2020年02月29日

痛風発作の治療

痛風発作の治療

 
Open-label randomised pragmatic trial (CONTACT)
comparing naproxen and low-dose colchicine for 
the treatment of gout flares in primary care
Roddy E, et al. Ann Rheum Dis 2020;79:276–284



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 痛風発作の治療に関しては教科書的に多岐に亘りますが、今回の論文では、鎮痛解熱剤(NSAIDs)
の中でもナイキサンが第一選択薬としています。


纏めてみますと

1) ・NSAIDsとしてナイキサン群
    痛風発作時に、ナイキサンを初回に750mg投与、その後8時間毎に250mgを7日間投与する。
   ・コルヒチン群
    痛風発作時にコルヒチン1tab(0.5mg)を1日3回処方し4日間処方する。
    (古典的には、コルヒチンを1日に随時6tabまで服用していましたが、下痢の副作用があるため
     最近では少量療法が主流です。)




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           今日の臨床サポートより




2) ナイキサン群200例とコルヒチン群199例を、疼痛スコアで1〜7日間比較しています。

3) 結果は、疼痛スコアで両者において差はありませんでした。
   ・副作用として、ナイキサン群はコルヒチン群と比較して
    下痢は20.3%対45.9%で、頭痛は10.7%対20.5%といづれもナイキサン群の方が優位
    でした。

4) 結論としては、ナイキサン群は速効性があり、副作用も少なくコストパフォーマンスが良い。




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5) 最後にナイキサンの投与量について、色々な文献より纏めてみました。
   日本ではナイキサン1tab(100mg)です。
  

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本邦ではセレコックス(100mg   200mg)です。






私見)
 従来はエビデンスより二フランを多用していましたが、今回様々な文献を検索しますと、ナイキサンが
 第一選択薬になっています。
 取り敢えず、下記の様に試してみます。

 ・ナイキサンを初回は2~3tab 、3時間毎に疼痛が軽快するまで
  最大1日3回まで。 翌日から3~6tab 分3を7日間
 ・プレドニンを初回は20mg~30mg、翌日より漸減して7~10日間
  5日間の短期も有効だが、再発に注意
  早期からの尿酸降下薬併用も可能
  (ナイキサンの場合も、意外に早期での併用が可能かもしれません。)
 ・再発を繰り返す場合はナイキサンの方が優位







痛風.pdf









posted by 斎賀一 at 15:29| Comment(0) | 整形外科・痛風・高尿酸血症

2019年01月08日

ステロイド性骨粗鬆症

ステロイド性骨粗鬆症
 
Glucocorticoid-Induced Osteoporosis
n engl j med 379;26 nejm.org December 27, 2018



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 雑誌NEJMに、ステロイド性骨粗鬆症の症例による総説が掲載されていましたので纏めてみました。
米国では成人患者のおよそ1%がステロイド製剤を処方されており、50歳以上では3%にまでなるとの
事です。


1) ステロイド関連の骨折は治療3か月以内で増加し、そのピークは12か月に到達します。
   一般に考えられている以上に早期に出現します。
   プレドニン換算で2.5mgから7.5mgに増加すると、50%の骨折リスクの増加となります。
   30mg/日で累積5g以上では、そのリスクは3~14倍となります。
   但し高用量のステロイド吸入では、そのリスクは1.10程度との報告です。
   ステロイドによる骨粗鬆症の機序は、下記のPDFをご参照ください。

2) ステロイドを中止すると、急激に骨折のリスクは低下する。
   現に中止により、骨量は6カ月すると明らかに増加している。
   ステロイドの間歇投与や過去の服用歴などでは、骨折のリスクは低下している。
   従って治療に際しては、なおざりにせず、きめ細かく治療戦略を練る事が大事だとしています。
   少なくともステロイドを使用している患者に対しては、40歳になった時点で骨量を判定し、骨粗鬆症
   の予防薬を検討する事が必要がある。

3) カルシウムとビタミンDのサプリは、少量のプレドニン(5mg/日)に対するリスクは軽減するが、
   高用量の場合は(平均23mg/日)効果が無い。

4) 予防の薬物療法は、50歳以上か閉経後の女性に対してのエビデンスがあり適応となるが、若い人に
   関してはガイドラインはない。
   ビスホスホネートが第一選択
   NNTは31である。 (ビスホスホネートを服用した31人に対してその効果は1人)
   ビスホスホネートの副作用(顎骨壊死、非定型骨折など)は、3〜5年服用で0.01%である。
   エビスタも適応がある。

