2021年03月19日

アナフィラキシーの診断基準に対する備考

 
アナフィラキシーの診断基準に対する備考

  〜患者さんへの事前説明について



 Brightonの診断基準の中でstridorとwheezingが載っていました。
ベンツ診察法より調べましたが、アナフィラキシーの診断の際にはどちらでも良いと思っています。
 reduced central pulse volumeもいろいろ調べましたが分かりませんでした。
中心静脈圧の事でしょうか。とりあえず中心静脈圧に関して下記に掲載します。
原文が最も理解しやすいのですが、やはりアナフィラキシーの診断の際には外頸静脈で内頸静脈を代用するか、capillary refill timeのみで診察するかを考えています。
携帯エコーで下大静脈を調べる方法もありか、とも思われますがどうでしょう。
 迷走神経反射は一般的に徐脈です。アナフィラキシーの場合は血液成分が急に血管外に漏出するので
頻脈です。これで鑑別できないかと思っています。
ワクチンの接種前にアナフィラキシーについて診断基準も含めて十分な説明責任があると思っている
のですが…


 私が学生時代に歯科を受診した際、今と違って歯ぐきに直接打つ麻酔がめっぽう痛かったのを覚えて
います。先生が「気分が悪くなるといけないので、しばらく経過を見てから抜歯をします。」と親切に説明
された瞬間に、座ったまま目の前が真っ暗になり抜歯もせずに帰ってきたのを思い出します。
 その昔、医学部5年のとき外科のベットサイドティーチングがあり、憧れの女学生と一緒の班になりま
した。外来での神経ブロック麻酔の見学時に、その女学生が失神を起こして倒れてしまいました。
それを見た私も目の前が真っ暗になってしゃがみこんだ思い出があります。


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4 原文The Jugular Venous Pressure and Pulse Contour - Clinical Methods - NCBI Bookshelf.pdf

5 頸静脈 Examination of the Neck VeinsNEJMvcm1806474.pdf

6 ベルツ診察法.pdf

7 マクギーの身体診断学1.pdf

8 ネット 頸静脈圧.pdf

9 ベンツ診察よりstridor wheezing.pdf

10 jugular venous pressure.pdf











posted by 斎賀一 at 19:55| Comment(2) | 喘息・呼吸器・アレルギー

アナフィラキシーの診断基準

アナフィラキシーの診断基準
 
BrightonとNIAID/FAAN基準



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 以前のブログでも紹介しましたが、代表的な診断基準はBrightonとNIAID/FAANの二つのようです
が、ゴールドスタンダードはないとの事です。
 新型コロナワクチンにおける厚労省のアナフィラキシーの報告は、Brighton基準に則っています。
ネットで厚労省のBrighton基準を手に入れましたが、よく理解できないため原文から私なりに纏めて
みました。
残念ながら似たり寄ったりの出来栄えです。でも職員の皆さんに説明する際は自分の方が納得している分、良いかもしれませんのでブログします。
尚、NIAID/FAAN基準は先のブログで掲載しましたので参考にしてください。


#Brightonの診断基準
<アナフィラキシーの症例定義>
 診断の必須条件としては
 ・急な発症 ・症状や所見が急激な進行性 ・2つ以上の臓器障害です。

 診断確実性のレベル1
 ・1つ以上のメジャーな皮膚症状
 ・且つメジャーな循環器症状、またはメジャーな呼吸器症状

 診断確実性のレベル2
 ・メジャーな循環器症状且つメジャーな呼吸器症状
 ・メジャーな循環器症状、またはメジャーな呼吸器症状とそれぞれ別の臓器のマイナーな症状が、
  2つ以上の組み合わせ
 ・メジャーな皮膚症状とマイナーな循環器症状、またはマイナーな呼吸器症状

 診断確実性のレベル3
 ・マイナーな循環器症状またはマイナーな呼吸器症状と、それぞれ別の臓器のマイナーな症状の組み
  合わせ
  (現実的にはマイナーな皮膚症状があれば更にマイナーな循環器症状か、マイナーな呼吸器症状が
   追加されればレベル3)

 結局はメジャーな皮膚症状があり、マイナーな循環器症状か呼吸器症状が加わればレベル2以上
 マイナーな皮膚症状なら、メジャーな循環器症状か呼吸器症状が加わればレベル3以上


