2018年09月19日

治療抵抗性高血圧症のガイドライン

治療抵抗性高血圧症のガイドライン

 Resistant Hypertension: Detection, Evaluation, and Management




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 アメリカのAHAから、治療抵抗性高血圧症(aTRH)に関するガイドラインが出ています。
2017年の高血圧ガイドラインに沿った内容で、今回はaTRHに絞って発表しています。
心血管疾患の10年リスクが10%以上の場合は、降圧目標を130/80以下としていますが、それに呼応
してaTRHも定義されています。


纏めてみますと

1) 定 義
   3種類の異なる降圧剤を使用しても、目標血圧に到達できない場合を言う。
   aTRHは心血管疾患のリスクが高まるばかりでなく、多剤併用となるので副作用も増加する。
   そのため適切な診断と治療が求められる。
   aTRHとは、下記の要因が一つでもあれば除外される。
    ・薬剤の容量が不十分
    ・きちんと服用していない (アドヘランス)
    ・自宅での血圧測定がされていない。
   白衣高血圧は原則的にaTRHに含めない。
   (白衣高血圧は、コントロールされた高血圧とリスクが同じであるため)
   実地医家の場合で15~18%がaTRHである。

2) 予 後
   aTRHは腎疾患を32%悪化、虚血性心疾患は24%、心不全は46%
   脳梗塞は14%、死亡率は6%増加しています。
   全体として、aTRHでは心血管疾患のリスクが2倍増加しています。
   また薬剤の副作用も増加してしまいます。

3) 血圧測定の適正化
   排尿後、静かな部屋で足を組まずに5分間座ってから測定する。
   カフは心臓の高さに保つ。
   1分間隔で2回測定する。

4) 白衣高血圧
   家庭内自動血圧(ABPM)は予後の判定因子に関係するが、外来診療での血圧(白衣高血圧)は
   ABPMが測定されていなければ、心血管疾患との関連性において予測因子としては低い。との
   ブラジルからの報告もある。
   外来で自動測定器を用いて静かな部屋で3~6回測定する事により、白衣高血圧を除外できる。
    (本院でも検討したいと思います。)

5) ライフスタイル
    ・肥満
    ・食塩
    ・アルコール
    ・運動
    ・薬剤関係
    下記のPDF参照

6) 睡眠障害と偽性褐色細胞腫 (psudopheochromocytoma)
   (本ガイドラインのメインテーマの様です)
   1999年より偽性褐色細胞腫の用語が提唱されています。
   急な血圧の上昇を呈して本来の褐色細胞腫を否定でき、且つパニック障害や心理的ストレスもない
   事を想定しています。
   抗不安薬、カウンセリング、βブロッカーが奏功します。
   この概念は主に閉塞性睡眠時無呼吸発作(OSA)とは関係無く、様々な睡眠障害が含まれます。
   交感神経とレニンアンギオテンシン系の賦活が主たる病態のようです。
   これが睡眠時の高血圧状態を誘引し、血圧のコントロール不良に至ります。
   適切な睡眠時間は7~8時間とされています。
   特に60歳以下では5時間以下、60歳以上では9時間以上がこの偽性褐色細胞腫に関与して
   きます。
   治療としては、降圧利尿薬はこの場合は不適で、ARBが適しているとの事です。

7) 閉塞性睡眠時無呼吸発作 (OSA)

8) 二次性高血圧症 (省略)


  



私見)
 治療に関しては以前のブログをご参照ください。 ( “高血圧” で検索)
 外来での複数回の自動血圧測定は有効だと思いました。
 睡眠障害も治療抵抗性の場合にアプローチすべき課題と認識しましたので、職員の皆さんシステム作り
 に協力してください。
 




治療抵抗性高血圧 aha.pdf


















posted by 斎賀一 at 19:07| Comment(1) | 循環器

2018年09月11日

安定狭心症にCT冠動脈造影は有効か

安定狭心症にCT冠動脈造影は有効か
 
Coronary CT Angiography and 5-Year Risk of Myocardial Infarction
n engl j med 379;10 nejm.org September 6, 2018



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 最近、こちらに転居されて本院を受診された方がいらっしゃいました。
前医で安定狭心症と診断され適切な治療を受けていましたが、念のためCT冠動脈造影(以下CTA)を
勧めたところ、安定しているからとの事で躊躇されました。
 以前より、侵襲的な検査をする前に、このCT検査は有用とのデータが多い反面、費用の点からアメリカ
の保険団体は適性な運用を指導しています。
 雑誌NEJMに関連文献が掲載されていましたが、今回奮起してブログで紹介します。
スコットランドからの報告です。


纏めますと 

1) 以前にSCOT-HEART研究とPROMISE研究がありましたが、比較的短い期間の研究でした。
   (20~22カ月) 本研究は5年間の経過観察です。  ☆下記PDFを参照

