2020年01月16日

大腸ファイバーの適切な検査間隔は?

大腸ファイバーの適切な検査間隔は?
       <短 報


 最近は大腸がんの罹患率が増加傾向です。
そのため大腸がん検診及びその後の大腸ファイバーの受診率向上も課題です。
従って、患者さんにも負担の多い大腸ファイバー検査の間隔はどの程度にしたらよいか、議論が分かれていますが、一般的に5年としています。
 以前の私のブログでも何回か紹介していますが、今回雑誌BMJより初回に大腸ファイバーが陰性
(正常)の場合、次回の検査は10年後で良いとするメタ解析の報告がありました。



1) 28の研究論文をメタ解析しています。
   初回の大腸ファイバー(index colonoscopy)で所見がない人を対象にしています。

2) 全体的な良性の腺腫性ポリープ及び大腸癌の発生を調べました。
    1~5年では20.7%の発生
    5~10年では23.0%
    10年以上では21.9%の発生頻度でした。
   その殆どが良性のポリープでした。一般的には年数が経つに従って、大腸ポリープの発生頻度も
   増加すると予測されますが、年数によってもあまり相違がありませんでした。
   理由として、大腸ポリープは進展が遅いかもしれませんが、9mm以下のポリープは見逃されている
   可能性も推測しています。

   悪性腫瘍(大腸癌、9mm以上のポリープ、絨毛状パターン、グループ4)の発生の頻度に絞りますと
    1~5年で2.8%
    5~10年で3.2%
    10年以上で7.0%でした。

3) 現在のガイドラインと同じように、初回の大腸ファイバーが異常なければ10年以内に再検査を実施
   すれば良いようです。なぜなら悪性腫瘍発生の危険は、10年以内なら僅か3%としているからです。





私見)
 マイナス思考の私としましては、大腸ファイバー検査で異常なしとしても、9mm以下の小さな
 ポリープは最大で15%見落としている可能性があります。
 また、5年過ぎると3%の悪性腫瘍が発生しているかもしれません。
 本院では従来通り、5年後の再検をお勧めします。






大腸ファイバー negative colonoscopy in average risk.pdf











posted by 斎賀一 at 14:09| Comment(0) | 消化器・PPI

2019年12月21日

結腸憩室炎の予防と食事の関係

結腸憩室炎の予防と食事の関係

Association Between Inflammatory Diets, Circulating
Markers of Inflammation, and Risk of Diverticulitis


1221.PNG


 アメリカでは70歳になるまでに約60%の人が結腸憩室炎に罹患するとの事です。
日本でも食事の欧米化に伴い増加傾向ですし、本院でも腹痛の重要な鑑別疾患となっています。憩室炎の発生機序においては未だ明白でありません。又その予防に関しても確立されていないのが現状です。
今回、憩室炎の発生は、大腸の持続する軽度な慢性炎症によるとの仮説に基づき、その予防を論じた論文が掲載されていましたのでブログします。


 1) 現在では一般的に受け要られている、「憩室炎は、大腸において炎症を抑制する善玉菌が
    減少する事により発生する」と言う説に則った論文です。
    それに従えば、慢性炎症を促進する食事と慢性炎症の血液マーカーとの関係を調べれば、
    因果関係も分かるとの想定です。
    慢性炎症を促進する食事としては大腸癌、心血管疾患、前立腺癌でも用いられている
    Empiric Dietary Inflammatory Pattern (EDIP) scoreを採用しています。
    血液マーカーとしては、CRP、IL6、TNFRSF1Bを採用しています。

 2) EDIPスコアとは、
  
     EDIPスコアが上がる(炎症を促進する)食品は次の通りです。
  
   〇 加工肉・赤身肉・内臓肉・魚肉(背の青い魚を除く;イワシ・サバ・メカジキ・サーモンを除く)
   〇 淡色野菜・トマト
   〇 精白穀物
   〇 糖類や人工甘味料を含有する清涼飲料水
  
