2022年12月06日

糖尿病治療薬・フォシーガの心不全に対する効果

糖尿病治療薬・フォシーガの心不全に対する効果
 
Effect of Dapagliflozin on Cause-Specific Mortality in Patients
With Heart Failure Across the Spectrum of Ejection Fraction



41206.PNG

     

 糖尿病治療薬のSGLT-2阻害薬のフォシーガが心不全に対して効果があり、最近では収縮率の
保たれている心不全(HFpEF)にもそれなりの結果が出ていることは、私の以前のブログでも
紹介しました。しかし、心不全の層別化と効用に関して、具体的には不明確でした。
 今回雑誌JAMAに、心不全を横断的に調査したメタ解析が載っていましたのでブログします。
DAPA-HF研究(駆出率40%以下)とDELIVER研究(駆出率40%以上)の二つの研究からの
論文です。


1) 対象者はNYHA分類のU〜Wもしくは、血液検査のBNPの上昇です。
   主要転帰は
   ・心不全の増悪(入院もしくは救急外来受診)  ・心疾患による死亡です。 
   フォシーガ10mg/日群とプラセボ群に振り分けています。

2) 結果は
   11,007人が登録し、死亡した人は1,628人でした。(平均年齢は71.1歳、70%が男性)
   死亡例の中で心疾患が872人(53.5%)、非心疾患が487人(29.9%)です。
   心疾患の内289人(33.1%)が心不全、441人(50.6%)が突然死、
   69人(7.9%)が脳卒中、心筋梗塞が47人(2.9%)でした。
   フォシーガ群とプラセボ群の比較は、下記のグラフをご参照ください。

3 )結論
   フォシーガ群は心不全の全ての層に効果がありましたが、特に心不全の増悪と突然死に
   関して、リスクを軽減していました。

4) 討論
   突然死の原因としては不整脈が想定されますが、現実に心不全から不整脈を誘発し突然死
   が発生する可能性は少なく、腎機能の低下、肺高血圧、左室機能低下が関与している
   ため、それに対してフォシーガが優位に働いたと想像できます。
   非心疾患の死亡にはフォシーガの効果はありませんでしたが、様々な要素が加わるためと
   しています。





       41206-2.PNG

  
    (上の図から、非心疾患の死亡は駆出率とはあまり関係ないようです。
     しかし、心不全患者さんの死亡原因は、多くが突然死と心不全の増悪です。
     いかに心不全の管理が重要かを示しています。)





       41206-3.PNG   

   
       上の図で左に変位していれば、フォシーガが優位です。






私見)
 高齢者の患者さんからSGLT-2阻害薬は栄養分が出て行ってしまい、シワシワになって
 しまったと訴えられました。
 心不全も合併しているので服用を続けてと説明しましたが、フォシーガの5mgは心不全の
 適応でないのが欠点でしょうか。







フォシーガ.pdf









posted by 斎賀一 at 18:32| 糖尿病

2022年10月07日

新しい血糖降下薬のコストパフォーマンス

新しい血糖降下薬のコストパフォーマンス

 <短 報>
First-Line Therapy for Type 2 Diabetes With Sodium–Glucose Cotransporter-2
Inhibitors and Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonists


41007.PNG



 アメリカの糖尿病ガイドラインでは、第一選択薬はメトグルコからSGLT-2(以下省略記載)
とGLP-1にシフトする勢いです。
 今回雑誌Annal Internal Medicineから、そのコストパフォーマンスに関する論文が掲載
されています。


1) 生涯費用でメトグルコと比較しますと、SGLT-2は$43,000、GLP-1は$49,000の
   増加となります。

2) 寿命の効果はメトグルコと比較しても、SGLT-2でたったの3か月、GLP-1で4か月の
   延長にしかなりません。

3) 但し、新しい薬剤は糖尿病の合併症を低下させます。
   それによるコストの削減による効果は明白です。
   其々の合併症の生涯における発生頻度では
   心不全;
    メトグルコは14.2%、SGLT-2は13.2%、GLP-1は13.1%
   虚血性心疾患;
    メトグルコは18.8%、SGLT-2は17.3%、GLP-1は17.2%
   心筋梗塞;
    メトグルコは27.0%、SGLT-2は26.0%、GLP-1は25.5%
   脳卒中;
    メトグルコは17.2%、SGLT-2は16.3%、GLP-1は16.2%
   その他の細動脈疾患、例えば下肢切断、腎機能低下、網膜症の合併症は、3剤とも同じ
   発生頻度でした。

4)結論
  臨床家にとって、新しく登場したSGLT-2とGLP-1の心血管系疾患に対する効果は魅力的
  です。
  しかし常にそのコストを勘案し、患者に適した薬剤を選択する事は必要です。








私見)
 糖尿病の治療の進歩は素晴らしいもので、選択肢が広がっています。
 高齢者の自己負担が上がります。当然ながら実地医家もコストパフォーマンスを念頭に処方
 しなくてはなりません。ただ行きつく先は労働力としての国民のコストパフォーマンスに
 ならない事を後期高齢者は願います。







First-Line Therapy for Type 2.pdf














posted by 斎賀一 at 19:52| 糖尿病

2022年10月05日

U型糖尿病の血糖降下薬・微小血管と心血管疾患

U型糖尿病の血糖降下薬・微小血管と心血管疾患
 
Glycemia Reduction in Type 2 Diabetes −
Microvascular and Cardiovascular Outcomes
[N Engl J Med 2022;387:1075-88]


