2018年07月10日

糖尿病の診断:一回の採血での診断の意義

糖尿病の診断:一回の採血での診断の意義

 
Prognostic Implications of Single-Sample
Confirmatory Testing For Undiagnosed Diabetes
Ann Intern Med. doi:10.7326/M18-0091



0710.PNG



 糖尿病の診断の王道は75gr糖負荷試験だと思いますが、吐き気を呈する人や簡便さから、本院ではあまり積極的には行っていません。日本での診断のガイドラインでは欧米と歩調を合わせる形で、空腹時血糖とヘモグロビンA1cの組み合わせを推奨しています。基本的にはA1cは治療のコントロールを見る指標であり、空腹時血糖を診断の主体と捉えています。(詳細は下記のPDFを参照)

 今回、アメリカの雑誌Annals of internal medicineより、一回だけの採血で空腹時血糖とヘモグロビンA1cを同時に検査して、糖尿病を診断する提案がありました。


纏めてみますと

1) 2009年以降、ヘモグロビンA1cを診断に取り入れようとの傾向が多くなり、その方向で診断基準が
   作成されています。その正常値は6.5%以下となっていますが、これは糖尿性網膜症の発生との
   関係です。

2) 1987~1989年にARIC(atherosclerosis risk in communities)を受診した、まだ糖尿病と
   診断されていない14,348名が登録されました。
   ヘモグロビンA1cが利用出来るようになった1990~1992年にARICを2回受診した人を最後に選ん
   でいます。最終的には13,346人です。

3) ○ 確定型(confirmed) : 空腹時血糖が126mg/dl以上で、且つA1cが6.5%以上の人
   ○ 不確定型(unconfirmed) : 空腹時血糖か又はA1cが高値の人
                         実際は空腹時血糖だけが高い人が多くA1cだけが高値の人は
                         少なかったようです。
   ○ 糖尿病型 : 自己申告制で、糖尿病と診断されているか糖尿病の薬を服用している人

     以上に定義しています。

4) 結論的には
   確定型(confirmed)は経過5年では明白ではありませんが、15年経過すると97.3%で糖尿病の
   診断となっています。
   一方、不確定型(unconfirmed)では15年経過しても糖尿病の診断は71.7%にしかなりませんが、
   心血管疾患や腎障害(CKD)の発生は、確定型とあまり差はありませんでした。
   詳細はPDFのグラフをご参照ください。

5) 筆者は一回だけの採血でも診断価値はあり、また不確定型でも合併症の発生が多く、治療の介入を
   する事が出来るとしています。




私見)
 日本のガイドラインとほぼ同じですが、経過がハッキリしました。
 またUnconfirmedは糖尿病型とほぼ同じのようです。
 本院でも慢性疾患の患者さんで糖尿病を疑う場合は空腹時血糖(場合により食後血糖)とヘモグロビン
 A1cの同時測定を、年に1回は実施したいと思います。



 ◆参考書籍

  糖尿病治療ガイド 2014-2015 : 文光堂
  糖尿病治療のエッセンス 2017年版 : 文光堂
  最近の糖尿病の実地日常診療  medical practice vol.32 no.1 2015 : 文光堂





annal文献.pdf

糖尿病書籍.pdf











posted by 斎賀一 at 20:04| Comment(0) | 糖尿病

2018年07月03日

糖尿病治療薬のカナグルは下肢切断に無罪?

糖尿病治療薬のカナグルは下肢切断に無罪?
 
Canagliflozin (CANA) vs. Other Antihyperglycemic Agents
on the Risk of Below-Knee Amputation (BKA) for Patients
with T2DM–A Real-World Analysis of >700,000 U.S. Patients



0703.PNG



 以前より、糖尿病治療薬でSGLT-2阻害薬のカナグルについて、下肢切断の頻度が他のSGLT-2阻害薬よりも多いのではとの懸念が発表されていました。
 今回、アメリカのフロリダで行われた糖尿病学会での発表では、その心配はないようです。
SGLT-2阻害薬は心不全にも効果があり、メトグルコに並ぶ勢いで第一選択の薬剤となりつつあります。
そんな中、私のブログでも以前ご紹介しましたが、カナグルにおいて下肢切断の副作用が多いのではとの指摘がFDAからもありました。
今回の発表では、カナグルは他の糖尿病治療薬よりも心不全の発生頻度を抑制していましたし、問題の下肢切断に関しても他のSGLT-2阻害薬と同程度でした。下記のPDFのグラフをご参照ください。




私見)
 そうは言っても、糖尿病患者さん自身が下肢の循環障害を併発しやすい事と、SGLT-2阻害薬が脱水を誘発する危険がある事から、糖尿病患者さん全体に下肢の診察が重要です。





Flash.pdf

APPRISOR Image Viewer.pdf










posted by 斎賀一 at 20:33| Comment(0) | 糖尿病

2018年06月20日

本院における乳酸アシドーシス関連の検査方法

本院における乳酸アシドーシス関連の検査方法
        <常務連絡用>




  以前のブログ(2018-05-01、2018-05-11)で紹介しましたが、再度確認します。

1) 乳酸アシドーシスは、何らかの原因で乳酸が蓄積して生ずるアシドーシスです。
   基礎疾患にもよりますが、重症例(乳酸が5mmol/dl以上)では致死率が50%との報告です。
     タイプA : ショック状態か低酸素血症が存在するケース
     タイプB : 低酸素血症を伴わないケース。 本院で扱う疾患はこのタイプです。

   私のブログでも紹介しましたが、メトグルコを服用していない場合でも糖尿病患者で感染症、心不全、
   敗血症、肺炎を併発している場合に、乳酸アシドーシスを起こす可能性が指摘されています。
   糖尿病患者にはメトグルコ服用の有無に関らず、乳酸アシドーシスを想定しておく必要がありそう
   です。

2) タイプ B の場合は薬歴のチェックが必要です。
   アルコール、アセトアミノフェン(カロナールなど)、アスピリン、結核治療薬のヒドラ、そして
   問題のメトグルコ

3) 乳酸値が<2mmol/l(18mg/dl)は正常、
   2~5mmol/l(18~45mg/dl)は経過観察、
   >5mmol/l(45mg/dl)は即対応とガイドラインでは記載されています。
   本院では2mmol以上で当該薬剤の中止とします。

4) 検査センターからの報告では、乳酸値はmg/dlで表示されてきます。
   これを9で割った値がmmol/lです。
   つまりデータを9で割ってその値が2以上なら乳酸アシドーシスを疑います。

5) アシドーシスの診断は
   Na−Clが正常では36前後と仮定しますと、30以下をアシドーシスとします。
   イオン化カルシウムは正常値(2.41~2.72)の上限の2.72以上で、アシドーシスの可能性とします。
   以上の2点とカリウムで判断します。

6) 採血の注意点
   乳酸検査は特別な採血管で採血する。
   イオン化カルシウムは遠心分離を速やかに行い凍結保存する。




私見)
   疑う者は救われる!











posted by 斎賀一 at 18:51| Comment(0) | 糖尿病