2018年11月08日

C型肝炎の母子感染について

C型肝炎の母子感染について

 
Quasispecies Diversity Is a Major Risk Factor
for Vertical Hepatitis C Virus Transmission



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 B型肝炎とは異なり、C型肝炎は母子感染による垂直感染は稀と言われています。
C型肝炎に罹患すると血液内に抗体が出来ますが、C型肝炎ウイルスは賢くて肝細胞の中に隠れてこの抗体の攻撃を逃れ、慢性の肝炎へと進展してしまうと想像されています。最近では遺伝子的にアプローチされています。
よって他の疾患と異なり、C型肝炎の患者さんがC型肝炎ウイルスの抗体があったとしても治癒した事にはなりません。
 しかし、母子感染の場合には母親のこのC型肝炎ウイルス抗体が有効に働き、胎児の出産における垂直感染を防止するようです。
今回の論文では、HIVとの混合感染の時にその免疫機能が作動しない場合を調べています。
C型肝炎ウイルスもHIVウイルスと同様に変異が激しく、ワクチンを作るのが困難です。 (最近は明るい報告もあります。)
下記にウイルスの遺伝子配列を示します。



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C型肝炎ウイルスを包むエンベロープにはE1とE2がありますが、その中のE2の末端にHVR-1と呼ばれる変異が激しく起こる領域があり、この部位が抗体から逃れる機能に関係しているようです。
つまり、母体のHVR-1の変異により垂直感染の有無が決まります。しかし母体がHIVと混合感染しますと、HVR-1の変異と関係せずに免疫機能が作動しなくなり、垂直感染を起こしやすくなるとの事です。





私見)
 C型肝炎の垂直感染は稀ですが、HVR-1の変異によっては成立してしまいます。
 HIV感染との混合感染では、変異に関係せずに垂直感染の頻度が増すようです。



hcv.pdf
















posted by 斎賀一 at 13:28| Comment(0) | 肝臓・肝炎

2018年10月03日

慢性肝疾患とアルコール

慢性肝疾患とアルコール
 
Alcohol Use in Patients with Chronic Liver Disease
N Engl J Med 2018;379:1251-61




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 雑誌NEJMに、慢性肝疾患におけるアルコール摂取との関係が総説として掲載されています。
慢性の肝疾患を患っている人はアルコールを控える事が当然と認識していますが、メジャーな雑誌に載りますと、患者さんに対する説得力も増します。 



纏めてみますと

1) まず飯島の組織病理アトラスによりますと、アルコール性肝障害は下記の所見が指摘されています。
    ・小葉中心性の硝子様壊死・また、それに続く小葉中心性線維化・胆汁鬱滞
    ・グリソン鞘中心性線維化・肝細胞の脂肪空砲 ・mallory変性

   (特徴は小葉中心性と周辺性の両方に線維化が起こり、やがてブリッジングが生じると理解して
    います。)
   本論文では、上記の所見が一人の人で混在して認められるとしています。

2) 肝障害の程度は一日平均のアルコール摂取量にも関係がありますが、大酒飲も独立した危険因子
   です。時には大酒も好いかとはいかない様です。

3) アルコール自体の肝毒性もありますが、アルコール摂取により腸内グラム陰性細菌が増殖して、
   endotoxin の増加となり、これが肝のクッパー細胞(貪食細胞)を活性化して線維化が進展する。

4) 残念ながらC型肝炎患者は一般の人と比べて飲酒の量が多く、時に8倍にもなるとのデータがあり
   ます。
   C型肝炎ではアルコールにより酸化ストレスが増加するばかりでなく、C型肝炎ウイルスの複製も促進
   してしまう。
   DAA(最近の経口薬)の時代でも、アルコールは大丈夫とは言えない。

5) マウスの実験では、B型肝炎ウイルスの複製をアルコールは増長させる。
   更にB型肝炎による肝硬変患者では、アルコールにより肝細胞癌の発生が増加する。

6) 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は肥満、メタボリック症候群で発生しますが、アルコール
   摂取で頻度は更に多くなり増悪もします。
   ワインが良いとのデータもありますが、一般的にはアルコール摂取によりNAFLDの線維化は進展
   してしまう。

7) 慢性肝疾患はアルコールにより急性増悪をするが、比較的回復は良い。
   (acute-on-chronic liver failure)しかし長期での転帰は悪い。
   基本的には禁酒である。

8) アルコールからの離脱療法には、ベンゾジアゼピン系が有効
   特に短期作用型が推奨される。中でもワイパックスは腎代謝であり有効と思われる。
     ※下記のグラフを参照





  
私見)
 肝疾患とアルコール性肝疾患は、独立した疾患ではなく相互に作用して増悪する傾向があります。
 本院に来院する患者さんの多くは、酒を飲み続けたいために治療を受けに来ているようです。 
 「酒を続けると病状が悪化しますよ。」と説得したら藪医者の誹りを受けそうです。





肝疾患とトランキライザー.pdf







  
posted by 斎賀一 at 19:22| Comment(1) | 肝臓・肝炎

2018年09月12日

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は肝癌の危険因子

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は肝癌の危険因子
 
Risk of Hepatocellular Cancer in Patients
with Nonalcoholic Fatty Liver Disease



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 脂肪肝にはアルコール性と非アルコール性があります。
この非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、非アルコール性脂肪肝(NAFL)と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に分かれます。   (以前の私のブログを参照)

今回の論文では、このNAFLDから肝癌の発生が予想以上に多いことを裏図けるデータを示しています。



纏めますと

1) 2004~2008年の間でNAFLDと診断された人を登録し、その後肝癌、死亡又は2015年までの観察
   期間として解析しています。
   NAFLD患者の296,707人に対して、コントロール群の296,707人を比較対象しています。
   平均年齢は55.4歳です。

2) ベースラインでの肝硬変の率はNAFLD群では0.4%でしたが、研究終了時で1.4%に上昇していま
   した。
   肝癌の発生は545名で、その内NAFLD群では490名でした。
   肝癌発生の頻度は、NAFLD群では0.21人/1,000人/年、コントロール群では0.02人/1,000人/年
   と、約10倍の危険率でした。

3) 1,000人/年で見ると男性が0.4人対して女性は0.22人と男性の方が危険率が高く、65歳以上と
   以下では0.41人と0.01~0.21人でした。





私見)
 男性で見ますと、10年リスクは0.4%となるでしょうか。
 肝癌に絞っての事ですので少ないようで多い感じです。
 また大雑把に言って、NAFLDは10年で1%の肝硬変への移行でしょうか。




Risk of Hepatocellular Cancer in Patients with Non-alcoholic Fatty Liver Dis.pdf










posted by 斎賀一 at 18:33| Comment(0) | 肝臓・肝炎