2020年07月02日

大腸ファイバー検査の適正な間隔は?

大腸ファイバー検査の適正な間隔は?

Long-Term Colorectal Cancer Incidence and Mortality
After a Single Negative Screening Colonoscopy



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 ポリープ切除後の大腸ファイバー再検の期間については、以前の私のブログでも紹介しましたが、
概ねNEJMの論文を参考に患者さんには説明しています(下記のPDFを参照)。
しかし、便潜血検査で陽性後に大腸ファイバー検査を行い、異常が無い場合には、どの間隔で再検査を
実施すべきかの具体的エビデンスがありませんでした。
概ねガイドラインでは10年後としていますが、本院では大事を取って5年後と指導しています。
これは諸々の事情です。
今回、annals of internal medicineから酸いも甘いも知った論文が出ていますので、患者さんも
臨床家も注意して読みたいと思います。


結論だけを纏めてみます。


 1) 先ず、大腸ファイバー検査の質が高い(high-quality)か、低い(low-quality)かを
    定めています。
    high-qualityとは以下の3条件が全てクリアーした場合です。
     
     ・空腸末端まで観察できている。
     ・前処置が完全で大腸の観察が十分である。
     ・術者の能力は平均でポリープ発見率が20%以上である事。

 2) 対象者は50~66歳で大腸がんのリスクは平均的な人です。最初の大腸ファイバー検査で陰性
    (腫瘍性病変のない、つまりポリープも見つからなかった)の人です。
    165,887名を17.4年まで経過観察しています。
  

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 3) 結果
   
     結腸及び直腸の腫瘍(CRC)の発生は、0.28でCRC関連死亡は0.19で、
     一般的な住民(population)と比較しますと、それぞれ72%と81%の減少でした。
     しかし、high-qualityではlow-qualityと比較しますと、2倍も低下しています。
     結局high-qualityでは、low-qualityと比べると、その危険率は0.55でした。

 4) 結論として、
   
     high-qualityの大腸ファイバー検査では、17.4年間の経過観察しても
     結腸及び直腸の腫瘍(CRC)の発生を抑制出来ていました。


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私見)
 質の高い検査なら、10年とは言わず15年以上も賞味期間がありそうです。
 さて、お前はどうなんだとのご質問が聞こえてきます。
 酸いも甘いも知り尽くしていない小心者の私としては、日々努力は覚悟の上ですが、従来通り5年間の
 賞味期限とさせて頂きます。



1 本論文.pdf

2 大腸ファイバーの間隔.pdf

3 大腸癌検診 ケアネット.pdf






posted by 斎賀一 at 12:54| Comment(0) | 消化器・PPI

2020年06月16日

胆嚢ポリープ・文献より

胆嚢ポリープ・文献より



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 ポリープとは、粘膜が限局性に隆起した病変で肉眼的総称です。
ポリープだけでは疾患とは成らず、修飾語+ポリープではじめて疾患単位となります。 (飯島病理より)
つまり胆嚢ポリープでは疾患としては希薄で、後述のようにコレステロールポリープとなってはじめて
疾患単位となります。

胆嚢ポリープには
 ・過形成
 ・コレステロールポリープ
 ・腺筋腫様過形成
 ・腺腫
 ・癌   があります。

胆嚢壁の肥厚には
 ・胆嚢癌
 ・胆嚢腺筋腫症
 ・胆嚢炎
 ・膵胆管合流異常症に伴う過形成   があります。


胆嚢ポリープで一番多いのはコレステロールポリープです。

1) コレステロールポリープ
   脂質を貪食したマクロファージが粘膜の下に集簇しています。
   そのために隆起していますが、表面の粘膜は異型性はなく過形成の状態です。
   従って腫瘍性の性格が無く、悪性化は起きません。
   原因は胆汁の脂質が胆嚢内に沈着するためです。

2) 胆嚢腺筋腫症
   胆嚢の炎症によりRokitansky-Aschoff sinusが線維筋組織と一緒に増生したものです。
   Rokitansky-Aschoff sinusが粘膜から漿膜にかけて増生し、それを囲むように線維筋組織も
   増生しています。
   つまりこの疾患も良性です。

3) 黄色肉芽腫性胆嚢炎
   急性胆嚢炎の範疇に入ります。胆汁を貪食したマクロファージが集簇し著明な線維化が生じで壁の
   肥厚や腫瘤形成となります。癌との鑑別が困難な例もあります。
   本来は良性です。

