2018年04月28日

糖尿病の心血管疾患に対するリスク・管理

糖尿病の心血管疾患に対するリスク・管理

Cardiovascular Disease and Risk Management: Review of the
American Diabetes Association Standards of Medical Care
in Diabetes 2018



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 米国の内科学会雑誌・Annalsより糖尿病の心血管疾患に対するリスク・マネージメントに関する総説
がでました。
色々な文献をバラバラに理解しているとリセットしたくなりますが、その様な意味合いがある論文と理解
しました。

纏めますと、

 1) 高血圧に関して
   
    ○ a; 家庭血圧の推奨。2回測定してその平均

    ○ b; 140以下が目標、無理なく130以下になればそれに越したことはない。

    ○ c; 食塩制限は1.5gr以下を推奨しているが、それ以下は推奨していない。

    ○ d; 外来血圧が140以上の場合は徐々に血圧を下げていく。
        160以上の時は直ぐに降圧薬を使用するか検討
        ARBかACE-Iを最大限まで増加する。特に蛋白尿が0.3gr/日以上の時は第一選択
        次に降圧利尿薬やカルシウム拮抗薬、更にセララやアルダクトンAも考慮

 2) 脂質異常症に関して

    ○ a; ライフスタイルの改善。特に中性脂肪とHDLに注意

    ○ b; 糖尿病が合併した場合は低用量のスタチンでなく中等度から始める。
        40歳以下で心血管リスクがあれば中等度のスタチン(メバロチン)
        を考慮
        40~75歳で心血管リスクが無ければ中等度(推奨A)
        75歳以上で心血管リスクが無ければ中等度(推奨B)
        40歳以下よりも75歳以上の方が心血管の罹患率が高いので、スタチンを投与すべき
        である。
        心血管疾患を罹患していて、糖尿病の場合は高用量のスタチン

    ○ c; ゼチーアも有効
        スタチンとフィブラート系の併用は効果が無く、副作用の心配が生ずるので避ける。

    ○ d; スタチンにより糖尿病を誘発するとの懸念があるが、極めてまれで有益性の方が勝る。
         認知症誘発との関係においてもエビデンスは少なく、有益性の方が勝る。

 3) 抗血栓薬に関して

    アスピリンは心血管疾患を12%減少。これは男性の方に効果ありの結果だが、女性の方には
    効果が少ない。しかし逆に脳卒中では女性に効果がある。

 4) 冠動脈疾患

    血圧降下薬のACE-IとARBを考慮
    以前に心筋梗塞の既往があれば、βブロッカーを少なくとも2年間は継続
    糖尿病と冠動脈疾患が合併していれば、ライフスタイルの改善とメトグルコの処方を始めるべき
    である。続けてSGLT-2阻害薬を追加する。(ジャディアンス、カナグル)

 5) 私なりに意訳してみました。
    糖尿病は心血管疾患のリスクの一つです。よってその管理は一段と上になります。
    血圧はARBが第一選択です。特に、蛋白尿があれば尚更です。
    脂質異常を伴っていれば高齢者の関係なく、あまねくスタチンを処方すべきです。
    心疾患を現に合併していたら、二次予防薬も併用していきます。
    その際、糖尿病薬としてメトグルコに追加するのはSGLT-2阻害薬を推奨します。
    (簡単に纏めすぎたでしょうか?)



            0428-2.PNG



私見)
 私の最も尊敬する右翼の論客が自栽死しました。大言壮語していたわりには何ともがっかりして
しまいました。
 市井には中庸を得て名もしれず、立派な人生をおくる人が多いのに感嘆する事がありますが、
医療従事者の一人として真ん中にいる事はなかなか大変です。




annals dm.pdf


プレゼンテーション1.pdf













posted by 斎賀一 at 17:00| Comment(2) | 糖尿病

2018年04月23日

U型糖尿病にSGLT-2阻害薬が優位

U型糖尿病にSGLT-2阻害薬が優位
 
Association Between Use of Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitors,
Glucagon-like Peptide 1 Agonists, and Dipeptidyl Peptidase 4 Inhibitors
With All-Cause Mortality in Patients With Type 2 Diabetes



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 英国の雑誌JAMAより、SGLT-2阻害薬とインクレチン関連薬(DPP-4阻害薬とGLP-1作動薬)との比較検討をした論文が掲載されています。
本院でも、今後の治療展開にもなりますので纏めてみました。


1) 236のnetwork meta解析です。U型糖尿病患者の176,310人を対象にしています。

2) メトグルコを基準に服用しています。
   それにSGLT-2阻害薬として、カナグル、ジャディアンス
   DPP-4阻害薬として、ジャヌビア、オングリザ
   GLP-1作動薬として、オゼンピック、以上の3種類を追加してガチンコ勝負をしています。

