2023年03月13日

子宮頸がんワクチン(HPV)の早期導入(9~10歳)

子宮頸がんワクチン(HPV)の早期導入(9~10歳)

Early Initiation of HPV Vaccination and Series Completion
in Early and Mid-Adolescence



5313.PNG



アメリカのCDCは11〜12歳の導入を推奨していますが、9歳からの開始も表明しています。
日本では公費負担の対象は、小学6年生(11〜12歳)との記載です。(下記PDFを参照)
アメリカでもHPVワクチンの接種率が向上していないようで、2021年の時点で13〜17歳の
接種率は依然として61.7%です。
集団免疫の観点から、目標は80%以上です。もしも開始を9歳にしたら、接種率が上がるかを
検証した論文が、雑誌Pediatricsに掲載されています。


1) 開始年齢9〜10歳を11〜12歳と比較しています。
   9〜12歳に接種した19,575名を集計し、15~17歳時点での接種率を調べています。

2) 13歳時点での接種率は、9〜10歳群が74%で、11〜12歳群が31.1%
   15歳時点では9〜10歳群が91.7%で、11〜12歳群は82.7%でした。
   早期導入の方が勝っているようですが、接種3年以内での接種率を比較しますと、
   9〜10歳群が82.3%で、11〜12歳群が84.9%とやや低下しています。

3) 本論文では接種期間の延長を計画した「time pathway」か、接種開始を早めた
   「development pathway」かの問題提起をしています。
   明白な結論には達していませんが、本論文では接種率の向上のために、9歳からを推奨
   しています。








私見)
 日本では、子宮頸がんワクチンの再開までに紆余曲折がありました。
 開始年齢を下げる事は、副反応の保証と自己負担の問題でかなりの壁があります。
 本院でも子宮頸がんワクチンの再開から何ら問題がなく、接種時の疼痛も極力可能な細い針を
 使用することにより軽減されています。
 現段階では、実地医家としては接種することの意義をアナウンスしてまいります。










本論文.pdf

HPVワクチンに関するQ&A|厚生労働省.pdf

IZSchedule7-18yrs.pdf












posted by 斎賀一 at 17:31| ワクチン

2023年03月10日

子宮頸がん(HPV)ワクチンは中年(27~45歳)にも推奨

子宮頸がん(HPV)ワクチンは中年(27~45歳)にも推奨

Clinical and Public Health Considerations for HPV Vaccination
in Midadulthood: A Narrative Review



5310.PNG



 2019年にアメリカでは27〜45歳の中年(midadulthood)にHPVの接種を推奨してきま
したが、未だ接種率が上がっていないとの事です。
IDSAの雑誌からメタ解析のnarrative reviewでの報告です。


・HPVは肛門性器の癌、咽喉頭の癌、肛門性器のいぼ(コンジローマ)、呼吸器で繰り返す
 乳頭腫の原因ウイルスです。
 HPVは200種類ありますが、その内12種類が発がん性のポテンシャルが高いと言われて
 います。
 日本でも採用された9価ワクチンは、子宮頸ガンと肛門性器のガンの90%を予防できると
 されています。

・アメリカのFDAは、2018年に9価ワクチンを27〜45歳にも拡大して推奨しています。
 4価では中年(midadulthood)に安全性と効果が証明されていますが、9価は未だ証明
 されていませんが、有効性が類推できるとしています。

・以前の報告では効果は35〜45歳で84%、24~34歳では91%と若干の低下はあるものの、
 それ程の差異はないようです。効果期間は10年とされています。
 男性の場合、27〜45歳で4価ワクチンによる陽性化を100%認めています。

・Midadultでは、ワクチンを接種していない場合は9価ワクチンの中の少なくとも1つには
 感染の機会があります。それに対して集団免疫の効果があるかのエビデンスはありません。
 ワクチンによる抗体価は女性で10年、男性で5年と推測されています。
 接種率が17歳で65%以下を考えますと、midadultでの接種は集団免疫の立場からも推奨
 すべきです。

・更にmidadulthoodでの新しいパートナーの獲得や、コンドームなしの性交渉などの現代
 からも、HPVのリスクの増加が懸念されています。







私見)
 論文では、臨床家と接種者との間での積極的なコンセンサスが大事としています。
 パートナーを信じつつも、御身大事からmidadulthoodでもワクチンは接種すべきかも
 しれません。集団免疫の必要性から、接種率を上げる事が必須です。






HPV adult.pdf






posted by 斎賀一 at 10:33| ワクチン

2023年02月22日

19歳以上成人のワクチン接種・2023年版

19歳以上成人のワクチン接種・2023年版

Adult Immunization Schedule by Age
Recommendations for Ages 19 Years or Older, United States, 2023



5222-2.PNG


  

  CDCから今年度のワクチンのスケジュールが発表になっていますが、殆ど変更がないよう
 です。

 ・B型肝炎に対して、新しいPreHevrioがFDAで承認されたとの事です。
  19歳から59歳までが対象ですが、60歳以上でもリスクがあるかもしれない人への接種が
  可能です。
 ・インフルエンザワクチンでは、65歳以上の人は高容量の4価のワクチンが一般的なワクチン
  よりも推奨されています。
 ・MMRワクチンの3回目の接種は、おたふくかぜの流行により推奨されるとしています。
 ・肺炎球菌ワクチンの2回目の接種は、PCV15又はPCV20を推奨しています。







私見)
 お国柄、安全第一を旨とするわが国でも、近い将来アメリカに追従するものと思います。








2023年版adult-combined-schedule.pdf

2023年版成人用.pdf









posted by 斎賀一 at 19:01| ワクチン