2022年07月25日

3剤配合吸入薬(ステロイド+LABA+LAMA)の有用性

3剤配合吸入薬(ステロイド+LABA+LAMA)の有用性

Adherence and Persistence to Single-Inhaler Versus Multiple-Inhaler
Triple Therapy for Asthma Management



40725.PNG



 喘息治療の吸入剤には吸入ステロイド(ICS)、長時間作用型β2刺激薬(LABA)と
長時間作用型抗コリン薬(LAMA)がありますが、この3剤配合薬の一日一回吸入がアドへ
ランス(服薬遵守(じゅんしゅ))において有効との論文が出ています。
ご迷惑かと思いますが、以前の私のブログのオンパレードを下記に掲載します。
世界の基準GINA2021年に依りますと、アドへランスが喘息のコントロールに重要との指摘
です。
吸入療法のstep upを迅速に行うことが、喘息の増悪を防ぐとも言われています。
またGINAのガイドレインでも、LAMAの追加を肺機能の保持の点からも推奨しています。
しかし、アメリカと日本からの報告では3者併用のアドへランスの低下も指摘されています。
アメリカのFDAは、1日1回吸入の3者配合剤を承認しています。


1) 1,396例の3剤配合薬(single) 平均年齢50.6歳と5,115例の多剤併用(MITT)
   平均年齢50.2歳を比較しています。3か月の導入期間後6か月と12か月後の調査です。
   本研究では中途での変更は認めていません。
   対象は18歳以上です。(LAMAは12歳以上が適応です)
   調査対象からCOPDは除外されています。
   2016年9月18日より2019年12月31日の期間です。  
   PDC(proportion of days covered)と45日以上の怠薬のnon-persistenceを
   調べました。PDCは全日数に対する吸入日の割合です。
   0.8以上と0.5以上を調べました。

2) 3か月後の時点では、PDCはsingleで0.68に対し、MITTは0.59でした。
   6か月後はsingleが0.56に対し、MITTは0.46です。
   12か月後はsingleが0.46に対し、MITTは0.35です。

3) singleの方がMITTに比べて、50%以上も継続治療をしていました。




       
       40725-2.PNG  
 
           FF/UME/VIがsingle  MITTが多剤併用




       40725-3.PNG





  
4) 配合剤(single)の方が、アドへランスが高いことを証明しました。
   本論文では喘息に対する効果は調べていませんが、他の文献からアドへランスが
   高ければ、喘息のコントロールも良好とのデータが出ています。








私見)
 喘息の治療の基本は頂上作戦です。
 まずしっかりした治療から始め、ステップダウンする方法です。(血圧などは裾野作戦で、
 少しづつステップアップする方法です。)
 以前のブログでも急性期にはサルタノール+フルタイド、サルタノール+シンビコート、
 コンプレッサーによるベネトリン+パルミコートの治療戦略を記載しましたが、3剤配合薬の
 頂上作戦も選択肢です。
 尚、最近この3剤配合薬が喘息に適応になりました。
 1日1回の吸入もアドへランスから有効で、頂上作戦及びステップアップ両方とも有効かも
 しれません。






本論文.pdf

3剤配合剤吸入薬(ステロイド+LABA+LAMA).pdf

COPD(慢性閉塞性肺疾患)の急性増悪.pdf

COPDに対する吸入薬(レルべア)の効果_.pdf

COPDの新たな吸入薬_.pdf

気管支喘息ガイドライン・2020年版 その2_.pdf

気管支喘息ガイドライン・2020年版.pdf

吸入療法の仕方の間違い.pdf

軽症喘息には合剤(ICS+LABA)の頓用as needed.pdf

成人における重症、治療抵抗性の喘息.pdf

中等症以上の喘息治療は3剤併⽤療法が有効.pdf

難治性の喘息患者の鑑別.pdf

閉塞性肺疾患における吸入剤_.pdf

慢性閉塞性肺疾患の初期治療の注意:LABAとLAMA.pdf

喘息のレスキューにアルブテノール+ブデソニド  本論文.pdf

喘息のレスキューにアルブテノール+ブデソニド その1_.pdf















posted by 斎賀一 at 22:16| 喘息・呼吸器・アレルギー

2022年06月06日

雷雨は喘息発作を誘発する

雷雨は喘息発作を誘発する

<短 報>
Thunderstorm asthma in seasonal allergic rhinitis:
The TAISAR study



40606.PNG


     
 花粉症(ライ麦)のある人は雷雨により喘息が増悪するとの報告がありました。
メルボルンからの報告です。


1) 対象は過去に雷雨による喘息発作と診断された人と、花粉症の自己申告をした人です。
   登録者は花粉症の228人です。

2) 80/228人(35%)が花粉症のみ。 84/228人(37%)が雷雨喘息の診断を受けているが
   入院はしていない人。 64/228人(28%)が雷雨喘息で入院した人です。
   入院が必要だった雷雨喘息の殆んどの人に、喘息の既往がありました。
   しかもその人たちは、ライ麦のIgEが高値で好酸球増多です。

