2020年07月06日

血尿に対するガイドライン

血尿に対するガイドライン
 
Microhematuria: AUA/SUFU Guideline


 
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 アメリカの泌尿器学会(American Urological Association)から、血尿に対するガイドラインが出て
いますのでブログしてみました。

 本ガイドラインは泌尿器科の立場ですので、当然趣は悪性腫瘍に軸足があります。
本院ではプライマリーのため、幅広い観点より本ガイドラインを参考に独自の解釈を含めまして、ストラ
テジーを組んでみました。職員の皆さん、参考にして下さい。



・テステープで潜血反応が陽性の場合は、速やかに沈渣を作り検鏡をします。
 検鏡では、強拡大で1視野あたり3個の赤血球以上を陽性とします。
 一見厳しい基準のようですが、尿が薄い場合は赤血球が融解してしまうために基準を下げています。
 たった1回の尿検査で精度は95%なので、繰り返さなくても良いようです。

 採尿時には注意が必要です。
 最初の尿は捨てて(約10cc)中間尿を採ります。
 男性の場合は可能な限り中間尿ですが、女性の場合は極力中間尿でなければ、診断確率が下がり
 ます。
 運動後の採尿は避けてください。
 尿比重が低くない事も条件ですので、検尿時に尿比重も記載しておいてください。

・尿沈渣で確定し、陽性ならば必ずエコー検査を実施し、泌尿器科や婦人科の疾患、特に悪性疾患を
 鑑別しなければなりません。
 血尿を引き起こす職業も、問診する必要があります。

・抗血小板薬や抗凝固薬を服用しているからと言って安易に除外せず、同様に検索する必要があります。
 ある報告によりますと、血尿患者の5.8%に膀胱癌が見つかり、その中の15.3%は抗血小板薬か
 抗凝固薬を服用していました。

・尿路感染症による血尿と診断しても、必ず治療後の再検で血尿が無くなっている事を確認してください。
 この場合も婦人科疾患を除外する必要があります。
 そのために1か月後の再々検査が必要で、繰り返している場合は尿路感染症の再発と同時に、婦人科
 疾患の可能性も想定してください。

・尿蛋白陽性や尿沈渣で円柱、赤血球の破壊像があれば腎疾患を鑑別してください。
 その際にも腎蔵の悪性腫瘍を鑑別しなくてはなりません。
 尿路系の悪性腫瘍でも腎機能が低下しているケースがあり、危険率は1.39との事です。
 (つまり内科的腎機能低下の疾患であるCKDでも、必ずエコー検査は必要です。)

・最初の血尿の評価後に経過観察するにあたり、先ず患者のリスクの層別化が必要です。
 ◌低リスクは6カ月に1回の検査
  禁煙: 男性は40歳以下で、女性は50歳以下   強拡大で3~10
 ◌中リスクは尿の細胞診とエコー検査
  喫煙: 60歳以下   強拡大で11~25
  高リスクは細胞診と画像診断
  ヘビースモーカー: 60歳以上   強拡大で25以上

・最初に細胞診検査をする必要性はない。

・腫瘍マーカーは推奨しない。

・繰り返す血尿はエコー検査並びに画像診断が必要

・家族歴の問診も必要

・血尿が陰性になっても1年以内の再検は必要

・経過観察中に肉眼的血尿を認めたら、診断と評価はリセットして再検査を要する。






私見)
 本院は尿路感染症と腎疾患が主体ですが、悪性腫瘍を念頭に置いた本ガイドラインも大いに参考に
 しましょう。








血尿 SUFU Guideline - American Urological Associ.pdf











posted by 斎賀一 at 18:14| Comment(1) | 泌尿器・腎臓・前立腺

2020年03月13日

前立腺癌の診断におけるMRIを用いた生検の有用性?

前立腺癌の診断におけるMRIを用いた生検の有用性?
 
MRI-Targeted, Systematic, and Combined
Biopsy for Prostate Cancer Diagnosis
N Engl J Med 2020;382:917-28.


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 前立腺癌は、低悪性度(indolent)から死亡率の高いものまで幅の広い癌です。
現在では診断のための生検は、エコーによるガイド下で12穿刺(systematic)が標準的です。
しかしこの方法では癌を見落とすことがあることと、逆にグレード分類の間違いもあり、過剰診断と過小
診断に繋がる問題があります。
systematic法により根治治療の手術を受けた人の43%が低悪性度であり、放射線治療を受けた60%がグレード1であったとの報告もあります。
 一方、最近では前もってMRIで疑わしい所見の部位を同定し、ターゲット部位を生検する方法が主流に
なりかけています。 (MRI-targeted)
MRI 標的生検(MRI-targeted法)が系統的生検(systematic法)に代わるものかを調べた論文が、
雑誌NEJMに掲載されています。
MRI-targeted法単独、systematic法単独と両者を併用したcombined法を比較しています。


