2021年03月12日

好酸球性胃腸炎

 好酸球性胃腸炎

  <院内勉強


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 最近、好酸球性胃腸炎が見られるようになりました。
以前は好酸球性食道炎が主でしたが腹水を伴う例や小児の疑い例も散見され診断に苦慮しています。
色々な文献より勉強して纏めてみました。好酸球性食道炎に関しては下記のPDFを参照ください。



好酸球性胃腸炎

 • 好酸球性胃腸炎を疑った場合、積極的に内視鏡および生検を⾏い、診断をつけることが推奨される。
 • 腹部超音波、CTスキャンで消化管壁の肥厚や腹水の有無を確認することが推奨される。
 • 好酸球性胃腸炎は、消化管壁への好酸球浸潤を特徴とする、原因不明の稀な疾患である。
 • 病変は胃、十二指腸、小腸などに好発する。食道や大腸にも病変を認める場合がある。
 • 小児期から⾼齢者高齢者まであらゆる年齢層に生じるが、20歳代から50歳代の年齢に好発する。


問診・診察のポイント

 • アレルギー疾患の有無を確認する。
    例:喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹
 • 特定の食事摂取との因果関係の有無を確認する。
 • 体重減少、栄養障害の有無を確認する。
 • 腹痛、悪心嘔吐、腹部膨満などの症状の有無を確認する。
 • 血便、下痢などの症状の有無を確認する。
 • 腹水の有無を確認する。


症状:

 • 典型例ではアレルギー疾患を有する患者が、腹痛、下痢などの消化器症状を訴え、末梢血好酸球
  増多を認めた場合、本症を疑う。
  実際にはアレルギー疾患のない例や、末梢血好酸球増多のない例もある。
  具体的には、約半数の症例でアレルギー疾患を認めていたとの報告がある。
  障害を受ける部位により、症状が異なる。粘膜層に病変を有すると、腹痛、下痢を認める。
  粘膜層に広範囲に病変がある場合や長期罹患例は貧血、栄養障害、体重減少を認める。
  小児では発育障害を認める。また、蛋白漏出性胃腸症や消化出血を呈することもある。
  筋層に病変を有する腸管壁肥厚、硬化、運動異常をきたし、嘔気、嘔吐、腹痛、腹部膨満などの
  消化管狭窄、閉塞症状を起こす。
  漿膜に病変を有する場合は、全層性病変をきたしていることが多い。


血液検査:

 • 参考所見として、末梢血好酸球増多を認めることがある。(約2割の症例)
  また、自己免疫またはアレルギーの機序も考慮されるため、血清IgEの評価を⾏う。
 • 腹水を認める例では、腹水中の好酸球増多を確認することは、診断上重要である。
 • 好酸球増多を認めた場合は、HIV、リンパ腫、寄生虫疾患、副腎機能不全、IgE、IgM、IgGなどの
  評価を行い、他に原因がないことを確認する。


内視鏡検査:

 • 下記の消化管内視鏡検査により原因不明のびらんを観察した場合、確定診断のためには消化管
  粘膜の生検を行う。
  生検の結果にて、消化管への好酸球浸潤を20/HPF以上確認することで診断となる。
  なお、好酸球そのものは非特異的な所⾒であり、必ずしも好酸球性胃腸炎を示唆しない。


原因疾患・合併疾患

 • 喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹などのアレルギー性疾患を合併することが多い
  ため、各々の疾患の有無を鑑別する。
 • 末梢血好酸球増多、血清IgE⾼値、腹水好酸球増多などは、診断上有用である


治療
ポイント:

 • 食事制限、補液、対症的な投薬治療を行う。
 • 多くはステロイド治療の適応となる。


食事摂取を制限:

 • 症状の程度に応じ、食事摂取を制限する。
  具体的には、症状の軽いものでは粥食とし、症状が強いものは水分摂取のみ、あるいは絶飲食と
  する。
  必要に応じて適宜補液を行う。長期例や重症例は中心静脈栄養も考慮する。


症状治療:

 • 酸分泌抑制薬や、粘膜保護薬、副交感神経遮断薬、制吐薬、整腸薬などの薬物を適時使用し、
  症状改善に努める。


ステロイド投与:

