2019年03月12日

PPI(胃酸分泌抑制剤)は糖尿病を改善する?

PPI(胃酸分泌抑制剤)は糖尿病を改善する?
 
The Effect of Proton Pump Inhibitors on Glycemic
Control in Patients with Type 2 Diabetes



0312-2.PNG

 


 やや疑問符の付く文献なので簡単に纏めてみます。


1) U型糖尿病患者の2,525名が対象
   平均年齢は67歳、HbA1cの平均値は7.3、 2005~2011年の調査です。
   195名にPPIを処方しています。
   糖尿病薬はPPI群もコントロール群も、同じように服用しています。
   効果を見るためにPPI服用開始後、少なくとも90日間は服用しています。

2) 両方の群で糖尿病の治療はしているので、当然ながらA1cは低下しています。
   PPI群では低下率が0.32%、コントロール群で0.27%でした。

3) 説明として、PPIにより胃酸が低下して、その結果ガストリンが増加する。
   このガストリンが膵臓のインスリン分泌に関与するβ細胞を増殖したり、刺激したりする事により
   血糖の改善がみられるとしています。





私見)
 この論文と反対の結果も見られるようです。
 つまり、現時点での一般的な見解としてはあまりPPIは影響無いかもしれません。
 なぜ本論文をブログに取り入れたかと言いますと、PPI逆風の中でチョットいい話では?と思ったので。





ppi dm.pdf










posted by 斎賀一 at 20:40| Comment(0) | 糖尿病

2019年03月05日

糖尿病治療薬のフォシーガは中等度腎機能低下にも適応拡大・FDAより

糖尿病治療薬のフォシーガは中等度腎機能低下にも適応拡大・FDAより
 


0305.PNG




 糖尿病治療薬のSGLT-2阻害薬であるフォシーガに対して、アメリカのFDAが腎機能中等度低下者にも
その適応拡大を許可しました。

 ・従来はGFR(腎機能)が60まででしたが、今回の許容範囲は45としています。
  この場合にフォシーガが10mgで調査しています。
 ・対象はGFRが45から60の軽度腎機能低下で、U型糖尿病患者です。
  フォシーガ10mgを投与しています。
 ・結果は、24週間服用しプラセーボと比較して、ヘモグロビンA1cが0.35%低下、
  体重低下が1.43%、空腹時血糖低下が16.58mg/dl、収縮期血圧の低下が3.1mmHgでした。





私見)
 フォシーガに限らず他のSGLT-2阻害薬の適応欄には、“中等度腎機能低下の場合は慎重投与” と
 なっていますが、この報告から類推するに、eGFRが45までは他のSGLT-2阻害薬も適応範囲と考え
 られそうです(?)
 GFRに関しては下記のPDFをご参照ください。
 クレアチニンで計算しますと低めに出る印象です。
 SGLT-2阻害薬を最初に処方する際には、シスタチン-Cの方が良いかと思っています。





1 sglt2 フォシーガ ckd.pdf

2 フォシーガ.pdf




     3 GFR.PNG



4 SGLT2阻害薬一覧.pdf













posted by 斎賀一 at 20:20| Comment(1) | 糖尿病

2019年01月29日

糖尿病治療薬SGLT-2阻害薬のフォシーガと心血管転帰

糖尿病治療薬SGLT-2阻害薬のフォシーガと心血管転帰
 
Dapagliflozin and Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes
  n engl j med 380;4 nejm.org January 24, 2019



0129.PNG




 U型糖尿病はアテローム性心血管疾患、心不全、慢性腎疾患(CKD)に対してリスク因子です。
しかしU型糖尿病においては、心不全と冠動脈疾患とはそれぞれが独立した疾患と捉える必要が有るとの事です。とはいえU型糖尿病における心不全の治療に関しての明白なエビデンスはありません。
一見独立した疾患のアテローム性心血管疾患、慢性腎疾患、心不全は総合的な見地からの治療戦略が重要です。