2) 安定胸痛を有し、評価のために循環器診療施設に紹介された患者 4,146 例を、標準治療に加えて
   CTA を行う群(2,073 例)と、標準治療のみを行う群(2,073 例)に無作為に割り付けました。
   CTで冠動脈が完全閉塞しているか、または10~70%の閉塞例と、CTをしない場合はASSIGNスコ
   アー(※下記にアクセス)で20点以上のリスクのある人は、専門家に照会して予防的に積極治療を
   加えています。 (多くが少量アスピリンとスタチン系)

3) 主要転帰は、5年の時点での冠動脈疾患による死亡、または非致死的心筋梗塞としています。
   主要評価項目の5年発生率は、CTA 群の方が標準治療群よりも低かった。
    ( 2.3% [48 例]  対  3.9% [81 例] )
   侵襲的冠動脈造影および冠血行再建の施行率は、追跡開始後最初の数ヵ月間は CTA 群のほうが
   標準治療群よりも高かったが、5年の時点では全体の施行率は同程度となり、侵襲的冠動脈造影は
   CTA 群 491 例と標準治療群 502 例(ハザード比 1.00,95% CI 0.88〜1.13)、冠血行再建は
   CTA 群 279 例と標準治療群 267 例(ハザード比 1.07,95% CI 0.91〜1.27)に施行された。
   しかし、CTA 群の方が予防療法を開始した患者が多く、(オッズ比 1.40 95% CI 1.19〜1.65)
   抗狭心症療法についても多かった。

4) 結論として、安定胸痛を有する患者に対する標準治療に CTA を追加した場合、標準治療のみを
   行った場合と比較して、5年の時点で冠動脈疾患による死亡や非致死的心筋梗塞の発生率が有意
   に低下していた。

5) CTを行った方が迅速に更なる治療(ステント治療など)を実施できるが、標準的治療群では心筋梗塞
   などの発症が遅れて出現するので、侵襲的治療もタイムラグが生ずる。
   しかも、CTで冠動脈にある程度の閉塞所見があれば積極的治療に転ずることが出来るし、患者も
   治療のモチベーションが上がる事からこの結果に繋がったと推測しています。

6) CTで冠動脈が閉塞している患者の約半数が心筋梗塞を発症しているが、標準的治療の群ではそれ
   よりも多いと推測される。

7) 全体では5年間で4%、10年で8%が心血管疾患を発症している。
   本研究の約半数は何らかの閉塞をしていたことから、このような人では10年で16%の発症となる。





私見)
 そんな訳で、やはりCT冠動脈造影をするのも選択肢です。
 やらない選択肢ならば、ライフスタイルの徹底した改善が必要なようです。
 胸痛患者さんで心血管疾患の疑いがあれば、心筋梗塞発症の危険率は10年で10%と覚えて説明
 します。




※ASSIGNスコアーのアクセスは下記


 http://www.assign-score.com/estimate-the-risk/


CT冠動脈造影.pdf

研究.pdf











 

posted by 斎賀一 at 20:29| Comment(0) | 循環器

2018年09月04日

少量アスピリンは一次予防に効果があるか?ARRIVE研究

少量アスピリンは一次予防に効果があるか? ARRIVE研究
 
Use of aspirin to reduce risk of initial vascular events in
patients at moderate risk of cardiovascular disease (ARRIVE)
         

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 今回は、雑誌LANCETからの報告です。
前回の雑誌NEJMのブログと異なり、中等度のリスクを有する糖尿病でない患者での、心血管疾患に対
する少量アスピリンの一次予防効果を調べています。


纏めますと

1) 心血管疾患の既往は無いがリスクが中等度ある人で、糖尿病を罹患していない12,546人を登録
   しています。
   具体的には、男性は55歳以上でリスクが2~4ある人、女性は60歳以上でリスクが3以上です。
   糖尿病や胃潰瘍の既往のある人は除外しています。
   ベースラインとして、75%が降圧剤を服用しており、43%がスタチンを服用していました。

2) 少量アスピリン(100mg)を服用している群と服用していない群に分けて、5年間調査をしています。
   主要転帰は、心筋梗塞、不安定狭心症、脳梗塞、一過性脳虚血発作、その他の心血管疾患関連の
   死亡です。

3) 結論的には、少量アスピリン群での発生は4.3%で、コントロール群では4.4%と差はありません
   でした。
   しかも、サブグループとしての性差、年齢、喫煙の有無、肥満度、10年リスクに関しても、少量
   アスピリンの効果はありませんでした。
   一方で、消化管出血は少量アスピリン群で1%に対して、コントロール群では0.5%との結果でした。





私見)
 以前の日本からの報告では、少量アスピリンは肥満者には効果が低いとされていましたが、本研究では
 BMIが25以下でも効果なしとの報告です。
 何れにしましても、少量アスピリンは一次予防効果には乏しいようです。






LANCET論文.pdf















posted by 斎賀一 at 18:57| Comment(1) | 循環器