 • 上記加療で自然軽快することもあるが、ステロイド投与が有効であることが多い。
  通常2週間以内に症状の改善が見られる。
  投与量は20〜40mg/日で開始することが多く、40mg以上を投与するときは、入院を検討する。
 • ステロイド治療を行った例は、症状・所見消失後ステロイド減量を行う。
  減量に伴う再発の報告もみられるため、数カ月かけて外来でステロイド減量を⾏う。
  症例によっては、ステロイド少量の長期維持療法が必要になる場合もある。
 • 好酸球性胃腸炎の患者には、ステロイドの投与が⾏われることが多いが、投与量、減量スピード、
  中止の時期、治療抵抗例に対する対応、再発再燃時の対応については⼀定の見解はない。


難治症例の治療:

 • ステロイド治療で症状改善しない場合、推奨される治療法はない。
  他疾患(例:進行胃癌、消化管悪性リンパ腫、癌性腹膜炎など)を好酸球性胃腸炎と誤診して
  いないかどうか、再度よく鑑別診断を行う。
 • 消化管穿孔例や、消化管狭窄の強い例では外科的治療を念頭に置く。




◆参考文献

 ・好酸球性消化管疾患の概念と取り扱い    雑誌  胃と腸   医学書院
 ・画像でみぬく消化器疾患 大腸    医学出版社
 ・画像でみぬく消化器疾患 上部消化管    医学出版社
 ・好酸球性食道炎の診断と治療    雑誌  胃と腸   医学書院
 ・Medical Practice V.36  N.9 2019 1451
 ・今日の臨床サポート    いつものコピペごめんなさい







私見)
 最近、ガイドラインも出ていますので下記に掲載します。
 好酸球性食道炎と好酸球性胃腸炎は同じカテゴリーだと思いますが、本院でのアプローチは異なり
 ます。  
 また、好酸球は結果かもしれませんが、それが原因ともなり悪循環の可能性もあります。
 症例により好酸球増多が見られない場合もかなりある印象です。
 本院では、現在は下記の様に考えています。

  ・逆流性食道炎を疑ったら胃カメラを実施
   食道に白斑や縦走ひだがあれば好酸球性食道炎を疑い生検
  ・慢性の胃腸症の症状では胃カメラ、大腸ファイバーを実施し微細な所見でも生検
  ・小児の長引く消化器症状では、好酸球性胃腸炎も想定し末梢血の好酸球を測定し、アレルギーの
   診断も行う。
  ・好酸球増多を認めたら、鑑別に好酸球性消化管疾患を考える。








1 好酸球性胃腸症 - コピー.pdf

2 好酸球性食道炎コピー.pdf

3 好酸球性消化管疾患 ガイドライン.pdf

4 MP 好酸球性胃腸炎.pdf













posted by 斎賀一 at 18:42| Comment(1) | 消化器・PPI

2021年02月01日

結腸憩室炎のガイドライン・medscapeより

 
結腸憩室炎のガイドライン・medscapeより
 
Practice-Changing Pearls From New Diverticulitis Guidelines



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 新しい結腸憩室炎のガイドラインについての簡単な説明が、medscapeに掲載されています。
要点が記載されていますので、それをブログにしてみます。


1) 継続的な治療にもかかわらず症状がくすぶり続ける人は(smoldering)5%程度います。
   以前のガイドラインでは放射線の曝露の問題からCTの使用は限定的とされていましたが、本ガイド
   ラインからは診断確率と病状の進展に対する評価から、早期のCT検査も選択すべきとされて
   います。
   大腸内視鏡検査は、以前は炎症の消褪を待ってからが望ましいとされ6〜8週間後を推奨して
   いましたが、今回は症状が軽快し炎症が収束すれば、4〜6週での検査を勧めています。
   もしも本患者が以前に精度の高い大腸検査を実施していれば、繰り返しての大腸内視鏡はしなくても
   よいとしています。

2) 全身症状が悪い人、フレイルの人、炎症所見のCRPの高値や白血球増多が認められる場合は別
   ですが原則としては、抗生剤の投与をしないで経過観察でもよい。

3) 赤肉を中心とした欧米食から、魚や野菜中心の地中海食は憩室炎を30%減少させます。
   ナッツ、種子、ポップコーンは憩室の中に入り込んで炎症を引き起こすとされていましたが、これは
   迷信で証拠はありません。
   積極的な運動、体重の減少、ダイエット、禁煙、鎮痛解熱剤の中止(心血管疾患における少量アスピ
   リンの服用は例外)は憩室炎のリスクを軽減します。
   ただし遺伝的背景も約50%認められています。