纏めますと

1) 対象者は18歳以上で、PSAが高値か直腸指診で異常所見のある人です。
   コンサルトでMRIを受けてMRI 可視病変を有する男性に、MRI 標的生検と系統的生検の両方を
   行いました。
   2,103 例が両方の生検を受け、そのうち 1,312 例(62.4%)がこれらの 2 つの生検の併用
   (併用生検)により癌と診断され、404 例(19.2%)が根治的前立腺全摘除術を受けています。
   主要転帰は、グレードグループ(グリーソン分類)別の癌の検出としています。
   グレードグループ 1 は臨床的に重要でない癌、グレードグープ 2 またはそれ以上は予後良好な
   中リスクまたはそれ以上の癌、グレードグループ 3 またはそれ以上は予後不良な中リスクまたは
   それ以上の癌としています。

2) 生検後に根治的前立腺全摘除術を受けた男性において、生検から全手術標本の病理組織学的
   検索でグレードグループの上昇と低下を記録しました。

3) 生検後に根治的前立腺全摘除術を受けた 404 例で調べますと、併用生検は手術標本の病理
   組織学的解析で、グレードグループが 3 以上に上昇した患者の割合(3.5%)が低く、MRI 標的
   生検(8.7%)、系統的生検(16.8%)と比較して最小でした。

4) もしもMRI 標的生検だけで診断すると30.9%のupgradeとなり、その中の8.7%が臨床的に重要
   なupgradeとなっており結果的には見落としとなります。
   一方で統計学的に解析しますと、系統的生検をしないとグレード 3 以上の癌の見落としが1.9%で、
   グレード 2 以上の癌の見落としは5.8%となります。
   つまりMRI 標的生検は、完全に系統的生検に代わる方法ではない様です。

5)結論
  併用生検が生検の精度を上げている。
  下のグラフは根治的前立腺全摘除術を受けた男性404 例の解析です。

   (46+168+63+125=402)


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   上のグラフは、根治的前立腺全摘除術を受けた男性404 例を全標本で調べています。
   それを正解として見た時に、其々の生検の仕方の精度を表しています。
   赤が見落としに相当し、青が過剰診断と捉える事も出来ます。
   論文では青に関しては各生検方法に差は無いとして詳しくは解説していません。
   濃い青の部分を言っているようです。






私見)
 明らかにMRI 標的生検の方が系統的生検に比べて精度は高いのですが、ザックリと言ってMRI 標的
 生検だけですと、見落としが8.7%で過剰診断が2.5%となります。系統的生検を更に追加すれば、
 見落としは3.5%まで低下できるとしています。


 ただ問題は 「私のいとしのエリー」 に対して、更に串刺しを12回もお願いするかと言う事です。
 今までの私のブログより文献等を下記に掲載します。








1 前立腺ガイドライン.pdf

2 前立腺癌に対する新しいガイドライン_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_.pdf

3 前立腺癌学習.pdf

4 前立腺文献1.pdf

5 MRI.pdf

6 前立腺癌の治療.pdf

7 前立腺癌のMRI検査の有用性_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_.pdf

8 早期前立腺癌の根治手術と経過観察(積極的監視)の比較_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_.pdf

9 前立腺.pdf

10 PiRADS v2による.pdf


















posted by 斎賀一 at 18:12| Comment(2) | 泌尿器・腎臓・前立腺

2020年02月06日

前立腺癌検診のPSAによる効率化

前立腺癌検診のPSAによる効率化

Association of Baseline Prostate-Specific Antigen Level
With Long-term Diagnosis of Clinically Significant Prostate Cancer
Among Patients Aged 55 to 60 Years
JAMA Network Open. 2020;3(1):e1919284


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 55~60歳の人のPSAを用いた前立腺癌の検診を検討した論文が、雑誌JAMAに掲載されています。
腫瘍マーカーの中では、唯一と言ってもよいPSAが検診に採用された1990年代から、
一時は批判的な時を経て、最近ではやや見直されています。
しかし、どの様にPSAというツールを利用するかは議論が分かれています。
又、前立腺癌そのものの生物学的特徴(indolent;進行が遅く臨床症状がない潜在癌の場合も多い)
から過剰診断と過剰治療も指摘され、PSA検診そのものの意義も問われています。


論文を纏めてみますと、


 1) 55~60歳(平均57歳)の10,968人が対象です。
    ベースラインとして1回のPSA検査で、その後の13年間の経過観察です。

 2) 主要転帰は、

    ・何らかの前立腺癌の診断(any prostate cancer)と
    ・臨床的に明白な前立腺癌(clinically significant prostate cancer)です。
  
    尚、clinically significant prostate cancerの定義は、
      
      T2b、グリソンスコアの7以上、前立腺癌での死亡のいずれか
      前立腺癌の摘出術の場合はT3以上、グリソンスコアの7以上、
      リンパ腺転移のいずれか

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 3) 結果
     13年間で前立腺癌の死亡はたったの15例のみで、PSAが2.0以上は、9例(60%)でした。

 4) 結論
     55~60歳でPSAが2.0以下では繰り返しの検査は必要でなく、
     1.0以下では、その後のPSA検査は実施しなくてよい。

              
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私見)
 60歳以下でPSAが1.0以下ならば、10年間はPSA検査をしなくてよいと指導して良さそうです。
2.0以下の場合は5年後に再検し、4.0以下なら3年後でも良いでしょうか?

1 前立腺癌.pdf

2 前立腺癌 ガイドライン.pdf







posted by 斎賀一 at 12:37| Comment(0) | 泌尿器・腎臓・前立腺