2021年08月21日

アストラゼネカ・ワクチンによるワクチン起因性免疫性⾎⼩板減少症/⾎栓症(VITT)

アストラゼネカ・ワクチンによるワクチン起因性免疫性⾎⼩板減少症/⾎栓症(VITT)
 
Clinical Features of Vaccine-Induced Immune Thrombocytopenia and Thrombosis
 This article was published on August 11,2021,
and updated on August 12, 2021, at NEJM.org



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 アストラゼネカ・ワクチンの副作用として懸念されている、ワクチン起因性免疫性⾎⼩板減少症/⾎栓症(VITT)は、ヘパリン療法によって誘導されるHITに類似した病態です。
しかし、VITTはヘパリン療法を受けていない人でも発生しています。
血小板の抗体であるPF-4が関与していないか検討されていますが、抗体値が上がっていなくてもVITTは
発症しています。
 ファイザーワクチンの品不足のためにアストラゼネカ・ワクチンが採用されたのではないと思うのですが、アストラゼネカ・ワクチンの副作用となる血栓症に対する治療方針が確立されたので、感染爆発の地域に
まず使用するとの説明ですが、その点を含めてワクチン起因性免疫性⾎⼩板減少症/⾎栓症(VITT)の
論文がNEJMに掲載されていますので、纏めてみます。


1) 2021 年 3 ⽉ 22 ⽇〜6 ⽉ 6 ⽇に英国の病院を受診し、VITT が疑われた患者を対象とする
   前向きコホート研究を行っています。
   事前に規定した基準に基づき、症例を VITT 確定例、VITT ほぼ確実例に分類しました。




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   VITTの起こる部位は、通常とは異なり診断し難い様々な血管に発症しています。
   細静脈にまで血栓が生ずるため、血行停滞から出血が起きます。
   さらに血小板減少が拍車をかけます。

2) 評価された 294 例のうち、170 例が VITT 確定例,50 例が VITT ほぼ確実例と判定されました。
   全例が アストラゼネカ・ワクチンの1 回目の接種を受けており、接種後 5〜48 ⽇(中央値 14 ⽇)
   の時点で受診しています。

3) 年齢範囲は 18〜79 歳(中央値 48 歳)であり、性による優位性はなく、同定し得る医学的危険
   因⼦もありません。
   全死亡率は 22%でした。死亡の危険率は、脳静脈洞⾎栓症を有する患者で 2.7 倍、
   ベースラインの⾎⼩板数が 50%低下するごとに 1.7 倍、ベースラインの D ダイマー値が
   フィブリノゲン当量で 10,000単位上昇するごとに 1.2 倍、ベースラインのフィブリノゲン値が
   50%低下するごとに 1.7 倍上昇しています。




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   あらゆる年齢層で発生しています。血小板低下plateletが指標になります。
   本ワクチンは高齢者優先に接種されたにもかかわらず、85%が60歳以下に発生しています。
   残念ながら50歳以下の年齢層別化はなされていないため年齢との関係は解析できていません。






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   更にD-dimer値も有力な判断基準となります。
   ベースラインの⾎⼩板数および頭蓋内出⾎の存在が死亡と独⽴して関連することが明らかになり、
   ⾎⼩板数 30,000/mm未満で、頭蓋内出⾎を有する患者で観察された死亡率は 73%でした。


4) VITT に関連する⾼い死亡率は、⾎⼩板数が低く、頭蓋内出⾎を有する患者でもっとも⾼かった。
   治療法は依然不明である。
   ・免疫グロブリンが72%の患者さんに点滴されています。
   ・重症例の17例に血小板交換療法を行い90%に効果がありました。
   ・ステロイドの全身投与は26%に実施されています。
   ・ヘパリン以外の抗凝固薬が68%に投与されています。
    死亡率は20%から16%に低下しています。
   ・死亡率は22%です。
   現段階では免疫グロブリン点滴と血小板交換療法が中心です。
   以前懸念されたヘパリン投与は害はないようです。
    (日本版: 一部コピペ)








私見)
 1回目の接種後5日から1か月は注意が必要です。血小板とD-dimerが指標となります。
 実地医家にとっては抗凝固薬の投与とその後の専門的治療の紹介が大事です。










posted by 斎賀一 at 17:40| Comment(0) | ワクチン

2021年08月02日

 mRNAコロナワクチンの2回目の接種の安全性

 mRNAコロナワクチンの2回目の接種の安全性
 
Safety Evaluation of the Second Dose of Messenger RNA
COVID-19 Vaccines in Patients With Immediate Reactions
to the First Dose



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 mRNAワクチンはファイザーとモデルナのワクチンが承認されています。
アレルギー反応は2%との報告で、特に問題のアナフィラキシー反応は2.5人/10,000人との事です。