3) 結論的には全死亡、心血管疾患において、3種類の中でSGLT-2阻害薬が優位でした。
   その程度は絶対的危険率の低下として見ますと

   ・SGLT-2阻害薬は全死亡で1%、心血管疾患で0.8%の低下。
   ・GLP-1作動薬は全死亡で0.6%、心血管疾患で0.5%の低下でした。

   どの程度の意味か私には分かりませんが、血圧降下薬で全死亡の低下率は0.5%、コレステロール
   治療薬で0.9%です。 (降下率の算定は異なります。)
   それだけの効果があるとのことです。
   最初の数か月でその効果は出ており、この事から糖尿病の治療効果そのものと言うよりは、SGLT-2
   阻害薬の、心不全に対する治療効果が大きく作用していると推測しています。

   一方で、DPP-4阻害薬は心不全にマイナスの効果でした。
   この事が、結果的に不利益に繋がったとしています。
   また、同じインクレチン関連薬としてもDPP-4阻害薬の方がGLP-1阻害薬よりも作用が弱く、半減期
   も短いために優位性で劣っていたとしています。

   GLP-1作動薬は脳梗塞には優位でした。

4) SGLT-2阻害薬の心不全に有効に働く事と副作用が少ない事が、この結果に繋がったと解析して
   います。
   しかし低血糖のリスクは3種類のいずれも同じ、としています。
   この3種類とも低血糖のリスクは少ないと以前から言われていますが、今回の論文では色々な因子が
   含まれている結果、としています。 (heterogenous)
   SGLT-2阻害薬の尿路感染症の頻度は心配ないとのことです。
   また、下肢切断に関してはジャディアンスは関係ないようです。 (neutral)

5) 効果の比較は下記のPDFを参照




私見)
 世の中はSGLT-2阻害薬の攻勢がかかっている感じです。
 こういう時こそ慎重さが必要です。
 しかし、インクレチン関連薬に関しては再考が必要です。
 特にGLP-1作動薬は副作用が嘔気のため使用を躊躇していましたが、オゼンピックの出現で本院でも
 採用の方向です。
 改めてインクレチンに関して、下記のPDFで再勉強しましょう。
 尚、オゼンピックの本院でのマニュアルをPDF化しましたので、職員の皆さん検討してください。



 
◆ 参考文献

  いちばんやさしい薬理学 : 成美堂
  糖尿病診療ハンドブック : 中外医学社
  Medical practice : vol.34 no.9 2017
  DIABETES UPTODATE : vol.4 no.4 2015




本論文.pdf

本論文のグラフ.pdf

インクレチンのまとめ.pdf

インクレチンの総説.pdf

オゼンピックの使用マニュアル.pdf

1オゼンピック.pdf

オゼンピック.pdf

















posted by 斎賀一 at 20:06| Comment(2) | 糖尿病

2018年04月14日

糖尿病患者にβ-ブロッカーは注意

糖尿病患者にβ-ブロッカーは注意
 
Risk of All-Cause Mortality in
Diabetic Patients Taking β-Blockers



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 従来から、β―ブロッカーは糖尿病を誘発するので注意、とされていました。
しかし以前の私のブログで、心不全を合併した糖尿病患者にはβ―ブロッカーの有用性を示す論文を紹介しています。(2017-11-25)俄かには信じられないとコメントを書きましたが、今回は真逆の論文が日本の研究者から出たようです。



纏めますと

1) 糖尿病患者2,840人を対象として、その内β―ブロッカーの服用者、697人
   糖尿病でない14,684人で、その内β―ブロッカーの服用者、1,584人を比較しています。

2) 死亡率を調べますと
   ・糖尿病患者でβ―ブロッカーの服用者は、40.6人/1,000人/年
   ・服用していない人は、17.1人/1,000人/年
   ・非糖尿病患者でβ―ブロッカーの服用者は、13.8人/1,000人/年
   ・服用していない人で、5.9人/1,000人/年

3) バイアスが係りますので、解析を行い危険率を調べますと
   ・糖尿病患者で服用の危険率は、1.49
   ・β―ブロッカーの種類では選択的β1で、危険率は1.60
    特異的β(メインテート、セロケン、アーチスト、心不全等は本院でもこれらを主に処方します。)
    では、1.55 でした。
   ・非糖尿病患者では服用の危険率に差は無く、0.99でした。

4) 糖尿病があり心不全もありでの服用の危険率は1.64ですが、非糖尿病で心不全の場合は、危険率
   は0.68で有効との結果です。

5) β―ブロッカーが全て有効とのデータはARB、PTC、NOAC、強力スタチンが出現する前のことで
   あり、β―ブロッカーの低血糖誘発、血管硬化、体重増加などの副反応の方が現在では注目すべき、
   と論者は述べています。





私見)
 本院ではアーチストだけは大丈夫だと認識していましたが、糖尿病患者さんへのβ―ブロッカーは慎重さ
 が必要なようです。





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Risk of All-Cause Mortality in Diabetic Patients Taking β-Blockers - Mayo Cl.pdf

CardiovascularDrugFile2Ep236-241.pdf
















 
posted by 斎賀一 at 14:28| Comment(1) | 糖尿病