2019年03月11日

高齢者の尿路感染症には注意

高齢者の尿路感染症には注意
 
Antibiotic management of urinary tract infection in
elderly patients in primary care and its association
with bloodstream infections and all cause mortality



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 一般的には成人の尿路感染症は、特に女性の場合発熱が無ければ、抗生剤の投与は控え気味です。
極端に言えば、女性の場合は妊娠してなければ水を飲んで治してくださいとまで言ってしまいます。

 今回の雑誌BMJからの論文では、尿路感染症で抗生剤の投与が遅れると、特に70歳以上では急激に敗血症の転帰となるとの警告です。


纏めますと

1) 若い人に比べて70歳以上の男性では、進展した尿路感染症は50倍にもなる。
   また女性の場合は、無症状の割合が若い人では5%以下なのに比べて、65歳以上では20%以上と
   診断に難渋することがある。 (症状については下記のPDFを参照) 
   しかも経験的抗生剤投与(empirical)が尿路感染症では多い傾向です。
   そのため不適切な処方も多いと指摘されていました。
   そこで、最近のガイドラインでも抗生剤の不適切な投与に対して警告が出されております。
   しかし、その一方でグラム陰性菌による尿路感染症の進展も懸念されます。

2) 英国でのコーホー研究のCPRDより、データを集積しています。
   期間は2007~2015年間
   65歳以上の成人で、少なくとも1回は尿路感染症歴のある157,264名が対象
   主要転帰は、・菌血症 ・入院 ・尿路感染症の診断後、60日以内に死亡

3) 合計312,896例 (157,264名中)
   抗生剤を処方しなかった群は7.2% (22,534例)
   処方が遅れた群(診断後7日以内に抗生剤を処方)は6.2% (19,292例)
   直ぐに処方した群は86.7% (271,070例)
   尿路感染症と診断されて、60日以内での菌血症の頻度は0.5% (1,539例)

   その内訳は
   ・抗生剤を処方しなかった群で、2.9% (647例)
   ・処方が遅れた群で、2.2%
   ・直ぐに処方した群で、0.2% でした。
  
   危険率を直ぐに処方した群との比較で見ますと
   ・処方しなかった群では8.08
   ・処方が遅れた群では、6.22 でした。

   入院率で比較しますと
   ・処方しなかった群で、27.0%
   ・処方が遅れた群で、26.8%
   ・直ぐに処方した群で、14.8% でした。

4) 結論としては
   85歳以上の男性では、特に菌血症のリスクと、診断後60日以内での死亡率が高い傾向でした。
   菌は大腸菌が最も多く検出されています。



  

私見)
 65歳以上で排尿症状が無くても、元気が無かったり疲労感などの不定症状があったら、先ず尿沈渣は
 ルーチン検査とする必要がありそうです。








尿路感染症と抗生剤.pdf

Antibiotic management of urinary tract infection in elderly patients.pdf















posted by 斎賀一 at 20:08| Comment(0) | 泌尿器・腎臓・前立腺

2019年03月01日

前立腺癌のPSA監視療法の傾向

前立腺癌のPSA監視療法の傾向
 
Use of Active Surveillance orWatchfulWaiting for
Low-Risk Prostate Cancer and Management Trends
Across Risk Groups in the United States, 2010-2015



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 低リスク患者におけるPSA監視療法の傾向に関する論文が雑誌JAMAに掲載されていましたので、
PDF化しました。

PSA監視療法に関しては「今日の臨床サポート」をコピペしました。

「PSA監視療法(Active surveillance )とは、積極的な治療をせず、PSAを定期的に採血し、PSAの
上昇や画像所⾒により、必要があれば再⽣検を⾏い、病勢の進⾏を評価する⽅法である。
具体的には、PSA測定と直腸診を3〜6カ⽉ごとにチェックし、1〜3年ごとに⽣検を⾏う評価⽅法で、PSA倍加時間が3年以上の場合や⽣検でグリーソンスコアの上昇や陽性コアの増加、腫瘍体積の増⼤を⽰唆する所⾒を認めない限りは、経過観察を継続する。PSA監視療法は、PSA≦10ng/mL、臨床病期≦pT2、陽性コア数≦2本(ただし、ターゲット⽣検、saturation⽣検の場合はこの限りではない)、
グリーソンスコア≦6、さらにPSA濃度(PSAD)<0.2あるいは<0.15ng/mL/mLの症例が適応となる。
 PSA監視療法は、いくつかの研究において低リスク前⽴腺癌患者や予後の10年未満の患者にPSA監視療法を適応した場合には、根治⼿術群と⽐較して全⽣命予後に⼤きな差がないことが明らかになっている。」

また低リスク患者の定義については、下記のPDFをご参照ください。
結論的には低リスクにおけるPSA監視療法が増加傾向ですが、放射線療法は全般的に減少傾向のようです。






