胃酸分泌抑制剤のPPIは幼児に感染症を引き起こす?
Proton Pump Inhibitor Use and Risk of Serious
Infections in Young Children
Infections in Young Children
フランスからの報告です。
PPIを幼児に使用すると、感染症を誘発するかを検証した論文です。
乳児の場合、逆流性食道炎を鑑別診断するのは大変難しいです。
生後3か月から4か月の乳児の60〜70%に胃酸逆流症が認められますが、ひとり立ちが出来て
歩行も可能となれば、それらの症状は自然に治癒します。
合併症がなければ胃食道逆流症に対してPPIの治療は行わないのが一般的ですが、フランスでは
最近その使用が増加傾向で、2歳以下の乳幼児に対して2010年は3.6%、2019年では6.1%と
なっています。
PPIの使用は小児においても、骨折、急性腎障害、アレルギー、喘息、炎症性腸疾患との関連性
が懸念されています。
1) 2010年1月から2018年12月までに胃酸分泌関連の疾患に関連した乳幼児を登録して
います。
1,262,424名が登録し、3.8年間追跡しています。
606,645名がPPIを服用し(平均年齢は88日)、655,779人がPPIを服用していません
でした。(平均年齢は82日)
2) 結果
感染症の発生環境には一定の期間が必要との考えから、調査開始の(インデックス)
30日間のタイムラグ(乳幼児も出産前の母親ともに30日間の医療機関を受診していない)
を設けています。
PPIの暴露期間(服用期間)は6か月以内、7〜12か月、12か月以上に設定しています。
重症感染症はPPIを服用した群の危険率が1.34、消化器系統の感染症が1.52、
耳や鼻咽頭の感染症が1.42、下気道感染症が1.22、尿路感染症が1.2、
神経系感染症が1.31でした。
細菌感染は1.56、ウイルス感染症は1.30でした。
3) 考察
胃酸は胃に入ってくるものを殺菌する作用があります。それが低下すれば直接的にも
間接的にも感染の機会が増えてしまいます。
成人でもPPIにより、中枢神経系の感染症が2倍のリスク増との論文もあります。
また尿路感染症と皮膚感染症も、成人で増加との報告もあります。
4) 乳幼児にPPIを処方する場合は、厳格な適応を考察する必要があります。
私見)
さすがに乳幼児にPPIを処方した経験はありませんが、PPIの逆風の昨今、成人にも特に高齢者
には適応と処方期間に関して注意が必要です。
本論文.pdf