2019年12月12日

 65歳以上の肺炎球菌ワクチンについて

 
65歳以上の肺炎球菌ワクチンについて
 
Use of 13-Valent Pneumococcal Conjugate
Vaccine and 23-Valent Pneumococcal Polysaccharide
Vaccine Among Adults Aged ≥65 Years


  
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 アメリカのCDCのMorbidity and Mortality Weekly Reportから、65歳以上の肺炎球菌ワクチンに対する最新の勧告が発表になっています。
CDCとACIP(advisory committee on immunization practices)の見解では若干の相違があり
そうですが、結論的には全ての65歳以上の人に23価ワクチン(ニューモバックス)の後、13価ワクチン
(プレベナー)を接種する必要はないとの事です。


以前に私のブログでも紹介しましたが、もう一度予備知識として纏めてみます。

1) 肺炎球菌ワクチンは2種類あり、日本では小児には13価ワクチン(プレベナー)を、65歳以上の
   成人には23価ワクチン(ニューモバックス)を接種します。作用の違いは下記のPDFを参照ください。
   結論的に比較しますと
  ・13価ワクチン(プレベナー)の利点
    細胞免疫と液性免疫の両方を刺激するため、何回も接種するとブスター効果が認められ小児にも
    効果がある。
    長期の免疫維持が可能。
  ・13価ワクチン(プレベナー)の欠点
    粘膜の抗体を刺激して菌の増殖を抑制するので、キャリアの肺炎球菌叢に変化を及ぼす。
  ・23価ワクチン(ニューモバックス)の長所   
    侵襲性肺炎球菌感染症の70%をカバーしている。
    咽頭の肺炎球菌叢に変化を及ぼさない。
  ・23価ワクチン(ニューモバックス)の欠点
    液性免疫のみを活性化するので、何回接種してもブスター効果は無い。
    長期の免疫維持は出来ない。

2) 具体的な事例として仮想空間で考えたいと思います。
   お爺ちゃんとお孫さんが週末に抱き合ったとします。・・・その危険率は?



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  ・お爺ちゃんが23価ワクチン(ニューモバックス)を接種していて、お孫さんが13価ワクチン
   (プレベナー)を接種していない場合は、お爺ちゃんの細菌叢には変化がないので、危険率は同じ。
  ・お爺ちゃんが23価ワクチン(ニューモバックス)を接種していて、且つお孫さんも13価ワクチン
   (プレベナー)を接種していれば、双方の危険率に変化はまずない。
  ・お爺ちゃんがなにも接種しておらず、お孫さんが13価ワクチン(プレベナー)を接種していれば、
   お孫さんの細菌叢に変化が起きている可能性があり、お爺ちゃんも危険があるかもしれない。
   しかし現実的には子供の接種により成人の肺炎球菌の感染は低下している。
  ・お爺ちゃんが23価ワクチン(ニューモバックス)の後に13価ワクチン(プレベナー)を接種していて
   お孫さんが13価ワクチン(プレベナー)を接種していない場合は、お爺ちゃんの細菌叢に変化が
   起きていてお孫さんの危険率もあがる。
   しかし、基本的には肺炎球菌の温床は子供から大人です。

Morbidity and Mortality Weekly Report

前置きが長くなりましたが、本MMWレポートを纏めてみます。

1) 施設に入居している高齢者は、13価ワクチン含有の肺炎球菌感染症の危険がある。
   特に13価ワクチン(プレベナー)を接種していない子供の多い地域では、その危険がある。

2) ACIPは全ての65歳以上の人に、23価ワクチン(ニューモバックス)の後に13価ワクチン
   (プレベナー)を接種する事を勧奨してきたが、子供の13価ワクチン(プレベナー)が行き渡り、
   65歳以上の人に13価ワクチン含有の肺炎球菌感染症の危険が低下しているのに、更に13価
   ワクチン(プレベナー)を接種しても社会として効果はあまりない。



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3) 結論として、65歳以上の人には23価ワクチン(ニューモバックス)の後に13価ワクチン
   (プレベナー)を接種するかは、臨床家と相談して決める事としています。
   接種する事に賛成の立場も表として記載していますので、参考にして下さい。

参考までにUPTODATEの最新版This topic last updated: Nov 27, 2019

1) 23価ワクチン(ニューモバックス)は以前85~90%をカバーしていたが、最近では50~60%と低下
   している。

2) 13価ワクチン(プレベナー)が成人にも有効と言うハッキリした科学的根拠はないが、ハイリスクの
   成人に使用されている。

3) 23価ワクチン(ニューモバックス)を、ハイリスクの人には5~10年後に再接種する事を勧めている。
   これは5~10年後に効果が減少するからである。
   しかし、適切な時期とその後の回数は不明である。
   一般的なリスクとしての慢性疾患のある人では、10年後の再接種を推奨している。

4) 23価ワクチン(ニューモバックス)の再接種を5年以内に行うと、免疫反応が鈍くなってしまう。
   5年経てばこの免疫反応は回復する。

5) 何れのワクチンも接種していない成人は、最初に13価ワクチン(プレベナー)を接種してから23価
   ワクチン(ニューモバックス)を接種する事を勧めている。
   細胞免疫のB細胞が最初に活性化されていると、免疫応答が活発化されるからである。

