2022年06月06日

雷雨は喘息発作を誘発する

雷雨は喘息発作を誘発する

<短 報>
Thunderstorm asthma in seasonal allergic rhinitis:
The TAISAR study



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 花粉症(ライ麦)のある人は雷雨により喘息が増悪するとの報告がありました。
メルボルンからの報告です。


1) 対象は過去に雷雨による喘息発作と診断された人と、花粉症の自己申告をした人です。
   登録者は花粉症の228人です。

2) 80/228人(35%)が花粉症のみ。 84/228人(37%)が雷雨喘息の診断を受けているが
   入院はしていない人。 64/228人(28%)が雷雨喘息で入院した人です。
   入院が必要だった雷雨喘息の殆んどの人に、喘息の既往がありました。
   しかもその人たちは、ライ麦のIgEが高値で好酸球増多です。

3) 花粉症(ライ麦)のある人は事前にIgE測定、好酸球、呼吸機能検査を行うことにより
   雷雨喘息のリスクを予測できるとしています。

4) 考察
   雷雨により花粉が破裂する。花粉の粒子が飛散する。湿度の急激な変化が原因として
   います。
   しかし、喘息のコントロールされている人は雷雨喘息は稀としています。





私見)
 日本では、ライ麦花粉症は稀、花粉症から咳発作や喘息を誘発することも稀で、
 喘息発作と天気の前線との関連性は否定的な論文が多いと、私は理解していました。
 梅雨の時期、喘息のコントロールには特段の注意が必要だと思います。







Thunderstorm asthma in seasonal allergic rhinitis_ The TAISAR study - Journal of Allergy and Clinical Immunology.pdf







posted by 斎賀一 at 19:46| 喘息・呼吸器・アレルギー

2022年05月24日

喘息のレスキューにアルブテノール+ブデソニド  本論文

喘息のレスキューにアルブテノール+ブデソニド  本論文

Albuterol–Budesonide Fixed-Dose Combination Rescue
Inhaler for Asthma MANDALA研究
[This article was published on May 15, 2022, at NEJM.org.]



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 喘息発作の治療に、短期作用β刺激薬(SABA)が主役です。
喘息発作は気管支平滑筋の痙攣が病態ですが、その根底には炎症が存在します。
よってSABAだけでは発作改善には限界があり、逆にSABAの使用頻度が喘息のコントロール
不良の指標ともなります。喘息のガイダンスでもあるGINAも、喘息発作のレスキューとして
SABAと吸入ステロイドの併用を勧めています。
SABAの中でもアルブテノール(サルタノール、ベネトリン)は世界で一番使用されていますし、
FDAに承認されている唯一のレスキューとしてのSABAです。
アストラゼネカのPT027(アルブテノール+ブデソニド)合剤の試験結果が雑誌NEJMに掲載
されています。


1) 中等症以上でコントロール不良の喘息患者のレスキューが対象です。
   12歳以上の患者、3,132名を3群に分けています。
   高容量群 (アルブテノール90μg+ブデソニド80μgを2回吸入)
   低用量群 (アルブテノール90μg+ブデソニド40μgを2回吸入)
   単独群  (アルブテノール90μgを2回吸入)
   期間中に一日に吸入を行った回数は3群とも同じで、1.5回よりも少ないようです。
   また吸入の反応により高容量群と低用量群の間では、個人の判断で変更が可能として
   います。
   4歳から11歳の年齢層では、低用量群と単独群だけで試験を行っています。
   主要転帰は、重症発作時でのレスキューから最初の発作までの時間です。

2) 結果
   97%が12歳以上で実施されています。
   重症発作のリスクは単独群と比較して高容量群が26%軽減(危険率は0.74)
   単独群と比較して低用量群では危険率は0.84でした。
   副反応は3群ともに同じでした。(アルブテノールの容量が同じのためでしょうか) 
 
3) 考察
   本試験はコロナ禍でも実施されました。
   小児の症例が少ないのが残念ですが、今後の研究が待たれます。

4) 結論
   重症の喘息増悪(発作)では、トータルでアルブテノール180μg+ブデソニド160μg
   の固定吸入が有効でした。 




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私見)
 従来より、急性増悪の場合にはサルタノールもしくはベネトリン吸入後にステロイド吸入
 を行っていましたが、合剤が発売になれば治療の選択肢は増えるので、私としては歓迎です。
 取り敢えずは、サルタノール+フルタイド、サルタノール+シンビコート、
 コンプレッサーによるベネトリン+パルミコートも治療戦略でしょうか。







PT027, a novel fixed-dose combination.pdf










posted by 斎賀一 at 20:54| 喘息・呼吸器・アレルギー

2022年05月23日

喘息のレスキューにアルブテノール+ブデソニド その1

喘息のレスキューにアルブテノール+ブデソニド その1

 
 <院内勉強用>

 喘息の吸入治療薬の主役はアドエアとシムビコートです。
現在は脇役も活躍していますが、喘息の治療戦略は維持療法のコントローラと、急性治療の
レスキューです。アストラゼネカ社のシムビコートはコントローラとレスキューの両面に適応が
あり、本院でも頻用しています。
 今回そのアストラゼネカから新たなレスキューとして、短時間作用β刺激薬のアルブテノール
とステロイド薬のブデソニドの合剤の試験が、雑誌NEJMに発表されています。


混乱をしないために予備知識として

1) 短時間作用β刺激薬(SABA)のアルブテノールはアメリカでの用語で、日本では
   サルブタモールで商品名はサルタノール、又はベネトリンです。

2) アドエアとシムビコートは長時間作用β刺激薬(LABA)+ステロイド薬の合剤です。
   アドエアは、サルメテロール(商品名はセレベントでサルタノールではありません)
   +フルチカゾン(フルタイド)
   シムビコートは、ホルメテロール+ブデソニド(パルミコート)
   ホルメテロールは量を増やせばそれなりに効果が高まりますが、サルメテロールは量を
   増やしても効果は増加しません。
   ステロイド薬のフルチカゾンの方がブデソニドより作用が強力です。
   以上のことから、シムビコートは漸増することが可能であるため、レスキューとしても
   有効なのかもしれません。

3) SMART研究とSMART療法は、ある意味で真逆ですので注意が必要です。
   LABAのセレベントが発売になった時は、喘息治療の福音だと思いました。
   これがあったら、あのテレサテンも助けられたのにと残念に思いました。
   その後アメリカの黒人を中心にセレベントの有害事象が報告され、セレベントを使用する
   なら、必ず吸入ステロイドを併用しなくてはならないとのお達しが出ました。
   それがSMART研究です。
   それに呼応して合剤のアドエアが登場しました。
   一方でSMART療法とは、シムビコートがレスキューとしても適応があるとの報告があり、
   シムビコートは二刀流の活躍となりました。
   今回はレスキュー専門の合剤の発表です。

4) 喘息発作は津波のように2回襲ってくると言われています。
   1回目の発作はSABAで対応できますが、喘息は炎症のため2回目の発作に対してはステロ
   イド薬が必須です。
   そのため今回のSABA+ステロイド薬の合剤は、レスキューとして期待されます。






私見)
 本日はこれでタイムオーバーです。
 久しぶりに仲間と養老川にスケッチに出かけ、ゆったりとした気分になりました。
 明日は気合を入れて、本論文に関してブログ作成します。 








1 smart 研究.pdf

2 smart療法.pdf









posted by 斎賀一 at 19:17| 喘息・呼吸器・アレルギー