2018年10月17日

本院における甲状腺機能検査のアルゴリズム

本院における甲状腺機能検査のアルゴリズム
          <業務連絡用>



 先日、妊娠中における甲状腺機能低下の検査についてブログしましたが、検査項目が煩雑で分かりにくかったようです。本院で勉強会を開催するに当たり、看護師がアルゴリズムを作成してくれました。
無償の奉仕に本当にありがとう。
 職員の皆さん、下記のPDFを参照して勉強してください。






甲状腺機能検査.pdf

妊娠中の甲状腺機能低下の治療.pdf








posted by 斎賀一 at 18:32| Comment(2) | 甲状腺・内分泌

2018年10月01日

妊娠中の甲状腺機能低下症

妊娠中の甲状腺機能低下症



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 最近患者さんで誤解がありましたので、uptodateより調べてブログにしてみました。
職員の皆さんも参考にして下さい。
その前段として書籍から抜粋しましたので、下記のPDFより先ず勉強してください。


UPTODATEを纏めますと

1) 下記の治療戦略のPDFによく纏められていますので、これも是非ご参照ください。

2) 基本的には妊娠に関係なく、治療戦略をする。

3) 妊娠初期にはhCGの関係でTSHが低下している。

4) 潜在的機能低下症でも、TPOが陽性の場合は合併症が多い。

5) 妊娠時の顕性甲状腺機能低下症での合併症は
   ・妊娠中毒症、高血圧
   ・流産
   ・不安定な胎児の脈拍
   ・32週以前の早産
   ・低出生体重児
   ・出産後の出血
   ・子供の精神発達の懸念

6) 潜在性甲状腺機能低下症の場合は論争があり、明白でない点があります。
   出生児の精神発達に関しても論争があり、結論されていない。
   チラージンSの服用の効果についても結論されていない。
   しかし、TPO抗体が陽性の場合は合併症の危険がある。





私見)  
 繰り返しますが、薬の副作用よりも自己抗体の判定が大事です。
 潜在性の場合には一般的に過剰な心配はありませんが、一回はTPO抗体を測定する事と、4週間に
 一度はTSHとFT4(場合によりT4)を検査する事が大事です。
 甲状腺の薬剤は、亢進も低下も管理を十分にすれば心配ないものと思いますし、ガイドラインが確立
 しています。




【参考書籍】

 甲状腺疾患の診かた、考えかた : 田上哲也   中外医学社
 伊藤病院ではこう診る : 伊藤公一
 外来でどう診る 甲状腺疾患 : 深田修司   日本医事新報社
 小児期の甲状腺疾患の診断と治療 : 荒田尚子   雑誌小児科 V54 N8 2013
 日本医師会雑誌 : V141 N11   特集 甲状腺疾患



 TPOとの関係の文献も掲載しました。



妊娠と甲状腺.pdf

妊娠 甲状腺機能低下 ストラテジー.pdf

tpo 妊娠 甲状腺機能低下.pdf

















posted by 斎賀一 at 19:27| Comment(0) | 甲状腺・内分泌

2018年06月29日

潜在性甲状腺機能亢進症

潜在性甲状腺機能亢進症
 
Subclinical Hyperthyroidism
  n engl j med 378;25 nejm.org June 21, 2018



0629.PNG

         

 意外に、潜在性甲状腺機能亢進症は外来でも多い疾患です。
「当座は治療しなくても良いのですが、十分な経過観察が必要。」と患者さんに説明しています。
診断基準は、書籍から調べて下記のPDFに収めました。

 今回NEJMに総説(vignette)が載っていましたので纏めてみました。
さすがにメジャーな雑誌で、よく纏めてあり認識を新たにしました。


1) 甲状腺刺激ホルモンTSHが低値でも、甲状腺ホルモンのFT4かFT3が正常範囲の場合を、
   潜在性と定義します。
   TSHが0.1~0.4の軽症が65~75%で、残りがTSHが0.1以下のsevere(重症型?)です。
   TSHが0.1以下の場合に、顕性甲状腺機能亢進症に進展する可能性が高い。

2) 原因は内因性と外因性があります。
   内因性としては甲状腺腫、機能性甲状腺腺腫、バセドウ病があります。(潜在性の40%が進展
   する。)アメリカでは寧ろ外因性の方が多い。サプリメントに甲状腺ホルモンが含有している。
   内因性と外因性は検査では区別がつかないので、十分な問診が必要となる。外因性が予後にどの
   程度悪影響を及ぼすかは不明。

3) 潜在性と言えども合併症の危険がある。
   ○ 心血管疾患 ; 頻脈、期外収縮、心不全、心房細動、冠疾患
   ○ 骨粗鬆症
   ○ 認知症

4) 高齢者は症状が無い事が多いが、若い人では軽症ではあるが甲状腺腫大や眼症状などの症状を
   呈する。しかし振顫、頻脈などは少ない。

5) 治療は
  何らかの理由で甲状腺ホルモンを服用している人には最小限に指導する。
  65歳以上で顕性でなくても(free-T4が正常範囲)診断上でバセドウ病の場合は(TRAbが陽性)メルカ
  ゾールの適応も視野に入れる。
  機能性甲状腺腺腫ではアイソトープ治療も考慮するが、バセドウ病では眼症状の悪化を招く。
  (日本では稀とされています。)

6) 60歳以上で心房細動、骨粗鬆症があれば軽症(TSHが0.1以上)でも治療を考慮。また経過が進行  
   性であったり、TSHが0.1以下の場合も治療を考慮する。




私見)
 潜在性と言えどもバセドウ病を想定して検査もして(TR-Ab)経過観察をする必要があります。
 特に60歳以上の基礎疾患がある人は注意が肝心です。
 グラフは下記のPDFに纏めました。
 その他参考PDFも掲載しました。


 
 ◆参考書籍

  外来でどう診る、甲状腺疾患 : 日本医事新報社   深田修司氏




本論文より.pdf

書籍より.pdf

ドクターサロン潜在性甲状腺機能冗進症.pdf

潜在性甲状腺機能冗進症.pdf












posted by 斎賀一 at 19:50| Comment(1) | 甲状腺・内分泌