2018年11月12日

高尿酸血症患者に対する看護師指導の有用性

高尿酸血症患者に対する看護師指導の有用性
 
Efficacy and cost-effectiveness of nurse-led care involving
education and engagement of patients and a treat-to-target
urate-lowering strategy versus usual care for gout



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斎賀医院は今でもベテランの看護師が頑張っています。これからもズーット。




 雑誌Lancetに、高尿酸血症の患者さんに対して看護師の指導の方が実地医家の医師が行うより、
尿酸値の正常化と痛風発作の抑制に繋がったとする論文が出ています。


纏めてみますと

1) 英国でも痛風は増加傾向で、1997~2012年に掛けて1.5%~2.5%に増加しています。
   しかしその指導に関しては、未だ十分ではありません。実地医家の医師が指導しているので、
   時間的余裕が無かったり、患者さんのモチベーションも上がらないまま治療を受けるため、結果
   十分な理解が得られず、継続的な治療参画には至っていません。
   英国では、本来尿酸治療薬を服用すべき人の半分しか治療を受けていないとの事です。
   また、本来は治療薬を漸増すべきですが、最初から固定量で尿酸値の設定に向かって治療している
   のが現状です。そのため患者さんのアドヘアランス(服薬遵守)が低下してしまいます。
   しかも高尿酸血症や痛風に関して無理解もあり、全身疾患の一つと捉えない結果となっています。
    (misconception)

2) 対象は、一年前に痛風発作を起こした成人517名を登録しました。
   255名が看護士指導で、262名が通常の指導(実地医家)に振り分けています。
   一次転帰は2年後の尿酸値の正常化(6.0mg以下)としました。
   二次転帰は2年以内の痛風発作の回数、痛風結節、QOL、費用です。
   今回看護士指導の管理では、臨床家の十分な指導と同等の結果が得られています。
   1年後の指導で92%は尿酸値が6.0mg以下に到達しています。
   2年後では尿酸値の正常化は、看護師の方が95%に対して実地医家は30%でした。
   結果の表は下記のPDFをご参照ください。

3) 以前の研究でも薬剤師による指導で同様の効果がありました。
   薬剤師による到達率は35%に対して、実地医家では14%でした。

4) アメリカの学会のAmerican College of Physiciansでは、症状を緩和する治療目標のため
   尿酸値を目標とした目標治療(treat-to- target)は行わないようにとのガイドラインですが、
   そのエビデンスは無く、患者の関与もなくなってしまうと本論文では批判的です。





私見)
 糖尿病と似たところがあります。
 職員の皆さん、尿酸、痛風に関する文献をコピーしました。
 また、本院での尿酸治療のストラテジーを作成しますので、私の以前のブログを参照しながら患者さん
 の指導に頑張って下さい。






2 ua lancet.pdf

高尿酸血症ー2.pdf

高尿酸血症 (2).pdf

高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン.pdf














posted by 斎賀一 at 21:19| Comment(0) | 整形外科・痛風・高尿酸血症

痛風の原因は食事よりも遺伝子

痛風の原因は食事よりも遺伝子
            <ツイッター版>




 Medical-tribuneに、痛風の原因に関しての記事が載っていましたのでご紹介します。
雑誌BMJからの紹介記事です。
対象は18歳以上で高尿酸血症の治療薬や利尿薬の使用歴がなく、腎臓疾患又は痛風発作の既往が無い人を対象に16,760人(男性8,414人、女性8,346人)登録しました。
 DASH食や地中海食などの健康的な食事をしている人の方が尿酸値は低下していましたが、その変化率は0.3%程度でした。更に個々の食品に関して調べてみますと、尿酸値の変化は0.06~0.99%しかありませんでした。
 一方で遺伝子解析では、尿酸値の変化率は23.9%と頻度が高い塩基多型で説明できました。
この結果は限定的で、尿酸値に関しては健康な人を対象にしており、現に痛風発作の患者さんに直接関連するかも定かではありません。
 しかし論者も指摘していますように、「痛風は自己管理が悪いからだ。」との一般的な誤解が、却って患者の医療回避に繋がってはいないかと懸念しています。
高尿酸血症や痛風は、個人の自助努力のみでは修正不能とのエヴィデンスを提示していると、纏めています。





1 高尿酸血症.pdf








posted by 斎賀一 at 20:26| Comment(0) | 整形外科・痛風・高尿酸血症

2018年03月31日

尿酸値と痛風との関係

尿酸値と痛風との関係

Relationship between serum urate concentration and clinically
evident incident gout: an individual participant data analysis



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 痛風とは、尿酸が関節に沈着し、それを異物と認識した白血球が遊走してきて貪食をする炎症過程が
痛風発作です。従って尿酸値が高いだけでは、又沈着だけでは痛風発作は起きません。
しかし以前より言われていますが、6−7−8の理論といって尿酸値が6が正常、7が要注意、8で
痛風発作とされていました。患者さんにも8以上では5人に1人は痛風発作が起きるから注意しましょう
と指導していましたが、今回その辺の事情を示す論文が出ました。
(男性と女性で正常値が異なると言った誤った情報がありますが、これは女性が閉経前では尿酸値が
低いから平均値が当然低値となるのであって、正常とはかけ離れた問題です。つまり、正常値は男女
とも同じです。)


前置きはさておき本論文を纏めてみますと、

 1) 女性では尿酸値が高くても、男性に比して痛風になりにくいのは高尿酸血症になって3年間だけで、
    やがて10〜15年経つと男性と同等の痛風罹患率となる。
    つまり、女性では高尿酸に晒されるのが閉経後だから、高尿酸血症が長くなればなるほど痛風の
    罹患率は男女とも結局同じ様に増加する。

 2) 212,363人の痛風の既往のない人を対象に研究しています。
    平均経過観察期間は11.2年です。

 3) 痛風発作の累積を3年、5年、10年、15年と調べました。

 4) 最初のベースラインの尿酸値が6mg/dlと比較すると、15年間の長期に高尿酸血症に晒されると
    6.0~6.9では3倍、7.0~7.9では6倍、8.0~8.9では15倍、9.0~9.9では30倍、10.0以上では
    60倍の痛風発作率です。
    結論的には15年間の累積では6.0以下では1.1%であるが、10.0以上では49%の痛風発作の
    発生頻度であった。
    つまり性差、年齢、高尿酸血症の期間が痛風発作の要因となる。

 5) 中等度の高尿酸血症では痛風発作の頻度は低いし、高度な高尿酸血症でも必ずしも痛風発作に
    なるとは限らない。長期間でも発作が無い場合もある。
    なぜ痛風発作にならないかは尿酸の結晶形成を促進する因子、遺伝的背景、環境因子、
    炎症の反応の相違が関係しているかもしれないとしています。




私見)
 痛風発作の既往が無い人には、高尿酸血症があるからと言って直ちに薬物療法をしなくても良いかも
しれません。
 但し、心血管疾患との関係も問題視されていますので他の危険因子とも勘案して注意深く観察する
必要はあります。
  以前の私のブログも参照ください(尿酸で検索)



Relationship between serum urate concentration and clinically e.pdf









posted by 斎賀一 at 15:01| Comment(2) | 整形外科・痛風・高尿酸血症