2020年01月24日

心不全発症後の死因の変遷

心不全発症後の死因の変遷
 
Temporal Trends and Patterns in
Mortality After Incident Heart Failure



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 心不全に対する治療の進歩のお蔭でしょうか、新規に発症した心不全の1年後の死亡は減少傾向
です。
しかし、心血管疾患の減少とは裏腹に、その他の疾患による死亡が増加傾向です。
2002年から2013年にかけて、新規心不全発症の1年後の研究が雑誌JAMAに掲載されています。


1) 登録者は86,833人で、平均年齢は76.6歳です。
   2002年と比較しますと、2013年は死亡率が0.94と減少
   特に心血管疾患の死亡率は0.73でしたが、その他の死亡率(non-cardiac)は1.22と増加して
   相殺されています。
   80歳より若い人は死亡率が減少していますが、80歳以上では他の疾患の増加により、死亡率の
   好転は極めて軽度でした。
    (詳細は下記のPDFの図とグラフをご参照ください。)

2) 論表では次のように記載しています。
   心不全の進展は抑制されているが、特に80歳以上の高齢者の場合は包括的に(holistic)
   捉えなくてはいけないとしています。






私見)
 心不全の患者さんに対しては息苦しさ主体に診察してしまいますし、原因を心不全に結びつける
 傾向です。
 診察はholisticが基本の様です。






JAMA論文より.pdf

jamacardiology_conrad_2019_oi_190061.pdf













posted by 斎賀一 at 19:03| Comment(0) | 循環器

2020年01月18日

心房細動を有するアルコール飲者の断酒による効果

心房細動を有するアルコール飲者の断酒による効果
 
Alcohol Abstinence in Drinkers with Atrial Fibrillation
N Engl J Med 2020;382:20-8.



20118.PNG



 アルコールの摂取量と心房細動の発生の関係は以前より報告されています。
以前の私のブログでも紹介しましたが、今回はオーストラリアからの断酒による効果が雑誌NEJMに報告
されています。
(節酒はお酒をやめることでなく、自分で目標や制限を作って飲むこと。
 禁酒は一定の期間を決めて止めることで、病気になり医者にお酒を止めなさいと言われて止めること。
 断酒は自分の意思で今後お酒を飲まないと決めること。    以上ネットより)


纏めてみますと

1) 基準飲酒量が週10ドリンク以上(1ドリンクの純アルコール量は約12g)で発作性心房細動
   または持続性心房細動のある人が対象です。
   (1ドリンクとは、コップ一杯のビールか半合のお酒です。)



         20118-2.PNG


  
   アブレーションは実施していないが、どのような薬剤でも良いので、ベースラインとしては洞調律
   (心房細動が消褪している状態)になっている人が対象です。
   140例が登録され男性85%,平均年齢は62歳です。
   70例が断酒群に70例が対照群に割り付けられました。先ずは2週間のブランキング期間を設けて
   それから研究をスタートしています。
   断酒群は週16.8ドリンクから2.1に減少、対象群は16.4ドリンクから13.2ドリンクに減少して
   います。アルコール摂取の記録がされていない場合は、尿検査で確認しています。
   主要転帰は6ヵ月の追跡期間における心房細動の無再発期間と、心房細動の総負荷(心房細動の
   状態にあった時間の割合)の2つとしています。

2) 結果は
   心房細動は、断酒群では70例中37例(53%)、対照群では70例中51例(73%)再発していました。
   断酒群では、心房細動の再発までの期間が対照群よりも長かった。 (危険率は0.55)
   6ヵ月の追跡期間中の心房細動の負荷は、断酒群のほうが対照群よりも有意に低かった。
   (心房細動の状態に合った時間の割合の中央値は、0.5%対1.2%)
   結論として、心房細動を有する習慣的な飲酒者では、断酒により不整脈の再発が減少しました。
   (以上一部日本版参照)