6) インフルエンザワクチンとの同時接種は、安全性が確立されている。

7) 結論的にはMMWレポートと同じ勧告です。






私見)
 現時点では65歳以上での23価ワクチン(ニューモバックス)の再接種は、一般的には10年後で良さそう
 です。しかも何を接種するかは未だはっきりとしません。
 取りあえず理想形としてのマニュアルは下記の様です。



         1212-4.PNG 
 
         上記の図は今回の勧告前のものです。







1 本論文.pdf

2 肺炎球菌ワクチン1.pdf

3 私のブログより.pdf










posted by 斎賀一 at 13:50| Comment(0) | ワクチン

2019年10月17日

ロタウイルス・ワクチンは安全

ロタウイルス・ワクチンは安全
 
Association Between Rotavirus Vaccination
and Risk of Intussusception Among Neonates and
Infants A Systematic Review and Meta-analysis



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 現在日本では、2種類のロタウイルス・ワクチンがあります。
ロタリックス(GSK社)とロタテック(MSD社)です。
効果においては同等です。

 ・ロタリックスは2回接種 : 1回接種量1.5ml、4週間以上の間隔をおいて2回接種(経口接種)
                   します。ワクチンを嘔吐した場合、再投与できます。
・ロタテックは3回接種 : 3回接種量2.0ml、4週間以上の間隔をおいて3回接種(経口接種)
                 します。ワクチンを嘔吐した場合、もう一度服用することができません。

しかし何れのワクチンも多くの弱毒ウイルスが含まれていますので、少し吐いても心配ありません。




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 今回雑誌JAMAから、ロタリックスとロタテックの両方をまとめてその安全性を証明したメタ解析の論文が
掲載されていますので、纏めてみました。

1) 以前からロタウイルス・ワクチンによる予防効果は、36~96%と言われています。
   ワクチンの副反応として腸重積がありますが、一般的には予防効果の方が勝るとされています。
   今回の論文は、25の研究のメタ解析でその安全性を検討しています。

2) 1999~2018年間の調査です。
   200,594名が対象で、その内104,647名がワクチン接種群で、95,947名がコントロール群です。

3) 結果は
  ・31日以内での腸重積の発生は20例です。  0.17/10,000人です。
   ワクチン群が11例で、コントロール群が9例でした。
  ・1年以内での腸重積の発生は74例です。  0.65/10,000人です。
   ワクチン群が37例で、コンロトール群も37例でした。
  ・2年以内での腸重積の発生は59例です。  0.48%/10,00人です。
   ワクチン群が29例で、コントロール群が30例でした。
  
  メタ解析のため、期間発生に関しての例数の同次元性はありません。
  結局ワクチン群とコントロール群での差異はありませんでした。






1 ロタワクチン.pdf

2 本論文.pdf











   
posted by 斎賀一 at 14:14| Comment(2) | ワクチン

2019年07月27日

妊娠中のインフルエンザ・ワクチンは安全

妊娠中のインフルエンザ・ワクチンは安全
5歳時までの調査結果
 
Health outcomes of young children born to mothers who received
2009 pandemic H1N1 influenza vaccination during pregnancy



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 妊娠中のインフルエンザ罹患は、時に重大な結果をもたらすため各学会からのガイドラインは、妊婦の
インフルエンザ・ワクチンの接種を勧めています。
それでも妊婦の方は躊躇されるケースが多くあり、接種率も低い傾向です。

 今回カナダからの報告が英国の雑誌BMJに掲載されています。
出産後5歳時までの観察期間の報告です。



纏めますと

1) 2009年11月~2010年10月に出産した135,807人の新生児を対象としています。
   但し、出生体重は500gr以上で、妊娠20週以上での出産としています。
   その中でH1N1インフルエンザ・ワクチンを受けた妊婦は30%でした。
   (最終的にはインフルエンザ・ワクチンを接種した妊婦が4,359名で、接種しなかった妊婦が
   10,100人登録され調査しています。)

2) ワクチンを受けていな人をコントロール群としています。

3) 5歳時までの副反応を調べました。
   主要転帰は、呼吸器感染症、喘息、急性中耳炎、癌、神経疾患、救急疾患の受診の既往、
   5歳までの死亡率です。

4) 結果は、ワクチンを接種した妊婦及びその出産した子供の5年経過を見ても(5歳時まで)
   コントロール群と差は無く、インフルエンザ・ワクチンの安全性が証明できたとしています。
   (下記のPDFのグラフをご参照ください。)





私見)
 長期予後での安全性が証明されました。
 接種が妊娠のどの時期にされたかは論文中に詳細に記載していませんが、uptodateから調べても
 どの時期においても(any time)安全が証明されているため、本論文では問題視しなかったのかも
 しれません。
 念のため原文も掲載します。






1 本論文より.pdf

2 インフルエンザワクチン 妊娠.pdf

3 Immunization before, during, and after pregnancy - UpToDate.pdf














posted by 斎賀一 at 18:57| Comment(0) | ワクチン