2017年07月03日

潜在性甲状腺機能低下症

潜在性甲状腺機能低下症

n engl j med 376;26 nejm.org June 29, 2017
 


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 NELMに症例形式の総説が載っていましたので、纏めてみました。
本院でも潜在性(血液検査の異常だけで明白な症状がないし、治療がすぐに必要でない)の甲状腺機能低下の患者さんが多く来院されます。
 今回の総説では、実地医家にとって明快な解説になっており大変参考になります。


 1) 提示された症例は、71歳の女性、高血圧の治療中、4年前に心筋梗塞の既往があります。
    甲状腺の腫大はありません。

        TSH : 甲状腺刺激ホルモンは6.9 (正常は0.4~4.3)
         Free-T4 : 甲状腺ホルモンは19と正常 (正常は11~25)
    (元来、甲状腺ホルモンが低下しているので、それを刺激するTSHが多く分泌されている。
     つまりFree-T4は正常だがTSHが高値の場合を、潜在性甲状腺機能低下と診断します。)

 2) Free-T4が少量でも低下するとTSHが反応するようです。

 3) 軽症と中等度の境界は、一般的にTSHの値が10としています。
     (10以下が軽症)

 4) 高齢者、女性、ペルオキシダーゼ抗体陽性者は、TSHとFree-T4の関係が直線状で比例関係
    です。

 5) 年間で2~6%が顕性甲状腺機能低下に移行するが、46%が2年以内に正常化する。

 6) 一般的に、鬱、記銘力低下、倦怠感、体重増加、寒冷に弱い、便秘が症状としては多い。

 7) 心血管との関連性が以前より報告されていますが、
        TSHが4.5~6.9では危険率は1です。
         7.0~9.9では1.17で、10~19.9では1.89と増加します。
        TSHが7以上では、心不全や脳卒中も増加傾向です。

 8) 女性の場合は、不妊、流産、妊娠中毒症、妊娠時高血圧症との関連性もありそうです。

 9) 潜在性甲状腺機能低下の疑いがあれば2〜3か月後に再検し、更にペリオキシダーゼ抗体を測定
    して治療方針を決定する。

10) エコー検査は有効であるが、ルーチンには勧奨していない。
    (しかし本院ではルーチンに行う価値があると認識しています。)

11) 治療はチラージンを用いるが、25~75μとする。
    一般的には25μから始めるが、6カ月しても症状が改善されなければ治療は中止する。
    (治療効果については色々な研究結果があり、バイアスや基礎データが各研究で異なっており結論
    が相反しています。よって省略します。)

12) 年齢と伴にTSHの値が増加します。それと治療の判断とが明白になっていないようです。
    下記のPDFを参照ください。

13) 本患者に対して、筆者は結論的に鬱、倦怠感があり、3か月後に再検して一時的なものを除外
    出来たらチラージンでの治療を開始する予定との事です。
    しかし既往歴の心筋梗塞の有無は、投与に関して考慮しないとしています。
    また、60歳以上では治療によりTSHが低下しすぎると、心房細動や骨折のリスクが却って増加
    するので、定期的なチェック検査をする必要があります。




私見)
 ためになる事がいっぱいあり、覚えきれません。
 結局次のように理解すれば良いでしょうか。

 1)妊娠をしているかをチェック
 2)潜在性甲状腺機能低下の疑いがあれば、3か月後に再検
 3)その際にペリオキシダーゼ抗体も追加検査
 4)再び潜在性甲状腺機能低下であれば、年齢を考慮して患者さんと相談する。
   TSHが10以上でペリオキシダーゼ抗体が陽性ならチラージン25μを開始し、効果が無ければ3か月
   後に中止の方向と説明する。

尚、私のブログの甲状腺のカテゴリーから、以前の記事を紐解いていただき再度確認してください。
 (本院職員の皆さん、私もビックリする位いい事を書いています。)



潜在性甲状腺機能低下.pdf










posted by 斎賀一 at 20:26| Comment(0) | 甲状腺

2017年04月15日

チラージンSと牛乳は一緒に飲まないで!

チラージンSと牛乳は一緒に飲まないで!
                  <ツイッター版>



 甲状腺機能低下症の治療薬であるチラージンSは、食事摂取により吸収が阻害されるため、空腹時に
服用する必要があります。そのため本院では、原則として就眠前服用をお願いしています。
 今回のアメリカの学会での報告によりますと、牛乳との服用でも、チラージンSの吸収が阻害されるようです。
まさか、寝る前にチラージンSを牛乳と一緒にガブ飲みしていないと思いますが... 念のため!




Avoid Washing Down Levothyroxine with This Drink - Print Article - MPR.pdf







posted by 斎賀一 at 14:51| Comment(0) | 甲状腺

2017年04月08日

高齢者の潜在性甲状腺機能低下症に対する治療効果

高齢者の潜在性甲状腺機能低下症に対する治療効果

Thyroid Hormone Therapy for Older Adults with Subclinical
Hypothyroidism This article was published on April 3,2017, at NEJM.org.



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 高齢者の甲状腺機能低下症を見過ごすことがあり、注意されています。
しかし、潜在性の機能低下に対する治療の必要性には、あまりエビデンスが無いようです。
 潜在性甲状腺機能低下症とは、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンのTSHが基準値より多いが、甲状腺ホルモン(free-T4など)は正常の場合です。




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(上の図の×印はフィードバックを意味しており、大きい×はフィードバックが増してTSHが低下する、小さい×はフィードバックが減少してTSHが増加する事を表しています。)


 今回はNEJMより、高齢者の潜在性甲状腺機能低下症の治療効果についての論文が掲載されました
ので、ご紹介いたします。


 まとめてみますと

 1) 65歳以上の740人の潜在性甲状腺機能低下症患者が対象

 2) チラージンSを50㎍(体重50キロ以下や冠動脈疾患者は25㎍)を1年間服用
 
 3) 甲状腺機能低下の症状と倦怠感を調査、その他に認知度と心身の活動を調べています。

 4) 明らかに治療群の方がTSHは低下しています。


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 5)しかし結論的には、治療群と非治療群で治療効果にそれ程の差はありませんでした。



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  チラージンSを服用する事による副作用は、非治療群との差はありませんでした。



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私見)
 高齢者の潜在性甲状腺機能低下症は8~18%いるとの事です。しかも、5人中3人は自然に正常化
するとも記載しています。
また65歳以下の若い人や橋本病で症状がある場合は、この論文の結果は当てはまらないとしています。

 皆様(職員の方々も含め)、高齢者は頑張っているので、ゆったりとした対応をお願いいたします。











posted by 斎賀一 at 15:10| Comment(0) | 甲状腺