5) 運動、転倒の予防、カルシウムとビタミンDのサプリなどを指導する。




私見)
 日本のガイドラインとほぼ同じですが、下記のPDFもご参照ください。
 最近では10年後のリスク評価もガイドラインに含まれているので、アクセスを下記に載せました。
 職員の皆さん、私の以前のブログ「骨粗鬆症」を検索して、復習してください。
 また、この機会に骨粗鬆症の薬剤に関しても纏め、勉強しました。
 下記のPDFをご参照ください。




 ◆ 参考文献

   Medical Practice v35 n11 2018
   Medical Practice v29 n11 2012
   今日の臨床サポート;骨粗鬆症の薬理(多大なご迷惑をお掛けします)
   その他



   下記のネットで10年リスクを計算してください。

   https://www.sheffield.ac.uk/FRAX/tool.aspx?country=3





骨粗鬆症の文献より.pdf

骨粗鬆症の薬剤.pdf

ステロイドの作用.pdf

ステロイド性骨粗鬆症 10年ぶりにGL改訂.pdf

骨粗鬆症の一例.pdf

循 骨粗鬆症に対してPTH intactの測定を.pdf

















posted by 斎賀一 at 19:47| Comment(0) | 整形外科・痛風・高尿酸血症

2018年11月17日

高尿酸血症および痛風の治療戦略

高尿酸血症および痛風の治療戦略

業務連絡用、斎賀医院における独断版




 戦略とは独断と認識しています。誰が反対しても、現時点ではそう判断して戦わなくてはいけない
と言う意味です。しかし、自分が不利になった戦況では、手のひら返しで方向転換をする必要、又は
覚悟が必要です。



 痛風に関して本院での戦略をブログしますが、マル秘事項であることを職員の皆さん認識してください。



 1) 痛風は尿酸が血液の中で多くなるために発症するのでなく、何らかの機転で尿酸が関節に沈着
    (析出)し、それを排除しようと白血球が出てきて炎症が起るため発赤、疼痛が出現する。
    やがて白血球が尿酸を食べつくせば、自然に痛風発作は治る。又、白血球が出てこなければ
    発作も起きない。
 
 2) 痛風発作と鑑別を要するのは化膿性関節炎
    痛風発作時には尿酸値が低下している事もあり、血液検査では鑑別診断はできない事がある。

 3) 痛風発作時に尿酸降下薬を服用すると尿酸値の高低を招き、却って尿酸が関節に析出して
    発作の増悪に繋がる。よって尿酸降下薬の服用は発作が消褪して、一定の期間が必要
    (一般的には2週間後。) しかし、服用しようとすると発作を繰り返すことがあり、
    尿酸降下薬を開始するタイミングが逸する事も多く、本院では服用薬の漸増に注意して、
    ある程度早めの開始を心掛けている。
    但し、継続服用時に発作が出現した場合は中断する必要はない。

 4) 腎障害が無ければ、発作時の疼痛に対して鎮痛解熱薬(NSAIDs)を通常の倍量を処方する。
    副作用も心配で、不要な服用を避ける意味で患者さんより一日おきに連絡してもらい、
    服用の漸減か中止の指示を電話で行う。
    疼痛が強い時又は、腎障害がある時は最初よりステロイド薬(プレドニン)を併用する。
 
 5) 一定期間を経過したら、尿酸降下薬を処方する。
    本来は肝臓での尿酸産生抑制薬と、腎での尿酸排出促進薬の適応に関して検査が必要だが、
    本院では主に産生抑制薬を主体に処方している。
    処方する際には漸増が基本
   
    本院での尿酸降下薬は、
    
     ・尿酸産生抑制薬として、フェブリック 、ザイロリック 、ウリアデック、トピロリック
     ・尿酸排泄促進薬として、ユリノーム
      この際に尿酸結石の予防のために、ウラリットを併用処方する。
     ・血圧降下薬で、尿酸を低下させる作用も有するものとして、ニューロタン


 6) 痛風発作時での処方
     
     ・NSAIDs(鎮痛薬)として、二フランの倍量、ロキソニンの倍量
     ・経口ステロイドとして、プレドニン(5mg)錠
     ・白血球遊走の抑制として、コルヒチン少量を継続服用


 7) 生活指導
  
     ・管理栄養士と伴に生活習慣の改善を行う
     ・適度な運動は必要だが、過剰な負荷は痛風発作を誘発
     ・十分な水分摂取
     ・尿酸値の低下により薬剤の漸減も可能であるが、基本的に継続服用を指導




私見の私見)
 前のブログでも記載しましたが、看護師の皆さん、上記の内容を分かりやすく患者さんに説明し、
薬剤のアドヘアランスを高めてください。又、小雑誌も参照して、高尿酸血症が全身疾患である事も
指導してください。





posted by 斎賀一 at 16:30| Comment(0) | 整形外科・痛風・高尿酸血症