2021年03月09日

脂肪肝のエコー像・ケアネットより

脂肪肝のエコー像・ケアネットより

 *小川 眞広 先生   日本大学病院 消化器内科科長 超音波室室長


 最近の患者さんで、鑑別を要した脂肪肝所見がありましたので、ケアネットで勉強しました。
纏めてみます。



1) 脂肪肝の所見は
   ・深部方向の減衰増強  ・brightnessの上昇 
   ・脈管の不明瞭化; 脂肪により血管壁の圧排
   ・肝腎コントラストの上昇; 腎には脂肪が沈着しないため

2) 組織的に、脂肪滴には大小があり混在しているため、内部エコー像も多彩となる。
   必ずしも均一でない。

3) 肝の下に腎をスッポリと置いてのエコー像は減衰を増強してしまい、肝腎コントラストの評価には
   不適

4) 皮下脂肪が多い人はすでに減衰してしまうので、プローベを圧迫する必要がある。

5) 脂肪非沈着部が腫瘍様に見えることがある。
   全体が脂肪の沈着した脂肪肝で、低エコー部位が脂肪の沈着のない正常部位です。




         30309.PNG







6) まだら脂肪肝



          30309-2.PNG


   低エコー部位が正常です。
   一見左の図は正常部分が区域性の腫瘍のようですし、右の図では転移巣のように見られます。
   鑑別を要します。






          30309-3.PNG



鑑別のポイントは
・内部の脈管走行が正常か 
・スペックルパターンが正常かを見る。
 (肝臓は豆腐と同様に実質性パターンを示す。小さな斑点状の輝点それぞれが肝組織に対応している
  わけではない。超音波が作り出すパターンであり、これを超音波用語でスペックルパターンという。
  肝硬変では、スペックルパターンが粗雑になる; ネットより)





7) NASH(非アルコール性脂肪肝) 



          30309-4.PNG


   組織診断だけでは、非アルコールとアルコール肝障害は鑑別できない。
   飲酒歴の確認が重要




8) アルコール性肝硬変ではbrightnessが低下して、深部減衰も認められなくなる。






私見)
 ケアネットの前身がスカパーで放送していた頃は、ビデオデッキに録画してそれをソニーのプリンターで
 プリントアウトしていましたが、最近ではスマホからパソコンに保管しています。
 私は放送開始からの愛好者です。そんなわけで多少の私の過ちは見逃してください。

 たった一つのツールでの診断には慎重さが大事です。
 何事も決め言葉は避けたいものです。











posted by 斎賀一 at 19:43| Comment(1) | 肝臓・肝炎

2019年04月25日

肝細胞癌

肝細胞癌
 
Hepatocellular Carcinoma
  n engl j med 380;15 nejm.org April 11, 2019


0425.PNG

 

 雑誌NEJMに肝細胞癌の総説が掲載されていましたので、ブログにしてみました。


1) 以前はB型肝炎が主な原因でしたが、輸血の改善とB型肝炎ワクチンの普及により、主流はC型肝炎
   に移行しました。更に最近では経口薬のDAAの導入によりC型肝炎も治癒(SVR)の時代となり、
   肝細胞癌の原因は様変わりしています。
   ウイルス性肝炎に代わり非アルコール性肝疾患(NAFLD)、及びそれに関連した肥満、糖尿病が
   注目されています。

2) 遺伝子のDNAに変異が起こり、前癌状態の異型結節(dysplastic nodule)が発生する。
   そこから肝細胞癌に進展する。
   TERTpromoterの変異が60%関与していると言われている。
   しかしDNA変異は多岐にわたり、其々の頻度が低いために治療や診断、予後判定には未だ実用化
   されていない。

3) 一般的には炎症、線維化、肝硬変から肝細胞癌は進展するが、B型肝炎の様に肝硬変を経ずに肝
   細胞癌が発生する事がある。  これが増殖過程(proliferation class)である。
   もう一つが非増殖過程(nonproliferation class)でC型肝炎に代表されるように肝硬変を経て
   から肝細胞癌となる。
   (エコーで肝硬変が無くても肝細胞癌の発生する過程がproliferation class)
   Proliferationの方が進行度は悪性で、αプロテインと関連している。
   Nonproliferationはその細胞は遺伝子的、免疫応答が正常肝細胞に近似している。

