2023年11月21日

前立腺肥大に対するαブロッカーとアボルブの比較

前立腺肥大に対するαブロッカーとアボルブの比較

Cardiovascular Outcomes of α-Blockers vs 5-α Reductase Inhibitors
for Benign Prostatic Hyperplasia



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 高血圧治療で有名なかつてのスタディALLHAT以来、αブロッカーのカルデナリンは表舞台から
遠ざかっています。2021年の研究でも心臓のPCI治療を受けた人では、αブロッカーの処方群に
死亡例が増加したとの報告もあります。
一方で同じαブロッカーでも、選択性のハルナールは前立腺肥大や過活動膀胱の第一線で使われて
います。
 今回雑誌JAMAにアボルブと比較して、選択的αブロッカーの心血管疾患での安全性を調べた
論文が載っています。


1) アメリカの保険Medicareからの資料提供です。
   2007年から2019年にかけてのデータです。
   66歳から90歳が対象で前立腺肥大と診断され、新たにαブロッカーかアボルブを処方
   された189,868人を登録しています。
   αブロッカー群は163,829人で、平均年齢は74.6歳。
   アボルブ群は26,039人で、平均年齢は75.3歳です。
   圧倒的にαブロッカーが処方されいるための数値です。
   主要転帰は心不全での入院、主要心血管イベント;MACE(脳卒中での入院、心筋梗塞、
   心血管疾患の死亡)です。

2) 結果
   αブロッカー群はアボルブ群と比較して、1年後のMACEは8.95%対8.32%と、増加して
   います。
   MACEと心不全ではαブロッカーの危険率は1.07(1000人中7.40人)で死亡も1.07
   (1000人中3.85人)でした。
   心不全の入院だけを見ますと、両群で差はありませんでした。





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私見)
   本研究は広範囲に亘って行われており、その結果は重視すべきとしていますが、心血管
   疾患のある人にはαブロッカーの処方に関して今後の研究が待たれると、やや及び腰の
   結論を述べています。
   次回は前立腺肥大治療薬を纏めてブログします。
   「今日の臨床サポート」の内容を抜粋し、下記に掲載します。







本論文.pdf

前立腺肥大 アルゴリズム.pdf










posted by 斎賀一 at 19:49| 泌尿器・腎臓・前立腺

2023年09月04日

限局性前立腺癌に対する部分治療

限局性前立腺癌に対する部分治療

<短 報>

Evaluation of Outcomes Following Focal AblativeTherapy for Treatment
of Localized Clinically Significant Prostate Cancer in Patients >70 Years
:A Multi-institute, Multi-energy 15-Year Experience



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 前立腺癌の治療は、患者さんの状態により選択肢があります。
今までのブログもご参照ください。
その中の一つにHIFU(高密度焦点式超音波療法)があります。
腰椎麻酔を行い超音波の発生する機械を直腸に入れ、前立腺を100℃近くに加熱し癌を治療する
方法です。そのHIFUに関連した論文がありましたのでブログします。
(下記のネット情報もご参照ください。)積極的治療(radical)と部分治療(focal)を
比較しています。


1) 2006年から2020年までに70歳以上(平均74歳)649人を登録しています。
   60%が中間リスクで、35%が高リスクでした。
   最終的には262人の部分治療・HIFU(アブレーション治療および冷却療法・cryo)と
   262人の積極治療(多くがホルモン療法と放射線治療の併用)をマッチングして比較
   しています。

2) 5年間の経過観察(平均24か月)を行っています。
   主要転帰は更なる積極治療への追加、全身治療への変更、遠隔転帰の有無、前立腺癌の
   死亡からのfreeな状態としています。

3) 113人(17%)は更なる治療が必要となっています。
   16人が積極治療を要し、44人に全身治療が必要でした。
   上記の主要転帰から、freeな状態が5年は経過していたかを比較しますと、
   積極治療が96%、部分療法が82%でした。
   部分療法の5年生存率は、96%でした。

4) 当然ながら、積極療法の方が結果は有効でした。
   しかし、メイヨクリニックの筆者は高齢者で合併症や基礎疾患がある場合は、部分療法は
   有効な選択肢と結論づけています。




 
私見)
  定期的な市のPSA検診を受けるように指導して参ります。
  エコーにて前立腺肥大があれば、本院でもPSA検査を原則5年に1回実施して参ります。
  治療は早期なら早期ほど選択肢があります。




追伸
 本日、労災病院の病診連携のパーティーがありました。
 コロナ禍で久しぶりに会った先生も多く、楽しいひと時でした。
 ドクターY先生が「先生のブログを読んでいるよ。」との言葉をかけていただき、望外の
 喜びです。
 ホーバスヘッドコーチの「試合はまだ終わっていない。」の言葉と共に、折れかかった気持ち
 に鞭を打って今日はブログしました。







本論文 (2).pdf

フォーカルセラピー.pdf









posted by 斎賀一 at 17:58| 泌尿器・腎臓・前立腺

2023年08月04日

前立腺癌の早期診断のためのガイドライン

前立腺癌の早期診断のためのガイドライン

Early Detection of Prostate Cancer: AUA/SUO Guideline
Part I: Prostate Cancer Screening



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 アメリカで、前立腺癌の早期発見のためのガイドラインが出ています。
パート1がスクリーニングに関して、パート2が生検に関してのガイドラインです。


1) 前立腺癌の早期発見には、PSAを利用したスクリーニング検査が最も有効です。
   その際には患者との相互意思決定が必須です。(shared decision-making)

2) スクリーニング検査は、40〜45歳から始めるべきです。
   50〜69歳ではPSA検査は2〜4年に1回が基本ですが、リスクの高い人はその間隔を短く
   する必要があります。
   リスクのある人とは、黒人、父親か兄弟に前立腺癌のある人、遺伝子異常がある人、
   家族歴に乳がん、卵巣がん、Lynch症候群がある人です。
   45〜70歳でPSAが1〜3では、1〜4年の間隔で良い。
   75歳以上でPSAが3以下の場合は、スクリーニング検査を中止してよい。

3) PSAの閾値(異常値)は明白には決まっていませんが、50歳では3.0〜3.5と言われて
   います。年齢が上がれば閾値も上がります。

4) PSAが新たに増加したらすぐに侵襲的な検査をせず、PSAの再検をすべきです。
   25〜40%が再検で正常化します。
   ある研究ではPSAが3〜10の人を8週間後に再検したら、17%の人が3以下の正常でした。
   PSAの再検は、1〜2か月後が良いとしています。

5) スクリーニング検査の間隔は各個人で異なりますが、1.0ng/ml以下の場合は間隔を
   開けても良いようです。

6) 寿命が短い人(つまり高齢者)は、スクリーニング検査を中止すべきです。
   77歳以上の人は寿命が10程度と予測されており、スクリーニング検査の対象外となる。

7) MRI検査は生検の前に実施すべきです。

8) 直腸指診はスクリーニング検査としては効果のエビデンスがないが、PSAが上がった人
   (例えば2.0以上)では、全体像を把握する意味でも直腸指診は実施の価値がある。







私見)
 前立腺に関してはこれまでもブログで紹介してまいりましたが、今回は一段とクリアーな
 提示です。
 77歳以上は余命が10年との事で、高齢者にとってはガイドラインもへったくれもないと
 短絡に考えないでください。
 あくまでも定期的なスクリーニング検査は必要ないとしているだけです。
 私はそう信じます。





前立腺がん.pdf

前立腺癌のPSAを用いた診断基準_.pdf








posted by 斎賀一 at 19:14| 泌尿器・腎臓・前立腺