2019年06月03日

軽症喘息にシムビコートの頓用吸入は有効

軽症喘息にシムビコートの頓用吸入は有効
 
Controlled Trial of Budesonide–Formoterol as Needed for Mild
Asthma This article was published on May 19, 2019,at NEJM



0603.PNG




 SMRT研究以降、軽症喘息に対してシムビコート(ブデソニド+ホルモテロール)の発作時での頓用吸入は認められています。持続性気管支拡張薬(LABA)のブデソニドは、トータルアゴニストのため増量に依存して効果が増加し、しかも持続性なのに即効性の効果発現も期待される薬剤です。それを配合しているシムビコートは、喘息のコントローラー(維持治療)にもリリーバー(発作治療)にも適応されています。
(下記のPDF参照)

今回雑誌NEJMより、シムビコートを軽症喘息の発作時に頓用で使用した場合の有効性を示した論文が掲載されました。


纏めますと

1) 軽症喘息の成人を対象とする52週間の比較試験を行った。
   患者を次の3群のいずれかに無作為に割り付けた:
   ・アルブテロール(本邦ではサルタノール)( 1 回噴霧 100μg を 2 吸入を発作時に頓用)
    (アルブテロール群)
   ・ブデソニド(200μg の 1 吸入を 1 日 2 回)+アルブテロール頓用(ブデソニド維持療法群)
   ・ブデソニド+ホルモテロール(商品名シムビコート;ブデソニド 200μg ・ホルモテロール6μg
    の 1 吸入を頓用)(ブデソニド+ホルモテロール群) の3群です。

2) 無作為化された 675 例のうち 668 例を解析の対象とした。
   ブデソニド+ホルモテロール群の喘息増悪の年間発生率は、アルブテロール群よりも低く(絶対的
   発生率 0.195 対 0.400)、ブデソニド維持療法群との間に有意差は認められなかった。(絶対的
   発生率 ブデソニド+ホルモテロール群 0.195 対 ブデソニド維持療法群 0.175)
   重度の増悪の回数は、ブデソニド+ホルモテロール群がアルブテロール群(9 回 対 23 回)と
   ブデソニド維持療法群(9 回 対 21 回)よりも少なかった。

3) 若干の追加説明
   ・従来の研究ではプラセボを用いての1日2回吸入器を使用する事を要求していたが、これでは
    シムビコート1回吸入の利点が損なわれる。
    よって本試験では、非盲検試験の方法を採用しています。
   ・過去1年間で重症の増悪があった患者に対しては、SABA(アルブタノール)の使用制限は設けて
    いません。
   ・喘息の急性増悪の定義
    a. かかりつけ医や救急の受診、入院
    b. ステロイドの全身投与(経口薬、点滴)
    c. 24時間でアルブテロール吸入を16回、又はシムビコート吸入を8回以上
   ・重症な急性増悪の定義
    a. 3日間のステロイドの全身投与
    b. ステロイド全身投与が必要なため入院

   ・β刺激薬の過剰投与は24時間以内でアルブテロール吸入を24回以上か、シムビコートを12回以上
    尚 7 日過ぎたら別の事象としてカウント
   ・治療の変更が必要と認めた時
    a. 1 回の重症な急性増悪
    b. 3 回の急性増悪

4) 理論的根拠
   ・SABA単独の治療は予後転帰の不良に繋がる。
   ・急性増悪の場合に、30分間隔で2 時間以上かけての吸入ステロイドの4 倍量は、ステロイドの
    全身投与より有効
   ・即効性のLABAつまりブデソニドは、SABAつまりアルブテロールより即効性においても効果的
    である。

5) 考察  
   ・喘息患者の治療の本来の目的は、急性増悪の予防ばかりでなく日常生活でのQOLだ。
    従って、軽症以上の喘息患者に対する吸入ステロイド配合剤の継続治療の選択肢は当然あるが、
    増悪の予防としてのシムビコートの頓用は有効である。
   ・繰り返しての吸入ステロイドは経口ステロイドよりも効果的と言われている。特に成人での4倍の
    吸入ステロイドは、急性増悪の時でも有効である。
   ・β刺激薬としてのSABAのアルブテロール2吸入とLABAのブデソニドの1吸入は、即効性の気管支
    拡張作用としても同等でした。
    (SABAは短期作用型気管支拡張薬で、LABAは長期作用型気管支拡張藥です。ブデソニドは
     シムビコートに入っているLABAです。)