4) 潰瘍性大腸炎の治療薬であるサラゾピリン、プロバイオティクス、リファンピシンの有効性はそれ程
   ではないようです。
   (この点に関しまして、uptodateより引用します。更に下記に関連文献を添付します。)




Mesalamine – Based upon the theory that chronic inflammation plays a role in diverticulitis, anti-inflammatory agents, such as mesalamine, have been used to treat diverticulitis [75-79]. A 2017 Cochrane systematic review and meta-analysis of seven randomized trials, however, found no evidence of an effect when comparing mesalamine with control for prevention of recurrent diverticulitis (31.3 versus 29.8percent; relative risk 0.69, 95% CI 0.43-1.09; very low quality of evidence) [80]. Therefore, we do not suggest mesalamine to prevent recurrent diverticulitis [30]. There is even less evidence to support the use of other agents such as rifaximin [81] and probiotics [82].





5) 憩室炎の再発は最初の年で8%、10年で20%と言われています。
   2回の再発例では次の年で18%、10年で55%が再発します。
   3回の再発例の場合は、その後3年以内に40%も再発します。
   再発の頻度が増す程に、その後の再発率は上がります。

6) 待機的手術の適応は個々の症例によります。
   手術した場合は5年後の再発は15%ですが、内科的治療群では51%です。
   また、手術しても症状は5年間で25%も継続してあるとの事です。
   手術が万能薬ではありません。






私見)
 本院で推奨していたサラゾピリン少量投与とプロバイオティクスに関しては、今しばらく勉強させて
 ください。






1 憩室炎 ガイドライン.pdf

Mesalamine.pdf

Secondary prevention of diverticulitis with rifaximin or mesalazine.pdf








posted by 斎賀一 at 20:07| Comment(1) | 消化器・PPI

2021年01月13日

炎症性腸疾患の病態生理・その2

炎症性腸疾患の病態生理・その2
 
Pathophysiology of Inflammatory Bowel Diseases
n engl j med 383;27 nejm.org December 31, 2020


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 今は懐かしいabeちゃんも使ったと思われる、潰瘍性大腸炎の生物学的製剤を理解する上で、欠かせ
ない病態生理をまとめた総論が雑誌NEJMに掲載されていました。
本論文を理解するのに難儀しましたが、私なりに理解できた点だけを纏めてみます。
下記の図が不鮮明の場合は、更に下のPDFをご参照ください。




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         30113-4.PNG ← クリックで拡大


    
   
    
1) 炎症性腸疾患の場合には、粘液層(mucus layer)を作る杯細胞(goblet cell)が減少していて
   細菌叢の侵入を防ぐバリアーも減少し、さらけ出されている状態です。
   最近では腸上皮の粘膜下にある幹細胞(線維化細胞、筋細胞、血管周囲細胞)による急性増悪の
   際の反応が解明されています。

2) 遺伝的な解明も進んでいますが、潰瘍性大腸炎よりもクローン病の方が意味合いが強いようです。

3) 共生細菌叢とその産物が、炎症性腸疾患の進展に関係あることも分かり始めています。
   粘膜のバリアーが損なわれると、正常の細菌叢も病態の原因となります。
   一方で、細菌叢の全くいないマウスでの実験では、炎症性腸疾患の重症化を認めています。
   細菌叢との関連性が今後の研究テーマです。

4) 粘膜の免疫機能
   腸上皮においては、免疫機能として自然免疫と獲得免疫、及び局所免疫と全身免疫が全て関与して
   います。獲得免疫として特異的T細胞(MALT)が重要な位置を占めています。
   腸管が健康な人間の免疫機能の主な部位を担っており、なんとリンパ球の75%が腸管や腸間膜に
   存在し、健康な人の免疫グロブリンの多くはこの部位で作られています。
   腸管の免疫機能は全身の免疫機能と異なり、病原性病因との戦いと同時に食物アレルギーを代表
   するような、過剰な免疫反応を抑制するコントロールもしなければならないといった、複雑な機能が
   必要となります。
   自然免疫はマクロファージが主役です。
   最初の段階で病因となる細菌などを貪食するために、粘膜下に位置しています。
   樹状細胞も粘膜下に存在し、獲得免疫の初期段階で働きます。
   粘膜下のリンパ装置のパイエル盤、native B細胞が抗原(病原細菌)と出会うと、形質細胞に変化
   して抗体を産生し、更に記憶B細胞に分化していきます。
   形質細胞は分化して短期及び長期的に働き、免疫グロブリンのIgMからIgAを形成していきます。
   IgAは補体との共同作用がないので炎症を伴わずに病因を排除しますが、IgGは補体と共同して
   炎症を伴いながら病因(病原菌)と戦います。

