2025年11月05日

帯状疱疹ワクチンの効果

帯状疱疹ワクチンの効果

<短 報>
Effectiveness of Recombinant Herpes Zoster Vaccine
in the U.S. Medicare Population, 2018 to 2019,
by Immunocompetence and Prior Receipt of Live Zoster Vaccine



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 アメリカでは、組換え帯状疱疹ワクチン(シングリックス筋注用・Recombinant Zoster
Vaccine: RZV)は2018年から生ワクチン(ZVL)(ビケン)よりも優先的に推奨されています。
 今回アメリカの保険メディケアに加入している高齢者のうち、2007〜2019年の期間に20%
無作為抽出して調べています。


1)方法
  65歳以上で、登録前6か月間の連続補償が確認され、2007年以降に帯状疱疹(HZ)の
  請求歴がなく、RZV未接種の人を対象にした。
  対象者はRZV 1回接種または2回接種。
  主要アウトカムは以下の3つ: 帯状疱疹(Herpes Zoster, HZ)
                眼帯状疱疹(HZ ophthalmicus)
                帯状疱疹後神経痛(Postherpetic Neuralgia)
  共変量には年齢、性別、人種、民族、ZVL接種歴、免疫能状態を含めた。


2)結果
  全てのHZアウトカムに対するワクチン有効性は56.1%(95%信頼区間 53.1%〜59.0%)
  であった。 (1回接種の有効性です)

  免疫能別では、
  ・免疫健常者:56.5%(95% CI, 53.2%〜59.5%)
  ・免疫不全者:54.2%(95% CI, 44.7%〜62.1%) と類似していた。
  過去10年以内にZVLを接種した者も、RZV接種によって有益な効果を得た。
  RZV2回目接種は、あらゆるHZアウトカムに対して追加で67.9%の有効性を示した。
  (原文を見ていませんので、2回接種と未接種との比較は分かりません。)


3)結論
  RZVは高齢者において免疫不全を含む集団でも有効であり、2回接種は1回接種よりも
  効果的である。 過去にZVLを接種した者も、RZVによる再接種を受けるべきである。

  【補足説明;2回接種完了vs1回」の効果67.9%とは、追加的な相対有効性(relative
   VE) であり、「1回接種」の絶対的なVEに“+67.9%”という意味ではなく1回接種群
   を基準に「2回接種群ではさらに約68%リスクが低かった」という比較です。
   仮に「1回接種群 vs 未接種群=56.1%」で、2回接種群vs1回接種群=67.9%
   (相対的改善)」だとすると、簡便に考えて1回接種群の残余リスクが
   100-56.1=43.9%。2回接種群ではこの残余リスクをさらに67.9%減らす。
   残余リスク≒43.9%×(1-0.679)≒14.1%
   よって、2回接種群の仮想VEは100-14.1=約85.9%となります。
   ただし、これはあくまで単純な計算モデルによる「推定」です。】







私見)
 本論文で認識した点は
 ・1回接種では50%以上の効果、2回接種では80%以上の効果。
 ・ZVL(ビゲン)を接種した者もRZV(シングリックス)を接種すべき。
  下記に本ブログから回顧します。






帯状疱疹ワクチンの効果は良好.pdf

帯状疱疹ワクチンは65歳から定期接種を開始.pdf

帯状疱疹ワクチン・シングリックスの効果は.pdf

帯状疱疹ワクチンのシングリックスが心血管疾患を予防.pdf

帯状疱疹ワクチン雑感.pdf

帯状疱疹の生ワクチンの10年間の効果.pdf

帯状疱疹ワクチンの続報.pdf






posted by 斎賀一 at 19:25| ワクチン

2025年10月25日

コロナワクチンの効果・2024〜2025米国

コロナワクチンの効果・2024〜2025米国

Association of 2024–2025 Covid-19 Vaccine with Covid-19 Outcomes
in U.S. Veterans
[This article was published on October 8,2025, at NEJM.org]



