2021年02月03日

発作性心房細動に対するクライオアブレーションの効果 その1

発作性心房細動に対するクライオアブレーションの効果 その1
 
Cryoballoon Ablation as Initial Therapy for Atrial Fibrillation
n engl j med 384;4 nejm.org January 28, 2021



30203.PNG



 心房細動に対するカテーテルアブレーションは、高周波を熱源とするカテーテルアブレーションが主流
でしたが、近年はバルーンカテーテルによる肺静脈隔離法が出現し、現在はバルーンアブレーションと
してクライオバルーン、ホットバルーン、レーザーバルーンの3 種類が使用できるようになっています。

 雑誌NEJMに、クライオアブレーション(冷凍焼灼術)に関する論文が2つ掲載されていましたので、
ブログします。


1) 以前から症状のある発作性心房細動に対しては、薬物療法よりもカテーテルアブレーションの方が
   心房細動の再発予防に有効との報告がありました。
   しかも早期でのアブレーション導入が、その後の持続性心房細動の進展予防に繋がるとも言われて
   います。
   しかし、従来のカテーテルアブレーションでは再発率が高く、安全性の面でも問題がありました。
   今回は、発作性心房細動に対するクライオアブレーションの効果と安全性に関しての研究です。

2) 対象は、リズムコントロール療法歴のない 18〜80 歳の発作性⼼房細動患者です。
   除外基準は以前に抗不整脈薬で治療した人、左房が5cm以上拡大している人、アブレーションの
   既往がある人です。
   抗不整脈薬(クラス I またはIII)の投与群と、クライオバルーンによる肺静脈隔離術を施⾏する群に
   1:1 の割合で無作為に振り分けています。
   ・不整脈のモニタリングとしては、ベースラインで 1、3、6、12ヵ⽉の時点における⼼電図、
   ・3〜12ヵ⽉目で、毎週および症状発現時に電話モニタリング、
   ・6ヵ⽉および 12ヵ⽉の時点における ホルター心電図(24 時間⼼電図)などを行っています。
   主要有効性エンドポイントは、治療の成功(最初の⼿技の失敗がなく、⼿技後の回復と薬剤の
   ⽤量調節が認めらている 90 ⽇間のブランキング期間後に⼼房性不整脈の再発もないこと)と定義
   しています。
   主要安全性エンドポイントはアブレーション群でのみ評価し、⼿技関連、クライオバルーンシステム
   関連の、いくつかの重篤な有害事象の複合としています。
   具体的には、施行後30日以内の症状を有する心外膜液、および12か月以内の肺静脈狭窄、
   食道穿孔、一過性脳虚血発作、脳卒中、心筋梗塞、および7日以内の大出血です。

3) 無作為に治療された 203 例のうち、104 例がアブレーション、99 例が最初に薬物療法を受け
   ました。
   主要有効性エンドポイントは、アブレーション群では患者の 97%で最初の⼿技が成功しています。
   12ヵ⽉の時点で治療が成功している患者の割合は、アブレーション群 74.6%、 
   薬物療法群 45.0%の成功率です。
   主要安全性エンドポイントイベントが、アブレーション群で 2 件発⽣しています。
   重篤な副作用は(生命の危険性、24時間以上の入院を要する、後遺症の危惧など)
   アブレーション群で14%、薬物療法群でも14%でした。

4) 考察
   主要安全性エンドポイントイベントは、アブレーション群で1.9%出現しています。
   薬物療法群の患者の3分の1は、その後薬物関連の副作用または不整脈を再発し、結果として
   アブレーションを受けました。
   早期のアブレーションが、持続性心房細動への予防に繋がります。
   つまり、本研究の登録患者は左心房拡張がなく発作性心房細動発生後約1.3年と、早期での介入が
   特色です。

5) 結論として、初回治療としてのクライオバルーンアブレーションは、発作性⼼房細動患者の⼼房性
   不整脈の再発予防において、薬物療法よりも優れていた。
   ⼿技に関連する重篤な有害事象の頻度は低かった。
    (一部、日本版参照)




