2022年11月15日

アナフィラキシーガイドライン2022より

アナフィラキシーガイドライン2022より

<院内勉強用>


 今回、2022年度版が発表になっています。かなり要点を纏めて、実戦的になっています。
私のブログで紹介しました海外のガイドラインでは診断基準が優先し、その結果、皮膚所見
からのアプローチにやや重きがある印象ですが、本ガイドラインはリスクの高い循環不全に
焦点を合わせている印象です。
職員の皆さんも下記の要約をスマホにダウンロードして、迅速に対応しましょう。
以前の私のブログからも少し補足します。


・末梢性循環不全( 症状としては少なくとも以下の2つの組み合わせ)
 頻脈、3秒以上のcapillary refill time 、意識レベルの低下
 アナフィラキシーと鑑別を要する迷走神経反射は、一般的に徐脈です。
 アナフィラキシーの場合は、血液成分が急に血管外に漏出するので頻脈です。
 アナフィラキシーも経過により徐脈になりますが、咄嗟の判断では頻脈で、血圧90以下
 ではアナフィラキシーと診断していいものと思います。

・アドレナリン筋注は大腿の外側広筋です。
 大腿の側方後方の溝のやや前方の筋肉が外側広筋です。それに向かって大腿の真ん中辺り
 を深く筋注します。
 半減期が短いので、救急車が到着する前に(30分前後)再度筋注する場合も想定します。
 過量投与に関しては私のブログを参照ください。






1 アナフィラキシーガイドライン 2022.pdf

2 アナフィラキシー1.pdf

3 アナフィラキシー反応2.pdf

4 アナフィラキシーの診断基準.pdf

5 アナフィラキシーの診断基準に対する備考.pdf

6 アナフィラキシーのアドレナリン過剰投与.pdf











posted by 斎賀一 at 19:09| 喘息・呼吸器・アレルギー

2022年09月15日

慢性蕁麻疹

慢性蕁麻疹

 
Chronic Urticaria
[N Engl J Med 2022;387:824-31.]



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 蕁麻疹がコントールされない患者さんを多く経験します。
原因の検査を希望されますが、ガイドラインも積極的には推奨していません。

 今回雑誌NEJMに総説が載っていましたのでブログします。


1) 急性と慢性の区切りは6週間としています。
   (本院では従来、1週間と説明していました。)
   慢性蕁麻疹は、あらゆる年齢層に認められます。
   QOLの低下は狭心症患者に匹敵します。

2) 分類
   特発性(spontaneous)、血管浮腫(クインケ浮腫)、誘発性蕁麻疹(運動蕁麻疹)、
   寒冷蕁麻疹、その他温熱、圧迫により生ずる蕁麻疹があります。

3) 病態は表皮内のmast細胞の脱顆粒により、ヒスタミンをはじめサイトカインが放出される
   ためです。
   それらのサイトカインが血管を拡張し、血管透過性が亢進し皮下に症状を引き起こし
   ます。
   慢性の蕁麻疹は急性と異なり、その原因は不明のことが多いです。
   水性蕁麻疹は、水に融解した混合物が皮膚に浸透して蕁麻疹を誘発します。
   基礎疾患として、関節リウマチ、感染症、血液の腫瘍等がありますが稀です。
   急性の場合は24時間以内に自然消退しますが、2/3は蕁麻疹と血管浮腫を同時に発症し
   ます。
   残りの1/3は蕁麻疹か血管浮腫の単独です。
   血管浮腫は蕁麻疹と同じ病態ですが、蕁麻疹よりも病態の場は深く、真皮や皮下組織に
   及びます。
   疼痛を伴ったり、24時間以上の病変であざを残す場合は、他の疾患、血管炎などの鑑別が
   必要です。
   コリン性蕁麻疹は寒熱が誘因ですが、運動により増悪し食物が関与する場合があります。
   例えは、アルコール、解熱鎮痛薬(NSADs)、生理、排卵、などです。

