2019年07月01日

甲状腺疾患と妊娠

甲状腺疾患と妊娠
           〜業務連絡を兼ねて〜



 本院でも甲状腺疾患の妊婦の方が来院されますが、定期的な検査(原則として1か月に1回の受診)を要します。
その解釈も通常とは異なり、妊娠による特別な注意が必要です。
予め患者さんにも予備知識を持って理解して頂き、万全を期したいと思います。


先ずuptodateより纏めてみました。

1) 妊娠全般としては
   甲状腺刺激ホルモン(TSH)の正常値は
     妊娠初期 ; 0.1~2.5
     妊娠中期 ; 0.2~3.0
     妊娠後期 ; 0.3~3.0
   
   甲状腺ホルモンのfree T4は、妊娠中には信頼できるdirect free T4を測定するのが最善ですが、
   残念ながらできないので、その代わりにtotal T4を測定する。
   妊娠中はTBGが増加するので、正常の1.5倍以上を亢進症とする。

  ・甲状腺機能亢進症は、妊娠初期でTSHが0.03~0.1の時にfreeT4とtotal T4(甲状腺ホルモン)を
   測定する。はっきりしなければTRab、TGUを測定する。
  ・甲状腺機能低下症は、妊娠初期でTSHが2.5以上の時にfreeT4とtotal T4を測定する。
   潜在性機能低下ではTSHが上記の範囲以上で、且つfreeT4及びtotal T4が正常の時に疑う。
    (原則、本院では妊娠中はfree T4、total T3,T4の3つを測定する。)

2) gestetional transient thyrotoxicosis(GTT) = 妊娠一過性甲状腺中毒症
   治療の必要は原則無い。
   total T4又はtotal T3が正常の1.5倍で治療開始
   治療目標はtotal T4が18mcg/dl
    (本院ではこの場合もtotal T4も測定します。)

3) 妊娠20週でTRabを測定して正常の3倍以上の時には、新生児のモニタリングが必要

4) 妊娠後の甲状腺機能亢進症の再炎は、4~8カ月に出現するので注意が必要

5) 妊娠中は正常値が変動するので注意が必要
    (下記のPDF参照)





私見)
 その他の知見は、下記の文献より引用して下記のPDFに纏めましたので、ご参照ください。



  
◆文献;

  日本医師会雑誌 ; 第141巻 第11号  2013年2月
  medicalPractice ; vol.31 no.11  2014
  甲状腺疾患の診かた、考えかた ; 中外医学社
  内分泌糖尿病ー代謝内科   32(5): 4 62-467,2 011
  Uptodateより





甲状腺と妊娠.pdf













posted by 斎賀一 at 20:36| Comment(1) | 甲状腺

2019年05月27日

潜在性甲状腺機能低下症の治療ガイドライン

潜在性甲状腺機能低下症の治療ガイドライン
 
Thyroid hormones treatment for subclinical hypothyroidism:
a clinical practice guideline



0527.PNG




 潜在性甲状腺機能低下症の患者さんが多く来院されています。
以前の私のブログでも紹介しましたが(甲状腺機能低下症で検索)、潜在性甲状腺機能低下症とは、
甲状腺刺激ホルモンTSHが高値で、甲状腺ホルモンfreeT4が正常値の場合です。
 今回、雑誌BMJより緊急の提言として、実際的なガイドラインが載っています。
いろいろなガイドラインが提唱されてから、甲状腺治療薬(チラージンS)の処方が増加しているとの事
ですが、そのためのデメリットも懸念され、実際的なガイドラインが提言されました。


アメリカの代表的な学会のガイドラインを紹介しますと

#)NICE,2018より
   ・TSH(甲状腺刺激ホルモン)が10ml単位以上
     70歳未満では治療
     70歳以上では経過観察
   ・TSHが4~10単位では
     65歳未満では症状にて治療
     65歳以上では経過観察

#)ATA,2012より
   ・TSHが10以上で治療
   ・TSHが10以下では、機能低下の症状がある場合、自己抗体陽性、心血管疾患や心不全のある
    場合は治療を考慮