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 2020年、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するワクチンの
迅速な開発は、近年の科学史上最も注目すべき成果の一つでした。
症候性SARS-CoV-2感染に対しておよそ95%の有効性と、重症疾患に対するほぼ完全な防御
効果を示しました。
現在はSARS-CoV-2は大きく変異し、繰り返される感染やワクチン接種による免疫が蓄積した
ことで、感染による臨床的重症度は低下しています。
これらの変化により、毎年のCovid-19ワクチン接種の意義に対する国民的な疑念が広がって
います。
米国では、2024、2025シーズンの成人接種率は2024年12月末時点で約21%に留まり、
Covid-19ワクチン導入以来最低の水準であり、同時期のインフルエンザワクチン接種率
(42%)の半分とのことです。

 今回の論文では、退役軍人省(VA)の電子医療データベースを用い、Covid-19ワクチンと
インフルエンザワクチンを同日に接種した群と、インフルエンザワクチンのみを接種した群を
比較しています。
両群を6か月間追跡し、Covid-19関連の救急外来受診、入院、死亡という3つの転帰リスクを
評価しました。
(補足説明;同時接種群とインフルエンザ単独群を比較しているのは、ワクチンに関心のある
 ポピュレーションを選ぶためです。しばしば生じる「健康接種者バイアス(healthy vaccinee
 bias)」を減少させつつ、Covid-19ワクチンの効果をより正確に抽出することを目的として
 います。)


1)方法
  2024–2025年のCovid-19ワクチンを、季節性インフルエンザワクチンと同日に接種した
  場合と、インフルエンザワクチン単独接種の場合とを比較した。

  Covidワクチン群の内訳は以下の通り:
  ・mRNA-1273(Moderna):105,040人(64.0%)
  ・BNT162b2(Pfizer–BioNTech):57,941人(35.3%)
  ・その他のワクチン:1,151人(0.7%)

  3つの主要転帰は、VA電子記録で検証済みの以下の定義を用いた。
  ・Covid-19関連救急外来受診(ED visit):陽性SARS-CoV-2検査の24時間前から24時間
                      後の間に救急または急患受診がある場合。
  ・Covid-19関連入院:陽性検査の2日前から7日後までの間に入院し、呼吸器感染の診断
            コードを有する場合。
  ・Covid-19関連死亡:陽性検査から30日以内の死亡。

  リスク比は6か月時点での累積リスクの比として算出し、リスク差は(非Covid群のリスク
  −Covid群のリスク)として求めた。
  ワクチンの有効性はリスク比として定義し、百分率で表示した。


2)結果
  合計で 164,132人がCovidワクチン群に、131,839人が非Covidワクチン群に含まれた。

  ワクチンの効果は、
  ・Covid-19関連救急外来受診
   ワクチン有効性:29.3%(95%信頼区間[CI], 19.1.39.2)
   人口1万人当たりリスク差:18.32(95% CI, 10.84.27.57)

  ・Covid-19関連入院
   ワクチン有効性:39.2%(95% CI, 21.6.54.5)
   人口1万人当たりリスク差:7.47(95% CI, 3.44.13.04)

  ・Covid-19関連死亡
   ワクチン有効性:64.0%(95% CI, 23.0.85.8)
   人口1万人当たりリスク差:2.20(95% CI, 0.49.6.91)

  ・上記3つの複合転帰
   ワクチン有効性:28.3%(95% CI, 18.2.38.2)
   人口1万人当たりリスク差:18.23(95% CI, 10.69.27.52)

  Covidワクチン接種は非接種と比較して、年齢群(<65歳、65.75歳、>75歳)全てで、
  心血管疾患、脳血管疾患、慢性腎疾患、慢性肺疾患の有無にかかわらず、また免疫健常者・
  免疫不全者の何れにおいても、Covid-19関連の重症転帰リスクの低下と関連していた。


3)考察
  covid-19ワクチンは、救急受診に対して約29%、入院に対して39%、死亡に対して
  64%の有効性を示した。


4)結論
  この大規模な米国退役軍人コホートでは、2024、2025年Covid-19ワクチン接種が
  6か月間にわたり重症転帰(救急受診・入院・死亡)のリスク低下と関連していた。
  絶対リスク差は小さいが、結果は現在の疫学的状況におけるCovidワクチンの意義を
  めぐる議論に、重要な示唆を与えるものである。




