2023年08月23日

胃酸分泌抑制剤のPPIは幼児に感染症を引き起こす?

胃酸分泌抑制剤のPPIは幼児に感染症を引き起こす?

Proton Pump Inhibitor Use and Risk of Serious
Infections in Young Children



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 フランスからの報告です。
PPIを幼児に使用すると、感染症を誘発するかを検証した論文です。
乳児の場合、逆流性食道炎を鑑別診断するのは大変難しいです。
生後3か月から4か月の乳児の60〜70%に胃酸逆流症が認められますが、ひとり立ちが出来て
歩行も可能となれば、それらの症状は自然に治癒します。
合併症がなければ胃食道逆流症に対してPPIの治療は行わないのが一般的ですが、フランスでは
最近その使用が増加傾向で、2歳以下の乳幼児に対して2010年は3.6%、2019年では6.1%と
なっています。
PPIの使用は小児においても、骨折、急性腎障害、アレルギー、喘息、炎症性腸疾患との関連性
が懸念されています。


1) 2010年1月から2018年12月までに胃酸分泌関連の疾患に関連した乳幼児を登録して
   います。
   1,262,424名が登録し、3.8年間追跡しています。
   606,645名がPPIを服用し(平均年齢は88日)、655,779人がPPIを服用していません
   でした。(平均年齢は82日)

2) 結果
   感染症の発生環境には一定の期間が必要との考えから、調査開始の(インデックス)
   30日間のタイムラグ(乳幼児も出産前の母親ともに30日間の医療機関を受診していない)
   を設けています。
   PPIの暴露期間(服用期間)は6か月以内、7〜12か月、12か月以上に設定しています。
   重症感染症はPPIを服用した群の危険率が1.34、消化器系統の感染症が1.52、
   耳や鼻咽頭の感染症が1.42、下気道感染症が1.22、尿路感染症が1.2、
   神経系感染症が1.31でした。
   細菌感染は1.56、ウイルス感染症は1.30でした。




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3) 考察
   胃酸は胃に入ってくるものを殺菌する作用があります。それが低下すれば直接的にも
   間接的にも感染の機会が増えてしまいます。
   成人でもPPIにより、中枢神経系の感染症が2倍のリスク増との論文もあります。
   また尿路感染症と皮膚感染症も、成人で増加との報告もあります。

4) 乳幼児にPPIを処方する場合は、厳格な適応を考察する必要があります。






私見)
 さすがに乳幼児にPPIを処方した経験はありませんが、PPIの逆風の昨今、成人にも特に高齢者
 には適応と処方期間に関して注意が必要です。







本論文.pdf









posted by 斎賀一 at 19:33| 小児科

2023年08月21日

ゲップと腹部膨満感の対応

ゲップと腹部膨満感の対応

AGA Clinical Practice Update on Evaluation and Management
Of Belching, Abdominal Bloating, and Distention

<短 報>

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 アメリカの消化器学会のAGAから、ゲップと腹部膨満感に対応するガイダンスが出ています
のでブログします。
 論文を簡単に見ますと、残念ながら本院では検査が出来ない項目が多く、今までと変わらない
患者さんへの対応しか出来ません。
結局その中で注目した点を記載します。

・腹部膨満でもAbdominal Bloatingは自覚症状の膨満感で、 Distentionとは他覚症状を
 意味します。
・ヨーグルトやプロバイオティクスは、腹部膨満感には無効です。
・症例により精神安定薬も有効です。
・便秘が関与していることもあり、適切な緩下剤を使用する。
・精神行動療法も有効です。
・腹式呼吸の推奨





私見)
 本論文を下記に掲載しますので、ご参考まで。






げっぷ.pdf







posted by 斎賀一 at 18:38| 小児科

2023年07月31日

コロナ抗原検査は2回以上やると精度が上がる

コロナ抗原検査は2回以上やると精度が上がる

<短 報>
Performance of Rapid Antigen Tests to Detect Symptomatic
And Asymptomatic SARS-CoV-2 Infection



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 当たり前と言えば当たり前ですが、無症状のコロナ患者に48時間間隔で3回抗原検査をすれば
精度が上がるとの事です。
追加的の意見として、症状がある患者さんには48時間おいて2回目の抗原検査を勧めています。





私見)
 自宅での抗原検査が陰性でも、症状があり再検希望で来院される患者さんがおられます。
 症状や社会的環境により、本院での再検査を行っています。





コロナ抗原検査..pdf







posted by 斎賀一 at 18:19| 小児科