今回のBMJのガイドラインは、更に踏み込んだ実地的なガイドラインです。


纏めてみますと

1) 潜在性甲状腺機能低下症(SCH)に対してのホルモン補充療法(チラージンS)の治療は、原則的に
   控えるべきである。65歳以下でも同様に考えられる。

2) SCHの多くはTHSが4~10の間であり、その値はストレスで変動するし、一過性の事もある。
   特に高齢者では、正常値として評価する事もある。
   一回の測定で評価すべきでなく、経過観察が必要

3) SCHの症状として想定されているのは、倦怠感、筋肉の痙攣(cramp)、寒さに敏感、乾燥肌、
   声の変化、便秘などが挙げられています。
   しかし、これらの症状は特異的でなくSHCを有していない人でも認められ、チラージンの治療をしても
   必ずしも好転するかのエビデンスはない。

4) 色々なガイドラインに従えば、TSHが10以上で治療としているが、本ガイドラインではTSHが
   20以上としています。
   20以下では経過観察

5) 本ガイドラインが適応されない除外項目(つまり下記の事項では治療も考慮)は
    ・妊娠可能な女性 (TSHとTPO抗体の測定が必要) 
    ・TSHが20以上でfreeT4が正常 (この場合は顕性甲状腺機能低下の可能性がある。)
    ・症状がある場合 (しかしこの場合も明白なエビデンスは無い)
    ・30歳以下の若い人
    ・妊婦
    ・既にチラージンを服用中の場合





私見)
 私なりに理解しますと
  ・SCHの患者でTSHが20以下では、経過観察か再検
   (つまり基準が20以上に引き上げられています。)
  ・但し妊婦や妊娠希望の女子、又は30歳以下ではその限りでない。
   (妊婦の場合のストラテジーは、以前の私のブログをご参照ください。)





T甲状腺低下.pdf

2 妊婦の治療戦略.pdf

3 橋本病と無痛性甲状腺炎について.pdf












posted by 斎賀一 at 19:46| Comment(0) | 甲状腺

2019年04月03日

チラージンS(甲状腺機能低下症治療薬)の服用のタイミング

チラージンS(甲状腺機能低下症治療薬)の服用のタイミング
 
Levothyroxine Dosing: Morning, Night, or In Between?
 


0403.PNG
 
       

 Medscapeに甲状腺機能低下症治療薬でチラージンSの服用するタイミングに関して、総説が載って
いましたので纏めてみました。
本院ではUPTODATEを参考に原則、就眠前の服用を勧めていましたが、 (下記のPDFをご参照
ください。) 今回のmedscapeでは詳細に説明しています。


1) チラージンSは吸収が不安定なため、費用対効果(economic productivity)を高めるために
   服用時期を考察する必要がある。
   チラージンSは80%が小腸で吸収される。
   服用後2時間で最大に吸収されるが、食事や他の薬剤があると3~4時間遅れる。

2) アメリカの学会ATAでは、朝食前の少なくとも60分前か就眠前(少なくとも夕食後3時間経過
   してから)を勧めている。

3) 吸収を抑制する物質としては、コーヒー、牛乳、お味噌汁、鉄剤、PPI 、etc 、最大で50%も
   吸収が低下する。
   またヘリコバクターピロリ菌に感染して萎縮性胃炎が存在すれば、吸収障害も報告されている。

4) 一方で、服用時期に関してそれ程差は無いとする報告もある。
   しかしニュージーランドからの報告では、吸収及び生活のQOLからも就眠前が最も好ましいと
   しています。

5) 同時に他の薬剤を服用しない事も勧めています。





私見)
 本院も従来通りに、チラージンSは単独で就眠前の服用をお勧めいたします。
 下記に「今日の臨床のサポート」とUPTODATEの抜粋をPDF化しました。





Levothyroxine Dosing Morning, Night, or In Between.pdf

甲状腺機能低下.pdf









posted by 斎賀一 at 19:29| Comment(1) | 甲状腺