2018年06月29日

潜在性甲状腺機能亢進症

潜在性甲状腺機能亢進症
 
Subclinical Hyperthyroidism
  n engl j med 378;25 nejm.org June 21, 2018



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 意外に、潜在性甲状腺機能亢進症は外来でも多い疾患です。
「当座は治療しなくても良いのですが、十分な経過観察が必要。」と患者さんに説明しています。
診断基準は、書籍から調べて下記のPDFに収めました。

 今回NEJMに総説(vignette)が載っていましたので纏めてみました。
さすがにメジャーな雑誌で、よく纏めてあり認識を新たにしました。


1) 甲状腺刺激ホルモンTSHが低値でも、甲状腺ホルモンのFT4かFT3が正常範囲の場合を、
   潜在性と定義します。
   TSHが0.1~0.4の軽症が65~75%で、残りがTSHが0.1以下のsevere(重症型?)です。
   TSHが0.1以下の場合に、顕性甲状腺機能亢進症に進展する可能性が高い。

2) 原因は内因性と外因性があります。
   内因性としては甲状腺腫、機能性甲状腺腺腫、バセドウ病があります。(潜在性の40%が進展
   する。)アメリカでは寧ろ外因性の方が多い。サプリメントに甲状腺ホルモンが含有している。
   内因性と外因性は検査では区別がつかないので、十分な問診が必要となる。外因性が予後にどの
   程度悪影響を及ぼすかは不明。

3) 潜在性と言えども合併症の危険がある。
   ○ 心血管疾患 ; 頻脈、期外収縮、心不全、心房細動、冠疾患
   ○ 骨粗鬆症
   ○ 認知症

4) 高齢者は症状が無い事が多いが、若い人では軽症ではあるが甲状腺腫大や眼症状などの症状を
   呈する。しかし振顫、頻脈などは少ない。

5) 治療は
  何らかの理由で甲状腺ホルモンを服用している人には最小限に指導する。
  65歳以上で顕性でなくても(free-T4が正常範囲)診断上でバセドウ病の場合は(TRAbが陽性)メルカ
  ゾールの適応も視野に入れる。
  機能性甲状腺腺腫ではアイソトープ治療も考慮するが、バセドウ病では眼症状の悪化を招く。
  (日本では稀とされています。)

6) 60歳以上で心房細動、骨粗鬆症があれば軽症(TSHが0.1以上)でも治療を考慮。また経過が進行  
   性であったり、TSHが0.1以下の場合も治療を考慮する。




私見)
 潜在性と言えどもバセドウ病を想定して検査もして(TR-Ab)経過観察をする必要があります。
 特に60歳以上の基礎疾患がある人は注意が肝心です。
 グラフは下記のPDFに纏めました。
 その他参考PDFも掲載しました。


 
 ◆参考書籍

  外来でどう診る、甲状腺疾患 : 日本医事新報社   深田修司氏




本論文より.pdf

書籍より.pdf

ドクターサロン潜在性甲状腺機能冗進症.pdf

潜在性甲状腺機能冗進症.pdf












posted by 斎賀一 at 19:50| Comment(1) | 甲状腺

2017年07月03日

潜在性甲状腺機能低下症

潜在性甲状腺機能低下症

n engl j med 376;26 nejm.org June 29, 2017
 


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 NELMに症例形式の総説が載っていましたので、纏めてみました。
本院でも潜在性(血液検査の異常だけで明白な症状がないし、治療がすぐに必要でない)の甲状腺機能低下の患者さんが多く来院されます。
 今回の総説では、実地医家にとって明快な解説になっており大変参考になります。


 1) 提示された症例は、71歳の女性、高血圧の治療中、4年前に心筋梗塞の既往があります。
    甲状腺の腫大はありません。

        TSH : 甲状腺刺激ホルモンは6.9 (正常は0.4~4.3)
         Free-T4 : 甲状腺ホルモンは19と正常 (正常は11~25)
    (元来、甲状腺ホルモンが低下しているので、それを刺激するTSHが多く分泌されている。
     つまりFree-T4は正常だがTSHが高値の場合を、潜在性甲状腺機能低下と診断します。)

