2020年02月18日

急性心不全に対する血管拡張薬の積極的治療の効果は?

急性心不全に対する血管拡張薬の積極的治療の効果は?
 
Effect of a Strategy of Comprehensive Vasodilation vs Usual
 Care on Mortality and Heart Failure Rehospitalization
 Among Patients With Acute Heart Failure
   JAMA December 17, 2019 Volume 322, Number 23



20218.PNG


       

 前日のブログで紹介しましたが、急性心不全の治療の主体は血管拡張薬との事です。
ならば急性心不全の発症時に積極的に且つ包括的に血管拡張薬を増量したら、その効果も顕著かを
調べた研究が、雑誌JAMAに掲載されています。


その前に村川裕二先生の格言を紹介
「心不全を細かく考えると前に進まない。
 プロでないなら(実地医家なら)薬物療法で対処できる程度の心不全を扱う。
 冠動脈疾患、甲状腺疾患、貧血を鑑別する。
 新規の急性心不全は、体液貯留が無いので血管拡張薬を優先
 (血圧が100以上あればミオコールスプレーは使用できる。)
 慢性心不全の増悪は、体液貯留があるので利尿薬も用いる。
 新規か慢性の増悪かは考えても意味がない。
 体重50kgの人にはニトログリセリン5アンプル(50cc)を50時間(1cc/時間)を持続注入器で使用
 する。とパターンで決めておく。
 ハンプは1バイエルを5%ブドウ糖50ccに希釈して3cc/時間で開始」

肩の力を抜いて自分なりのアレンジで本論文を解釈すると、意外に簡単になってしまいました。
本論文の主旨とかなりずれてしまいますので、原文の一部を下記のPDFに紹介します。


さて本論文を纏めますと
1) 医者になりたての頃、セルアプとダイクロSだけを処方していました。
   オーベンの先生に怒られてばっかりいた頃の記憶が蘇ります。そんな訳でヒドララジンは
   最初から省略
2) 入院して血管拡張薬を増量する7日間の積極的治療と通常の治療を比較していますが、結果は同等
   でした。
   180日後の死亡率と再入院率に差はありませんでした。
   更に7日間の治療後の呼吸苦とBNP値においても、改善に両群で相違はないようです。
   治療の経過とデータは下記のPDFを参照


私の治療方針
 急性心不全に関しては、甲状腺疾患、冠動脈疾患、弁膜症、貧血をチェックして下記の様に一人旅の
 治療とします。
 ・血圧が100以上の場合は取り敢えず本院で治療
 ・基礎疾患を鑑別、簡易心エコーで検査、心電図、胸部レントゲン、BNP、トロポニン検査
 ・血圧を管理しながら、ミオコールスプレーを30分間に3回まで行う。
  その後はニトロダームかフランドルテープを貼付
 ・ARBを追加か増量
 ・IVCDが高ければルプラック、ラシックス、ダイアートを追加
 ・翌日、3日後、1週間後に再診





◆参考書籍

 循環器治療薬ファイル 第3版 ; 村川裕二

 メディカル・サイエンス・インターナショナル





私見)
    慌てないためにはシュミレイション
    なるべく簡単なシュミレイション
    職員が共有できるシュミレイション






JAMA論文より.pdf










posted by 斎賀一 at 19:57| Comment(1) | 循環器

2020年02月17日

急性心不全・Time is Muscle

急性心不全・Time is Muscle

    <業務連絡・院内勉強用>


20217.PNG



 雑誌JAMAに、急性心不全の治療に関する論文が出ていました。
前知識として、この機会に書籍を調べてみましたのでブログ勉強会とします。

 心筋梗塞の場合は「door to door」つまりは開業医から専門病院への転送の時間が問題となります。
余分な検査で時間を費やすことなく、的確な判断で後方病院に紹介しなくてはなりません。
[Time is muscle]と言われる所以です。
この事は急性心不全でも同じことが言われています。
急性心不全の場合には統計学的に調べてみますと、病院に到着して診断するまでに8時間以上経過
しており、更に適切な治療までには22時間も要していたとのデータがあります。
急性心不全の原因は多岐に亘ります。血圧も不安定で呼吸困難が診られれば、本院では状態によって
2次施設との連絡を取りながら、必要最上限度の下記の検査で紹介状を書かなくてはなりません。

・血圧測定 ・Spo2 ・簡易心エコー(駆出率、右心負荷、下大静脈)以上で転送の判断をし、
 更に・心電図 ・トロポニン(現在はベリファースト) ・胸部レントゲン(省略もあり)