私見)
 論文のグラフが一目瞭然ですので、下記のPDFをご参照ください。
 重要な決断が必要な場合には患者さんに時間を設けて説明しますが、最後に質問されるのは

      「ところで、皆はどうしていますか?」

 十分に納得してもらうためにも、世の中の動向が大事なようです。







1 Low-Risk Prostate Cancer and Management.pdf

2 本論文より.pdf

3 前立腺癌学習.pdf

4 前立腺癌ガイドライン.pdf










posted by 斎賀一 at 21:45| Comment(0) | 泌尿器・腎臓・前立腺

2018年12月20日

前立腺癌の根治手術と経過観察の29年間の比較

前立腺癌の根治手術と経過観察の29年間の比較
 
Radical Prostatectomy or Watchful Waiting 
in Prostate Cancer − 29-Year Follow-up
 n engl j med 379;24 nejm.org December 13, 2018



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 前立腺癌は男性では胃癌、大腸癌、肺癌に次いで4番目に罹患率の高い癌ですが、最近は増加傾向
です。
  一方で病気が進行していても、その進展は緩徐のため予後は良好であり、治療方針としてもPSA監視療法から根治手術まで多岐に亘っています。

 今回雑誌NEJMより、根治手術と無治療の経過観察とを比較した論文が出ましたので纏めてみました。
現代の医療環境からはやや離れていますが、却ってバイアスが掛からない純粋な(?)前立腺癌の治療効果がみられるとの利点もあります。


1) スカンジナビアにおけるSPCG-4研究からの報告です。
   1989年10月〜1999年2月に、限局性前立腺癌の男性695例を登録し、経過観察群と根治的
   前立腺全摘除術群に無作為に割り付け、2017年まで追跡データを収集しました。
   対象は75歳以下、余命が10年以上あると推測できる人、進行が速く予後が悪い癌に罹患して
   いない人、PSAが50ng以下、組織診断で中等度から高分化、骨転移がない等です。
   根治的手術で再発が確認されたら、アンドロゲン治療を最初に行う。
   骨転移があれば、両群共にホルモン療法を施すとしています。

2) 695名中553名が、2017年までに全死亡(80%)。根治的前立腺全摘除術群の347例中261例
   (71.9%)、経過観察群の348例中292例(83.8%)が死亡しました。
   181名が前立腺癌関連の死亡で(32%)、内訳は71名が根治手術群(19.6%)、110名が経過観察
   群(31.3%)でした。

3) 予後の予測因子としては、根治的前立腺全摘除術を行った男性のうち、被膜外浸潤を認めた男性
   では、被膜外浸潤を認めなかった男性の5倍の前立腺癌死亡リスクに関連し、グリーソンスコア 
   (2〜10で、スコアが高いほど癌の悪性度が高いことを示す。)が7を超えることは、スコアが6以下
   の男性の10倍も前立腺癌死亡リスクに関連していました。

4) 遠隔転移は、根治手術では92名で、経過観察群では150名です。
   23年経過時点では根治手術で26.6%、経過観察群で43.3%の遠隔転移でした。

5) 結論的には、23年の経過観察でみますと根治手術により寿命が2.9年間長くなり、全死亡1例を
   予防するための治療必要数は8.4例でした。
   根治手術による絶対的な利益は、全死亡率及び疾患特異的死亡率共に23年間の期間で2倍増加
   していました。

6) 現在では前立腺癌の診断は格段の進歩を遂げています。
   PSA健診の普及、治療の選択肢の向上、生検の前のMRI検査、遠隔手術(ダビンチ)などです。
   しかし、本論文では前立腺癌の本来の臨床的治療の性質を示唆するものとして、現在の治療選択を
   する際に、重要な指標と成り得るとしています。





私見)
 本論文においては、経過観察をするよりも根治手術を選択する方が2倍の効果ですが、本疾患が予後
 の良い事を考えると8人に1人が助かった事になります。しかも余命が3年長くなる程度でした。
 現在はPSA厳重管理の時代ですし、治療も進歩しています。もしかしたら根治手術と厳重管理の差は
 接近しているかもしれません。

 尚、私の以前の前立腺癌に関連する下記ブログも参照し、グリーソンスコア等を調べてください。
 下記に参考文献も掲載します。
 近々、前立腺癌の総説的なブログも計画しています。



   ○ 早期前立腺癌の根治手術と経過観察(積極的監視)の比較  (2017-7-24)
   ○ 前立腺癌に対する新しいガイドライン  (2017-01-13)
   ○ 限局性前立腺癌に対する10年間の追跡調査  (2016-10-31)






前立腺癌論文より.pdf

前立腺がんとかかりつけ医.pdf








posted by 斎賀一 at 13:13| Comment(1) | 泌尿器・腎臓・前立腺