3) 考察
   以前より、週に7~14ドリンクを摂取すると副作用が出現すると報告されています。
   ガイドラインでは3ドリンク以下を推奨しています。
   アルコールと心臓との関連性を論文中で列挙しています。
    ・アルコールは心拍数を減少させる自律神経調節や交感神経を刺激して、心臓に影響する。
    ・大酒は心臓の炎症をも促進する。
    ・飲酒は用量依存的に左房径を増加させる。
    ・飲酒はカテーテルアブレーション後の心房細動の再発を助長する。
    ・飲酒により体重増加を招き心外膜の脂肪組織が増加するが、この事が心臓における炎症の
     パラメータともなる。


 書き連ねると、アルコールは悪い事ばかりです。
 用量依存性で1~2ドリンクの少量でも、高血圧に影響するとも言われています。
 しかしアルコールと心血管疾患はU型を示しており、適度のアルコール摂取は心血管疾患の予防にも
 なるとの疫学調査もあります。
 そのために、本研究では厳格な禁酒は行わずに、2ドリンク程度の断酒で研究しています。
 結論としては、心房細動のある方は週に2ドリンクが最適としています。





私見)
 マイブームの言葉「それはせつないな〜」と患者さんに言われそうです。
 しかしアブレーションを行うなら、絶対に断酒である事は説明しましょう。




         20118-3.PNG








アルコールの飲み過ぎは心房細動を誘発_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_.pdf

心房細動の生涯発生頻度と危険因子_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_.pdf

発作性心房細動の誘発因子_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_.pdf















 

posted by 斎賀一 at 16:59| Comment(0) | 循環器

2020年01月11日

降圧剤は就眠前服用が効果的

降圧剤は就眠前服用が効果的
 
Bedtime hypertension treatment improves cardiovascular
risk reduction: the Hygia Chronotherapy Trial



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 以前の私のブログでも紹介していますが、(下記に掲載します。)降圧剤の就眠前服用が降圧効果
ばかりでなく、心血管疾患の予防にも繋がるとの報告がありました。
以前は就眠前の服用は裏ワザであったり、モーニングサージの予防であったり、特にARBが適していると言われていましたが、今回の論文では全ての降圧剤に適応されていますし、垣根なく処方できる様です。


本論文を纏めてみますと

1) 対象者は19,084人の高血圧患者で、男性10,614人、女性8,470人です。
   平均年齢は60.5歳
   降圧剤を1剤以上服用している患者を、就眠前服用群(9,552人)と起床時服用群(9,532人)に
   振り分けています。
   平均経過観察は6.3年間です。24時間血圧計(ABP)で48時間観察しています。

2) 主要転帰は、心血管疾患で1,752例発生しています。
   【心血管疾患の死亡、心筋梗塞、冠動脈血行再建術、心不全、脳卒中】
   それぞれの項目に対して、就眠前群が起床時よりも優位でした。
   年齢、糖尿病、慢性腎疾患、HDLコレステロール、睡眠時の血圧等に対し独立因子として作用して
   いました。
   また降圧効果も就眠前群が優位でした。特に血圧のdipper型への移行に繋がります。

3) RAAS(レニンアンギオテンシン系)は夜間にその活動がピークとなります。
   就眠前群はそれを抑制する事が主たる原因のようです。
   降圧薬の中でもARBが理論的には適していますが、CCB(カルシウム拮抗薬)、降圧利尿薬も同じ
   ように効果的でした。
   その結果、腎機能の改善も認められています。




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私見)
 降圧利尿薬(本院ではナトリックス半錠)は就眠前服用により夜間頻尿が起きないか心配していました
 が、 私個人的な人体実験では影響は少ないようです。降圧利尿薬の降圧効果は初期には利尿作用に
 よりますが、 やがてその他の因子が関与して利尿は軽減されるとの事です。
 本院では原則として、暫くはナトリックス半錠を朝食後に処方し、慣れた頃に全ての降圧剤を就眠前か
 夕食後の処方といたします。







高血圧 Bedtime hypertension treatment.pdf

降圧利尿薬が治療の第一選択薬_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_.pdf

慢性腎疾患における高血圧治療の意義_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_.pdf

利尿薬:特に心不全治療において_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_.pdf















posted by 斎賀一 at 17:24| Comment(0) | 循環器