2018年09月21日

滲出性中耳炎に経口ステロイド剤は効果なし?

滲出性中耳炎に経口ステロイド剤は効果なし?
 
Oral steroids for resolution of otitis media
with effusion in children (OSTRICH)



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 滲出性の中耳炎は、小児において聴力障害に繋がる懸念があります。
今までの研究では抗生剤、局所ステロイド点耳、ムコダイン、ムコソルバンは無効との報告です。
耳管チューブの外科的処置が推奨されていますが、経口ステロイドの服用も安価で安全な治療として広く採用されています。
 しかし今までのところ、はっきりとした比較試験がなかったようです。

 今回雑誌LANCETより研究報告(study)が出ています。



纏めますと

1) 少なくとも3か月間、滲出性中耳炎を患って聴力障害を両側に伴っている2〜8歳の小児に対して
   経口ステロイド服用群とプラセーボ群に振り分けて、5週間後に聴力検査をしています。
   調査は2014~2016年で1,018名がスクリーニングされ、その中で389名が登録されました。
   更にその中で200名が経口ステロイド服用群、189名がコントロール群に振り分けられました。

2) 主要転帰としての聴力の十分な回復は、5週間で経口ステロイド服用群では73名(40%)
   プラセーボ群で59名(33%)でした。

3) 両群とも5週間、6カ月、1年と経過を見ていくと、高頻度で聴力の改善が見られています。
    (今までの研究では自然治癒は3か月で28%、6カ月で42%と言われています。)
   本研究の結論では、両群で明白な差はなかった。
   経口ステロイド服用では、14人中1人に効果があったとしか言えない。
   つまり多くの患児が自然治癒する結果でした。
   中耳炎の症状に関しては1年経過観察でみますと、ステロイド服用群で68%、プラセーボ群で61%
   継続していました。

4) ガイドラインでも3か月までは経過観察でも良いが(watchful waiting)、3カ月しても聴力障害が
   あったり言葉の遅延が認められたら、専門医へ紹介すべきとしています。





私見)
 経口ステロイドは滲出性中耳炎にとって有効な治療選択ですが、本論文の筆者も述べていますが、その
 効果は限定的で14人中1人程度と認識すべきとしています。有効な治療に関しては、今後の課題として
 います。
 鼓膜チューブか経口ステロイドか、門外漢の私には判断が出来ませんが、その効果も限定的である事を
 説明し、コンセンサスを得る事も大事なようです。






中耳炎 ステロイド.pdf

中耳炎.pdf







posted by 斎賀一 at 20:52| Comment(0) | 小児科

2018年09月15日

小児の軽症頭部外傷のガイドライン:CDCより

小児の軽症頭部外傷のガイドライン:CDCより
 
Centers for Disease Control and Prevention
Guideline on the Diagnosis and Management
of Mild Traumatic Brain Injury Among Children
 
JAMA Pediatr. doi:10.1001/jamapediatrics.2018.2853



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 海外では軽度頭部外傷を、mild traumatic brain injury;mTBIとして統一しているそうです。
軽症頭部外傷を、以下mTBIとします。
 今回小児のmTBIに関してアメリカのCDCよりガイドラインが出て、雑誌 JAMAから出版されています。
ガイドラインと言うよりはやや勧奨の色彩が強い印象です。
小児の頭部外傷に関しては、私の以前のブログ 「頭部外傷」 で検索してください。  
   (尚studyは下記のPDFを参照)

mTBIの定義は
 ・30分以内の混乱(confusion)、見当識障害、意識消失、
  24時間以内の意識消失、一時的な神経症状、痙攣
 ・受傷30分後の臨床医によるGlasgow Coma Scale(GCS)判定で13~15点
  特に小児の場合はこのGCSを重視しています。



纏めますと

 ◎診断に関する勧奨

 1) 臨床家はCT検査をルーチンで行わない事
    特に小児では、照射による発癌性にも留意する必要がある。
    実際にmTBIから外科的治療が必要な事例は稀である事を家族とも相談して、CT検査の必要性
    を検討する。
    CTを考慮する際にはPECARNを参考にする。 (下記PDF参照)

