2020年09月18日

積極的降圧療法は起立性低血圧を改善する

積極的降圧療法は起立性低血圧を改善する
 
Effects of Intensive Blood Pressure Treatment on Orthostatic Hypotension



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 降圧剤を服用しているが、血圧が安定したので休薬をしたいという患者さんが多くいます。
目標は無理なく120もしくは起立時にふらつかなければ、そのまま服用を継続してくださいとお話しして
いますが、なんと厳格に血圧管理をしたほうが脳循環自動調節能が回復し、起立性低血圧が減少する
との論文がでました。

 500人以上のデータがある論文をメタ解析しています。
論文の内容は、厳格治療(intensive)とプラシーボ又は厳格治療に到達しなかった群を比較しています。
起立性低血圧の判断基準は、めまいなどの症状でなく座位から起立した際の収縮期血圧が20mg以上
の低下か、拡張期血圧が10mg以上の低下としています。


1) 5研究が厳格治療群と未到着群の比較で、4研究が厳格治療群とプラシーボ群の比較です。

2) 結論は、厳格治療群の起立性低血圧の危険率は0.93と低いようです。






私見)
 「降圧剤を服用していてふらつく場合は薬のせいかもしれませんが、きちんと治療したほうがふらつき
  も減少するかもしれません。今は血圧を下げることが大事です。」
  と勇気づけましょう。
  尚、本論文を購入する気が何故か起きず、同じ研究者の論文がありましたので掲載します。







1 Effects of Intensive Blood Pressure Treatment on Orthostatic Hypotension_ A Systematic Review and Individual Participant–based Meta-analysis_ Annals of Internal Medicine_ Vol 0, No 0.pdf


2 降圧剤 起立性低血圧 (2).pdf










posted by 斎賀一 at 19:23| Comment(4) | 循環器

2020年09月11日

 高齢者ではリクシアナの低用量が有効

 
高齢者ではリクシアナの低用量が有効
 
Low-Dose Edoxaban in Very Elderly Patients with Atrial Fibrillation
This article was published on August 30,2020, at NEJM.org



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 心房細動における脳卒中や血栓症の予防には、抗凝固薬であるDOACが基本となっています。
その中でもリクシアナは副作用の出血が少ないことから、DOACの中でもシェアが伸びています。
それでも高齢者、特に80歳以上にDOACを処方する際に臨床家は躊躇する傾向です。
腎不全、転倒、内服薬の多さ、フレイルなど高齢者を取り巻く環境は、副作用の出血に対しての懸念材料が多いためです。
今までの研究(スタディ)では80歳以上の登録がたったの17%と少なかった為、高齢者の適正量の関心があまりありませんでした。
 今回のELDERCARE-AF ClinicalTrialsでは、80歳以上の心房細動患者に対してのリクシアナ15mgの有効性を調べています。



纏めますと

1) 日本における80歳以上の心房細動患者984人を、リクシアナ15mg服用群492人と
   プラシーボ群492人に振り分けました。最終的には681人が研究を遂行しています。

2) 脳卒中もしくは全身性の血栓症の年率発生を比べますと、リクシアナ群では2.3%に対して
   プラシーボ群では6.7%と、優位に効果がありました。
   以前のENGAGE AF-TIMI 48 trialにおける80歳以上のリクシアナ30mgと60mgでのトライアル
   では2.8%と2.5%の結果と比較しても遜色はありません。
   80歳以上で腎機能のeGFRが15~30に低下している場合のリクシアナ15mgの血中濃度はeGFR
   が50の場合のリクシアナ30又は60mgの血中濃度と同じでした。
   このことが、高齢者ではリクシアナ15mgでも充分であることの根拠としています。
   重大な出血はリクシアナ群で3.3%に対し、プラシーボ群では1.8%と統計学の有意差はないとして
   います。
   解説としては、高齢者は元来すでに脳卒中と出血のハイリスク群であるとしています。





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私見)
 ともあれ、高齢者にはリクシアナ15mgで対応して参ります。










posted by 斎賀一 at 18:18| Comment(0) | 循環器

2020年08月17日

クラリス(抗生剤)とDOAC(抗凝固薬)

クラリス(抗生剤)とDOAC(抗凝固薬)
 
Risk of Hospitalization With Hemorrhage Among Older Adults Taking
Clarithromycin vs Azithromycin and Direct Oral Anticoagulants



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 最近の雑誌JAMAから、66歳以上でDOACを服用している高齢者が、クラリスを併用した場合に対して
の注意勧告が載っていましたので簡単に纏めてみまのした。
 DOACのうち、プラザキサは薬物を細胞外に排出するP糖蛋白質(Pgp)により代謝されますが、イグザレルトとエリキュースは、CYP3A4酵素によって代謝されるため、クラリスはCYP3A4とPgpの両方に阻害作用を持ち、DOACとクラリスを併用すると血中濃度が上昇し、凝固時間が長引くことが懸念されます。
 (詳しくは下記のラング・デールの薬理教科書から引用したPDFをご参照ください。見える範囲で拡大
  してください。)


1) DOACを服用している65歳以上の人が、抗生剤のクラリスを服用してから30日以内に入院を必要と
   する重大な出血のリスクを調べました。
   DOACと相互作用のあるクラリスに対して、同じマクロライド系抗生物質のジスロマックは少ないと
   されていますので、比較しています。




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2) DOAC(プラザキサ、イグザレルト、エリキュース)を服用している患者がクラリスを処方された
   6,592人に対して、ジスロマックを処方された18,351人と比較しています。
   主要転帰は、クラリスかジスロマックを処方されてから30日以内の出血による入院です。




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3) 結果
   登録患者は24,943名です。平均年齢77.6歳です。
   クラリス群では、出血による入院は0.77%(51人/6592人)に対して
   ジスロマック群では0.43%(79人/18,351人)でした。
   頻度は少ないと言えますが、明らかな差が認められています。




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   この結果はクラリス群とジスロマック群を比較したものですが、下記の様に大出血に絞って解析
   しますと、クラリス群とクラリスを服用していない群とで比較しても同様に、クラリスの出血による
   入院が多く認められています。
   結果は大出血を経験した647人の患者と延べ744件の解析で、クラリスロマイシン併用中の大出血
   は69件でした。危険率が1.44です。




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4) 考察
   CYP3A4の影響を受けてDOACの血中濃度が増加しますが、クラリスとの併用によりプラザキサ
   では60~80%の増加が報告されています。イグザレルトでは40~92%の増加、エリキュースは
   30%増加とのことです。DOAC服用の差異に関しては明白ではありませんでした。
   本研究ではピロリ菌を除菌した人は除外しています。 (クラリスを服用するため)
   自ずと本論文では限界(limitation)があります。
   DOACの服用量、クラリスを全量服用していたかの調査はしていません。
   (クラリスを服用した疾患名が、論文中に記載されていません。)






私見)
  最近では、感染症でクラリスを服用する適応疾患は少なくなっています。
  それでもDOAC服用患者さんには処方しない方が適切かもしれません。

  お盆休みで県内の孫が遊びに来てくれました。
  飛び切り熱い夏のため外遊びは避け、本屋に行きました。
  孫が「面白い歴史小説はなに?」と私に問いかけてくれました。

  本ブログを読んでいただいている患者さんから質問を受けると、夏の暑さにめげずに頑張ろう!
  と思います。







クラリス 本論文.pdf

薬理.pdf















posted by 斎賀一 at 20:48| Comment(1) | 循環器