2020年07月18日

甲状腺結節の診断

甲状腺結節の診断
 
Thyroid Nodules: Advances in Evaluation and Management


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 エコー検査の際に偶然、甲状腺に腫瘤を見つけることがあります。
大まかに言って下記の疾患を鑑別していきます。


・腺腫様甲状腺結節
  一見、良性の腺腫様に見える過形成疾患です。
  時間の経過とともに濾胞性変性、線維化、石灰化、骨化、出血という二次的変化が起きます。
  上皮が濾胞内腔に乳頭状に一見増殖することがあり、乳頭癌と誤診しないよう注意が必要です。
   (飯島病理より)

・腺腫様甲状腺腫
  上記の腺腫様甲状腺結節が多発している場合です。病理的には過形成疾患です。
  言葉的に注意が必要です。良性の腺腫に見えるが単に甲状腺が腫れている、つまり甲状腺腫です。
  (脾臓が腫れれば脾腫といいますが、甲状腺が腫れているから甲状腺腫ということになります。
   外国ではgoiterと言って混乱が生じません。)

・良性の甲状腺濾胞性腺腫
  さすがに腺腫は甲状腺から言葉的に離れています。
  単純性腺腫、コロイド腺腫、好酸性細胞腺腫、異型腺腫があります。
  (ルービン病理より)
  異型腺腫は、病理的にも癌との鑑別が困難です。

・甲状腺癌
  乳頭癌と濾胞癌がありますが、細胞の形で決めてしまいますので乳頭癌が多くなります。


 甲状腺の結節を鑑別するのは、実地医家にとってはかなりしんどいです。
勉強すればするほど袋小路に入ってしまいます。
勢いで専門家に紹介することが多いのですが、その際に一度単純に考えて、それから詳細に検索した
方がよい場合があります。
それにぴったりの論文が雑誌american family physicianの総説に載っていましたので、
纏めてみました。


1) 甲状腺に結節病変が見つかるのは、68%といわれています。
   しばしば偶然に発見され、ほとんどが良性です。甲状腺刺激ホルモン(TSH)が正常、または高値の
   場合は、原則としてFNA(穿刺細胞診)が勧められる場合もありますが、一般的には低エコーの充実
   性で1cm以上の結節性病変の場合に推奨されています。

2) 最近では、細胞診に分子生物学的診断を併用する傾向です。
   残念ながらエビデンスが十分でない点と長期予後のデータに乏しく今後の研究が待たれますが、
   臨床家も積極的に取り入れることが大事です。

3) 悪性の可能性があれば、6〜9ヶ月のエコーの再検が必要です。

4) 完全な嚢胞性(cystic)の場合やスポンジ状または嚢胞性が優位の場合は、ほとんどが良性のため
   2cm以上の場合のみFNAを勧めます。
   もしもFNAを行わない場合は、12~24ヶ月後のエコー再検を推奨します。

5) 実地医家の場合は結節が増大傾向の場合は紹介が必要であるが、繰り返しのFNAで悪性の診断が
   なければ、その後はエコーのみの経過観察で増大に注意すればよい。




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私見)
 参考文献を下記のPDFに掲載します。
 さすがに厚かましい私でも、ガイドラインのテキストは一部とさせていただきます。
 閲覧希望の方は医院長に申し出てください。または是非購入してください。






甲状腺エコー 伊藤病院.pdf

甲状腺腫瘍の超音波診断.pdf

抜粋.pdf








posted by 斎賀一 at 16:33| Comment(0) | 甲状腺・内分泌

2019年10月16日

副甲状腺機能亢進症の診断

副甲状腺機能亢進症の診断
          <業務連絡用>



本院における副甲状腺機能亢進症のストラテジーを纏めてみました。
1) スクリーニングにて、電解質の項目にカルシウムを追加する。
   血清アルブミンが低値の場合は、下記の補正式を用いる。

   血清補正Ca=実測Ca+[4−アルブミン]

