2018年07月14日

小児の尿路感染症に対する抗生剤の予防投与

小児の尿路感染症に対する抗生剤の予防投与
 
Uropathogen Resistance and Antibiotic
Prophylaxis: A Meta-analysis



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 膀胱尿路逆流症(VUR)は外来でも時々遭遇します。
主にエコーで、水腎症の所見から診断されることが多いようです。尿路感染症を3日間放置すると、この水腎症の瘢痕化が増悪する懸念があります。この事からVURで尿路感染症を併発しないように、抗生剤の予防投与を実施する事があります。
しかしこの治療方針は、抗生剤に対する多剤耐性菌を誘発する問題があります。


 今回、雑誌Pediatricsよりこれに関する論文が出ていましたので纏めてみました。

1) VURの18歳以下の患児で、継続して抗生剤の予防投与を行った1,299名(一度尿路感染症を併発
   した224名を含む)を登録し、予防投与しない症例、及び一般的なプラセーボをコントロール群と
   して比較検討しています。

2) 6研究から、抗生剤の予防投与による多剤耐性菌の発生頻度は0~62%でした。

3) 予防投与を行った群では、多剤耐性菌が33%でした。(コントロール群は6%)
   Broad –spectrum(広範囲に効く抗生剤)を使用すると、49%から68%になります。
   この事は予防投与をすることにより、VURのある患児の21人に対して1人に多剤耐性菌が生ずる事   
   になります。(コントロール群では一般的な乳幼児も含まれるため)
   一方で、予防投与をする事により尿路感染症の頻度を23.1%から18.3%に減少させます。
   この事はVURの患児21人に対して、1人よりも少ない人数に効果があったことになるそうです。
   つまり、効果より多剤耐性菌の害の確率が、やや上回っているようです。

4) 論者はこの事から、直ぐに予防投与を中止するように保護者に説明すべきでないとしています。
   一回以上の感染症を合併している場合や外科的処置を好まない保護者に対しては、予防投与の
   選択肢があるが、その利害を説明すべきとしています。






私見)
 本院でも尿路感染症は乳幼児の重要な鑑別疾患です。
 特にVURのある患児に対しては、日頃より保護者に説明しておくことが肝心と認識しています。
 職員の皆さん、そんなわけで尿沈渣に奮闘してください。





Uropathogen Resistance and Antibiotic Prophylaxis_ A Meta-analy.pdf

VUR解説.pdf










posted by 斎賀一 at 16:34| Comment(1) | 小児科

2018年07月05日

乳幼児におけるライノウイルスと細菌感染症との関係

乳幼児におけるライノウイルスと細菌感染症との関係
 
Rhinovirus in Febrile Infants and Risk of Bacterial Infection
PEDIATRICS Volume 141, number 2, February 2018:e20172384


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 私のブログで以前紹介しました(2018-01-22)ライノウイルスに関する記事が気になっておりましたが、今回元文献のfullを読んで再検討しました。


再度確認した点のみを纏めてみました。詳細は下記のPDFのグラフで検討します。


1) ライノウイルス感染症は乳幼児の最も多い呼吸器感染症ですが、無症状の事も多く、注意が必要
   です。また、ライノウイルスは排出も長期間に及びます。

2) 対象は重症感の無い(well-appearing)生後3か月以内の発熱患児で、外来受診後24時間以内に
   救急外来受診、または入院をした10,964人を対象にしています。

3) 細菌感染症の合併を 1;ライノウイルス、2;その他のウイルス、3;ウイルスが同定されない
   以上の3群に分けて調べています。
   細菌感染症としては、尿路感染症、敗血症、侵襲的感染症、髄膜炎です。

4) 55%にウイルスが同定されました。
   38%がライノウイルス、35%がライノウイルス単独、7%がRSウイルスでした。
   細菌感染症合併は9.5%、その中で尿路感染症が6.6%、菌血症が2.6%、髄膜炎が0.3%でした。

5) 結論的には、ウイルスが同定されない場合、細菌感染症の可能性は3.5倍の危険率である。
   ウイルスが同定されても、ライノウイルスの場合は他のウイルスよりも細菌感染症合併の可能性が
   2.21倍となる。





私見)
 一般外来ではライノウイルスの検査は出来ません。
 外来で出来る迅速ウイルス検査を活用して診断出来れば良いのですが、同定出来ない場合はライノ
 ウイルスである可能性から細菌感染の可能性をも視野に入れる必要があります。
 本院でのその確率は7.5%~12.5%です。





ライノウイルス.pdf














posted by 斎賀一 at 13:49| Comment(0) | 小児科

2018年06月27日

中間型インスリンの復権

中間型インスリンの復権
 
Association of Initiation of Basal Insulin Analogs vs Neutral
Protamine Hagedorn Insulin With Hypoglycemia-Related
Emergency Department Visits or Hospital Admissions
and With Glycemic Control in Patients With Type 2 Diabetes



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 インスリンは、重症の糖尿病患者に対する最後の砦的に捉える方が今でもおられますが、以前より膵臓が疲弊する前に早期にインスリンを導入する事が推奨されています。
インスリンは、現在殆どがヒト型インスリンです。ヒト型はヒトと同じインスリン構造を持ちます。その構造の一部を変えて作用時間や副作用の軽減化を行ったのが、インスリンアナログ製剤です。
本院では持続型(持効型)のトレシーバとランタスを採用しています。以前の私のブログもご参照ください。

 今回、雑誌JAMAよりヒト型インスリンの中間型が、時効型のアナログ型より有効との論文が出ました。
(本院でも中間型の少量を就寝前に注射する裏ワザを頻用していましたが、時効型のアナログ製剤の
登場により影を潜めています。)


論文を纏めてみますと

1) U型糖尿病患者の14~25%が、結局インスリンの導入が必要となる。
   最近では夜間の低血糖の予防と効果において時効型のアナログ製剤が主流になっているし、それを
   裏付ける論文が多く出されている。それを検証する意味で、今回の観察研究がなされた。

2) 2006~2015年まで観察しています。平均観察期間は1.7年です。
   最初から時効型のアナログ製剤を使用した1,928人と、最初は中間型を勧められた23,561人を
   比較しています。
   T型糖尿病は除外していますし、即効型を追加した症例も除外しています。
   当初のベースラインとしてのヘモグロビンA1cは、平均で両群とも同程度で9.4%でした。
   アナログ製剤はランタスと、それより遅れて発売になったトレシーバです。

3) 救急外来の受診や入院が必要になった低血糖症例は
   アナログ製剤が、11.9人/1,000人/年に対して、中間型では8.8人/1,000人/年でした。
   しかもヘモグロビンA1cの改善も、中間型の方がやや優位でした。

4) 論者は以前のアナログ製剤の優位を示した論文の問題点を列挙しています。
  (本ブログでは省略いたします。原文を参照ください。)
  結論として、中間型の方が費用も安いし効果も同等であり、中間型を選択するのは全く悪くは無いと
  しています。




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私見)
 忘れ去られそうな薬剤が復権(ルネッサンス)を果たすのは、本田さんばかりでなく私もこよなく嬉しい
 ものです。


        チャチャチャ ♪  ニッポン!   頑張れ本田!!






本論文インスリン.pdf

本論文より.pdf

インスリン製剤.pdf

インスリンの解説.pdf


















posted by 斎賀一 at 19:46| Comment(1) | 小児科