2021年07月24日

WPWパターンとWPW症候群

WPWパターンとWPW症候群

患者さん用と院内勉強
 


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        内科臨床医サポートより
 
 最近、学童の方が検診の心電図でWPWの診断を受けて来院されました。
ネットで、WPWと調べるとほとんどがWPW症候群の記載内容です。
心電図で、特有なΔ波を認められればWPWパターンです。さらに不整脈、多くは頻脈発作を伴えば、
WPW症候群となります。WPWパターンは全年齢層に認められ、0.13〜0.25%の頻度です。
WPWパターンの中で、WPW症候群になる人はさらに少なく、2%より低いと言われています。
ただし、WPW症候群の人の10〜30%に心房細動を合併します。
心筋は、シンシチウムという合胞体で、自発的に活動電気を発生するペースメーカー細胞が
備わっています。
人は、発生の段階で房室結節の周辺の線維巣にシンシチウムの吸収不全が起きると、通常とは異なる
副伝導路が形成されてしまいます。有名なのがケント副伝導路ですが、その他の副伝導路もWPWの
原因となります。つまり、WPWは心筋の先天異常です。
副伝導路には、数種類あります。


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ピンクが正常の伝導路で、黒が副伝導路です。
この副伝導路により、心電図には異なった波形が生じます。WPWパターンには下記の3型があります。


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問題は、この副伝導路には順行性と逆行性がある事です。順行性は心房から心室に伝導しますが、
逆行性は心室から心房に伝導するポテンシャルがあります。
逆行性に心房に伝わった刺激は、心房内の発電部位(ダイナモ)を刺激し、頻脈を誘発します。


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副伝導路の60〜75%は、順行性と逆行性の両方を兼ね備えていますが、17〜37%は逆行性のみ
です。この逆行性のみの場合は、Δ波は生じません。
順行性伝導はある条件では制限され、徐脈になります。これが潜在性WPWです。
運動負荷をかければ頻脈となり、Δは消失します。このような潜在性WPWは、一般的に予後が良いと
されています。
13%に複数の副伝導路が合併しています。
予備的な知識は以上で、本題に入ります。


Uptodateを中心に纏めてみました。


 1) 無症状のWPWパターンが不整脈に進展するのは、3年以上の経過観察でも20%程度と
    言われています。特に、若い健康な人ではその傾向は低いようです。

 2) 危険因子の頻脈発作を経験した場合は、EPS(Electrophysiology Studyとは
    電気生理学的検査の事で、電極カテーテルという数ミリ径の細い管を、足の付け根や鎖骨下の
    静脈から、心臓に向かって数本挿入します。このカテーテルの先端には、小さな電極が付いて
    おり、これを心臓内壁に接触させると、心臓内の電気活動を詳細に得られる事が出来ます。
    食道を介する方法もあります。)を実施します。

 3) 頻脈発作のない無症状のWPWパターンの患者で、Δ波が間歇的に出現する場合は良性と
    見なしますが、常にΔ波を認める場合は、下記の手順でリスク評価をします。

      ・安静時心電図
      ・運動負荷試験により脈拍を増加させてΔ波の消失を調べる
      ・運動負荷試験が出来ない場合はホルター心電図を実施

    運動負荷試験などで、急にΔ波などの早期興奮(preexitation)が消失すれば、
    順行性伝導のみで、逆行性伝導はないと考えられます。従って、EPS検査はせずに経過観察
    となります。
    運動負荷で最大の脈拍にしても、Δ波が持続するからと言ってハイリスクとは限りませんが、
    EPS検査が必要となります。
    EPS検査まで進んだ無症候性WPW患者の224人中76人(34%)に、その後に頻脈発作などの
    不整脈を認めています。
    その場合にはアブレーション治療が必要となります。その効果は5年間で、不整脈の消失は
    コントロール群と比較して、7%対77%でした。

 4) しかし、EPS検査でハイリスクと診断された人で、生命予後に危険な不整脈の発生頻度は、
    たったの2%でした。従って、EPS検査がリスク評価の金科玉条かどうかは分かっていません。

 5) 無症候性のWPWパターンでは、特に35〜40歳は経過観察でよいと思いますが、
    若い学童児の場合はEPS検査も考慮に入れるべきとしています。
    非侵襲的検査もあり、保護者と十分なコンサルトが重要です。


他の文献より抜粋します。



  ・検診ガイドラインによりますと


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  ・ドクターサロンより
   

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  ・雑誌小児科より


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最後にuptodateのストラテジーを掲載します。
 


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私見)
WPWパターンの多くは、心配ないと理解してください。
個別のコンサルトが保護者の方と必要です。
ドクターサロンに、WPWパターンについての概要が丁寧に記載されていますので、
下記にPDFを掲載します。
WPWの心電図読解もかなり難解です。出版元には恐縮ですが、抜粋をPDF化して掲載しますので
皆さんは改めて購入してください。



参考文献
・心電図再入門  南江堂
・雑誌小児科 小児科Vol. 55 NO.l 201 小児循環器領域
・日本内科医会会誌 2017年9月号 学校心臓検診ガイドライン
・検診資料
・雑誌mediscape 出典不明
・その他 ネットより合成してPDFを作っています。



1 小児のWPW症候群.pdf

2 WPW 図譜.pdf

3 心電図「再J入門.pdf

4 これってWPW症候群?1.pdf

5 これってWPW症候群?.pdf







posted by 斎賀一 at 20:11| Comment(0) | 循環器

2021年06月29日

ペースメーカー、植込み型除細動器とスマホ

ペースメーカー、植込み型除細動器とスマホ
 
Do Magnets in Consumer Electronics Disable Implanted Medical Devices?