6) 結論として、軽症喘息の成人を対象とした非盲検試験では、ブデソニド+ホルモテロール頓用は
   アルブテロール頓用よりも喘息増悪の予防に優れていた。





私見)
 喘息発作は二度、波が押し寄せてくることがあります。一回目は気管支拡張薬で対応できますが、
 二回目の波はステロイドを当初より含んでいないと襲ってくるといわれています。
 本院ではブデソニドがシムビコートとフルティフォームに入っています。
 両者ともに1日最大で8吸入が認められています。
 シムビコートとフルティフォームを頓用として、1日4〜8回までを積極的に使用しようと思います。
 (急性増悪の定義からしても妥当な線だと考えます。)
 当然ながらQOLを目的として、アドエアを始めとした他の合剤も選択肢と考えています。
 結果のグラフも下記のPDFをご参照ください。





1 論文より .pdf

2smart研究.pdf

3配合剤.pdf




















    
posted by 斎賀一 at 21:46| Comment(1) | 小児科

2019年05月22日

ライノウイルスCは小児の繰り返す喘鳴の原因

ライノウイルスCは小児の繰り返す喘鳴の原因
 
Association of Rhinovirus C Bronchiolitis and
Immunoglobulin E Sensitization During Infancy
With Development of Recurrent Wheeze



0522.PNG



 3歳以下の乳幼児で喘鳴を繰り返す原因ウイルスは、ライノウイルスCが多いとの報告が日本の研究者より発表になりました。
雑誌JAMAに掲載されています。


本論文を纏めますと

1) ライノウイルスは、RSウイルスに次いで多い下気道感染症の原因ウイルスです。
   重症の細気管支炎の20~40%がライノウイルスです。

2) 2011~2014年の間で、秋から冬にかけてRSウイルスかライノウイルス(A,B,C型)に感染して
   細気管支炎を起こし入院した、1歳以下の乳児716名を登録しました。
   そして反復性の喘鳴の病歴を3歳まで調査しました。

3) 入院した716名の内、RS単独は76%、ライノA型は12%、C型が11%、B型が2%でした。
   その中で、3歳時に反復性喘鳴と診断された幼児は32%です。
   その危険率をRSウイルスと比較して調べますと
        ライノウイルスCが1.58    
        ライノウイルスAが1.27
        ライノウイルスBが1.39 
   つまり細気管支で入院する乳幼児はRSウイルスが一番多いのですが、その後に尾を引いて反復性
   喘鳴をきたす場合は、ライノウイルスCが一番危険との結果です。

4) ライノウイルスCは、喘息と関係する免疫グロブリンEの感化と深く関係していました。
   その結果、RSウイルスを1として比較しますと、食物アレルギーの危険率は3.03で、4歳での喘息
   の罹患危険率は4.06と高率です。

5) ウイルス感染と免疫機能変容のメカニズムは、今後の興味あるテーマです。



ライノウイルスに関して、少しRed Bookで纏めてみますと

1) 感冒の主たるウイルスです。
   咽頭炎、中耳炎、下気道感染(細気管支炎、肺炎)を起こす。
   最初の症状は、咽頭痛、鼻炎(最初の数日は水様性ですがやがて膿性となり2週間も続く)
   頭痛、筋肉痛、咳、喘鳴、クシャミも起こる。 高熱は稀

2) 喘息をもった幼児で喘息症状の増悪の原因の半分はライノウイルスである。

3) ライノウイルスにはA,B,Cの3種類の型と、serotypeは約100種類ある。
   1年中流行しているがそのピークは春と秋
   いろいろなserotypeが同時に流行しているが、ある地域では特定なserotypeが優位に流行し、
   それは年度により変化する。
   成人になるまでに多くのserotypeに対する抗体が獲得されてくる。

4) ウイルスの排出は2~3日が一番多いが、一般的には7~10日で休止する。
   ただし、3週間も続くこともある。

5) 潜伏期は2~3日だが時に7日までの場合もある。





 
私見)
 JAMAの論文の特徴は
 ・ライノウイルス中でも、Cが小児の繰り返す喘鳴と関係する事を証明した。
 ・ライノウイルスCが、免疫機能に影響を与えて喘息まで進展する事を証明した。

小児の喘息と感染症、特にマイコプラズマ、RSウイルス、そしてこのライノウイルスとの関係に注意したいと思います。
尚、小児喘息と喘息とは基本的には別物です。
この機会にライノウイルスを文献より纏めてみました。



◆下記の分献より抜粋 

  小児科Vol. 55   No.6 2014
  感染症 ; 日本医事新報社
  Medical Practice; vol.33 no.l2 2016
  小児科vol 57 no12 2016   新谷尚久
  小児科特集 小児と感染症 Vol.57  No.6 2016
  小児科vol. 55 no.7 2014   鈴木栄太郎
  小児呼吸器感染症 診療ガイドライン2017