4) 膵胆管合流異常に伴う過形成
   問題は胆嚢癌、胆管癌の合併です。
   診断は臨床症状がないと診断出来ない事があり、注意が必要です。
   胆嚢壁の肥厚だけでも疑い、精査をする事が大事です。





私見)
 胆嚢ポリープは、殆どがコレステロールポリープです。
 安心して経過観察で良いのですが、下記のPDFに掲載しましたように初期の診断が大事です。
 ついでながら、胆膵に関しての前癌状態を下記に掲載します。
 膵のIPMNが有名ですが、それに倣って病名が提言されました。
 其々が趣を異にしています。SKBと同じで名前を覚えきれません。




◆参考書籍

・Medical Practice v.34 n.7 2017
・消化器病理 羊土社 
・Jpn J Med Ultrasonics 2013 40(2) 147-156
・腹部エコーの基礎 秀潤社






胆 原本 - コピー.pdf

膵 原本 - コピー.pdf











posted by 斎賀一 at 19:58| Comment(0) | 消化器・PPI

2020年06月15日

胆嚢ポリープの予後・20年間経過観察

胆嚢ポリープの予後・20年間経過観察
 
Outcomes of Gallbladder Polyps and Their Association
With Gallbladder Cancer in a 20-Year Cohort


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 日本でのガイドラインでも胆嚢ポリープが1cm以下の場合は癌化の可能性は殆ど無いとされていますが、それを実証した論文が雑誌JAMAに掲載されています。


纏めてみますと

1) エコー検査により成人では4%に胆嚢ポリープが認められると言われています。
   しかしポリープの成長と癌化の関係は明白でありません。
   1995年から2014年の20年間で622,227名を対象に調査して、胆嚢ポリープのある35,970名
   (5.7%)と胆嚢癌の365名(0.058%)を登録し比較検討しています。
   胆嚢ポリープを6mm以下、6~10mm、10mm以上の3群に分けています。
   主要転帰は経過中でのポリープ成長が少なくとも2mm以上としました。

2) 登録患者は、胆嚢癌の365名と胆嚢ポリープの35,856名です。
   胆嚢癌の患者で胆嚢ポリープを有する人は22名(22/365名 ; 6%)でした。   
   胆嚢ポリープのある人で胆嚢癌は19名で、頻度は19/35,856名(0.053%)に対して胆嚢ポリープ
   の無い人の胆嚢癌の発生頻度は316/586,357名(0.054%)と同じ頻度でした。

   統計を調整しますと
   胆嚢癌の発生は全体で11.3人/100,00人/年です。
   胆嚢ポリープが2mm以上成長する頻度は
   最初に6mm以下では1.3人/100,00人/年
   最初が10mm以上では128.2人/100,00人/年
   経過観察の評価が出来た6,359名を対象として、2mm以上の成長を10年間で見ますと、
   最初が6mm以下では66.2%で
   最初が6~10mmでは52.9%の成長の可能性でした。




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3)結論
  胆嚢癌の発生は、胆嚢ポリープの有無と関係がありませんでした。
  胆嚢ポリープの成長は自然史かもしれません。

4)考察
  大きな胆嚢ポリープは小さいものよりも胆嚢癌の発生が多いと考えられていますが、それでもその
  頻度は低いです。
  最初に10mm以下で診断された胆嚢ポリープは殆ど癌には移行しませんが、10mm以上の胆嚢
  ポリープも癌化するのは最初の1年です。
  それすらも本来は最初にポリープとするよりもmass(腫瘤)と診断すべきかもしれません。




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  胆嚢ポリープは自然史として成長する事があり、それは継続しています。
  重要な点は、それが癌化には結びつかないと言う事です。
  また5年間成長しなかったからと言ってその後も安定しているとは限りません。




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   従って、10mm以上の胆嚢ポリープや2mm成長で予防的に胆嚢切除は推奨しません。
  ガイドラインの推奨しているように7~10mmの胆嚢ポリープでは、1〜2年に1回のエコー検査で十分
  だと思います。
  10mm以上では一回は1年以内の再検を勧めます。






私見)
 胆嚢ポリープは、90%以上が良性のコレステリンポリープと言われています。
 本論文の価値があるのは、経過観察によってポリープが成長しても慌てる必要が無いと指摘している
 点です。
 問題は最初の診断です。書籍からその点をまとめましたので次回のブログで紹介します。
 職員の皆さん、患者さんの説明に利用してください。







本論文胆嚢ポリープ.pdf











posted by 斎賀一 at 19:32| Comment(1) | 消化器・PPI