3) 花粉症(ライ麦)のある人は事前にIgE測定、好酸球、呼吸機能検査を行うことにより
   雷雨喘息のリスクを予測できるとしています。

4) 考察
   雷雨により花粉が破裂する。花粉の粒子が飛散する。湿度の急激な変化が原因として
   います。
   しかし、喘息のコントロールされている人は雷雨喘息は稀としています。





私見)
 日本では、ライ麦花粉症は稀、花粉症から咳発作や喘息を誘発することも稀で、
 喘息発作と天気の前線との関連性は否定的な論文が多いと、私は理解していました。
 梅雨の時期、喘息のコントロールには特段の注意が必要だと思います。







Thunderstorm asthma in seasonal allergic rhinitis_ The TAISAR study - Journal of Allergy and Clinical Immunology.pdf







posted by 斎賀一 at 19:46| 喘息・呼吸器・アレルギー

2022年05月24日

喘息のレスキューにアルブテノール+ブデソニド  本論文

喘息のレスキューにアルブテノール+ブデソニド  本論文

Albuterol–Budesonide Fixed-Dose Combination Rescue
Inhaler for Asthma MANDALA研究
[This article was published on May 15, 2022, at NEJM.org.]



40524.PNG
 
  

 喘息発作の治療に、短期作用β刺激薬(SABA)が主役です。
喘息発作は気管支平滑筋の痙攣が病態ですが、その根底には炎症が存在します。
よってSABAだけでは発作改善には限界があり、逆にSABAの使用頻度が喘息のコントロール
不良の指標ともなります。喘息のガイダンスでもあるGINAも、喘息発作のレスキューとして
SABAと吸入ステロイドの併用を勧めています。
SABAの中でもアルブテノール(サルタノール、ベネトリン)は世界で一番使用されていますし、
FDAに承認されている唯一のレスキューとしてのSABAです。
アストラゼネカのPT027(アルブテノール+ブデソニド)合剤の試験結果が雑誌NEJMに掲載
されています。


1) 中等症以上でコントロール不良の喘息患者のレスキューが対象です。
   12歳以上の患者、3,132名を3群に分けています。
   高容量群 (アルブテノール90μg+ブデソニド80μgを2回吸入)
   低用量群 (アルブテノール90μg+ブデソニド40μgを2回吸入)
   単独群  (アルブテノール90μgを2回吸入)
   期間中に一日に吸入を行った回数は3群とも同じで、1.5回よりも少ないようです。
   また吸入の反応により高容量群と低用量群の間では、個人の判断で変更が可能として
   います。
   4歳から11歳の年齢層では、低用量群と単独群だけで試験を行っています。
   主要転帰は、重症発作時でのレスキューから最初の発作までの時間です。

2) 結果
   97%が12歳以上で実施されています。
   重症発作のリスクは単独群と比較して高容量群が26%軽減(危険率は0.74)
   単独群と比較して低用量群では危険率は0.84でした。
   副反応は3群ともに同じでした。(アルブテノールの容量が同じのためでしょうか) 
 
3) 考察
   本試験はコロナ禍でも実施されました。
   小児の症例が少ないのが残念ですが、今後の研究が待たれます。

4) 結論
   重症の喘息増悪(発作)では、トータルでアルブテノール180μg+ブデソニド160μg
   の固定吸入が有効でした。 




        40524-2.PNG




   

私見)
 従来より、急性増悪の場合にはサルタノールもしくはベネトリン吸入後にステロイド吸入
 を行っていましたが、合剤が発売になれば治療の選択肢は増えるので、私としては歓迎です。
 取り敢えずは、サルタノール+フルタイド、サルタノール+シンビコート、
 コンプレッサーによるベネトリン+パルミコートも治療戦略でしょうか。







PT027, a novel fixed-dose combination.pdf










posted by 斎賀一 at 20:54| 喘息・呼吸器・アレルギー