5) B細胞は炎症性腸疾患の場合には、特別に主たる行動は起こさないようです。
   健常人ではIgAが主役ですが、炎症性腸疾患の場合にはIgGがその病態の主たる原因として作用
   します。
   現に炎症性腸疾患の場合にIgAは減少し、IgGが局所で増加しています。
   潰瘍性大腸炎の場合、細菌叢に対するIgGが局所的に増加していることが証明されています。

6) T細胞
   未だ抗原提示を受けていないnative T細胞(ナイーブT細胞;20歳後半に未だ女性の提示を受けて
   いないナイーブな僕みたい)が腸管の粘膜下のリンパ装置である樹状細胞から抗原提示を受けて
   活性化し、粘膜の表面に移動します。
   活性化したT細胞は機能をもったeffector T細胞(Tef)、制御性のregulatory T細胞(Treg)
   抗原性を記憶したmemory T細胞に分化します。
   一般的にTefは炎症性サイトカインを分泌し、即座に炎症を起こして細菌感染を予防しようとします。
   Tregは行き過ぎた炎症を鎮める働きがあります。
   memory T細胞は長期間生存して、免疫的な記憶を提供します。
   ヘルパーT細胞のTh1とTh17のネットワークが粘膜のホメオスタシスに関係しているので、それに
   関連するサイトカインのインターロイキン12、23をブロックするtofacitinibなどのJAK阻害薬が
   治療薬として登場しています。
   インターロイキン17は炎症を誘発し、腸上皮の再生、修復に関係するといった多面的効果
   (pleiotropic)のため、インターロイキン17に対する抗体は治療としては確立していません。
   Tregは免疫のホメオスタシスに関係します。しかも免疫機能とは無関係な再生にも関与します。
   更に炎症部位に移動して炎症を沈静化します。
   しかし炎症性腸疾患において、局所でこのTregが増加していることがあり、その解明は未だ十分
   にはされていません。
   活性化したCD4とCD8は記憶T細胞に分化しますが、更にその記憶T細胞は組織固着型(Trm)と
   循環型(Tcm)に変化します。
   Trmが細菌に遭遇すると表面に移動してバリアーを形成し、細菌を抑制し自然免疫を活性化して、
   その情報をTcmに伝えます。
   クローン病においてスキップ病変があるのは、Trmが局所に居座って炎症反応を起こすからです。
   また、手術例のクローン病で吻合部に病変が再発するのもこのためです。
   動物実験ですが、CD8は炎症性腸疾患において腸管の透過性を促進するとの事です。
   CD8とTrmが相まって炎症を誘発し、循環性のTcmに変化して全身に循環するため、腸管以外の
   部位にも炎症を起こします。
   長期に記憶T細胞、特にTrmが居座ることが炎症性腸疾患の慢性疾患である所以です。






私見)
   最近の生物学的製剤関連の文献と本論文の図譜を見比べながら、根気よく調べてください。
   尚、図譜の中で青のブロック表示が薬剤の作用部位です。
   大体の流れを理解するだけでよいです。本院では生物学的製剤は採用しません。
   患者さんへの説明の際には、知識として覚えておきましょう。





1 炎症性腸疾患の図.pdf

2 潰瘍性大腸炎 ブログ1.pdf

2 軽症潰瘍性大腸炎 ブログ2.pdf

3 今日の臨床サポートより UC.pdf

uc 潰瘍性大腸炎 新薬.pdf

潰瘍性大腸炎 新薬.pdf

潰瘍性大腸炎 新薬2.pdf

免疫 ブログ編.pdf

免疫基礎編.pdf













posted by 斎賀一 at 19:51| Comment(0) | 消化器・PPI