2019年06月15日

造影剤による急性腎障害

造影剤による急性腎障害
 
Contrast-Associated Acute Kidney Injury
  N Engl J Med 2019;380:2146-55.


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 造影剤における腎障害に関しては、直接的及び間接的に腎臓に作用すると考えられています。

今回雑誌NEJMより総説が載っていましたので読んでみました。
但し残念ながら知見が混とんとしていて、読んでいても更に迷路に入ってしまったようで、すっきりと理解
できませんでした。しかし流石はNEJMで、そんな中で光を放つ内容もあり、私なりに曲解し箇条書きに
して纏めてみました。

1) クレアチニン値は、腎障害の程度の指標にならない事がある。
   薬剤の影響と体液量の変化によって、クレアチニン値は変動するからである。
   わずかな増加でも腎障害に繋がる事もあれば、低下が悪化のサインである事もある。
   兎も角も変動に注意する必要があるが、如何に判断するかは今後の課題である。

2) 検査前の患者の腎機能が、リスク評価にとって重要である。
   糖尿病とCKD(慢性腎臓病)はリスクの独立因子として、相互的に腎障害を悪化させる。

3) 低浸透圧と等浸透圧の造影剤がリスク軽減のために推奨されている。
   しかし、どの程度の量が適正かは未だ判明していない。
   造影剤が350ml以上、72時間以内での再度の使用はリスクとなる。
    (イオン性でなく非イオン性が日本でも推奨されています。
     イオン性の場合はイオン化により浸透圧が倍になるからとしています。)

4) 疾患によってはそのリスクは増加する。
   特に心電図でST上昇を伴う心筋梗塞の血管造影はリスクが高い。

5) 繰り返しになりますが、造影剤の検査後にクレアチニンがわずかに増加しても、又逆に低下しても
   徐々に腎機能が低下する事があるので、90日間の観察が必要となるケースもある。
   つまりクレアチニン値は造影剤で揺れる。 (fluctuation)

6) 研究(study)によっては、造影剤検査で腎障害がそれほど発生しないとする報告もある。
   しかしそのような研究は、ハイリスクの患者は事前に研究から除外されている。
   それでも造影剤検査後の重大な副作用(透析など)の頻度は、0.3%と低率である。
   だからと言って、造影検査は安全とも断定できない。 (私の訳が煮え切らないのでしょうか?)

7) 造影検査前後の輸液点滴も効果があると言う報告もあるが、ないとする発表もある。
   しかし著者は、短期的な輸液点滴を勧めている。
   従って、造影検査の1~3時間前と検査の6時間後に行う。
   ただし、輸液の量が多い方が良いかは不明である。

8) アセチルシステインは安価で予防に有効との研究もあるが、無効とする報告も散在している。

9) 脂質異常症の治療薬であるスタチン系には、予防的効果は無い。
   しかし当然ながら、心血管疾患の患者が対象なので、スタチンは継続服用を勧める。

10) 腎障害を誘発する薬剤、例えば利尿薬、降圧剤のARB、鎮痛解熱剤(NSAIDs)などは中止する
   事が適当だとするはっきりしたエビデンスはない。
   特に糖尿病治療薬であるメトグルコの一時的休薬は周知の事実であるが、それは直接的な腎障害
   ではなく、腎障害が発生した場合の乳酸アシドーシスの懸念からである。

11) まず患者のリスク評価を行う。それに従ってストラテジーを組む。
   しかしリスク評価は単に一時的判断であり、施行する検査方法にも影響を与えるので絶対的では
   ない。  (かなり慎重なコメントなので、どうしていいのか分からない。取り敢えずリスク評価を
   PDFで掲載します。)

12) かなりの点がこの論文で明白になったが、不明な点は今後の研究が待たれるとしています。
   慎重ながらも自信満々の結論です。






私見)

