2019年10月15日

副甲状腺機能亢進症と腎結石・骨粗鬆症の関係

副甲状腺機能亢進症と腎結石・骨粗鬆症の関係
 
Predictors of Nephrolithiasis, Osteoporosis,
and Mortality in Primary Hyperparathyroidism



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 尿管結石、腎結石、骨粗鬆症の患者さんの場合に一度は副甲状腺機能亢進症を疑うのは定説ですが、どの程度それらの疾患が副甲状腺機能亢進症の予測因子となるかは不明です。
それに関する論文が掲載されていますので、ブログにしました。


纏めてみますと

1) 英国では、副甲状腺機能亢進症の発生は年間で0.86%です。
   副甲状腺機能亢進症は腎結石や骨粗鬆症のリスク因子でもあり、心血管疾患との関連性も指摘
   されています。
   2006~2014年の間で、新たに診断された611例の副甲状腺機能亢進症患者を対象に研究して
   います。
   診断は血清カルシウムとPTH(副甲状腺ホルモン)によります。
   intact PTHを主に採用しています。最近ではルーチンで、血清カルシウムを測定するために無症状
   の副甲状腺機能亢進症が診断されるようになっています。しかしその診断的ストラテジーは確立され
   ていません。

2) 副甲状腺機能亢進症患者の13.9%が腎結石で、その多くが以前から腎結石を指摘されていました。
   スクリーニングで見つかった無症状の腎結石はたったの4.7%で、その率は一般人と同じでした。
   骨粗鬆症は48.4%に認められましたが、高齢者、低体重、低クレアチニンが骨粗鬆症の独立因子と
   して認められ、副甲状腺機能亢進症の明白な予測因子としては低い様です。
   カルシウム高値が死亡率に関係しますが、直接的に副甲状腺機能亢進症と死亡率とは関連性が
   認められないとの事です。
   結局、骨粗鬆症と腎結石は、副甲状腺機能亢進症の予測因子には成りにくいとの結論です。






私見)
 副甲状腺機能亢進症を診断するために、腎結石と骨粗鬆症との関連性から進めるのは確率的に低い
 様です。 詳しい内容は下記のPDFの表ご参照ください。
 実地医家の場合、診断することがある意味で信念です。
  (私は開業以来「早老症」を3例見つけています。  何故って ...。)
 今回、副甲状腺機能亢進症の診断について再勉強しましたので、次回のブログで職員の皆さんと検討
 しましょう。







副甲状腺 本論文.pdf










posted by 斎賀一 at 20:53| Comment(0) | 甲状腺・副甲状腺

2019年07月01日

甲状腺疾患と妊娠

甲状腺疾患と妊娠
           〜業務連絡を兼ねて〜



 本院でも甲状腺疾患の妊婦の方が来院されますが、定期的な検査(原則として1か月に1回の受診)を要します。
その解釈も通常とは異なり、妊娠による特別な注意が必要です。
予め患者さんにも予備知識を持って理解して頂き、万全を期したいと思います。


先ずuptodateより纏めてみました。

1) 妊娠全般としては
   甲状腺刺激ホルモン(TSH)の正常値は
     妊娠初期 ; 0.1~2.5
     妊娠中期 ; 0.2~3.0
     妊娠後期 ; 0.3~3.0
   
   甲状腺ホルモンのfree T4は、妊娠中には信頼できるdirect free T4を測定するのが最善ですが、
   残念ながらできないので、その代わりにtotal T4を測定する。
   妊娠中はTBGが増加するので、正常の1.5倍以上を亢進症とする。

  ・甲状腺機能亢進症は、妊娠初期でTSHが0.03~0.1の時にfreeT4とtotal T4(甲状腺ホルモン)を
   測定する。はっきりしなければTRab、TGUを測定する。
  ・甲状腺機能低下症は、妊娠初期でTSHが2.5以上の時にfreeT4とtotal T4を測定する。
   潜在性機能低下ではTSHが上記の範囲以上で、且つfreeT4及びtotal T4が正常の時に疑う。
    (原則、本院では妊娠中はfree T4、total T3,T4の3つを測定する。)

2) gestetional transient thyrotoxicosis(GTT) = 妊娠一過性甲状腺中毒症
   治療の必要は原則無い。
   total T4又はtotal T3が正常の1.5倍で治療開始
   治療目標はtotal T4が18mcg/dl
    (本院ではこの場合もtotal T4も測定します。)

