2023年09月15日

ペニシリンアレルギーでもセファロスポリンは大丈夫?

ペニシリンアレルギーでもセファロスポリンは大丈夫?

<短 報>
Cephalosporins can be safely administered to patients
with verified penicillin allergy



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1) ペニシリンアレルギーの人50人にセファロスポリンの77例服用コースを行いました。
   50人のペニシリンアレルギーの内38人(76%)は多種類の薬剤アレルギーで、
   19人(38%)がペニシリンのアモキシシリンにアレルギーがありました。
   ペニシリンアレルギーの内訳は、15人が高リスクで35人が低リスクです。
   高リスクの内訳は、6人がアナフィラキシーで4人がエピネフリン注射を行っています。
   低リスクの内訳は延べで28人が発疹、4人が血管浮腫、6人が不明です。
   ペニシリンアレルギーの中アモキシリン皮膚反応陽性は19人(38%)、
   チャレンジテスト陽性は14人(28%)でした。

2)結論
  ペニシリンアレルギーの50人中49人はセファロスポリン服用が可能でした。(忍容性)
  使用したセファロスポリンの内ペニシリンと同じ側鎖を有するものが25症例(32%)で、
  異なる側鎖が52症例(68%)です。
  第二世代、第三世代のセファロスポリンは比較的安全としていますが、それでも稀に
  アナフィラキシーの報告もあり注意が必要としています。






私見)
  抗生剤の適切な使用が叫ばれて久しいですが、コロナ禍の長引く今、抗生剤の処方には
  実地医家として知恵を絞らなくてはなりません。
  ペニシリンから始まりセファロスポリンまでも供給不足が続いています。
  ワイドシリンのチャレンジテスト、第二世代のセファロスポリンの使用などを経て、適切な
  抗生剤の使用に努めましょう。
  概略がネットに出ていましたので併せてブログします。





本論文.pdf

ネットより.pdf









2023年01月24日

新型コロナ治療薬ラゲブリオの効果

新型コロナ治療薬ラゲブリオの効果

Molnupiravir plus usual care versus usual care alone as early
treatment for adults with COVID-19 at increased risk of
adverse outcomes (PANORAMIC)



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 新型コロナに対するワクチンの普及率が向上した現在において、経口治療薬のラゲブリオが
どの程度効果があるかを調べた論文が発表になっています。
ラゲブリオはコロナウイルスの複製を抑制する作用があります。
以前の大規模試験のMOVe-OUT研究では、入院率と死亡率が30%減との報告でした。
しかしこの論文は査読の段階で、未だfull論文は発表になっていません。
現在では住民のほとんどがワクチン接種をしています。現段階でのラゲブリオの効果について
の研究が必要となっています。


1) 対象は50歳以上、もしくは比較的併発疾患を有する18歳以上の新型コロナ感染者で、
   発症後5日以内の体調不良の在宅療養者です。
   ラゲブリオ群(800mg、1日2回、5日間)+通常ケアと通常ケアのみの群を比較して
   います。
   年齢(50歳超、50歳未満)と、ワクチン接種の有無による層別化をしています。

2) 主要転帰は、28日以内の原因を問わない入院または死亡です。
   26,411例が登録され、ラゲブリオ+通常ケア群12,821例、通常ケアのみ群12,962例、
   その他の治療628例です。
   最終的にラゲブリオ+通常ケア群12,529例、通常ケアのみ群12,525例が対象となって
   います。
   平均年齢は56.6歳、ワクチン3回以上接種者94%(25,708例中24,290例)でした。

3) 入院または死亡が記録されたのは、ラゲブリオ+通常ケア群105例(1%)、
   通常ケアのみ群98例(1%)と、その効果の差はありませんでした。
   顕著な有害事象は、ラゲブリオ+通常ケア群で50例(0.4%)、
   通常ケアのみ群45例(0.3%)で、ラゲブリオに関連すると判定された有害事象は
   ありませんでした。

4) 考察
   入院率と死亡率に関してのラゲブリオの効果は限定的ですが、症状の早期回復とその維持
   には明白な効果がありました。
   (元文献の図表を参照してください。)
   先ずはワクチンの接種を推奨すべきです。その上でラゲブリオの効果は、新型コロナに
   感染した場合の症状の緩和と、ウイルス放出の低下により、コミュニティに対して感染
   対策となる利点があるため考慮すべきです。
   また、long-COVIDに関しても今後の研究が待たれます。







私見)
 新型コロナの治療の根本はワクチン接種です。
 インフルエンザの流行も思いの他といった感じです。
 やはりマスクの効用は絶大です。コロナの治療薬も選択肢があります。
 何事も根本は、やはり選択肢ではないでしょうか










Molnupiravir plus usual care versus usual care alone as early treatment for adults with COVID-19 at increased risk of adverse outcomes (PANORAMIC)_ an open-label, platform-adaptive randomised controlled trial.pdf











2022年06月28日

ペニシリンアレルギー段階的チャレンジテスト・2022年版

ペニシリンアレルギー段階的チャレンジテスト・2022年版
 
 <患者さん用>



 ある監督の言葉を借りて... 「長らくお待たせしました。」


実地医家の外来での抗生剤の使用は、ガイドラインに則て使用する事が大事です。
第一選択薬はペニシリン系でなくては不適切との風潮です。
 そこで、職員に協力してもらい改定版パンフレットを作成しました。
ペニシリンを初めて使用する場合、基本的には段階的少量チャレンジテストです。
下記にその基本姿勢を記載します。


・対象は、低リスクの患者さんが基本です。
 先ずはアレルギー問診表に記載してもらう。
・チャレンジする量は1/10 
 チャレンジテストが陰性の場合に、処方の抗生剤を服用開始する。

・ステップT
 健康な時に院内でチャレンジテストを行い、1時間の経過観察

・ステップU
 発熱外来で診察時にチャレンジテストを行い、処方薬が出来るまでの1時間を院内か車で
 待機し経過観察

・ステップV
 発熱外来でチャレンジテストを行い、15分間は院内待機観察
 更にトータル1時間、自宅での経過観察

・ステップW
 全て自宅でのチャレンジテストをお願いする。

・ステップX
 夕方でのチャレンジテストではセファロスポリン系とする。
 セファロスポリン系からペニシリン系への変更時は、自宅でのチャレンジテストも可とす。
 セファロスポリン系のチャレンジテストも同様に1/10量で施行


・アレルギー反応が出た場合は専用電話に連絡をお願いする。







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私見)
 先ずは実施してみます。不都合な点がありましたら、お申し出ください。
 改訂版を行なっていきます。
 今までのブログを下記に掲載します。








1 ペニシリンアレルギーに対する経口負荷試験.pdf

2 抗生剤アレルギー歴.pdf

3 JAMA改訂版.pdf

4 ペニシリン既往歴.pdf

5 JAMAパンフレット.pdf

ペニシリンアレルギー_.pdf

ペニシリンアレルギーに対する経口負荷.pdf

ペニシリンアレルギーに対する直接チャレンジテスト_.pdf

ペニシリンアレルギーの経口負荷試験.pdf

ペニシリンのアナフィラキシー反応.pdf

ラクタム系を必ずしも避けなくても良い.pdf