 以上を看護師にお願いしながら、紹介状作成と救急車の連絡をするようにします。

やや余裕があり、本院での治療計画が可能と判断できたら、早期介入を実現するためのMebazaaを
提唱したクリニカルシナリオを用いる事が有効です。


要点を纏めてみますと

1) 先ず急性冠動脈症候群の鑑別が重要

2) 右心不全の鑑別 (利尿薬は禁忌)
   肺性心、肺塞栓症、右心室梗塞

3) 次に血圧により3パターンに分類
   ・収縮期血圧が140以上のクリニカルシナリオ1
   ・収縮期血圧が100~140のクリニカルシナリオ2
   ・収縮期血圧が100以下のクリニカルシナリオ3

4) クリニカルシナリオ1
   長い事高血圧が続き、心筋が疲弊してしまった状態
   硝酸塩やhANP(ハンプ)の血管拡張薬、又はARBで血圧を下げる。

5) クリニカルシナリオ2
   比較的ゆっくりとした進行の心不全を想定
   浮腫も認められる。
   血管拡張薬と体液貯留があれば、利尿薬も用いる。

6) クリニカルシナリオ3
   急激な発症もあれば緩徐な場合もあり。
   プレショックの状態
   予後も悪く、治療も総動員が必要なため2次施設への紹介が賢明

7) 収縮期血圧が高かったら、先ず実地医家のやる事は酸素吸入や検査でなく、ミオコールスプレーの
   吸入である。



          20217-2.PNG


             20217-3.PNG





 
私見)
 時代は利尿薬よりも血管拡張薬の時代の様です。
 血管拡張薬としては
 ・ニトログリセリン
  ニトロペン、ニトロダーム、ミオコールスプレー
 ・硝酸イソソルビド
  アイトロール、フランドルテープ、ニトロールスプレー
 ・ハンプ点滴用(血管拡張薬+利尿薬の働きがある)

 ニトログリセリンのほうが動脈系を拡張するため、血圧が下がる。
 どちらを使用するかはベースラインの血圧により判断する。
 最近ではニトロペンの使用はやや時代遅れのようで、念のための処方のようです。
  (オマジナイでしょうか)

 試案;
  CS1又はCS2の場合は、本院では
  ミオコールスプレー、ニトロダーム、ラシックス1/2A筋注か点滴
  ARBの増量
  (ニトロダームは不安定、ラシックスは注意、との意見もありますが、ハンプ(1バイアルを
   5%ブドウ糖50cc,3cc/hrで開始)は高価で入院が必要です。 取りあえず。)



  

◆参考文献及び書籍

 ・急性心不全(CS 1)の第一選択薬は利尿薬ですか。血管拡張薬ですか。
  ;Heart View Vol.18 No.12(増刊号), 2014

 ・極論で語る循環器内科 ; 香坂俊、丸善出版

 ・エクスプレス循環器病ファイル ; 村川裕二、
   メテ可カル・サイエンス・インターナショナル

 ・この薬を本当に使う理由 ; 村川裕二
   メテ可カル・サイエンス・インターナショナル








ハンプ注射用1000 _ 今日の臨床サポート - 診断・処方・エビデンス -.pdf

右心不全.pdf









posted by 斎賀一 at 18:30| Comment(0) | 循環器

2020年01月24日

心不全発症後の死因の変遷

心不全発症後の死因の変遷
 
Temporal Trends and Patterns in
Mortality After Incident Heart Failure



20124.PNG



 心不全に対する治療の進歩のお蔭でしょうか、新規に発症した心不全の1年後の死亡は減少傾向
です。
しかし、心血管疾患の減少とは裏腹に、その他の疾患による死亡が増加傾向です。
2002年から2013年にかけて、新規心不全発症の1年後の研究が雑誌JAMAに掲載されています。


1) 登録者は86,833人で、平均年齢は76.6歳です。
   2002年と比較しますと、2013年は死亡率が0.94と減少
   特に心血管疾患の死亡率は0.73でしたが、その他の死亡率(non-cardiac)は1.22と増加して
   相殺されています。
   80歳より若い人は死亡率が減少していますが、80歳以上では他の疾患の増加により、死亡率の
   好転は極めて軽度でした。
    (詳細は下記のPDFの図とグラフをご参照ください。)

2) 論評では次のように記載しています。
   心不全の進展は抑制されているが、特に80歳以上の高齢者の場合は包括的に(holistic)
   捉えなくてはいけないとしています。






私見)
 心不全の患者さんに対しては息苦しさ主体に診察してしまいますし、原因を心不全に結びつける
 傾向です。
 診察はholisticが基本の様です。






JAMA論文より.pdf

jamacardiology_conrad_2019_oi_190061.pdf













posted by 斎賀一 at 19:03| Comment(0) | 循環器