための治療を
  受けたレトロスペクティブコホートと比較されました。
  最終的には276人と429人の患者が、それぞれ前向きコーホート研究の厳格群と、レトロ
  スペクティブグループ(従来の管理)のコントロール群に残りました。
  厳格群 (130/80mmHg未満)は、遠隔血圧モニタリングを用いた厳格な血圧管理、
  コントロール群 (150/100mmHg未満)は、 過去の標準的な治療を受けた患者です。
  主要アウトカムは、高血圧性疾患による救急外来受診としています。

2)結果
  厳格群 (n=276) とコントロール群 (n=429) を比較しますと、
  高血圧性疾患による救急外来受診率は、厳格群が3.6% (10名)で、コントロール群が
  8.4% (36名)でした。リスク差は-4.8%でした。
  産後6週間の血圧は、厳格群の収縮期血圧が4.4 mmHg低下 、拡張期血圧が3.1 mmHg
  低下です。


結論)
  血圧管理が厳格なほど、救急外来受診や産後合併症のリスクが減少しました。 

(補足説明;
 子癇前症は、妊娠20週以降に発症する高血圧と臓器障害が特徴です。
 症状は多彩で、蛋白尿、肝腎機能障害、血小板減少、胎児発育不全(FGR)などがみられ
 ます。
 子癇は、子癇前症が進行して、けいれん発作(強直間代発作)が出現した状態を指します。
 産褥子癇は出産後48時間以内に発症することが多いですが、まれに出産後7日〜数週間
 以内に発症することもあります。
 妊娠中毒症という言葉は過去の用語で、現在は妊娠高血圧症候群(HDP)が正式名称です。
 HDP(Hypertensive Disorders of Pregnancy)には、以下の病態が含まれます。
 妊娠高血圧(Gestational Hypertension):高血圧のみで蛋白尿なし
 子癇前症(Preeclampsia):高血圧+蛋白尿
 子癇(Eclampsia):子癇前症に痙攣を伴う
 慢性高血圧合併妊娠:妊娠前から高血圧がある
 慢性高血圧合併子癇前症:慢性高血圧に子癇前症を合併)







私見)
 妊娠中並びに産後の血圧管理と尿検査は必須の様です。







本論文.pdf

妊娠と高血圧症.pdf

妊娠高血圧症候群.pdf

妊娠中の軽度慢性高血圧の治療.pdf









posted by 斎賀一 at 19:57| 婦人科