2020年03月23日

肺炎を心配して抗生剤を処方しなくても良い?

肺炎を心配して抗生剤を処方しなくても良い?
 
Antibiotic Use and Outcomes in Children
in the Emergency Department With Suspected Pneumonia
PEDIATRICS Volume 145, number 4, April



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 小児の救急外来(ED)で肺炎の疑いがある場合に、抗生剤を処方しても結果において差はなかった
との論文が、雑誌PEDIATRICSに掲載されています。

 肺炎の診断の基本(gold standard)は胸部レントゲンですが、小児の場合にやみ雲に撮るのには
抵抗があります。また、色々なガイドラインがありますがどれも十分には結果が出せていません。
しかもCDCによりますと、小児の場合にはレントゲンで肺炎と診断して入院をしても、細菌の同定が出来るのはたったの15%との事です。しかし抗生剤の処方は、入院前に既に88%されているそうです。
細菌性の肺炎の一番はマイコプラズマ症で、一般的な抗生剤では効果がありません。
つまり入院を必要としない肺炎の疑いの小児においては、細菌性の可能性は低く殆どがウイルス性で
抗生剤の処方は必要ないと推測されます。
発展途上国のアフリカでは、ペニシリンを服用した群とプラセボ群では、結果(outcome)は93%と同じ
とのデータもあります。


 本論文を纏めてみますと (注意点としてアメリカのEDは、日本の救急外来とは異なります。)

1) 対象は3~18歳の肺炎の疑いで受診し、レントゲンでは引き続き入院の必要性が無いと診断された
   小児を対象にしています。
   肺炎(下気道感染症)の疑いの定義は;咳、痰、胸痛、呼吸苦、過呼吸、胸部レントゲン異常です。
   (やや分かりづらいので下記の図をご参照ください。)




          20323-2.PNG



      
2) 337名が対象となりましたが、比較対象が出来る294名が最終的に抗生剤を服用する群と、
   服用しない群に振り分けられています。  (処方の抗生剤の種類は記載されていません。)
   主要転帰は治療の失敗; ED退院後の再入院、抗生剤の変更のための再受診
                    ED受診後、7~15日以内の抗生剤の変更

   二次転帰は保護者の観察で、患児のQOLの変化です。
   内容は; 診察時のSpo2、皮膚の色、capillary refill time、うめき声、頭のふらつき、
         陥没呼吸、呼吸音の変化、です。

3) 結果
   主要転帰は、抗生剤服用群と非服用群で差はありませんでした。
   再受診率も差がありませんでした。(服用群は3.4%対非服用群は3.4%)
   抗生剤の開始又は変更は、服用群で4.8%対非服用で6.1%です。
   二次転帰も両群で差はありませんでした。

4) 結論
   (レントゲンで入院の必要性が無いと判断された)肺炎疑いの小児では、抗生剤の服用は
   その後の転帰には影響がない。 (しかし、家庭内の経過観察が必要になる。)






私見)
 本論文を勝手に本院用に解釈しますと
 「胸部の聴診でやや喘鳴が聴き取れます。採血で炎症の程度を示すCRPが軽度上昇していますが
  肺炎の心配はあまりないので、レントゲンは今日は撮りません。
  プロカルシトニンも軽度の上昇ですので、抗生剤は必要ないようです。しかし今後5%程度は肺炎で
  検査が必要になるかもしれませんので、家庭内で十分注意して下記の点をチェックしてください。 
  ・水分の補給 ・顔色 ・呼吸数が増加していないか ・呼吸音の変化 ・頭のふらつき
  ・うめき声 ・capillary refill time ・陥没呼吸(看護師が説明します。)
  これらの症状があれば、来院又は電話連絡してください。」






小児 Antibiotic Use and Outcomes.pdf








 
posted by 斎賀一 at 18:33| Comment(0) | 小児科

2020年02月25日

劇症型心筋炎

劇症型心筋炎
 <業務連絡・職員の皆さんへ>
 
Recognition and Initial Management
of Fulminant Myocarditis
   Circulation. February 11, 2020 e69




 アメリカの学会AHAの雑誌Circulationより、劇症型心筋炎の認識を喚起させる総説が載っています
のでブログしてみます。
先ず前知識として「今日の臨床サポート」の表を下記のPDFに収めましたので、参照してください。