  例えばAlb;3.3g/dl Ca;9.8mg/dlでは
    9.8+(4−3.3)=10.5mg/dlとなる。


2) 副甲状腺機能亢進症を疑っている場合やカルシウムが高値の場合は
   副甲状腺ホルモンを測定

   intact PTH ; 従来の測定方法
   whole PTH ; 最近の方法で、本院もこれが主体となります。
     ※下記のPDF参照

3) 家族性低Ca尿性高Ca血症(FHH)を鑑別する。
   副甲状腺機能亢進症の40%が高Ca血症で、残りの60%は正常
   24時間蓄尿において、下記の式でCa/Cr clearance ratioを求める。

   Ca/Cr clearance ratio = [24-hour urine Ca x serum Cr] ÷ [serum Ca x 24-hour
    urine Cr]

   結果は0.01以下でFHHの可能性、0.02以上でFHHは否定的
   0.01~0.02は鑑別を要する。

   uptodateによりますと、随時尿(spot尿)でのCa/Cr比でも診断価値があるとの事です。
   本院ではこれを採用します。 (場合により午前、午後の2回法)

4) 高カルシウム血症でintact PTHが正常なら、副甲状腺ホルモン関連蛋白を測定する。(PTHrP)




◆参考書籍など

 1 ; 今日の臨床サポート
 2 ; uptodate
 3 ; 内分泌疾患 日本医事新報







私見)
 下記のPDFに文献から抜粋しておきましたので、職員の皆さん検討してください。
 ラグビーの盛り上がりにあやかって、元全日本監督の大西鐡之祐氏の言葉より

   「絶対の戦略は存在しない。しかし戦略を信じない者は愚かだ。」






1 副甲状腺の文献.pdf

2 今日の臨床サポート.pdf

3 副甲状腺 uptodateより.pdf

4 カルシウム.pdf

5 電解質.pdf

6 検査センター.pdf













  
posted by 斎賀一 at 19:57| Comment(0) | 甲状腺・内分泌

2019年10月15日

副甲状腺機能亢進症と腎結石・骨粗鬆症の関係

副甲状腺機能亢進症と腎結石・骨粗鬆症の関係
 
Predictors of Nephrolithiasis, Osteoporosis,
and Mortality in Primary Hyperparathyroidism



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 尿管結石、腎結石、骨粗鬆症の患者さんの場合に一度は副甲状腺機能亢進症を疑うのは定説ですが、どの程度それらの疾患が副甲状腺機能亢進症の予測因子となるかは不明です。
それに関する論文が掲載されていますので、ブログにしました。


纏めてみますと

1) 英国では、副甲状腺機能亢進症の発生は年間で0.86%です。
   副甲状腺機能亢進症は腎結石や骨粗鬆症のリスク因子でもあり、心血管疾患との関連性も指摘
   されています。
   2006~2014年の間で、新たに診断された611例の副甲状腺機能亢進症患者を対象に研究して
   います。
   診断は血清カルシウムとPTH(副甲状腺ホルモン)によります。
   intact PTHを主に採用しています。最近ではルーチンで、血清カルシウムを測定するために無症状
   の副甲状腺機能亢進症が診断されるようになっています。しかしその診断的ストラテジーは確立され
   ていません。

2) 副甲状腺機能亢進症患者の13.9%が腎結石で、その多くが以前から腎結石を指摘されていました。
   スクリーニングで見つかった無症状の腎結石はたったの4.7%で、その率は一般人と同じでした。
   骨粗鬆症は48.4%に認められましたが、高齢者、低体重、低クレアチニンが骨粗鬆症の独立因子と
   して認められ、副甲状腺機能亢進症の明白な予測因子としては低い様です。
   カルシウム高値が死亡率に関係しますが、直接的に副甲状腺機能亢進症と死亡率とは関連性が
   認められないとの事です。
   結局、骨粗鬆症と腎結石は、副甲状腺機能亢進症の予測因子には成りにくいとの結論です。






私見)
 副甲状腺機能亢進症を診断するために、腎結石と骨粗鬆症との関連性から進めるのは確率的に低い
 様です。 詳しい内容は下記のPDFの表ご参照ください。
 実地医家の場合、診断することがある意味で信念です。
  (私は開業以来「早老症」を3例見つけています。  何故って ...。)
 今回、副甲状腺機能亢進症の診断について再勉強しましたので、次回のブログで職員の皆さんと検討
 しましょう。







副甲状腺 本論文.pdf










posted by 斎賀一 at 20:53| Comment(0) | 甲状腺・内分泌