1回目の接種でアレルギー反応を認めた人が、2回目の接種において副反応はどうだったかを調べた
報告(letter)が雑誌JAMAに掲載されていました。

1) 2021年1月1日から2021年3月31日までに、ファイザーかモデルナ1回目の接種でアレルギー反応
   を起こした人を対象にしています。
   1回目の接種から4時間以内のアレルギー反応が1つでもあれば登録しています。
   転帰は ・2回目の接種での即時型のアレルギー反応 ・アレルギー反応が軽症もしくは自然に軽快
   する ・抗アレルギー剤だけで軽快する。

2) 結果は下記の表をご参照ください。 



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   189例が登録されていますが、1回目でのアナフィラキシー反応は32例(17%)でした。
   2回目の接種をした人は159人です。その内、即時型のアレルギー反応を起こした人は32例でした
   がすべての人が忍容性を認めています。

3) 結論として、1回目の接種でアナフィラキシー反応を含めた即時型のアレルギー反応を認めても、
   十分な管理の下で2回目の接種は可能としています。
   即時型のアレルギー反応と思っても、真のアナフィラキシー反応とは同定できないとしています。
   また、mRNAワクチンのアレルギーの原因物質とされているPEGに対しても、2回接種の前に皮膚
   反応試験を行いましたが、42%が陰性でした。

4) デルタ株の流行から、筆者はワクチンの種類を変えることなく引き続きmRNAワクチンの2回目を
   接種することを推奨しています。

5) Medscapeの記事の総括では、1回目の接種でアナフィラキシー反応を含めた即時型のアレルギー
   反応があった人の189人中、2回目の接種で即時型のアレルギー反応を起こした人は17%で、全て
   管理が可能との報告ですが、しかし2回目の接種でアナフィラキシー反応の可能性を、否定はでき
   ないとしています。
   また事前に抗アレルギー薬を服用して効果的かは、事例報告のためはっきりとは推奨できないとして
   います。
   更に2回目接種前のPEGに対する皮膚反応試験で42%が陰性との結果から、これらの人では2回
   目の接種が可能としています。
   (medscapeの記事を下記に掲載します。)







私見)
  アナフィラキシー反応は別として、他の即時型のアレルギー反応を起こした人に対しては十分な説明
  の後に2回目接種を勧めて参ります。
  化粧品でアレルギー反応を起こした人に対しては該当品での皮膚反応を行います。
  場合によりパッチテストも併用します。






本論文.pdf

medscape.pdf











posted by 斎賀一 at 21:58| Comment(1) | ワクチン

2021年07月16日

妊娠女性におけるmRNAコロナ・ワクチンの安全性 再放送 妊娠女性におけるmRNAコロナ・ワクチンの安全性 再放送

妊娠女性におけるmRNAコロナ・ワクチンの安全性  再放送
 
Preliminary Findings of mRNA Covid-19 Vaccine Safety
 N Engl J Med 2021;384:2273-82

   
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 妊婦の患者さんに、コロナ・ワクチンの安全性について質問されました。
On-lineの雑誌NEJMの査読(preliminary)論文を以前に私のブログで紹介していますが、(4月30日)
同じ論文が今回再びNEJMに掲載されています。
再度私なりに読み返してみましたが、現実となると解釈に若干の変更が生じましたのでブログします。


・本論文は妊娠完了と受胎直後の対象者を含めています。
・対象者の多くは、妊娠中期から後期です。
・対象者は毎日完全に追跡調査を行っていません。
・v-safeというシステムで統計を取っており、妊娠早期の参加者はワクチン接種後の胎児のアウトカムを
 当然ながら把握していません。
・妊娠早期で流産のリスクが高い時期に関しても認識していませんので、統計上は反映されていません。
・妊娠および新生児の副反応の報告は、実際には低くなっている可能性があります。
・流産の報告が一番多いですが、これは2009年に流行した所謂「豚インフルエンザ」に対するワクチンの
 時と同じ頻度です。
・VAERSシステムにおいては、妊娠後期で明らかな副反応は新生児にもありませんでした。
・今後、妊娠早期や受胎時期での安全性と新生児の長期転帰に関しては、十分なモニタリングが必要
 です。
・本論文には以上の制限(limitation)がありますが、本報告は妊娠した人へのワクチン接種に勇気を
 与えてくれる結果でした。





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私見)
 インフルエンザ・ワクチンの多くのガイドラインはany time妊娠のいつでも接種が可能と推奨していま
 したが、妊娠早期に関しては文言が曖昧でした。
 最近のガイドラインではエビデンスが確立されて妊娠早期での接種も推奨するようにと明言しています。
 やがてコロナワクチンもその時期が来ると思いますが、私としては、つまり私が接種する場合は多分
 妊娠中期を勧めると思いますが...。
 日本の婦人科学会からのガイドラインも下記に掲載します。





ブログを参照ください.pdf

産婦人科学会.pdf










  
posted by 斎賀一 at 20:35| Comment(1) | ワクチン