         30203-2.PNG





  
私見)
 最近では発作性心房細動も、早期での治療介入が進んでいるようです。
 グラフなどは下記のPDFをご参照ください。
 以前の私のブログもご参照ください。







1 発作性心房細動 本論文.pdf

2 新時代.pdf

3 アブレーション最近の.pdf

4 横浜.pdf
















posted by 斎賀一 at 19:24| Comment(0) | 循環器

2020年11月10日

慢性冠動脈疾患におけるコルヒチンの有効性

慢性冠動脈疾患におけるコルヒチンの有効性
 
Colchicine in Patients with Chronic Coronary Disease
N Engl J Med 2020;383:1838-47.



21110.PNG




以前の私のブログで、コルヒチンの抗炎症作用が心筋梗塞発症後30日の患者さんに対して心血管疾患の2次予防に繋がるという論文を紹介しましたが、今回のNEJMの論文では、さらに一歩進んだ内容で、安定した冠動脈疾患にコルヒチンを投与すると、心血管疾患の一次予防(1.5次予防?)に繋がるという内容です。   ;LoDoCo2スタディ


纏めますと

1) 対象は、何らかの方法で冠動脈疾患の診断を受けた35〜82歳の患者です。
   具体的には冠動脈疾患の診断は、侵襲的手技法である冠動脈造影(CAG)、冠動脈の非侵襲的な
   評価方法として冠動脈CT angiography(CTA)又はマルチスライスCT による冠動脈石灰化
   スコアーで行っています。
   ざっくりと言って、血管再建術(PTCIやCABG)を行っていなくて6 か月以上安定している狭心症を
   対象にしています。(下記に記載されている条件で血管再建術をした患者さんも含まれます。)




         21110-3.PNG



 
2) 慢性冠動脈疾患患者にコルヒチン 0.5 mg を 1 ⽇ 1 回投与する群と、プラセボを投与する群に
   振り分けています。

3) 主要転帰は⼼⾎管死、⾃然発症(⼿技に起因しない)の⼼筋梗塞、脳梗塞、虚⾎による冠動脈⾎⾏
   再建術の複合(まとめた)としています。
   2次転帰は色々な複合転帰を併せていますが、複雑なので下記の結果の表で確認してください。

4) 結果は5,522 例が無作為化され、2,762 例がコルヒチン群、2,760 例がプラセボ群に振り分け
   られました。
   平均の経過観察は 28.6 ヵ⽉です。
   主要転帰の発生は、コルヒチン群の 187 例(6.8%)とプラセボ群の 264 例(9.6%)です。
    (発⽣率: 100 ⼈/年あたり 2.5 件 対 3.6件、危険率は 0.69)
   2次転帰は表をご参照ください。
   ⼼⾎管系以外の原因による死亡の発⽣率は、コルヒチン群のほうがプラセボ群よりも⾼かった。
    (発⽣率: 100 ⼈/年あたり 0.7 件 対 0.5 件、危険率は 1.51)
   (このことに関しては詳細に記載がなく、発生は低率なのであまり問題視していません。)




         21110-2.PNG



 
   結果は下記のPDFの図で確認してください。




         21110-4.PNG




    

私見)
 尿酸値が高い冠動脈疾患のある人には、1.5次予防と2次予防を併せてコルヒチン投与の対象と理解
 します。
 高血圧と痛風のある私としても、うれしい?スタディです。





2次転帰を含めた結果.pdf

心 コルヒチン 1.pdf

コルヒチン 心 2.pdf

コルヒチン 心 3.pdf














posted by 斎賀一 at 20:29| Comment(0) | 循環器

2020年10月19日

脂質異常症の管理・VA/DoDより

脂質異常症の管理・VA/DoDより
 
Management of Dyslipidemia for Cardiovascular Disease Risk
Reduction: Synopsis of the 2020 Updated U.S. Department of Veterans
Affairs and U.S. Department of Defense Clinical Practice Guideline
    This article was published at Annals.org on 22 September 2020