 2) Free-T4が少量でも低下するとTSHが反応するようです。

 3) 軽症と中等度の境界は、一般的にTSHの値が10としています。
     (10以下が軽症)

 4) 高齢者、女性、ペルオキシダーゼ抗体陽性者は、TSHとFree-T4の関係が直線状で比例関係
    です。

 5) 年間で2~6%が顕性甲状腺機能低下に移行するが、46%が2年以内に正常化する。

 6) 一般的に、鬱、記銘力低下、倦怠感、体重増加、寒冷に弱い、便秘が症状としては多い。

 7) 心血管との関連性が以前より報告されていますが、
        TSHが4.5~6.9では危険率は1です。
         7.0~9.9では1.17で、10~19.9では1.89と増加します。
        TSHが7以上では、心不全や脳卒中も増加傾向です。

 8) 女性の場合は、不妊、流産、妊娠中毒症、妊娠時高血圧症との関連性もありそうです。

 9) 潜在性甲状腺機能低下の疑いがあれば2〜3か月後に再検し、更にペリオキシダーゼ抗体を測定
    して治療方針を決定する。

10) エコー検査は有効であるが、ルーチンには勧奨していない。
    (しかし本院ではルーチンに行う価値があると認識しています。)

11) 治療はチラージンを用いるが、25~75μとする。
    一般的には25μから始めるが、6カ月しても症状が改善されなければ治療は中止する。
    (治療効果については色々な研究結果があり、バイアスや基礎データが各研究で異なっており結論
    が相反しています。よって省略します。)

12) 年齢と伴にTSHの値が増加します。それと治療の判断とが明白になっていないようです。
    下記のPDFを参照ください。

13) 本患者に対して、筆者は結論的に鬱、倦怠感があり、3か月後に再検して一時的なものを除外
    出来たらチラージンでの治療を開始する予定との事です。
    しかし既往歴の心筋梗塞の有無は、投与に関して考慮しないとしています。
    また、60歳以上では治療によりTSHが低下しすぎると、心房細動や骨折のリスクが却って増加
    するので、定期的なチェック検査をする必要があります。




私見)
 ためになる事がいっぱいあり、覚えきれません。
 結局次のように理解すれば良いでしょうか。

 1)妊娠をしているかをチェック
 2)潜在性甲状腺機能低下の疑いがあれば、3か月後に再検
 3)その際にペリオキシダーゼ抗体も追加検査
 4)再び潜在性甲状腺機能低下であれば、年齢を考慮して患者さんと相談する。
   TSHが10以上でペリオキシダーゼ抗体が陽性ならチラージン25μを開始し、効果が無ければ3か月
   後に中止の方向と説明する。

尚、私のブログの甲状腺のカテゴリーから、以前の記事を紐解いていただき再度確認してください。
 (本院職員の皆さん、私もビックリする位いい事を書いています。)



潜在性甲状腺機能低下.pdf










posted by 斎賀一 at 20:26| Comment(0) | 甲状腺

2017年04月15日

チラージンSと牛乳は一緒に飲まないで!

チラージンSと牛乳は一緒に飲まないで!
                  <ツイッター版>



 甲状腺機能低下症の治療薬であるチラージンSは、食事摂取により吸収が阻害されるため、空腹時に
服用する必要があります。そのため本院では、原則として就眠前服用をお願いしています。
 今回のアメリカの学会での報告によりますと、牛乳との服用でも、チラージンSの吸収が阻害されるようです。
まさか、寝る前にチラージンSを牛乳と一緒にガブ飲みしていないと思いますが... 念のため!




Avoid Washing Down Levothyroxine with This Drink - Print Article - MPR.pdf







posted by 斎賀一 at 14:51| Comment(0) | 甲状腺