4) エコー検査は6カ月毎が基本であるが、診断の感度は47~84%で特異度は90%である。
   正常肝細胞や、良性の異型結節の血液供給は門脈系だが、悪性の肝細胞癌では変移して動脈系と
   なる。  これを利用した造影CTとMR検査により、動脈相と静脈相を区別して鑑別する事が出来る。
   1cm以上の腫瘍では、その診断感度は66~82%で特異度は90%以上です。
   確定診断は生検です。





私見)
 本論文のグラフの方が分かりやすいので下記のPDFを参照ください。
 注意深いエコー検査が必要です。下記の文献より今一度勉強しましょう。



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          書籍;腹部エコーの基礎;秀潤社より






1 肝細胞癌.pdf

2 腫瘍性肝疾患の超音波診断.pdf

3 肝腫瘤の超音波診断基準.pdf

4 腹部超音波検診判定 マニュアル.pdf














posted by 斎賀一 at 14:11| Comment(0) | 肝臓・肝炎

2019年03月19日

薬物性肝障害と薬剤熱:uptodateより

薬物性肝障害と薬剤熱:uptodateより



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 前回のブログに引き続き、薬物性に関して纏めましたので掲載します。


薬物性肝障害(DILI)

1) 医療薬ばかりでなくサプリや漢方、ハーブに至る広範囲にDILIが認められ、その数はおよそ
   1000以上に及ぶ。
   アメリカで最も多いのは、アセトアミノフェン、抗生剤である。
   抗生剤に関して世界的にはオーグメンチン、クラバモックスに報告が多い。

2) 臨床的な分類 (下記のPDFに纏めました。)
   ・肝細胞性障害
   ・閉塞性障害
   ・混合型

3) 臨床経過
   ・急性 ; 3か月以内
   ・慢性 ; 3か月以上

4) 機序
   ・用量依存性 (predictable)
   ・非用量依存性 (idiosyncratic、代謝性か免疫性が関与)

5) 臨床症状
   ・急性 ; 症状が無い事が多い。閉塞性の場合は痒み、黄疸症状が時にある。
   ・慢性 ; 他の慢性肝疾患(自己免疫性肝疾患、PBC、アルコール性肝疾患など)に似ている。
         肝線維化や肝硬変に進行する事もある。
         発熱や発疹を伴う事や、伝染性単核症様の症状があり鑑別が必要

6) 病理組織的分類 (下記のPDFに纏めました。)
   ・肝細胞障害
   ・胆汁閉塞
   ・脂肪変性
   ・肉芽形成
   ・signs of hepatic venous outflow obstruction
   ・sinusoidal obstruction syndrome
   ・phospholipidosis
   ・peliosis hepatis


薬剤熱(drug fever)

1) 発熱の出現時期は診断の価値がない。
   平均で投与後8日(24時間〜数か月) 時には数年

2) 微熱から消耗熱(hectic)まで色々
   中止から3~4日で解熱するが、時に一週間かかる事もある。

3) 発熱以外には、発疹、蕁麻疹、肝腎障害、口内炎、血液障害
   原因不明の発熱で肝腎障害があればdrug feverを疑う。
   発疹に診断価値はあるが頻度は18%程度

4) 除脈は10%、好酸球増加は20%

5) 当該薬剤としては
   てんかん薬、ミノマイシン、ザイロリック、ヘパリン、抗がん剤など





私見)
 人生を振り返ると若い頃は何とボーっとしていた事かと、思い出すだけで一人小声で叫びたくなります。
 病理学教室にいる頃、ある造影剤検査後に、肝障害を起こした症例の肝生検を見たことがありました。
 下記のPDFに掲載しました 「peliosis hepatis」 でした。






薬物性肝障害.pdf










posted by 斎賀一 at 21:13| Comment(0) | 肝臓・肝炎