潜在性甲状腺機能亢進症
Subclinical Hyperthyroidism
n engl j med 378;25 nejm.org June 21, 2018
意外に、潜在性甲状腺機能亢進症は外来でも多い疾患です。
「当座は治療しなくても良いのですが、十分な経過観察が必要。」と患者さんに説明しています。
診断基準は、書籍から調べて下記のPDFに収めました。
今回NEJMに総説(vignette)が載っていましたので纏めてみました。
さすがにメジャーな雑誌で、よく纏めてあり認識を新たにしました。
1) 甲状腺刺激ホルモンTSHが低値でも、甲状腺ホルモンのFT4かFT3が正常範囲の場合を、
潜在性と定義します。
TSHが0.1~0.4の軽症が65~75%で、残りがTSHが0.1以下のsevere(重症型?)です。
TSHが0.1以下の場合に、顕性甲状腺機能亢進症に進展する可能性が高い。
2) 原因は内因性と外因性があります。
内因性としては甲状腺腫、機能性甲状腺腺腫、バセドウ病があります。(潜在性の40%が進展
する。)アメリカでは寧ろ外因性の方が多い。サプリメントに甲状腺ホルモンが含有している。
内因性と外因性は検査では区別がつかないので、十分な問診が必要となる。外因性が予後にどの
程度悪影響を及ぼすかは不明。
3) 潜在性と言えども合併症の危険がある。
○ 心血管疾患 ; 頻脈、期外収縮、心不全、心房細動、冠疾患
○ 骨粗鬆症
○ 認知症
4) 高齢者は症状が無い事が多いが、若い人では軽症ではあるが甲状腺腫大や眼症状などの症状を
呈する。しかし振顫、頻脈などは少ない。
5) 治療は
何らかの理由で甲状腺ホルモンを服用している人には最小限に指導する。
65歳以上で顕性でなくても(free-T4が正常範囲)診断上でバセドウ病の場合は(TRAbが陽性)メルカ
ゾールの適応も視野に入れる。
機能性甲状腺腺腫ではアイソトープ治療も考慮するが、バセドウ病では眼症状の悪化を招く。
(日本では稀とされています。)
6) 60歳以上で心房細動、骨粗鬆症があれば軽症(TSHが0.1以上)でも治療を考慮。また経過が進行
性であったり、TSHが0.1以下の場合も治療を考慮する。
私見)
潜在性と言えどもバセドウ病を想定して検査もして(TR-Ab)経過観察をする必要があります。
特に60歳以上の基礎疾患がある人は注意が肝心です。
グラフは下記のPDFに纏めました。
その他参考PDFも掲載しました。
◆参考書籍
外来でどう診る、甲状腺疾患 : 日本医事新報社 深田修司氏
本論文より.pdf書籍より.pdfドクターサロン潜在性甲状腺機能冗進症.pdf潜在性甲状腺機能冗進症.pdf