41005.PNG
  
   

 糖尿病とは尿に糖が出る事ではなく、高血糖により血管の病変が引き起こされることです。
端的に言えば、糖尿病とは血管の病気です。糖尿病の慢性合併症としての血管病変には、
細動脈とやや太めの動脈の二種類があります。
細動脈病変が糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性末梢神経障害があります。
中等度から大血管病変としては、MACE(主要心血管イベント)があります。

 今回、雑誌NEJMに4種類の血糖降下薬がこれらの血管病変にどのような差異をもって効果が
あるかを調べた論文が掲載されています。
前回のNEJMのGRADE研究の延長論文です。


1) 方法
   前回のブログで紹介しました論文と同じ内容で、2型糖尿病患者を対象とし、メトグルコに
   加えて4種類の血糖降下薬のいずれかを投与した場合の、ヘモグロビンA1c値7.0%未満の
   達成と、維持における相対的有効性を評価しました。
   参加者を、インスリングラルギン U-100(以下,グラルギン;持効型インスリン)群,
   グリメピリド群(アマリール),リラグルチド群(GLP-1;ビクトーザ),
   シタグリプチン群(DPP阻害薬;ジャヌビア)に無作為に割り付けました。
   (前回のとは異なり、血管病変を調べていますから、最初から転帰は二次的転帰となり
   ます。)
   事前に規定した、微小血管疾患と心血管疾患に関する二次的転帰は、高血圧・
   脂質異常症、尿中アルブミンの中等度、または高度の上昇が確認されるか、
   又は推算糸球体濾過量60mL未満、ミシガン糖尿病性神経障害スクリーニング法(MNSI)
   で評価した糖尿病性末梢神経障害、主要血管イベント、死亡などとしています。

2) 結果
   5,047例が登録され、平均5.0年の追跡を行っています。
   高血圧と脂質異常症の発生、および微小血管転帰に関しては、薬剤の群間に大きな差は
   なく全体的な発生率(すなわち100人/年あたりのイベント数)の平均は、尿中アルブ
   ミンの中等度の上昇が2.6、尿中アルブミンの高度の上昇が1.1、腎障害が2.9、
   糖尿病性末梢神経障害が16.7でした。MACE(全体的な発生率 1.0)、
   心不全による入院(0.4)心血管系の原因による死亡(0.3)、全死亡(0.6)に関しては、
   薬剤の群間で差はありませんでした。
   あらゆる心血管疾患の発生率は、グラルギン群で1.9、グリメピリド群で1.9、
   リラグルチド群で1.4、シタグリプチン群で2.0であり、わずかな差が認められました。
   1つの治療を、その他3つの治療を統合した結果と比較した場合、あらゆる心血管疾患の
   ハザード比は、グラルギン群1.1(95%信頼区間 [CI] 0.9〜1.3)、
   グリメピリド群1.1(95% CI 0.9〜1.4)、リラグルチド群0.7(95% CI 0.6〜0.9)、
   シタグリプチン群1.2(95% CI 1.0〜1.5)でした。

3) 考察
   4種類の薬剤による、A1cに対する効果は異なります。
   U型糖尿病はベースラインとして、高血圧、脂質異常症を合併しています。
   しかも本研究の当初には診断されていなくても、90%以上の参加者が研究の過程で臨床家
   から合併症を指摘されています。
   リラグルチド群は高血圧に比較的有効に作用していますが、グラルギン群はインスリンの
   特徴により、腎でのナトリウム再吸収に作用して血圧に関しては負の効果となります。
   細動脈疾患に関しては、4種の薬剤に大きな差異はありませんでした。
   従来の研究では、血糖の降下が細動脈疾患の悪化に繋がるとのデータがありましたが、
   本研究では血糖を細かく分類することにより、正確さを実証しています。
   心血管疾患(MACE)の発生は比較的低率でした。
   これは本研究で心血管疾患に対するマネージメント、つまり治療が十分になされていた
   ためと思われます。
   細動脈病変においては4種の薬剤でその差異はありませんでしたが、MACE(心血管疾患)
   においては相違があるようでした。

4) 結論
   2型糖尿病患者において、微小血管合併症と死亡の発生率には4種類の薬剤で大きな差は
   なかったが、あらゆる心血管疾患の発生率には群間差がある可能性が示されました。


    Glargine; 長時間作用インスリン
    Glimepiride; アマリール
    Liraglutide; GLP-1 ビクトーザ
    Sitagliptin; DPP阻害薬 ジャヌビア





       41005-2.PNG


       41005-3.PNG




       41005-4.PNG

       41005-5.PNG








私見)
 細動脈病変に関しては、あまりにも厳格な血糖管理(血糖の上げ下げ)は却ってマイナス効果
 があり大血管病変のMACEは血圧、脂質などの総合的管理が影響するため、血糖のみのファク
 ターは結果にあまり反映されないとされていました。
 しかし、今回の論文は明言を避けていますが、それにやや反論じみた内容です。
 現在はSGLT-2阻害薬とGLP-1が主役になりつつあります。
 更なる研究が待たれます。
 一般的な知識として、旧版ですが教科書のハリソンを下記に掲載します。
 店頭で立ち読みしますと、新しい版では内容が刷新されていました。







ハリソンより1.pdf











posted by 斎賀一 at 18:46| 糖尿病