 本院で出来る事は

 ・造影検査を予定している患者さんにはメトグルコ、利尿薬、鎮痛解熱剤、ARBは休薬も視野に入れて
  の説明とします。
 ・造影検査後の90日間は、本院でもクレアチニンで経過を見る必要がありますが、これのみでは腎障害
  の指標にはならない様です。
 ・本論文の主旨では、適正な判断で造影検査の有意義な点を無視しないように心がける事も大切だと
  しています。
  下記のPDFに、本論文のストラテジーとuptodateの指針を掲載します。



1 本論文より.pdf

2 uptodate.pdf

3 ガイドライン.pdf















posted by 斎賀一 at 16:20| Comment(0) | 泌尿器・腎臓・前立腺

2019年05月24日

女性の再発性尿路感染症ガイドライン・2019年版

女性の再発性尿路感染症ガイドライン・2019年版
 
Recurrent Uncomplicated Urinary Tract Infections
in Women: AUA/CUA/SUFU Guideline (2019)
 


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 アメリカの泌尿器学会(AUA)より、合併症のない女性における再発性尿路感染症(rUTI)のガイドラインが発表になっています。
16の声明文と其々のコメントから成り立っています。


簡単に纏めてみました。

1) statement 1
   病歴の聴取と骨盤内疾患の検査を十分に行う必要がある。

2) statement 2
   尿培養と症状をカルテへ記載することは必須
   (rUTIとは、6カ月間で2回以上又は1年間で3回以上の尿培養陽性と、急性膀胱炎症状を有する事
    と定義されている。 
    中間尿の採取が必要。細菌量の基準は無症候性、特に閉経前の女性のコンタミ(混入)と区別する
    必要があるため一定量を基準とするが、症候性の場合は細菌量が少量でも診断してよい。)

3) statement 3
   コンタミが疑われたら、繰り返して複数回の尿培養検査が必要
   場合によりカテーテル採尿も考慮する。

4) statement 4
  一般的にはrUTIの患者に膀胱鏡検査は必要ない。

5) statement 5
   急性膀胱炎症状の治療を開始する前に尿沈渣、尿培養、感受性検査を実施すべき。

6) statement 6
   急性症状を有するrUTIに対して、時に尿培養を待たずに患者主導で治療薬の服用を提供する事も
   可能です。
   (ある種の状況では、患者が診療を受けずに短期の抗生剤服用の決定を許可する事もあります。
    ある条件とは、旅行中、性交渉、長期の出張、下痢、便秘などです。
    一回の抗生剤の服用と短期の服用とで、予後に差はありませんでした。
    その場合でも以前の尿培養の結果は重視すべきです。)
  
7) statement 7
   rUTI患者に対して無症状の場合には、定期的な尿検査や培養をしなくても良い。
   (但し、妊婦や今後、侵襲的な尿路系の検査をする人は、rUTIの既往があれば尿培養を含めた
    尿検査はしておく必要がある。)

8) statement 8
   尿に細菌が陽性でも、症状が無ければ治療の必要はない。
   (無症候性で細菌尿の治療効果に対しては、エビデンスが無い。
    但しストルバイト結石(リン酸マグネシウムアンモニウム結石)がある場合は、治療も選択肢の
    一つ)

9) statement 9
   第一選択薬は、バクタ、ホスミシン、ニトロフラントイン(日本では未承認)
   (私見としてのまとめ ; 短期療法と長期療法がありますが、概ね効果は同等の様です。
    短期は3日間、長期は7~10日間のようです。セフェム系は効果が劣性で、一番効果が優勢なのは
    キノロン系のシプロキサンとガチフロでした。セフェム系とキノロン系は第二選択薬となります。)