   下記のリスク因子を検討
    ・2歳以下
    ・嘔吐
    ・意識消失
    ・外傷の原因の重さ
    ・頭痛の程度
    ・意識喪失
    ・前頭部以外の血腫
    ・GCSの15点以下(下記のPDF参照)
    ・頭蓋骨骨折の疑い
    以上の内、頭蓋骨骨折とGCS以外は十分なリスク因子でない事を認識しておくことが大事
    色々なスケールが考案されており、それらを組み合わせて診断する事が有効

 2) MRI検査もルーチンで検査を行わない事
    本検査は時間を要するので、小児では鎮静剤を必要とする事に留意

 3) 頭蓋骨骨折のレントゲン診断は、63%の感度(正解率)である事に注意
    しかもmTBIの内、頭蓋骨骨折の頻度は7.1%である。

 4) 血液検査は全く無用


 ◎予後に関する勧奨
    mTBIの70~80%は、1~3カ月で症状は緩和する事を家族に説明する。
    緩和する経過はそれぞれ異なる事も理解する。
    症状の緩和には、家族との共同作業としての会話(health literacy)や行動が大事である。


 ◎緩和の妨げになる要因としては
    ・頭蓋内損傷のある場合の認知機能障害
    ・神経、精神的障害
    ・学習障害
    ・家族や環境の障害
    以上が挙げられる。4週間以上症状の軽快が無い場合はリスクである。


 ◎教育現場への復帰に関する勧奨
    臨床側と教育現場との密接な連絡が大事である。
    継続したアカデミックな両者の対応が求められる。
    慎重な復帰計画を作成する事が大事であるが、出来るだけ迅速に復帰の方向に計画を立て、
    やたら無駄な時間を弄して欠席を長引かせない事も肝要


 ◎mTBI後の頭痛に対する勧奨
    頭痛が継続したり悪化する場合はCT検査も考慮する。


 ◎不眠に関する勧奨
    健全な睡眠を指導する。
    専門家との連携が大事





私見)
 頭部外傷に対するツールと言うよりは、心構えが記載されています。
 職員の皆さん、私の以前のブログと併せ、患者さんへの対応をお願いします。





頭部外傷のstudy.pdf

gcs.pdf











posted by 斎賀一 at 15:59| Comment(1) | 小児科

2018年08月30日

クループ症候群にステロイドは有効

クループ症候群にステロイドは有効
 
Glucocorticoids for croup in children



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 クループ症候群は、小児の代表的な吸気性呼吸障害で犬吠様咳嗽(けんばいようがいそう)が特徴
です。その多くがウイルス性で軽症ですが、夜間に増悪します。
夏のクーラーが誘因の場合もあります。
ステロイド(デカドロンシロップ)の服用と、ボスミンの吸入が有効です。
最も大事な点は急性喉頭蓋炎との鑑別です。この点に関しては下記のPDFに纏めましたので、職員の
皆さん、参照してください。

 今回、クループ症候群に対するステロイド服用の効果を調べた論文が発表されましたので、掲載します。



簡単に纏めますと

1) 0~18歳のクループ症候群患者、4,565人を対象

2) ステロイドの使用により2時間で改善がみられ、その効果は24時間継続する。

3) 更に、再受診率の低下も認められています。 (危険率は0.52)






私見)
 稀な疾患ではありません。そのため安易に診断はせず、常に鑑別診断をすべきとの事です。

 ・まず重症度の判定・・・ Spo2が90以下は重症。初期対応に反応しない場合は入院治療も考慮する。
 ・初期治療とは・・・本院ではデカドロンシロップ(0.5cc/kg/回の少量)及び
             ボスミン吸入0.5~1.0cc+5%食塩水
 ・治療中も常に重症度の判定と、鑑別疾患を念頭に置く。





 【参考書籍】
      ・ これから出会う物語 : 中山書店
      ・ 子どものプライマリ・ケア : 医学書院
      ・ 小児診療のピットフォール : 日経メディカル
      ・ 雑誌小児科 : Vol.54 NO.9 2013
      ・ 徴候から見抜け 小児救急疾患 : 日本医事新報社
      ・ NEJM :  july 5 2012
      ・ その他





職員研修用 クループ.pdf

クループ症候群 本論文.pdf

Steeple Sign of Croup.pdf













posted by 斎賀一 at 14:35| Comment(0) | 小児科