Association of Rhinovirus C Bronchiolitis and Immunoglobulin E .pdf

ライノの文献.pdf



















posted by 斎賀一 at 20:31| Comment(1) | 小児科

2019年05月13日

熱性けいれんと乳幼児の突然死;SUDC

熱性けいれんと乳幼児の突然死;SUDC
 
Potential Role of Febrile Seizures and Other Risk
Factors Associated With Sudden Deaths in Children



0513.PNG
 

  

 熱性けいれんと乳幼児突然死症候群の関係は、古くて新しい問題です。
今回雑誌JAMAに論文が掲載されていますので、紹介します。

 その前に用語の説明をします。
SIDS(乳幼児突然死症候群); 解剖所見、状況調査などあらゆる検討を行っても、説明不能な1歳未満の乳児の睡眠中における突然死。現在では睡眠との関係を重視して用いています。

SUID(予期せぬ乳幼児突然死); 1歳未満の突然死を包括した乳幼児期の予測不能な突然死のことで
SIDS及び原因が説明できる突然死も包括した用語です。

しかしSIDSとSUIDは混乱して用いられています。SUIDのUはunexpectedつまり予期せぬを意味する場合と、unexplainedつまり解剖をしても説明が出来ないを意味する場合と、unknownつまり分からないの意味する場合とで混乱しているようです。アメリカでは睡眠中の場合はSIDSとして、原因が不明の場合はSUIDと診断しているようです。

本論文を読む場合に更に注意が必要な点は、SUIDでなくてSUDCつまり1歳以上を対象にしている事
です。
Uunexplainedとして用いています。一方原因が説明できる場合はSEIDとしています。(原因としてはsuppleよりPDF化して下記に掲載しました。)

    1;Sudden unexplained death in childhood (SUDC)
    2;Sudden explained death in childhood (SEDC)
    3;Sudden Unexplained Infant Death (SUID)
    4;Sudden Infant Death Syndrome(SIDS)

結局、本論文は上の1と2に関しての記載です。
(これを理解するのに数日を要してしまいました。連休ボケのためにブログをサボっていたのではない事を職員の皆さん理解してください。)


 大変前置きが長くなりましたが、本論文を纏めてみました。

1) 一歳以下のSIDSは注目もされており、睡眠の対策もなされているが、一歳以上のSUDCはあまり
   検討されていない。それでも1歳から18歳のSUDCを調べると、その62.5%は1~4歳に発生して
   いる。
   本研究者より以前にSUDCの31%が熱性けいれんと関連しており、75%が発熱疾患を罹患して
   いたと報告しています。
   SUDCにおける熱性けいれんの危険率を調べるためにSEDCとの比較検討をしました。

2) 2001~2017年間で、1~17歳の622例のSUDCを調査しました。   
   その中で、1~6歳の391例が調査で対象に値しました。更に原因が判明したものはSEDCに組み
   込められました。
   対象の391例の中で熱性けいれんの既往歴は、26.6%(SUDCは28.8%で、SEDCは22.1%)、  
   一般的な熱性けいれんの発生頻度は2~5%です。
   明らかにSUDCの頻度は高率です。
   睡眠中に熱性けいれんで死亡する危険率を統計学的に処置すると、SUDCはSEDCに比べて4.6倍
   にもなります。
   これは、SUDCは癲癇の突然死にも匹敵する危険率となります。

3) 以前のデンマークの報告では熱性けいれんの突然死の危険は無いとしていましたが、最近ではその
   危険率は2倍ともしています。

4) SIDSとうつぶせ寝が問題視されていますが、SUDCもしばしば発見時にはうつ伏せでした。
   うつぶせ寝に対する啓蒙活動により、SIDSは最近では54%も減少していますがSUDCは漸増傾向
   です。アイルランドでは、最近の15年でSUDCは倍増しています。

5) 本研究でSUDCとSEDC共に、熱性けいれんが突然死の原因として関与している事が判明しました。
   SUDCとSEDCの違いは、単に明らかな睡眠中か否かの差でしかない様です。
   同胞の突然死の頻度は低い事より、熱性けいれんの啓蒙と両親における注意が対策として重要
   です。




           0513-2.PNG








私見)
 熱性けいれんの20%は突発性発疹との報告もあります。(逆は真ではありませんが、突発性発疹の
 可能性がある時は、熱性けいれんに注意してもらっています。)
 熱性けいれんは多くが良性の経過です。
 過剰な心配は両親にとっても負担になります。
 しかし熱性けいれんは、突然死の一つのリスクとして医療従事者も捉えていたいと思います。






1 熱性けいれん 突然死.pdf

2 SUDC.pdf










posted by 斎賀一 at 20:32| Comment(1) | 小児科