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【補足説明;
 Table2の人口1万人当たりリスク差(risk difference per 10,000 persons)」とは、
 6か月間の追跡期間で1万人を対象にしたときに、Covid-19ワクチン接種群で何人の発症・
 入院・死亡が減ったかという「絶対的な人数の差」を意味します。
 絶対リスク差は小さいです。しかしこれは、もともとのCovid-19発症・入院・死亡率が
 すでに非常に低下している(=分母が大きい)ためです。
 もしこの研究が2021年(感染率が高かった時期)に行われていたら、同じ有効性
 (相対的に30〜60%減少)でも、リスク差は1万人あたり数百件になっていたと考えられ
 ます。
 Figure 2 の形状(時間経過で差が広がる)はワクチンの免疫効果が徐々に立ち上がり、
 その後やや減衰していく様子を視覚的に表しています。
 Figure 3 は「基礎疾患の有無や年齢・免疫状態にかかわらずワクチン効果が一貫して
 存在した」ことを示す図です。
 つまり、心血管疾患・慢性腎疾患・慢性肺疾患などのリスク因子を持っていても、
 2024–2025年のCovid-19ワクチンは有意な防御効果を示しました。】

(追加補足説明;
 Before Weighting(重み付け前)、ワクチン接種群と非接種群の間には、年齢・健康
 状態・併存疾患・喫煙率などに偏り(バイアス)が残ります。
 例:ワクチンを打つ人は健康意識が高く、医療利用も多い傾向がある。

 After Weighting(重み付け後)、ここでは「逆確率重み付け(IPW)」を使って両群を
 仮想的に“同じ条件の集団”に整える。
 各人の「ワクチンを接種した(またはしなかった)確率」に応じて重みをかけ、年齢・
 性別・併存疾患・地域などの背景分布が一致するように補正します。
 結果として、重み付け後(After weighting)では両群の平均値がほぼ一致し、SMD
 (標準化平均差)が0.1未満になります。
 SMDは「効果量(Cohen’s d)」と同じスケールを持ち、0.1未満なら臨床的にも統計的
 にも実質的な差はほとんどないと考えられます。





私見)
 コロナの発症も死亡例も減少しておりやや安心していますが、それでもコロナワクチン
 で死亡例が64%減少していることは、ワクチンの有効性を裏付けています。










posted by 斎賀一 at 15:22| ワクチン

2025年07月22日

帯状疱疹ワクチンの効果は良好

帯状疱疹ワクチンの効果は良好

Effectiveness of the Adjuvanted Recombinant Zoster
Vaccine in Adults ≥50 Years in the United State



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 帯状疱疹(HZ)は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化によって引き起こされ、
しばしば痛みを伴う皮疹を伴う疾患です。
高齢者や免疫力の低下した人々で罹患率が高くなります。
合併症としてよく知られているのが、発疹後も長く続く慢性的な神経痛である帯状疱疹後
神経痛(PHN)です。
ワクチンのRZV(Recombinant Zoster Vaccine)は、シングリックス(Shingrix)として本院
でも採用しています。
これは、帯状疱疹の予防を目的とした遺伝子組換え型の不活化ワクチンです。
帯状疱疹の予防効果は以前の第3相プラセボ対照試験で97%とされていましたが、その後の研究
ではそれよりも低いとの報告でした。
今回発表された研究結果では、RZVの2回接種によって50歳以上の対象者で、持続的な保護効果
が得られることを示しています。


1)方法
  本研究は、Kaiser Permanente Southern California(KPSC)における後ろ向きコホート
  研究である。
  KPSCは統合型医療提供システムであり430万人以上の多様な会員を擁し、南カリフォルニア
  地域の一般人口の人種・民族構成において類似している。
  会員の電子医療記録(EMR)には、人口統計情報、臨床情報、ワクチン接種歴、診療所受診
  入院、処方、検査結果などの詳細が含まれている。
  対象は、2018年4月1日から2022年12月31日までにRZVを少なくとも1回接種した50歳
  以上のKPSC会員である。
  各ワクチン接種者に対して、年齢(5歳幅)、性別、人種/民族をマッチさせた未接種者を
  最大2名まで選定した。