10) statement 10
   rUTI患者の急性膀胱炎治療は、出来るだけ短い治療期間(一般的には7日以内)で治療すべき。
   (短期は3~6日間、長期は7~14日間を意味します。
    短期療法での細菌学的不成功の危険率は短期経過でみますと1.37、長期経過でみますと1.43と
    長期療法より劣性ですが、臨床的な意味合いでは統計学的に差はありませんでした。
    副作用は明らかに、3日療法の短期療法の方が軽減されています。
    よって出来るだけ短期療法に努めるべきだが、長くても7日以内を推奨)

11) statement 11   
   尿培養で耐性菌が検出された場合は抗生剤の短期の点滴療法(一般的には7日以内)も視野に
   入れる。
   (点滴療法を実施する前にホスミシンが感受性を有するかを検討する価値がある。)

12) statement 12
   rUTI患者の将来の尿路感染症のリスクを軽減するために、抗生剤の予防投与を、リスクと利点を
   考慮して決定する。

     ○本院での処方例として
      ・ケフレックス(250mg)を 1錠/日を連日
      ・ホスミシン(500mg)を 6錠/日を10日毎に服用(?)
     ○性行関連としては前後に
      ・ケフレックス(250mg) 1錠
      ・バクタ 1錠

13) statement 13
   代替医療としてクランベリーも考慮

14) statement 14
   症状が消失(asymptomatic)ならば治療後の尿検査はしなくてよい。






私見)
 次回は、ホスミシンに関して再度勉強しブログします。








Recurrent Uncomplicated Urinary Tract Infections in Women_ AUA_.pdf















posted by 斎賀一 at 20:55| Comment(0) | 泌尿器・腎臓・前立腺

2019年04月22日

顕微鏡的血尿と膀胱癌の関係

顕微鏡的血尿と膀胱癌の関係
 
The Prevalence of Bladder Cancer During Cystoscopy for
Asymptomatic Microscopic Hematuria



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 血尿には肉眼的血尿(患者さんが見た目で判断できる血尿)と、顕微鏡的血尿(試験紙か顕微鏡で
分かる程度の軽微な血尿)があります。
この顕微鏡的血尿の場合に、膀胱癌がどの位潜んでいるかを示した論文がアメリカより出ています。
本論文では顕微鏡の強拡で、1視野で3個以上の赤血球を顕微鏡的血尿としています。


纏めますと

1) 顕微鏡的血尿に対して細胞診を実施し、膀胱がんを精査しています。
   2010~2018年間のコロンビア大学での研究です。
   年齢、性差、喫煙歴、下腹部の放射線照射歴も登録して調べています。
   ただし肉眼的血尿、腎疾患、感染症、結石などは除外しています。

2) 顕微鏡的血尿の患者2,118名を登録しました。
   25名の膀胱癌患者を診断しています。(1.2%)  進行癌はありませんでした。
   女性は0.8%で男性が1.9%の割合です。
   50歳以下の444人には、一人も膀胱癌がいませんでした。

3) 顕微鏡的血尿の場合には、喫煙歴と年齢が重要な因子となります。
   統計処置をしますと、顕微鏡血尿の場合に50歳以下で喫煙歴のない人では、膀胱癌の可能性は
   0.3%に対して、80歳以上で現在も喫煙している人では、12.5%の頻度となります。


 現在のアメリカでのガイドラインは顕微鏡的血尿の場合に35歳以上で細胞診を勧めているが、NEJM Journal Watchのコメントでは、50歳以上に改訂すべきとしています。





私見)
 逆に50歳以上で試験紙で血尿が認められたら顕微鏡検査、腹部エコー、更には細胞診と勧める必要が
 あるようです。また喫煙歴の問診も大事です。
 下記に関連文献を掲載しますので、職員の方は参考にして下さい。






1 The Prevalence of Bladder Cancer During Cystoscopy for Asymptomatic Microsco.pdf

2 膀胱癌.pdf

3 US検診における腎泌尿器癌の現状と早期発見のコツ.pdf

4 尿沈渣.pdf












posted by 斎賀一 at 19:45| Comment(0) | 泌尿器・腎臓・前立腺