21019.PNG

 

 アメリカの学会VA/DoDより、脂質異常症の管理・ガイドラインが雑誌Annals of Internal Medicineに掲載されています。 
かなり大胆な内容になっています。
その妥当性は浅学の私には検証できませんが、実地医家には日頃から薄々感じている点も多いため
ブログしてみました。


1) 脂質異常症の治療目標は悪玉のLDL値でなく、リスク評価をしてスタチンの投与量を決定すること
   である。つまり結局は、中等量のスタチンの投与となる。
   もしも高容量または強力スタチンを処方する際は、患者と双方の同意が必要となる。

2) リスク評価に追加する検査項目の必要は、限定的である。
   つまりCRP、CAC(動脈弁の石灰化)、血管年齢の計測、アポ蛋白などは10年リスクの評価因子
   (血圧、降圧薬、糖尿病、年齢、喫煙、心不全、性別、総コレステロール、HDLコレステロール)
   に比べて、その価値は明白でない。

3) 一次予防でも中等量のスタチンで充分である。
   10年リスクが12%以上の時に中等量のスタチンを使用することにより、5年間で心血管疾患のリスク
   を20~30%軽減できる。10年リスクが6%以下ではその効果はなく、10年リスクが6~12%では
   スタチンのはっきりした効果を示すエビデンスはない。従って高容量のスタチンや強力スタチンを
   勧めない。スタチンにゼチーアやフィブラート系の追加も勧めない。

4) 心血管疾患発症後の二次予防に関しても、中等量のスタチンで充分である。
   確かに急性心筋梗塞後や脳卒中後のハイリスクでは、再発予防には高容量や強力スタチンが効果
   的とのエビデンスはあるが、死亡率には貢献していない。
   スタチンの副作用も増加してくるので、再発リスクの高い患者にはスタチンのステップアップの際は
   患者との十分な理解のもとに決定する必要がある。

5) 一般的なガイドラインでは定期的な脂質の血液検査を行いリスク評価を勧めているが、10年後に
   脂質の値が変化することは稀である。従って治療方針が決定したら(中等量のスタチンを処方したら)
   その後は10年間脂質を検査しなくてもよい。
   また検査は食後が原則で、空腹時採血は避けるべきである。

6) 運動療法は、脂質異常症にも心血管疾患の予防にも効果があることは証明されている。
   よって本ガイドラインでも運動は勧めるものだが、他のガイドラインが進める軽い運動の150分/週
   +きつい運動の75分/週が、必ずしも必要とは思わない。
   運動療法が有用とのデータはほとんど運動していない人との比較であり、運動には年齢や個人差
   があるため、いつでもどの程度でも行えば良いとして指導すべきである。

7) 確かに地中海料理はある程度心血管疾患に有用かもしれないが、その程度は限定的である。
   ましてやω-3、繊維成分、ガーリック、緑茶などのサプリメントは積極的には勧めない。
   (やってもよい程度)
   そんな訳で、スタチンにフィブレート系を追加するのには反対の立場である。

8) あるスタチンで有害事象が発生したら、1か月間のウオッシュアウト(中断)後に他のスタチンを
   試みる。その際には隔日投与も選択肢に入れる。






私見)
 本論文をブログしていて、自分は誤訳してないかと思ってしまいました。
 尚、本論文はネットでもfreeでアクセスできるので、念のため購入してみましたが同じものでした。
 せっかくですので購入した論文中の表を下記のPDFに掲載します。
 (ネットでアクセスできるものも同時に掲載します。)

 かなり人にも自分にも優しいガイドラインです。
 こういう「ゆるキャラ」の考え方は私はとっても好きです。






本論文1.pdf

脂質異常症Management of Dyslipidemia.pdf












posted by 斎賀一 at 21:47| Comment(2) | 循環器