2)結果
  ・帯状疱疹に対する有効性(VE against Herpes Zoster)
   2回接種群(4週〜6か月間隔): 帯状疱疹の発症率は10万人/年あたり72.3例であり、
                  未接種群の276.7例に比べて有意に低かった。
   ワクチン効果(VE): 73.9%(95% CI: 71.8–75.8%)
   1回接種群: 発症率は128.8例/10万人年、VEは60.3%(95% CI: 55.7–64.4%)
    2回接種(6か月超間隔): VEは72.4%(95% CI: 66.3–77.3%)と推奨間隔群と
                同等であった。

  ・帯状疱疹後神経痛(PHN)に対する有効性(VE against PHN)
   2回接種群: PHNのVEは83.7%(95% CI: 75.1–89.3%)
   1回接種群: VEは45.6%(95% CI: 17.6–64.0%)
   2回接種(6か月超): VEは86.9%(95% CI: 64.5–95.4%)

  ・経時的効果の持続性(Durability of VE)
   2回接種後の帯状疱疹のVE(年次別)
   1年後: VE 74.8%
   2年後: VE 74.6%
   3年後: VE 72.1%
   4年後: VE 68.5%
   つまり、有効性は4年間持続していた。

  (補足説明; 本文中では4年経過しても73%の効果としていますが、年度別と時点別の
         差でしょうか。)


3)考察
  2回接種でのVEは高く(約74%)、4年以上にわたり持続、臨床試験で示された。
  以前の報告のVE(約97%)よりは低いが、実地環境では妥当かつ高い有効性である。
  臨床試験は、より健康なボランティアを対象にしているのに対し、本研究では多様な基礎
  疾患や医療状況を有する集団を対象としている。
  PHNに対するVEはさらに高く、2回接種で84%に達した。
  PHNはQOLの低下を引き起こす重大な合併症であり、その予防は公衆衛生上重要である。
  接種間隔が6か月以上空いた場合でも、有効性は維持されていた。
  実地環境ではスケジュール通りに2回目接種できないことがあるが、そのような場合でも
  接種の継続は意味があると考えられる。
  VEは高齢者や基礎疾患保有者でも維持されていたが、免疫抑制者ではやや低かった。
  免疫機能が低下している集団では、抗体応答や細胞性免疫の獲得が不十分である可能性が
  ある。今後、追加接種(ブースター)の有用性についての検討が必要である。
  以前にHZやZVL(旧ワクチン)接種歴がある人では、VEがやや低下していた。
  これは 既存の免疫やウイルス再活性化のリスクが異なる可能性がある。


4)結論
  RZVは、50歳以上の成人において帯状疱疹およびPHNの予防に有効であり、効果は少なく
  とも4年間持続する。
  免疫抑制者や既感染者を含む多様なサブグループでもVEは確認された。
  推奨される2回接種スケジュールを守ることが望ましいが、接種間隔が延びても効果は維持
  される可能性がある。
  今後は、ブースター接種の必要性や長期効果の更なる評価が求められる。

  (補足説明;
   74%: ワクチン全体の平均的な予防効果を表します
   73%: 接種4年後でも効果が落ちていないことを証明しています。
   この「1%の差」は誤差範囲内といえますが、重要なのは「効果が持続する」という安心
   材料としての73%です。
   この研究では、接種後「4年経過時点」でも、帯状疱疹に対して73%、帯状疱疹後神経痛
   に対して87%の予防効果が維持されていたと報告されています。
   これはつまり、効果が年々低下しているわけではなく、安定しているということを意味
   します。
   長期にわたる細胞性免疫(T細胞)と抗体産生が得られるため、他のワクチンよりも
   持続性が高いと考えられています。
   臨床試験(ZOE-50/ZOE-70)のサブ解析では、最長7年にわたって高い免疫効果が維持
   されていたという報告があります。
   今回のKPSC研究でも「今後更に10年間フォローアップ予定」と明記されており、将来的
   に「10年効果持続」の証拠が得られる可能性があります。





私見)
 「シングリックスの効果は4年過ぎても70%あり、10年間継続する事も推定される。
 しかも重症化は80%抑制している。」と説明しようと思います。
 2回目接種は、原則として1回目から約2か月後に接種しますが、ただし事情に応じて最短
 1か月後に短縮も可能です。
 また原則6か月以内ですが、本論文も指摘していますが6か月過ぎても可能なようです。










posted by 斎賀一 at 19:00| ワクチン