非侵襲的な肝線維化の評価
Noninvasive Assessment of Liver Fibrosis
[n engl j med 393;17 nejm.org October 30, 2025]
[n engl j med 393;17 nejm.org October 30, 2025]
慢性肝疾患の予後と管理は、肝線維化のステージと進行ならびに肝硬変及び、その合併症
の発症リスクに大きく関与します。
1950年代後半以降、慢性肝疾患の診断と線維化のステージングは肝生検に基づいて行われて
きましたが、肝生検は侵襲的で、稀に生命を脅かす合併症を引き起こします。
慢性肝疾患の患者は数十年間無症候性であることが多く、その結果、肝硬変の合併症が出現
して初めて診断されることもあります。
更に標準的な血液検査は、正常または軽度上昇に留まることもあります。
しかし非侵襲的検査が開発され、肝臓専門医療において画期的な進歩をもたらしています。
これにより肝疾患の合併症が出現する前に、進行した線維化や肝硬変を診断できるように
なりました。
また、世界の成人人口の最大30%に認められる脂肪性肝疾患(steatotic liver disease)の
増加により、リスク層別化においてこれらの検査は不可欠となっています。
非侵襲的検査の総説が載っていましたので、ブログします。
非侵襲的肝線維化評価法は大きく二つに分類できます。
・ 血液ベースの手法(検査値やバイオマーカーに基づくスコア)
・ 画像ベースの手法(超音波またはMRIによる弾性計測)です。
1)血液ベースの非侵襲的検査
間接マーカーと直接マーカーに分けられる。
間接マーカーは
・AST–血小板比指数(APRI)
・ Fibrosis-4指数(FIB-4)
・ NAFLD fibrosis score(NFS)
これらのうちFIB-4は計算が簡単で自動化が容易であり、臨床現場で最も導入しやすい。
直接マーカー
線維形成や細胞外マトリックス再構築の血中成分を用いる。
・Enhanced Liver Fibrosis(ELF, Siemens)
・FibroTest(Biopredictive)/FibroSure(LabCorp)
・FibroMeter(Echosens)
最もよく検証されているのは APRI, FIB-4, ELF
これらは適用性が高く(95%以上)、再現性も良好。
APRI、FIB-4は低コストだが、年齢などの交絡要因の影響を受けやすい。
ELFは商用検査で高価である。
これらの検査は早期線維化と進行線維化を区別する能力には優れる一方で、ステージ
間の細かい区別(F1とF2など)には限界がある。
各スコアの算出式は以下のとおり:
・APRI = (AST ÷ 上限正常値) ÷ 血小板数
・FIB-4 = (年齢 × AST) ÷ (血小板 × √ALT)
・NFS = −1.675 + (0.037×年齢) + (0.094×BMI) + (1.13×インスリン抵抗性または
糖尿病の有無[あり=1,なし=0]) + (0.99×AST/ALT比) − (0.013×血小板) − (0.66×
アルブミン)
上記検査の偽陽性を起こす交絡因子(Confounding Factors)としては、
・FIB-4:高齢者(>65歳)ではカットオフを上げる必要あり
・ ELF:年齢、肝外炎症性疾患
・ FibroTest:Gilbert症候群、溶血
・ VCTE:BMI>40、AST/ALT>5×上限正常値、食後4時間以内、過剰飲酒、閉塞性胆汁
うっ滞、心不全(静脈うっ血)、操作者未熟
2)FIB-4の運用
FIB-4のような間接マーカーには、感度と特異度の両方を活かす二重カットオフ値
(dual cutoff)が設定されている:
・低カットオフ値(高感度, >90%)で進行線維化を「除外」
・ 高カットオフ値(高特異度, >90%)で進行線維化を「確定」
その間の「不確定領域」では追加検査が必要
従って、FIB-4で「中間」または「高値」だった場合は、追加の非侵襲的検査
(例:VCTE, ELF)または肝生検を行う。
FIB-4の臨床的背景
FIB-4は元々HCVとHIVの重感染患者を対象に開発されたが、その後MASLD(代謝異常
関連脂肪性肝疾患)やALD(アルコール関連肝疾患)で広く検証されている。
一次医療レベルでも、多くの国際学会(肝臓・消化器・内分泌関連)が進行線維化
スクリーニングの初期検査としてFIB-4を推奨している。
一次医療においては、
・FIB-4 <1.3 → 進行線維化をほぼ確実に除外可能(NPV>90%)
3)APRIの活用(特にウイルス性肝炎)
・有意線維化を診断するカットオフ:
除外:0.5 未満
確定:1.5 以上
・肝硬変を診断するカットオフ:
除外:1.0 未満
確定:2.0 以上
APRIが0.5を超える場合、多くの慢性B型肝炎患者で有意線維化を検出できる。
特異度は中程度(約65%)だが、WHO 2024年ガイドラインでは低〜中所得国に
おいて、APRIを抗ウイルス治療開始の指標として推奨している。
これは、精度と実用性のバランスを取るという非侵襲的検査の本質を示すものである。
3)検査対象となるべき「リスク群」
2型糖尿病、医療的に問題となる肥満(medically complicated obesity)、複数の代謝
リスク因子を有する者、アルコール過量摂取を伴う者、MASLD由来肝硬変の家族歴を
有する者。
これらの群では無症候でも進行線維化のリスクが高いため、非侵襲的スクリーニングが
推奨される
4)門脈圧亢進とその臨床的重要性
臨床的に有意な門脈圧亢進(clinically significant portal hypertension, CSPH)
の発生は予後上重要であり、これは肝硬変の合併症リスクの上昇と関連する。
CSPHまたは食道静脈瘤(いずれか、または両方)を有する患者では、カルベジロール
(アーティスト)による一次予防が推奨され、代償崩壊や出血のリスクを減らすことが
できる。
私見)
以前ブログでも紹介していますが、今回の総説はカットオフ値とストラテジーが載って
いますので即・実践的です。
私は肝線維化は必ずしも進行性でないと思っています。
的確なステージの把握が大事ですが、本院では肝線維化の特別なエコー機器がありません
ので、総合的に判断して参ります。
下記に計算式のアクセスを記載します。
https://www.mdcalc.com/calc/2200/fibrosis-4-fib-4-index-liver-fibrosis?utm_source=chatgpt.com
https://www.hepatitisc.uw.edu/page/clinical-calculators/apri?utm_source=chatgpt.com
脂肪肝・代謝異常関連脂肪性肝疾患 .pdf
脂肪肝の新しい命名_.pdf