 今回雑誌NEJMに、糖尿病治療薬であるフォシーガの心血管疾患の効果について掲載されていましたので纏めてみました。 (DECLRE-TIME58)


1) U型糖尿病患者でアテローム性心血管疾患またはそのリスクを有する例を、フォシーガを投与する
   群とプラセボを投与する群に、無作為に割り付けました。
   登録の基準は40歳以上のU型糖尿病、ヘモグロビンA1cが6.5~12.0、腎機能のGFRが60以上、
   アテローム性心血管疾患のリスクを2つ以上有する人か、(高血圧、脂質異常症、スタチン等服用、
   喫煙)既にアテローム性心血管疾患を有する人(虚血性心疾患、虚血性脳血管疾患、末梢動脈
   疾患)です。
   下記のPDFのsuppleをご参照ください。
   主要転帰は、MACE(主要有害心血管イベント;すなわち心血管死亡・心筋梗塞・虚血性脳卒中)
   心不全としています。
   副次的転帰は、腎転帰(腎機能のGFRが40%以上低下して60mL/分未満になる、新規末期腎不全
   の発生、腎臓または心血管が原因による死亡)と、全死因死亡としています。

2) 17,160 例を中央値4.2年間追跡し、評価しました。
   内訳は6,974名(40.6%)が既にアテローム性心血管疾患を有する人、10,186名(59.4%)がアテ
   ローム性心血管疾患のリスクを2つ以上有する人です。

3) 結果は、フォシーガによって MACE 発生率は低下しなかったが、(フォシーガ群 8.8% 対 プラ
   セボ群 9.4%、ハザード比 0.93、統計学的に信頼区間が広いために、偶然の結果かもしれないと
   しています。)心血管死亡または心不全による入院の発生率は低下した。(4.9%対5.8%、ハザード
   比0.83)
   詳細は下記のPDFのグラフをご参照ください。
   腎イベントはフォシーガ群の 4.3%とプラセボ群の 5.6%で発生し、(ハザード比 0.76)
   糖尿病ケトアシドーシスの発生頻度は、フォシーガ群のほうがプラセボ群よりも高く、(0.3%対
   0.1%)レジメンの中止となっています。
   結論として、フォシーガ治療によってMACEの発生率は、プラセボと比較して高くも低くもならなかった
   が、心血管死亡または心不全による入院の発生率は低下した。

4) 考察
   経過中に1,500人がMACEを発症し、900人が死亡しています。
   ベースラインでは、殆どの人が心不全の既往はありませんでした。その事からも、フォシーガには
   新たな心不全の予防効果があったことを証明しています。
   更に心不全に特化した研究も進行中との事です。
   同様にベースラインでのCKDや心血管疾患の有無に関わらず、経過において腎機能の悪化は予防
   出来ています。尿細管-糸球体のフィードバックの改善が関与しているとしています。
   以前発表のEMPA-REG研究と異なる点は、本研究では腎臓の保護作用を特定的に見るために
   腎機能低下患者(GFRが60以下)を除外している点です。
   副作用としての下肢切断、脳卒中、骨折の発生はプラセボと同等でした。
   ケトアシドーシスは増加していましたが、頻度は0.1%/年と極稀でした。





私見)
 フォシーガには心不全や腎不全の予防効果がありそうです。
 他のSGLT-2阻害薬も同様かと思いますがその点は識者に任せるとして、稀ながらと言えどもケトアシ
 ドーシスには注意してまいります。
 (職員の皆さん、ケトアシドーシスの検査に関しては、以前のブログを参照してください。)
 取りあえず本院では、60歳以上のU型糖尿病で高血圧を合併、し心負荷(IVCDが増大傾向)が心配
 な患者さんには、フォシーガも選択枝でしょうか。





論文より.pdf

nejmoa1812389_appendix.pdf










posted by 斎賀一 at 22:14| Comment(1) | 糖尿病