2023年09月13日

睡眠中は左側臥位が胃酸逆流症を防ぐ?

睡眠中は左側臥位が胃酸逆流症を防ぐ?

The effect of sleep positional therapy on nocturnal gastroesophageal
reflux measured by esophageal pH-impedance monitoring
 


50913.PNG
  
 

 睡眠中のポジションは左側臥位(左を下)が良いか、右側臥位(右を下)が良いか論争
されてきました。多くのガイドラインは左側臥位を推奨していますが、uptodateでは明白には
記載していません。人により判断としている文献も散見されます。
また、左側臥位が良いとするメカニズムも、明白には分らないとしています。
 今回、左側臥位が睡眠時の胃酸逆流を防ぐとする論文がありましたのでブログします。


1) 睡眠時の胃酸逆流症の30人を調べています。その内27人が登録しています。
   PHを測定し、睡眠中の食道の胃酸の暴露時間を測定しています。(AET)
   勿論、胃酸分泌抑制剤は休薬(off)としています。
   左側臥位を維持するために、electronic wearable deviceを用いています。



        50913-2.PNG


   
  胸部に貼るだけで、左側臥位を外れると軽いバイブレーションで知らせる装置です。
  左側臥位にする事により胃が食道の下になり、重力の関係から胃酸が逆流しないと説明して
  います。食道から胃への進路は、ちょうど三日月様になっています。


2) 主要転帰は夜間のAETです。二次転帰は逆流症の頻度です。
   2週間後の治療後に再度PHを測定しています。

3) 2週間後にAETは3.1%から6.0%に減少しています。
   症状は2週間後には3.0から8.0に減少しています。
   症状の回復は70.4%と高率でした。

4) 考察
   日中と睡眠時とは逆流症も異なります。日中の逆流は短時間で頻度も少ないです。
   また睡眠時は唾液の分泌も低下しており、食道のクリアランスも低下しています。
   本研究では70.4%に症状の軽減があり、このデバイスの継続使用を77.8%の人が
   望みました。





私見)
 本論文は、胃に食べ物がない睡眠時の事を言っています。
 食べた後では左側臥位でもNGです。
 昼食後の昼寝が楽しみな、ひと時です。食べ物の胃からの通過は右側臥位がよいのですが、
 確かに食べた直後では逆流症状が出てしまいます。
 左側臥位ではそのような事はないのですが、消化が悪いと思います。
 結局最近では、リクライニングで昼寝をしています。
 しかし、頭を高くしての睡眠は腰を痛めてしまいました。
 睡眠時には抱き枕が最高だと思っています。







本論文.pdf











posted by 斎賀一 at 18:55| 消化器・PPI

2023年08月16日

鋸歯状ポリープの診断は内視鏡医の腕のバロメーター?

鋸歯状ポリープの診断は内視鏡医の腕のバロメーター?

<短 報>
Higher Serrated Polyp Detection Rates AreAssociated With Lower Risk
of Postcolonoscopy Colorectal Cancer



50816-2.PNG

      

 大腸ファイバー検査の精度を類推するに、ポリープの発見率が一つの指標となるとの文献を
以前紹介しましたが、今回は鋸歯状ポリープの診断率が、その後の直腸・結腸癌の診断率に
深くかかわるとの報告がされています。


1) インデックス大腸ファイバー検査(最初のファイバー検査)から6か月後のファイバー
   検査で直腸・結腸癌(PCCRC)の診断率を調べました。

2) 26,901人が対象です。その内162人がPCCRCでした。
   鋸歯状ポリープが6%の場合に、一番PCCRCが低かった。






         50816-3.PNG




   
結論)
  鋸歯状ポリープの診断確率が高い内視鏡医師が、一番その後の直腸・結腸癌の発生が低率
  でした。




私見)
  腺腫性ポリープから結腸癌になる経過(Adenoma-carcinoma sequence)と
  鋸歯状ポリープから結腸癌になる系列がありますが、鋸歯状ポリープは近位結腸に
  その源があるため、鋸歯状ポリープの発見率が高いという事は結腸をよく観察して
  いることを意味するかも知れません。





Higher Serrated Polyp Det鋸歯状ポリープ.pdf










posted by 斎賀一 at 18:56| 消化器・PPI

2023年07月18日

スクリーニング検査における大腸ファイバーの有害事象

スクリーニング検査における大腸ファイバーの有害事象

An Estimate of Severe Harms Due to Screening Colonoscopy:
A Systematic Review



50718.PNG



 大腸がんの発生頻度が増加傾向です。
大腸がん検診では、便潜血に続いて大腸ファイバーがスクリーニングとして行われています。
大腸ファイバーの精度に関してブログでも紹介しましたが、その副作用、危険性についての
論文が出ています。


1) 2002年1月1日から2022年4月1日までで、スクリーニング検査としての大腸ファイバー
   の有害事象について調べています。
   主要転帰は、検査後の30日以内で重篤な出血と穿孔です。
   1,951論文が対象となり、94論文が全文を調べています。
   最終的に6研究が採用され、467,139例のスクリーニングの大腸ファイバー検査が統計
   として調査されました。

2) 結果
   重篤な出血は、16.4〜36.18例/10,000例でした。
   穿孔は、7.62〜8.50例/10,000例でした。
   出血はスクリーニング検査時、主にポリープ切除の際に起きています。

3) 考察
   有害事象が以前のUSPSTFの報告よりも本論文の方が高頻度ですが、経過観察期間が
   30日と長く設定しているためとしています。
   重大な副反応は、当然ながら被験者が高齢化するほどに高くなっています。

4) 大腸ファイバーの事故を防ぐためにも適切に検討し、overuseを避ける事が必要として
   います。






私見)
 本院でも大腸がんを早期に発見できていると自負していますが、適切な検査間隔が必要です。
 しかし、残念ながら現実は、検査間隔が長すぎてしまう例が多い印象です。






スクリーニング検査における大腸ファイバーの危険性.docx










posted by 斎賀一 at 20:41| 消化器・PPI