2022年11月19日

慢性腎臓病にRAS阻害薬を継続してもいいかも?

慢性腎臓病にRAS阻害薬を継続してもいいかも?
 
Renin–Angiotensin System Inhibition in Advanced Chronic Kidney Disease
[This article was published on November 3,2022, at NEJM.org.]



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 降圧薬のRAS阻害薬はACE阻害薬とARBがありますが、降圧薬の主役です。
RAS阻害薬は腎臓の保護作用があるとも言われていますが、一方で腎機能の低下した慢性腎臓病
においては、腎機能の悪化を誘発するため中止する事をガイドラインや専門家は、推奨して
います。
以前のブログでも紹介しましたが、腎機能と低カリウムに注意すれば中止までしなくて良いと
する論文もあります。
今回はそれを後押ししてくれる、私にとってはありがたい論文が雑誌NEJMに掲載されています。


1)方法
  腎機能のeGFRが30以下の軽度〜中等度の慢性腎臓病を対象にしています。
  RAS阻害薬を継続する群と中断する群に分けています。
  主要転帰は3年後のeGFRです。
  二次転帰は末期腎不全(ESKD)への悪化、eGFRの50%以上の低下、透析の導入、入院、
  血圧、QOL、活動力です。


2)結果
  411人が対象です。(中断群は206人、継続群は205人の同数です) 経過観察は3年間
  末期腎不全又は透析への移行は、中断群で62%(128人)で継続群では56%(115人)、
  中断による危険率は1.28でした。
  副反応は両群で同じでした。
  心血管疾患の発生は、中断群で108人、継続群で88人です。
  死亡は中断群で20人、継続群では22人でした。


3)討論
  中断群の臨床的なメリットはありませんでした。
  これは以下のサブグループでも言える事でした。
  ・年齢 ・慢性腎臓病の程度 ・糖尿病 ・蛋白尿 ・血圧
  研究の最初の1年間は中断群の方が血圧低下が認められていますが、これはRAS阻害薬から
  他の降圧薬に変更したためで、その後は両群共に同程度でした。
  RAS阻害薬が中等度で慢性腎臓病のeGFRの低下を抑制する事は示せますが、進行性の腎臓病
  に全く有効か、までは言えません。
  結局は最も大事な点は、血圧コントロールかもしれません。
  しかし他の大規模研究では、RAS阻害薬の中断が心血管疾患の増大と死亡率を上げることも
  指摘されています。


4)結論
  RAS阻害薬の中断により、中等度の慢性腎臓病において腎機能低下を遅らせることは出来ま
  せんでした。




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私見)
 慢性腎臓病において、腎機能の推移と血清カリウムのチェックは特に大事です。
 最近のガイドラインを含め一般的にeGFRが30以下では、RAS阻害薬は禁忌の印象でした。
 しかし今回の論文の対象者は30以下です。
 慢性腎臓病の患者さんには2〜3か月の血液検査は必要かもしれません。
 しかし、十把一絡げでRAS阻害薬の休薬はやや過剰反応でしょうか。







他の論文.pdf

慢性腎臓病とRA系阻害薬.pdf








posted by 斎賀一 at 16:09| 泌尿器・腎臓・前立腺

2022年06月10日

急性及び慢性腎臓病におけるeGFRとアルブミン尿

急性及び慢性腎臓病におけるeGFRとアルブミン尿
 
Uses of GFR and Albuminuria Level in Acute and Chronic Kidney Disease
 [N Engl J Med 2022;386:2120-8.]