4) 多くの慢性蕁麻疹は原因が不明ですが、感染症(B型肝炎、C型肝炎、E-Bウイルス
   感染症、ヘリコバクター感染症)、リウマチ性疾患、甲状腺疾患、血液系腫瘍、
   卵巣疾患、避妊治療が関与している場合もあります。

5) 治療の第一歩は鎮痛解熱薬を避けてアセトアミノフェンに切り替えるべきです。
   誘因となる原因食物を経験的に排除する事は、明白は利点は認められておらず、推奨
   されていません。
   先ず選択する治療薬は第二世代の抗アレルギー薬です。
   第一世代は副反応があり推奨されていません。
   定期服用が推奨されており、頓用(add on 療法)は効果を認めていません。
   このstep1で50%がコントロールできます。
   次にstep2とした第二世代の抗アレルギー薬の4倍量の増量も可能で、FDAも承認して
   います。
   更にH2-抗ヒスタミン薬の(本院ではタガメット)追加も可能です。
   ロイコトリエン拮抗薬も有効です。
   (その他、ステロイド薬も含めて本院では採用していないため省略)

6) エビデンスに叶う生化学的血液検査はありません。






私見)
 クインケ浮腫と慢性蕁麻疹の合併が意外に多い、コリン性蕁麻疹と運動との関連性、
 第二世代の4倍量の投与(従来本院では倍量療法)など私にとって新知見がありました。












posted by 斎賀一 at 15:17| 喘息・呼吸器・アレルギー

2022年08月22日

肺炎に抗生剤の時短療法

肺炎に抗生剤の時短療法

<短報>
Ultra-Short-Course Antibiotics forSuspected Pneumonia
With Preserved Oxygenation




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 肺炎と診断した時点で、酸素濃度(サチュレーション;Spo2)を測定し、
95%以上の患者を選んで、抗生剤を時短群として1〜2日間、通常群として
5日間以上の両群に振り分けて調べています。
肺炎の重症度は、肺組織の病変の程度との立場から、酸素の取り込みで
治療基準が設定出来ないか調べました。


 1) 2017年5月から2021年2月までの、4病院からの集計です。
    39,752人の肺炎疑い患者を登録しています。時短群は2,871人、
    通常群は2,891人です。
    その中から、比較対象出来る患者を抽出しています。

 2) 入院死亡率は、両群ともにほぼ同じで、時短群2.1%、
    通常群は2.8%、リスク率は0.75
    30日間観察で入院freeの日数は、時短群23.1日に対し、
    通常群22.7日です。危険率は1.01
    30日間での死亡率は、時短群4.6%、通常群5.1%です。
    危険率は0.91
    腸内感染のC.difficileは、時短群で1.3%、通常群0.8%です。
    危険率は1.67

 3) 市中肺炎で入院する患者の1/3から1/2は、ウイルス性肺炎です。
    院内感染の肺炎では、1/5がウイルス性肺炎です。
    本研究の対象者の半分は、ウイルス性肺炎の可能性があります。

 4) 症状が安定して、バイタルサインも正常で、Spo2が95以上なら、
    抗生剤を1〜2日間で中止し、経過観察とするストラテジーも可能
    とのことです。




私見)
 今回、時間的余裕がなく、元文献を調べていません。年齢層、抗生剤に
ついては不明です。
 上気道感染症の、本院の今までのストラテジーを更に進化させ、
聴診所見がなく、Spo2が95%以上の場合は、抗生剤なし。
CRP検査を行った場合で2以上(小児は1.5以上)の場合は、抗生剤を2日間処方。
更に、聴診所見がある場合は、レントゲン検査か2次施設へのご紹介。
といったストラテジーが、今は頭に浮かんでいます。
CRP検査の前に、Spo2測定が原則のようです。
  



抗生剤 時短 .pdf















posted by 斎賀一 at 22:54| 喘息・呼吸器・アレルギー