2022年11月21日

痛風

痛風
 
Gout
 [N Engl J Med 2022;387:1877-87]


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 雑誌NEJMに痛風について総説が載っています。up to dateの内容ですので参考になりました。


1) 痛風は時間と共に重症化します。
   高尿酸血症から痛風結節が形成され、関節の破壊が生じるのは15%と言われています。
   しかし、この高尿酸血症は診断の重要なツールですが、痛風のリスク因子としては十分で
   なく、痛風患者の3〜5倍の患者数があり、その他痛風に至る因子としては遺伝、男性、
   年齢、食生活、肥満、腎障害、服用している薬剤等の多因子が関与しています。

2) 痛風発作の起きやすい部位は足の拇指、アキレス腱です。
   痛風結節は肘関節など色々な部位で生じます。
   診断の基本は間接腔内の穿刺による尿酸結晶の証明ですが、非侵襲的な方法として
   レントゲン、MRI、エコー検査があります。
   血清尿酸値は特異度が低いです。15年間尿酸値が10以上でも痛風発作がない場合もあり、
   逆に痛風発作時に尿酸値が正常の場合もあります。(尿酸が間接腔に析出するためと
   思っていましたが、炎症自体が血清尿酸値を下げるように作用するようです。)
   尿酸降下薬を服用していないで数回尿酸値を測定し正常範囲の場合は、痛風以外の疾患を
   鑑別する必要があります。

3) スタディによりますと、ザイロリック800mgとフェブリク120mgは同程度の効果です。 
   尿酸降下薬は漸増するのが基本で、急激に増量しても効果は同じとのデータです。
   高尿酸血症がない人でもコルヒチンを服用すると心血管疾患の予防になるとの研究結果も
   あります。しかしどの程度の期間が必要かは不明です。
   ザイロリックは慢性腎臓病の腎機能を低下はさせないようですが、極めて稀ながら過敏症
   のため重篤な肝障害が起きます。特に慢性腎臓病の患者に起きやすいようです。

4) 高尿酸血症を悪化させる薬剤として、降圧利尿薬、βブロッカー、ACE阻害薬、ARBがあり
   ます。但しARBのニューロタンは尿酸を下げるように働きます。
   糖尿病の治療薬のSGLT-2阻害薬も尿酸を下げる方向に作用します。メトグルコも細胞内
   炎症を抑制し痛風発作を抑制します。

5) ダイエット、アルコール摂取、脱水、果糖摂取、プリン体の食事などのライフスタイルの
   改善に対する研究はバイアスが掛かっており効果は限定的とされています。

6) 今後の課題
   ・高尿酸血症と脳神経の退行変性とは逆の関係
    (高尿酸血症の人は認知症にならないと、以前より患者さんと私を慰めています。)  
   ・抗炎症薬をいつまで続けるか
   ・治療目標値
   ・ザイロリックは血管内皮の機能改善のため合併する心血管疾患に有利に働くか
   ・2018年のスタディでフェブリクが心血管疾患の死亡率を上げるとのデータから、
    FDAはフェブリクをブラックボックスに入れましたが、その後のFAST研究では疑義が
    晴れています。

7) 結論
   ガイドラインでは、痛風発作時では少量のコルヒチンと関節内のステロイド注入を勧めて
   います。解熱鎮痛薬と経口ステロイドは、合併症によっては避けるべきとしています。
   痛風発作時でも、少量コルヒチンと少量のザイロリックの併用は可です。








私見)
 足の拇趾の発赤と高尿酸血症だけで痛風を診断するのなら簡単です。
 本院も整形外科専用のエコー機を用いて鑑別して参ります。
 日本のガイドラインは若干異なりますので、「今日の臨床サポート」を拝借します。
 目次を付けましたので、ご利用ください。 







1 痛風 画像.pdf

2 痛風画像集gout echo   Bing images.pdf

3 高尿酸血症と認知症.pdf

4 高尿酸血症今日の臨床サポート.pdf















posted by 斎賀一 at 20:32| 整形外科・痛風・高尿酸血症

2022年11月05日

変形性膝関節症にウオーキングは有効

変形性膝関節症にウオーキングは有効

Association Between Walking for Exercise and Symptomatic
and Structural Progression in Individuals With Knee Osteoarthritis




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 1) 2004年〜2006年に50歳以上の変形性膝関節症患者を登録しています。
    サーベランスは、2012〜2014年の3年間行っています。
    膝関節痛の頻度と、レントゲン所見を調べています。
  
    ・ 新たな膝関節痛の頻度 
    ・ レントゲンの重症度の悪化 
    ・ 関節間隙の狭小化 
    ・ 膝関節痛の改善度です。

    1,212名が登録されました。45%が男性で、73%がウオーキングを
    取り入れています。
    平均年齢は63.2歳、BMIは29.4
 
 2) 新たな膝関節痛の頻度は、ウオーキング群の方が少なく、
    危険率は0.6です。
    関節間隙の狭小化も、ウオーキング群が少なく、危険率は0.8でした。
    ウオーキングの効果は、変形性膝関節症のタイプでも異なると
    想定しました。
   

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    Valgusは16%、varusは48%、normalは36%の頻度です。
    ウオーキングはValgusで効果が一番少なく、varusは構造の
    進展予防に効果があり、normalは、疼痛頻度改善に
    効果がありました。
 

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私見)
 Step療法でなく、ウオーキングが理にかなったエクササイズとしています。
 当然ながら重度の変形性膝関節症は、自らウオーキングをしないので本研究の
限界があります。しかし、軽い刺激で壊しては作り変える繰り返しが必要の様
です。ただし、あまりの刺激は私を含めて高齢者にとってぼっこわれます。
 職員の皆さん、ご注意ください。




本論文 ウオーキングArthritis.pdf











posted by 斎賀一 at 18:54| 整形外科・痛風・高尿酸血症

2022年09月17日

足底筋膜炎・パンフレット

足底筋膜炎・パンフレット

Plantar fasciitis



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 慢性疾患で通院中の患者さんが、帰りがけに足の痛みをついでながらに訴える事があります。
整形外科に何故いかないのかと思うのですが、これが町医者のお仕事です。
足底筋膜炎もよくあるその中のひとつです。
パンフレットがありましたので、日本語訳を作成しました。ご参照ください。







足底筋膜炎planter-fasciitis 2.pdf

planter-fasciitis.pdf










posted by 斎賀一 at 16:49| 整形外科・痛風・高尿酸血症