2019年04月22日

顕微鏡的血尿と膀胱癌の関係

顕微鏡的血尿と膀胱癌の関係
 
The Prevalence of Bladder Cancer During Cystoscopy for
Asymptomatic Microscopic Hematuria



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 血尿には肉眼的血尿(患者さんが見た目で判断できる血尿)と、顕微鏡的血尿(試験紙か顕微鏡で
分かる程度の軽微な血尿)があります。
この顕微鏡的血尿の場合に、膀胱癌がどの位潜んでいるかを示した論文がアメリカより出ています。
本論文では顕微鏡の強拡で、1視野で3個以上の赤血球を顕微鏡的血尿としています。


纏めますと

1) 顕微鏡的血尿に対して細胞診を実施し、膀胱がんを精査しています。
   2010~2018年間のコロンビア大学での研究です。
   年齢、性差、喫煙歴、下腹部の放射線照射歴も登録して調べています。
   ただし肉眼的血尿、腎疾患、感染症、結石などは除外しています。

2) 顕微鏡的血尿の患者2,118名を登録しました。
   25名の膀胱癌患者を診断しています。(1.2%)  進行癌はありませんでした。
   女性は0.8%で男性が1.9%の割合です。
   50歳以下の444人には、一人も膀胱癌がいませんでした。

3) 顕微鏡的血尿の場合には、喫煙歴と年齢が重要な因子となります。
   統計処置をしますと、顕微鏡血尿の場合に50歳以下で喫煙歴のない人では、膀胱癌の可能性は
   0.3%に対して、80歳以上で現在も喫煙している人では、12.5%の頻度となります。


 現在のアメリカでのガイドラインは顕微鏡的血尿の場合に35歳以上で細胞診を勧めているが、NEJM Journal Watchのコメントでは、50歳以上に改訂すべきとしています。





私見)
 逆に50歳以上で試験紙で血尿が認められたら顕微鏡検査、腹部エコー、更には細胞診と勧める必要が
 あるようです。また喫煙歴の問診も大事です。
 下記に関連文献を掲載しますので、職員の方は参考にして下さい。






1 The Prevalence of Bladder Cancer During Cystoscopy for Asymptomatic Microsco.pdf

2 膀胱癌.pdf

3 US検診における腎泌尿器癌の現状と早期発見のコツ.pdf

4 尿沈渣.pdf












posted by 斎賀一 at 19:45| Comment(0) | 泌尿器・腎臓・前立腺

2019年03月11日

高齢者の尿路感染症には注意

高齢者の尿路感染症には注意
 
Antibiotic management of urinary tract infection in
elderly patients in primary care and its association
with bloodstream infections and all cause mortality



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 一般的には成人の尿路感染症は、特に女性の場合発熱が無ければ、抗生剤の投与は控え気味です。
極端に言えば、女性の場合は妊娠してなければ水を飲んで治してくださいとまで言ってしまいます。

 今回の雑誌BMJからの論文では、尿路感染症で抗生剤の投与が遅れると、特に70歳以上では急激に敗血症の転帰となるとの警告です。


纏めますと

1) 若い人に比べて70歳以上の男性では、進展した尿路感染症は50倍にもなる。
   また女性の場合は、無症状の割合が若い人では5%以下なのに比べて、65歳以上では20%以上と
   診断に難渋することがある。 (症状については下記のPDFを参照) 
   しかも経験的抗生剤投与(empirical)が尿路感染症では多い傾向です。
   そのため不適切な処方も多いと指摘されていました。
   そこで、最近のガイドラインでも抗生剤の不適切な投与に対して警告が出されております。
   しかし、その一方でグラム陰性菌による尿路感染症の進展も懸念されます。

2) 英国でのコーホー研究のCPRDより、データを集積しています。
   期間は2007~2015年間
   65歳以上の成人で、少なくとも1回は尿路感染症歴のある157,264名が対象
   主要転帰は、・菌血症 ・入院 ・尿路感染症の診断後、60日以内に死亡

