甲状腺結節の診断
Thyroid Nodules: Advances in Evaluation and Management
エコー検査の際に偶然、甲状腺に腫瘤を見つけることがあります。
大まかに言って下記の疾患を鑑別していきます。
・腺腫様甲状腺結節 一見、良性の腺腫様に見える過形成疾患です。
時間の経過とともに濾胞性変性、線維化、石灰化、骨化、出血という二次的変化が起きます。
上皮が濾胞内腔に乳頭状に一見増殖することがあり、乳頭癌と誤診しないよう注意が必要です。
(飯島病理より)
・腺腫様甲状腺腫 上記の腺腫様甲状腺結節が多発している場合です。病理的には過形成疾患です。
言葉的に注意が必要です。良性の腺腫に見えるが単に甲状腺が腫れている、つまり甲状腺腫です。
(脾臓が腫れれば脾腫といいますが、甲状腺が腫れているから甲状腺腫ということになります。
外国ではgoiterと言って混乱が生じません。)
・良性の甲状腺濾胞性腺腫 さすがに腺腫は甲状腺から言葉的に離れています。
単純性腺腫、コロイド腺腫、好酸性細胞腺腫、異型腺腫があります。
(ルービン病理より)
異型腺腫は、病理的にも癌との鑑別が困難です。
・甲状腺癌 乳頭癌と濾胞癌がありますが、細胞の形で決めてしまいますので乳頭癌が多くなります。
甲状腺の結節を鑑別するのは、実地医家にとってはかなりしんどいです。
勉強すればするほど袋小路に入ってしまいます。
勢いで専門家に紹介することが多いのですが、その際に一度単純に考えて、それから詳細に検索した
方がよい場合があります。
それにぴったりの論文が雑誌american family physicianの総説に載っていましたので、
纏めてみました。
1) 甲状腺に結節病変が見つかるのは、68%といわれています。
しばしば偶然に発見され、ほとんどが良性です。甲状腺刺激ホルモン(TSH)が正常、または高値の
場合は、原則としてFNA(穿刺細胞診)が勧められる場合もありますが、一般的には低エコーの充実
性で1cm以上の結節性病変の場合に推奨されています。
2) 最近では、細胞診に分子生物学的診断を併用する傾向です。
残念ながらエビデンスが十分でない点と長期予後のデータに乏しく今後の研究が待たれますが、
臨床家も積極的に取り入れることが大事です。
3) 悪性の可能性があれば、6〜9ヶ月のエコーの再検が必要です。
4) 完全な嚢胞性(cystic)の場合やスポンジ状または嚢胞性が優位の場合は、ほとんどが良性のため
2cm以上の場合のみFNAを勧めます。
もしもFNAを行わない場合は、12~24ヶ月後のエコー再検を推奨します。
5) 実地医家の場合は結節が増大傾向の場合は紹介が必要であるが、繰り返しのFNAで悪性の診断が
なければ、その後はエコーのみの経過観察で増大に注意すればよい。
私見)
参考文献を下記のPDFに掲載します。
さすがに厚かましい私でも、ガイドラインのテキストは一部とさせていただきます。
閲覧希望の方は医院長に申し出てください。または是非購入してください。
甲状腺エコー 伊藤病院.pdf甲状腺腫瘍の超音波診断.pdf抜粋.pdf