     EDIPスコアが下げる(炎症を抑制する)食品は次の通りです。
  
   〇 ビール・ワイン・茶・コーヒー
   〇 赤色や黄色の根菜(サツマイモを含む)・色の濃い葉野菜
   〇 間食(スナック)・100%果汁のジュース・ピザ
  
    EDIPのスコアが低いほど食生活の炎症度が低いとみなされます。
    (ビール、スナック、ピザに関して量が問題の様です)

    本論文のEDIPスコアと主要論文のPDFを下記に掲載します。
    患者さん用のパンフは後日作成します。

 3) 1986~2014年に掛けて、憩室炎のない男性を対象に46,418名を調べました。
    血液サンプルは、1993~1995年に掛けて18,225名を調査しました。
    憩室炎の発生は1110例で、EDIPスコアと比較しています。
    一方で、炎症マーカーでは憩室炎310例とコントロール310例を比較しています。

 4) 結果はEDIPスコアと炎症マーカーをquintile(分位数)で表しています。
    EDIPスコアが高いquintileでは憩室炎の危険率は1.31です。

          1221-2.PNG
  
               1がスコアが低く、5がスコアが高い食事です。
  
   炎症マーカーではCRP、IL6に関連性はありましたがTNFRSF1Bは低いようです。

          1221-3.PNG
  
   又、体重(BMI)と運動との関係ではEDIPスコアの方が関与しているようです。

          1221-4.PNG
  

 5) 結論としては、食事のEDIPスコアと慢性の炎症マーカーのCRP、IL6が、男性における憩室炎の
    発生予測に関係していました。



私見)
 憩室炎の予防に関しては諸説あり、混乱してしまいます。
 UPTODATEによりますと運動、ダイエットも重要な予防因子としていますが、
 本論文ではやや相殺されています。
 取りあえず、緑の葉野菜、濃い黄色の野菜、コーヒーと紅茶を勧め、赤肉、加工肉、洗練された穀物、
 甘い飲み物は控えるよう指導します。
 患者さんのパンフは大阪から帰ってから作成します。
 それまでは、だからと言ってビールの飲み過ぎに注意してください。



0 Association Between Inflammatory Diets_ Circulating Markers of .pdf

1 本論文.pdf

2 Association Between Inflammatory Diet Pattern.pdf

3 PubMed Central, Table 1_ Gastroenterology. 2017 Dec; 153(6)_ 1517–1530.e14. .pdf

4 NIHMS902982-supplement-supplement_1.pdf







posted by 斎賀一 at 19:09| Comment(1) | 消化器・PPI

2019年11月15日

原因不明の胃潰瘍

原因不明の胃潰瘍
 
Clinical features and natural history of idiopathic peptic ulcers:
 a retrospective case–control study



1115.PNG



 胃潰瘍の原因はピロリ菌と鎮痛解熱剤(NSAIDs)が主体ですが、最近ではピロリ菌の治療効果と
感染の低下により、ピロリ菌関連の胃潰瘍は減少傾向と言われています。

 今回イタリアから、原因不明の消化性潰瘍(IPUD;idiopathic peptic ulcer disease)についての
論文が発表されました。


纏めますと

1) 2002~2018年にかけて、内視鏡検査を受けた9,212人を対象に検討しています。
   ピロリ菌、NSAIDs、稀な疾患を除外した原因不明の消化性潰瘍;IPUDと定義しています。
   潰瘍のあった380人の内95人がIPUDでした。
   IPUD群と潰瘍のないコントロール群を比較しています。

2) 危険因子としては
   年齢の危険率は3.520、男性は3.126、入院している場合は2.968、
   薬剤の多剤併用の場合は2.808でした。

3) 治療としては潰瘍治療薬のPPIが有効で、40~60日間服用で治癒は97.6%でした。






私見)
 論評では原因不明と言っても、その原因を追究する事が重要としています。
 しかし、現段階では高齢者の薬剤の多剤併用は、胃にとって何らかの負担かもしれません。
 取りあえず、UPTODATEより一般的でない潰瘍の原因を調べました。(unusual peptic ulcer)
下記にPDF化しました。







1 Clinical features and natural history of idiopathic peptic ulcers_ a retrosp.pdf

uptodate unusual-causes-of-peptic-ulce.pdf














posted by 斎賀一 at 21:01| Comment(0) | 消化器・PPI