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 雑誌JAMAに、ペースメーカーなどの植え込み型の医療機器に対する注意が掲載されていましたので、
ブログします。


・FDAの関係者は、携帯電話や高電界強度の磁石を備えたスマートフォンなどの家電製品が、医療機器
 を埋め込んだ人々に、深刻なリスクをもたらすとは思われないと述べています。

・しかし、強力なマグネットを含む製品がさらに市場に出ると予想されるため、FDAはペースメーカーや
 植込み型除細動器などを使用している消費者に、注意を促しています。
 これはデバイスも磁場を使用するため、強力なマグネットデバイスに近づくと、機能が変化してマグネット
 ・モードになるかもしれません。しかし強力なマグネット(電子機器)を離せば、通常のモードに戻ります。

・スマートフォンなどはポケットに入れないで、ペースメーカーなどのデバイスから15cm離しておくことが
 大事です。




※参考までに、マグネット・モード〔magnet mode〕とは

 磁石がペースメーカーの上に置かれたとき、自動的にペースメーカーがとるモードの事で、通常は磁石
 がペースメーカーの上に置かれている間は、固定レート・モードになります。
 そもそも、誤作動といってもペースメーカーが停止するわけではありません。
 強力な磁力の元ではマグネットレートといって、ペースメーカー本体の初期設定モードで動くように
 できています。主にバッテリー残量のチェックに使われます。
 個別に細かく設定していたペースメーカーが最低保障の設定に戻るので、そこでいささか不快に感じる
 人が出てくるかもしれませんが、ペースメーカーが機能停止するわけではないです。






私見)
 指幅で15cmを決めておくことも一案です。






Do Magnets in Consumer Electronics.pdf














posted by 斎賀一 at 18:36| Comment(0) | 循環器

2021年05月31日

血圧の強化療法と標準療法の比較試験の最終報告 Sprint研究の完全版

血圧の強化療法と標準療法の比較試験の最終報告
 Sprint研究の完全版
 
Final Report of a Trial of Intensive
versus Standard Blood-Pressure Control
N Engl J Med 2021;384:1921-30.



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 以前の私のブログでも紹介しましたが、収縮期血圧は120を目標にしたほうが予後が良いとするsprint研究の最終報告が、今になって雑誌NEJMに載っています。
多分、研究終了後に予後が判明する場合もあり、今回の最終報告となったものと思います。
本研究は2010年11月より2015年8月20日のまでの平均で3.33年の経過観察を行っていますが、更に試験終了後の2016年7月29日まで追跡し、追加で解析しています。


纏めますと

1) 50歳以上の収縮期血圧が130から180の人で、且つ一つ以上の心血管疾患のリスクのある人
   (心血管疾患を有する、eGFRが20から59の慢性腎臓病、10年リスクが15%以上、75歳以上)を
   対象にしています。
   75歳以上が28.2%、慢性腎臓病が28.3%、心血管疾患は20.0%でした。
   除外基準は糖尿病、脳卒中の既往、認知症です。
   9,361人を血圧の目標を120以下とした強化群と、140以下とする標準群に1対1で振り分けて
   います。
   主要転帰は、⼼筋梗塞、その他の急性冠症候群、脳卒中、急性⾮代償性⼼不全、⼼⾎管死の複合
   としています。

2) 結果
   主要転帰の発⽣率と全死因死亡率は、強化治療群のほうが標準治療群よりも有意に低かった。
   (主要転帰の危険率は0.73、全死因死亡率の危険率は0.75)




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          追跡調査後(2016年7月29日まで)のデータは下記
          この場合は実地医家が年に4回診察しています。



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          介入試験中の最初のデータは下記(2015年8月20日まで)



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 最初の報告と追跡調査後を比較しますと、その違いは

・追跡調査後の方が血圧が6.9上がっている。
 強化群と標準群の差は少なくなっており、非代償性の心不全に関しては強化群の方で多くなって
 います。

・慢性腎臓病のある人では強化群と標準群で差はないが、腎機能が正常の場合は強化群の方が危険率
 が高く、その低下は早期に認められている。しかし追跡調査後ではその危険率は下がっている。
 強化群での服薬の減少が原因としています。
 更に薬剤による腎障害は、強化群の方で頻度が高い。

・心不全に関しては追跡調査後で強化群の方が危険率が上がっている。
  (2つの上の表の赤線部分を比較してください。)
 0.63から2.34と増加しています。その説明として追跡調査後では強化群で服薬の減少、特に降圧
 利尿薬の中止が関与しているものと推測していますが、明白なエビデンスはないとしています。

3) 副作用
   低血圧、電解質異常が主な原因です。
   症状としては失神発作が一番多く報告ですが、特に慢性腎臓病の人に認められています。







私見)
 高血圧治療における本院の戦略は
 ・原則として目標血圧は120以下ですが、高齢者に関してはテイラーメイドの対応が必要
 ・強化療法の場合は定期的な腎機能検査が必須
 ・強化療法では、当然ながら降圧利尿薬は併用薬の有力な薬剤
  標準治療に戻す場合は腎機能、心機能、代謝を総合的に勘案する。
 ・心血管疾患のリスク評価を定期的に行う。








ブログより.pdf

ブログより 2.pdf









posted by 斎賀一 at 21:49| Comment(1) | 循環器