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 急性及び慢性腎臓病の診断に最も有効なツールは、アルブミン尿とeGFRであるとの総説が
雑誌NEJMに掲載されています。
以前にも同様の内容をブログしましたが、改めて今回の総説を読んで、自分の中で整理して
みました。


1) 急性腎臓病(AKD)は経過が3か月以内、慢性腎臓病(CKD)は3か月以上です。
   急性腎障害(AKJ)は発症7日以内を言いますが、AKDに含まれます。

2) GFRは腎臓の糸球体の数、つまりネフロンの数を表しています。
   年齢と共にネフロンは硬化し、血圧や糖尿病などの疾病でもその数の減少が起きます。
   つまりGFRが低下してきます。
   しかし生理学的にネフロンの数が減少すれば、それを補うために単一のネフロンは、
   ろ過量を増やす傾向となります。hyperfiltrationです。
   そのhyperfiltrationは長い経過では、ネフロンの障害(糸球体内圧亢進)を誘発して
   しまいます。

3) 現在では糸球体のろ過率を表す方法としては、eGFRが一般的で推奨されています。
   eGFRの計算式ではクレアチニンが世界で一般的に使用されていますが、人種差もない
   シスタシンCが推奨されています。

4) アルブミン尿は糸球体血管内皮の透過性障害を表します。
   アルブミン尿は腎臓病の初期から認められ、糖尿病、高血圧、糸球体腎炎など全ての
   腎疾患において遅かれ早かれ出現してきます。
   現在ではアルブミン尿の測定は、早朝のスポット尿を用います。
   尿中アルブミン(mg)/尿中クレアチニン(gr)比で求めます。

5) GFRが60以下、もしくは尿中アルブミン(mg)/尿中クレアチニン(gr)比が30以上の
   場合は腎臓病(AKD,CKD)を想定します。AKIはGFRのみの低下です。
   確定診断となりますと、年齢や病気、合併症により異なってきます。

6) アルブミン尿の増加はARBの治療適応となります。
   最近ではSGLT-2阻害薬も有力視されています。

7) GFRの低下とアルブミン尿の増加は、心血管疾患(CVD)の予測因子です。
   CVDの危険率を考えた時には、クレアチニンよりもシスタシンCを用いたGFRの方が有効
   とのデータがあります。

8) 高齢者はCKDの罹患率が高く、また腎不全の相対的リスクは低いので、高齢者は若い人と
   比較してGFRの閾値は低いかもしれません。
   (高齢者の場合はeGFRがある程度低下しても、許容範囲かもしれません。)




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          (ACRは尿中アルブミン/クレアチニン比)









私見)
 50歳以上の外来慢性疾患の患者さんには、年一回の便潜血、胸部レントゲン、尿アルブミン
 検査は必要と感じます。











posted by 斎賀一 at 20:07| 泌尿器・腎臓・前立腺

2022年06月07日

運動は腎機能低下を抑制する

運動は腎機能低下を抑制する
  <短 報>
 
Effect of Structured, Moderate Exercise on
Kidney Function Decline in Sedentary Older Adults



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 一週間で2.5時間の運動は、腎機能低下のスピードを遅らせるとの報告がありました。


1) 対象者は座ってばかりいる70〜89歳の高齢者(平均年齢78.9歳)1,199人です。
   ベースラインのシスタシンCによる腎機能eGFRが54です。
   2年間の経過観察です。
   一週間で150分間のウオーキング、エクササイズを行う運動群と、健康管理の教育だけを
   受けた群とを比較しています。
   主要転帰はeGFRの変化と急激なeGFRの低下です。

2) 結果
   運動群の方が教育だけの群より、eGFRの低下が0.96少ない結果でした。
   また、運動群では急激なeGFRの低下の危険率は、0.79と有効な結果です。

3) 考察と結論
   一般市民で坐位傾向の高齢者では、運動とエクササイズが腎機能低下を予防できるよう
   です。運動により糖尿病、脂質異常の改善や血圧低下にも繋がり、その結果が腎機能
   低下の抑制になるかもしれません。
   しかし、腎機能低下が進んでいる高齢者にどれだけ効果があるかは今後の研究課題です。






私見)
 腎機能に運動は好影響を及ぼすようです。








Effect of Structured, Moderate.pdf
















posted by 斎賀一 at 19:34| 泌尿器・腎臓・前立腺