3) 妊娠20週でTRabを測定して正常の3倍以上の時には、新生児のモニタリングが必要

4) 妊娠後の甲状腺機能亢進症の再炎は、4~8カ月に出現するので注意が必要

5) 妊娠中は正常値が変動するので注意が必要
    (下記のPDF参照)





私見)
 その他の知見は、下記の文献より引用して下記のPDFに纏めましたので、ご参照ください。



  
◆文献;

  日本医師会雑誌 ; 第141巻 第11号  2013年2月
  medicalPractice ; vol.31 no.11  2014
  甲状腺疾患の診かた、考えかた ; 中外医学社
  内分泌糖尿病ー代謝内科   32(5): 4 62-467,2 011
  Uptodateより





甲状腺と妊娠.pdf













posted by 斎賀一 at 20:36| Comment(1) | 甲状腺・副甲状腺

2019年05月27日

潜在性甲状腺機能低下症の治療ガイドライン

潜在性甲状腺機能低下症の治療ガイドライン
 
Thyroid hormones treatment for subclinical hypothyroidism:
a clinical practice guideline



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 潜在性甲状腺機能低下症の患者さんが多く来院されています。
以前の私のブログでも紹介しましたが(甲状腺機能低下症で検索)、潜在性甲状腺機能低下症とは、
甲状腺刺激ホルモンTSHが高値で、甲状腺ホルモンfreeT4が正常値の場合です。
 今回、雑誌BMJより緊急の提言として、実際的なガイドラインが載っています。
いろいろなガイドラインが提唱されてから、甲状腺治療薬(チラージンS)の処方が増加しているとの事
ですが、そのためのデメリットも懸念され、実際的なガイドラインが提言されました。


アメリカの代表的な学会のガイドラインを紹介しますと

#)NICE,2018より
   ・TSH(甲状腺刺激ホルモン)が10ml単位以上
     70歳未満では治療
     70歳以上では経過観察
   ・TSHが4~10単位では
     65歳未満では症状にて治療
     65歳以上では経過観察

#)ATA,2012より
   ・TSHが10以上で治療
   ・TSHが10以下では、機能低下の症状がある場合、自己抗体陽性、心血管疾患や心不全のある
    場合は治療を考慮

今回のBMJのガイドラインは、更に踏み込んだ実地的なガイドラインです。


纏めてみますと

1) 潜在性甲状腺機能低下症(SCH)に対してのホルモン補充療法(チラージンS)の治療は、原則的に
   控えるべきである。65歳以下でも同様に考えられる。

2) SCHの多くはTHSが4~10の間であり、その値はストレスで変動するし、一過性の事もある。
   特に高齢者では、正常値として評価する事もある。
   一回の測定で評価すべきでなく、経過観察が必要

3) SCHの症状として想定されているのは、倦怠感、筋肉の痙攣(cramp)、寒さに敏感、乾燥肌、
   声の変化、便秘などが挙げられています。
   しかし、これらの症状は特異的でなくSHCを有していない人でも認められ、チラージンの治療をしても
   必ずしも好転するかのエビデンスはない。

4) 色々なガイドラインに従えば、TSHが10以上で治療としているが、本ガイドラインではTSHが
   20以上としています。
   20以下では経過観察

5) 本ガイドラインが適応されない除外項目(つまり下記の事項では治療も考慮)は
    ・妊娠可能な女性 (TSHとTPO抗体の測定が必要) 
    ・TSHが20以上でfreeT4が正常 (この場合は顕性甲状腺機能低下の可能性がある。)
    ・症状がある場合 (しかしこの場合も明白なエビデンスは無い)
    ・30歳以下の若い人
    ・妊婦
    ・既にチラージンを服用中の場合





私見)
 私なりに理解しますと
  ・SCHの患者でTSHが20以下では、経過観察か再検
   (つまり基準が20以上に引き上げられています。)
  ・但し妊婦や妊娠希望の女子、又は30歳以下ではその限りでない。
   (妊婦の場合のストラテジーは、以前の私のブログをご参照ください。)





T甲状腺低下.pdf

2 妊婦の治療戦略.pdf

3 橋本病と無痛性甲状腺炎について.pdf












posted by 斎賀一 at 19:46| Comment(0) | 甲状腺・副甲状腺