2018年05月15日

前立腺癌のMRI検査の有用性

前立腺癌のMRI検査の有用性
 
MRI-Targeted or Standard Biopsy for Prostate-Cancer Diagnosis
n engl j med 378;19 nejm.org May 10, 2018



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 生検を受けたことのない前立腺特異抗原(PSA)高値の男性において、事前にマルチパラメトリック
MRIを実施して癌の可能性を調べてから、そこを標的にコア生検を実施した場合と、標準的に経直腸的超音波ガイド下生検でコア数 10〜12の生検した標準生検とを比較した論文が、NEJMに掲載されました。
結論的には、生検前に MRI を実施してから MRI 標的生検を行った群の方が、標準的な経直腸的超音波ガイド下生検に対して優越性を示しました。


纏めますと

1) PSAが20以上や直腸指診で進行癌の所見がある場合は除外しています。
   PSAが20未満で前立腺癌の疑いがある470人を、MRIを実施した群としないで標準的にコア生検を
   10~12行った群に其々235名に振り分けています。
   MRIを実施した群ではPiRADS v2の診断基準に従い、スコアーが1と2は癌の可能性が低いので
   標的生検は実施せず、3・4・5に実施しています。
   (PiRADS v2に関しては下記のPDFをご参照ください。また生検のグリソンスコアーに関しては以前
   の私のブログもご参照ください。
   簡単に述べますと、MRI所見を辺縁領域と移行領域で調べてスコアー化しています。
   グリソン・スコアーとはコア生検から細胞異型でなく組織異型を主として、標本の中で一番目と二番目
   に多い異型所見を足したものです。当然両方ともスコアー化の数字が多い方が悪性です。)




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2) MRI 標的生検群 252 例のうち、71 例(28%)は MRI で前立腺癌が示唆されなかったため生検
   を受けなかった。つまりMRIを実施することにより、無駄な生検を1/4減らすことが出来た。

3) 臨床的に意義のある癌は、MRI 標的生検群では 95 例(38%)に検出されたのに対し、標準生検群
   では 248 例中 64 例(26%)に検出された。
   MRI群の非劣性が証明された。

   詳細の結果表は下記のPDFをご参照ください。




私見)
 MRIを実施する事により無駄なコア生検を1/4減らすことができ、その後のMRI標的生検によりコア生検
 の回数も減らせて合併症も少なくて済みます。
 なにやらMRIが標準的な診断方法のようです。
 残念ながらMRIに関しては造詣が浅いため、下記の文献をご参照ください。




前立腺癌文献より.pdf

1 文献.pdf

2 PI-RADS v2 Score 高橋.pdf

3 PI-RADS v2 Score1.pdf

4 PI-RADS v2 Score2.pdf














posted by 斎賀一 at 20:33| Comment(0) | 泌尿器・腎臓・前立腺

2018年05月10日

前立腺癌のスクリーニング;一般向け

前立腺癌のスクリーニング:一般向け

The US Preventive Services Task Force (USPSTF) has recently
Published recommendations on screening for prostate cancer
in asymptomatic men



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 米国の医師会雑誌のJAMAより、症状のない一般の人用の前立腺癌に対する手引書が出ましたので
掲載します。


1) 前立腺癌とはなにか? 
   前立腺とは膀胱の裏側にあり、精液の液体の一部を形成する。
   前立腺癌の臨床的特徴(生物学的特性)は幅が広い。
   多くの場合は進行が緩徐で死亡の原因にはならず、前立腺癌以外の疾病で亡くなるケースが多い。
   前立腺癌以外で死亡した人の病理解剖で、1/3人に前立腺癌があった。 (潜在癌:オカルト癌)
   従って前立腺癌のスクリーニングに関しては自ずと過剰診断、過剰治療のリスクが生ずる。

2) 前立腺癌のスクリーニング検査は何か?
   PSA検査が有用。
   しかし前立腺肥大、前立腺炎でも高値となるので、基本的には組織を採る生検が必要である。
   (最近では生検の前にMRIを実施)

3) スクリーニング検査の有益性と有害性は何か?
   スクリーニングの主たる目的は、最も進行性の速い前立腺癌を同定する事である。
   その事によって、死亡率や転移の減少を目的としている。
   しかし70歳以上では、有益性よりも有害性が勝っている。
   つまり勃起障害や尿失禁が、副作用に生じてQOLの低下に繋がってしまう。

4) 前立腺癌のスクリーニングに関する勧奨の程度は?
   55~69歳では有益性と有害性のバランスが拮抗しているが、70歳以上では有害性が勝る。
   よって70歳以上でスクリーニングに躊躇する人には勧奨しない。




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私見)
 55歳以上の人を目の前にしてこのように割り切れるのでしょうか。
 特に70歳のあなた、どうしますか?


 私の好きな詩の一節が思い浮かびます。

       「かうして目には見えずに、夜が下りて来る。」

                             ギイ・シャルル・クロス




前立腺癌 患者用.pdf








posted by 斎賀一 at 14:04| Comment(1) | 泌尿器・腎臓・前立腺

2018年03月17日

前立腺癌の診断に直腸指診は無効?

前立腺癌の診断に直腸指診は無効?

Digital Rectal Examination for Prostate Cancer Screening
in Primary Care: A Systematic Review and Meta-Analysis



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 前立腺癌の検診にPSAが導入されてから、私も直腸指診を忘れていました。
今回の論文では、スクリーニングとして直腸指診は無効で、却って害になるとの報告です。
ほっとしましたが、良く考えるとそうとは言えない感じもいたします。


簡単に纏めてみますと

1) 直腸指診は過剰診断と過剰治療(生検も含めて)に繋がる。

2) はっきりした死亡率の改善には至らない。つまり治療可能な前立腺癌の発見には効果が無く、進行癌
   の発見が主になっている。

3) 直腸指診の特異度は0.59、感度は0.51

4) はっきりしたエビデンスがないので、直腸指診単独やPSAとのコンビネーションの両方ともスクリー
   ニングに推奨しない。



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   “当たるも八卦、当たらぬも八卦” でしょうか

しかし論文中にも記載されていますが、直腸指診とPSAを組み合わせた場合には、ハッキリした効果は
無いにしても捨てがたいデータを示しています。
その点をUPTODATEから調べ直して、こちらも纏めてみました。


1) 長い間直腸指診は行われてきたが、どの年齢層でも死亡率の低下には貢献していない。

2) 前立腺の後壁と側壁は直腸指診で診断できるが、それ以外の部位でも癌は発生する。
   更に直腸指診だけでは、進行癌の発見は出来るがステージTの発見は出来ない。

3) 直腸指診の診断確率は5~30%で、メタ解析では28%

4) 直腸指診とPSAとのコンビネーションを調べると
   ・PSAが正常で、直腸指診が陽性の場合の診断確率は 10%、
    ・直腸指診が陰性で、PSAが異常値での診断確率は 24%、
   ・つまり、PSAが1.0以下での直腸指診の診断は劣るが、3.0~4.0の範囲では診断は高まる。

5) 以上より、各ガイドラインは直腸指診のスクリーニングでの実施は、PSAとのコンビネーションを
   含めて推奨していない。





私見)
 何やら後ろ髪を引かれる思いです。
 私はスクリーニングの世界で生活していませんし、蓮池の泥の中で仕事をしている身では、PSAが 
 4以上では経時的観察も大事ですが、直腸指診とエコーの所見を見定めなくてはいけない様な気が
 しました。

    




前立腺癌 指診 文献.pdf

pubmed.pdf









posted by 斎賀一 at 14:29| Comment(1) | 泌尿器・腎臓・前立腺