1) 劇症型心筋炎(FM)の臨床症状は多彩です。
   感染症や炎症疾患の徴候がある場合が一般的ですが、ない場合もあります。
   最も多い症状は、・呼吸困難 ・胸痛 ・不整脈 ・頻脈 ・ブロックです。
   (呼吸器感染症から呼吸困難とは、何やら新型コロナに似ているような気がします。)
   初診から劇症に増悪するのは、しばしば急な経過です。

2) 心電図
   心筋の浮腫のため、QRS波は低電位です。
   稀に左肥大の所見を呈する事があります。
   ST上昇の様に冠動脈疾患を思わせる事がありますが、多くは冠動脈の解剖学的な責任病変では
   ありません。
   ST低下は心外膜炎の所見を示します。
   心室性不整脈、伝導系のブロックが一般的です。

3) 血液検査
   トロポニンの増加は一般的に認められるが、正常の場合もあり除外は出来ない。
   BNPは多くの場合上昇している。

4) 心エコー
   ・左心室の拡張が無く心筋壁が肥厚(心筋の浮腫による)
   ・心外膜炎 (effusion)
   ・左心室の拡張は慢性化の所見。 時に収縮の場合もあり。
   ・部分的な壁運動障害(dysfunction)、右心室の壁運動障害

5) その他は本院の都合により省略

6) 特殊型
   ・lymphocytic myocarditis
    5%がウイルス感染症に関係している。
    水痘ワクチンによる報告もある。 (5/10000人)

   ・giant cell myocarditis
    比較的若い人が多いが、全体的には極めて稀な疾患
    25%に自己免疫疾患が基礎疾患としてある。
    心臓移植を1年以内に行うよう推奨されている。
    心臓ザルコイドーシスに組織的には類似しているが、肉芽腫は形成しない。

   ・acute necrotizing eosinophilic myocarditis
    若い人に多い。
    突然死があり50%は心移植が必要
    薬剤との関連性が指摘されている。 (本文表を参照)
    末梢血液で好酸球が多くは増加しているが、していない場合もある。
    心エコーでは心筋壁の肥厚、収縮機能低下

 
7) 抗がん剤との関係
   免疫関連の抗がん剤もあり。 (本文表を参照)

8) 私としての結論
   今まで健康であった人が、ある日突然、心筋炎となる。
   血液検査、心電図、心エコー共に決め手はない。
   先入観を捨てて、異常所見が少しでもあれば心筋炎を鑑別する。





私見)
 私が開業して間もない頃、化膿性扁桃腺炎の患者さんが来院しました。
 これから点滴を行うと説明しますと、今夜は夜勤で今から出勤だとのことです。
 仕事と健康とどっちが大事だと、私も若かったので説教をしました。
 「俺は先生みたいに恵まれた金持ちでない。単なる名ばかり店長で夜は俺しかいないんだよ。」
 カチンときた気持ちを少しは抑えて、良くならなければ点滴で来院するようにとだけ告げ、抗生剤を
 処方しました。
 その晩急変して、劇症型心筋炎の診断で亡くなられました。
 ご家族には血圧も測定していなかった事、心臓に関する所見の記載が無い事をお詫びしました。
 その後外来の待合室に自動血圧計を設置し、感冒でも全て私は血圧を測定するようにしています。

 新型コロナの感染拡大に対して、厚労省より指針が出るようです。
 実地医家の踏ん張りどころです。
 しかし、同時に新型コロナより怖い病気とも日々直面している事を肝に銘じて、診療に当たりましょう。
 この時期、本院での診療の流れの素案が、皆さんの協力で出来ています。
 厚労省の指針とすり合わせて再度検討し、来院患者さんにも協力をお願いしましょう。








心筋炎 circulation.pdf

劇症型心筋症 今日の臨床サポート.pdf













posted by 斎賀一 at 19:21| Comment(0) | 小児科

2020年02月22日

小児のワクチン・スケジュール 米国2020年

小児のワクチン・スケジュール 米国2020年
 
業務連絡用



 本年の18歳以下におけるワクチンのスケジュール表が、アメリカの雑誌Pediatricsに
発表になっています。(表はCDCにアクセス)
基本的には例年と変化はないようです。
特にcatch-upの場合はやや煩雑ですので、個別に保健センターに相談しながら、
従来通りに注意してください。



1 ワクチン 小児.pdf

2 0-18yrs-child-combined-schedule.pdf






posted by 斎賀一 at 15:04| Comment(1) | 小児科