鳥インフルエンザ(H5N1)の人感染
Highly Pathogenic Avian Influenza A(H5N1)Virus Infections in Humans
[This article was published on December 31,2024, at NEJM.org.]
[This article was published on December 31,2024, at NEJM.org.]
高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)の人感染が、アメリカで散発的に起こっています。
高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスは、1997年に香港で初めて人の病気を引き起こす
ことが認識されました。現在では2003年11月以降、世界24カ国で900人以上のヒト症例が報告
されており、累積死亡者数は約50%です。
アメリカでは、クレード2.3.4.4bに属するA(H5N1)ウイルスによる人感染が2021年に復活し
始めました。アメリカ以外では2022年1月以降、クレード2.3.4.4bに関連する11例の鳥インフ
ルエンザA(H5N1)症例が5カ国から報告されています。
この11例のうち7例は無症状、4例は重篤または重篤な疾患を呈していました。(1例が死亡)
2024年以前では米国で報告されたヒトA(H5N1)の症例は、2022年にコロラド州の家禽労働者
で報告されただけで、疲労が唯一の症状でした。
雑誌NEJMの本論文は2024年3月から10月にかけて、乳牛と家禽から人に感染した集計です。
1) 症例患者46人のうち、20人は感染した家禽に曝露され、25人は感染した、または
感染したと推定される乳牛に曝露され、1人は曝露が特定されていなかった。
(この患者は非呼吸器症状で入院し、定期的なサーベイランスを通じてA(H5N1)
ウイルス感染が検出されました。)
動物に曝露した患者45例は平均年齢が34歳で、全員が軽症でした。
入院した人はおらず、死亡した人もいませんでした。
42人の患者(93%)が結膜炎を患い、22人(49%)が発熱し、16人(36%)が呼吸器症状を
呈していました。15人(33%)は結膜炎のみでした。
解析可能なデータがある患者16人の罹患期間は中央値が4日(範囲、1〜8)でした。
ほとんどの患者(87%)がオセルタミビルを投与されました。
オセルタミビルは、症状が現れてから中央値が2日後に開始されました。
動物に曝露した症例患者で家庭内接触者97人のうち、追加の症例は確認されません
でした。感染した動物に暴露された労働者が最も一般的に使用していた個人用保護具
(PPE)の種類は、手袋(71%)、目の保護具(60%)、フェイスマスク(47%)と不完全
でした。
これまでに同定された症例では、A(H5N1)ウイルスは一般的に軽度の疾患、主に結膜炎
を短期間で引き起こしています。ほとんどの患者が迅速な抗ウイルス治療を受けました。
2) 討論
職業ばく露労働者のPPE使用は最適ではありませんでした。
職業的に曝露された症例患者の90%以上が結膜炎を患っており、約3分の1には呼吸器
症状もありました。全員が短期間で軽度の病気で、入院した人はいませんでした。
現段階ではヒトからヒトへの感染は確認されていません。
感染した乳牛は14日間までに症状がピークに達し、回復には24日間掛かっています。
低温殺菌されていない生乳から高レベルのA(H5N1)ウイルスが発見されており、これは
おそらく牛から酪農労働者への重要な感染源です。
結膜炎は職業的に曝露された労働者の間で最も一般的な状態であり、結膜スワブは結膜炎
を報告した症例患者の90%で陽性でした。
世界的に見て、人におけるA(H5N1)の症例は無症候性の疾患から、結膜炎、軽度の上気道
症状、下気道疾患および死亡を含む重篤な疾患まで幅広い疾患です。
なぜアメリカの症例が軽症なのかは不明ですが、初期診断と早期での加療が功を奏して
いる可能性があります。
タミフルの使用が推奨されています。現在までに、ノイラミニダーゼ阻害剤に対する
感受性がわずかに低下する変異を持つ(3つの)ウイルスとゾフルーザ(1つのウイルス)
の4つのウイルスを除き、米国で感染したA(H5N1)ウイルスは、現在利用可能な抗ウイ
ルス薬に感受性があります。
米国のほとんどの症例は軽症ですが、世界的なデータと動物を用いた研究によりA(H5N1)
クレード2.3.4.4bウイルスは、重篤な疾患と死亡を引き起こす可能性があることが示され
ており、今後も注意が必要です。
私見)
A(H5N1)クレード2.3.4.4bウイルスが弱毒化していればと楽観視もしたくなりますが、新たな
変異を遂げて人へのパンデミックになる恐れもあります。
下記に医療従事者のガイダンスがCDCから出ていますが、基本的には従来の発熱外来と同じ
です。但し、医療用ゴーグルが必要となっています。
Infection Control.pdf