3) 合計312,896例 (157,264名中)
   抗生剤を処方しなかった群は7.2% (22,534例)
   処方が遅れた群(診断後7日以内に抗生剤を処方)は6.2% (19,292例)
   直ぐに処方した群は86.7% (271,070例)
   尿路感染症と診断されて、60日以内での菌血症の頻度は0.5% (1,539例)

   その内訳は
   ・抗生剤を処方しなかった群で、2.9% (647例)
   ・処方が遅れた群で、2.2%
   ・直ぐに処方した群で、0.2% でした。
  
   危険率を直ぐに処方した群との比較で見ますと
   ・処方しなかった群では8.08
   ・処方が遅れた群では、6.22 でした。

   入院率で比較しますと
   ・処方しなかった群で、27.0%
   ・処方が遅れた群で、26.8%
   ・直ぐに処方した群で、14.8% でした。

4) 結論としては
   85歳以上の男性では、特に菌血症のリスクと、診断後60日以内での死亡率が高い傾向でした。
   菌は大腸菌が最も多く検出されています。



  

私見)
 65歳以上で排尿症状が無くても、元気が無かったり疲労感などの不定症状があったら、先ず尿沈渣は
 ルーチン検査とする必要がありそうです。








尿路感染症と抗生剤.pdf

Antibiotic management of urinary tract infection in elderly patients.pdf















posted by 斎賀一 at 20:08| Comment(0) | 泌尿器・腎臓・前立腺

2019年03月01日

前立腺癌のPSA監視療法の傾向

前立腺癌のPSA監視療法の傾向
 
Use of Active Surveillance orWatchfulWaiting for
Low-Risk Prostate Cancer and Management Trends
Across Risk Groups in the United States, 2010-2015



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 低リスク患者におけるPSA監視療法の傾向に関する論文が雑誌JAMAに掲載されていましたので、
PDF化しました。

PSA監視療法に関しては「今日の臨床サポート」をコピペしました。

「PSA監視療法(Active surveillance )とは、積極的な治療をせず、PSAを定期的に採血し、PSAの
上昇や画像所⾒により、必要があれば再⽣検を⾏い、病勢の進⾏を評価する⽅法である。
具体的には、PSA測定と直腸診を3〜6カ⽉ごとにチェックし、1〜3年ごとに⽣検を⾏う評価⽅法で、PSA倍加時間が3年以上の場合や⽣検でグリーソンスコアの上昇や陽性コアの増加、腫瘍体積の増⼤を⽰唆する所⾒を認めない限りは、経過観察を継続する。PSA監視療法は、PSA≦10ng/mL、臨床病期≦pT2、陽性コア数≦2本(ただし、ターゲット⽣検、saturation⽣検の場合はこの限りではない)、
グリーソンスコア≦6、さらにPSA濃度(PSAD)<0.2あるいは<0.15ng/mL/mLの症例が適応となる。
 PSA監視療法は、いくつかの研究において低リスク前⽴腺癌患者や予後の10年未満の患者にPSA監視療法を適応した場合には、根治⼿術群と⽐較して全⽣命予後に⼤きな差がないことが明らかになっている。」

また低リスク患者の定義については、下記のPDFをご参照ください。
結論的には低リスクにおけるPSA監視療法が増加傾向ですが、放射線療法は全般的に減少傾向のようです。






私見)
 論文のグラフが一目瞭然ですので、下記のPDFをご参照ください。
 重要な決断が必要な場合には患者さんに時間を設けて説明しますが、最後に質問されるのは

      「ところで、皆はどうしていますか?」

 十分に納得してもらうためにも、世の中の動向が大事なようです。







1 Low-Risk Prostate Cancer and Management.pdf

2 本論文より.pdf

3 前立腺癌学習.pdf

4 前立腺癌ガイドライン.pdf










posted by 斎賀一 at 21:45| Comment(0) | 泌尿器・腎臓・前立腺