急性及び慢性腎臓病におけるeGFRとアルブミン尿
Uses of GFR and Albuminuria Level in Acute and Chronic Kidney Disease
[N Engl J Med 2022;386:2120-8.]
[N Engl J Med 2022;386:2120-8.]
急性及び慢性腎臓病の診断に最も有効なツールは、アルブミン尿とeGFRであるとの総説が
雑誌NEJMに掲載されています。
以前にも同様の内容をブログしましたが、改めて今回の総説を読んで、自分の中で整理して
みました。
1) 急性腎臓病(AKD)は経過が3か月以内、慢性腎臓病(CKD)は3か月以上です。
急性腎障害(AKJ)は発症7日以内を言いますが、AKDに含まれます。
2) GFRは腎臓の糸球体の数、つまりネフロンの数を表しています。
年齢と共にネフロンは硬化し、血圧や糖尿病などの疾病でもその数の減少が起きます。
つまりGFRが低下してきます。
しかし生理学的にネフロンの数が減少すれば、それを補うために単一のネフロンは、
ろ過量を増やす傾向となります。hyperfiltrationです。
そのhyperfiltrationは長い経過では、ネフロンの障害(糸球体内圧亢進)を誘発して
しまいます。
3) 現在では糸球体のろ過率を表す方法としては、eGFRが一般的で推奨されています。
eGFRの計算式ではクレアチニンが世界で一般的に使用されていますが、人種差もない
シスタシンCが推奨されています。
4) アルブミン尿は糸球体血管内皮の透過性障害を表します。
アルブミン尿は腎臓病の初期から認められ、糖尿病、高血圧、糸球体腎炎など全ての
腎疾患において遅かれ早かれ出現してきます。
現在ではアルブミン尿の測定は、早朝のスポット尿を用います。
尿中アルブミン(mg)/尿中クレアチニン(gr)比で求めます。
5) GFRが60以下、もしくは尿中アルブミン(mg)/尿中クレアチニン(gr)比が30以上の
場合は腎臓病(AKD,CKD)を想定します。AKIはGFRのみの低下です。
確定診断となりますと、年齢や病気、合併症により異なってきます。
6) アルブミン尿の増加はARBの治療適応となります。
最近ではSGLT-2阻害薬も有力視されています。
7) GFRの低下とアルブミン尿の増加は、心血管疾患(CVD)の予測因子です。
CVDの危険率を考えた時には、クレアチニンよりもシスタシンCを用いたGFRの方が有効
とのデータがあります。
8) 高齢者はCKDの罹患率が高く、また腎不全の相対的リスクは低いので、高齢者は若い人と
比較してGFRの閾値は低いかもしれません。
(高齢者の場合はeGFRがある程度低下しても、許容範囲かもしれません。)
(ACRは尿中アルブミン/クレアチニン比)
私見)
50歳以上の外来慢性疾患の患者さんには、年一回の便潜血、胸部レントゲン、尿アルブミン
検査は必要と感じます。