<メジャーなクライテリア>
 皮膚粘膜症状
 ・全身の蕁麻疹または全身の紅斑
 ・局所または全身の血管浮腫
 ・発疹を伴う全身の掻痒感

 循環器症状
 ・低血圧
 ・非代償のショック
 次のうちの少なくとも3つを伴う 
 ・頻脈、・3秒以上のcapillary refill time、・意識の低下または意識消失、・central pulse
  volumeの低下

 呼吸器症状
 ・両側性の喘鳴 ・stridor ・口唇/舌/咽頭/口蓋垂の腫脹 ・呼吸障害 
  次のうちの2つ以上
  過呼吸 陥没呼吸 チアノーゼ 努力呼吸

<マイナーなクライテリア>
 皮膚症状/粘膜症状
 ・発疹を伴わない全身性掻痒感
 ・ 全身がちくちくと痛む感覚
 ・ 接種部位の蕁麻疹
 ・いわゆる赤目

 循環器系症状
 ・末梢性循環不全(症状としては少なくとも以下の2つの組み合わせ)
  頻脈、3秒以上のcapillary refill time 、意識レベルの低下

 呼吸器系症状
 ・持続する咳嗽
 ・嗅声
 ・呼吸苦、呼吸困難
 ・喉の閉塞感
 ・くしゃみ、鼻汁

 消化器系症状
 ・下痢
 ・腹痛
 ・悪心
 ・嘔吐



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#NIAID/FAANの診断基準
 ・診断基準1;⽪膚粘膜症状(S)が急速(数分から数時間)に出現し、気道(A)、呼吸(B)、循環(C)
  のいずれか1症状以上を伴った場合は、アナフィラキシーと診断する。
  アナフィラキシーの80%以上がこの基準を満たす。

 ・診断基準2;⼀般的にアレルギーの誘因となり得る物質への曝露後、気道(A)、呼吸(B)、循環(C)
  消化器(D)⽪膚(S)のいずれか2症状が急速(数分〜数時間)に出現したら、アナフィラキシーと
  診断する。

 ・診断基準3;既知のアレルゲンに曝露後、急速(数分〜数時間)な⾎圧低下が11歳〜成⼈では
  <90mmHg、または、全年齢で平常時収縮期⾎圧の<70%)がみられる。




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私見)
 本院では、NIAID/FAAN診断基準に基づいて迅速に対応しましょう。
 ただBrighton診断基準のマイナーな症状も、理解しておくことが大事です。
 このことから、接種の事前問診をこの診断基準にそって本院並みに作成してください。
 例えば、血圧、脈拍、呼吸器疾患の既往歴に関しての聴診所見、薬の服用、花粉症などです。






1 Brighton基準.pdf

2 NIAIDFAAN基準.pdf

3 厚労省Brighton.pdf







posted by 斎賀一 at 19:30| Comment(2) | 喘息・呼吸器・アレルギー

2021年03月16日

アナフィラキシーの再々勉強

アナフィラキシーの再々勉強



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Uptodateにて再々勉強をしましたが、やはり曖昧に認識していた点をuptodateは明解に答えて
くれます。

1) アナフィラキシーとは食物、薬剤、昆虫などに対して免疫グロブリンのIgEが反応し、更にmast
   cell(マスト細胞)が脱顆粒を起こし、そのサイトカインが全身に広がるためである。
   時に直接マスト細胞がアレルギー物質に反応する場合もある。

2) アナフィラキシーの症状は多岐にわたり、しかも非定型でもあるため、慎重に迅速に診断しなければ
   生命にかかわる病態である。
   真っ先にエピネフリン注射が第一選択である。
   抗ヒスタミンやステロイド剤も第二選択としてあるが、これらは生命予後に関与するほどの効果は
   期待できない。

3) 診断の基準(クライテリア)は、下記の3つのうちの一つでも満たされれば診断の精度は高い。
    (診断基準については次回改めてブログしますが、uptodeteではNIAID/FAANの診断基準を
     取り扱っています。)





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@ 数分から数時間で急に発生する皮膚又は粘膜、もしくは両方の症状(全身の蕁麻疹、掻痒感、紅潮、
   口唇と舌と口蓋垂の腫れ)と、少なくとも下記の一つの症状を伴う場合
   ・呼吸器障害(呼吸困難、喘鳴wheeze stridor、低酸素)
   ・血圧低下とそれに関与する症状 めまい 失神 失禁
   アナフィラキシーにおいて皮膚症状は90%出現するので、このクライテリアの精度は高い。

A アレルギー物質に晒されて、急に起こった下記の2つ以上の症状
   ・皮膚粘膜症状
   ・呼吸器障害
   ・血圧低下及びそれに随伴する症状
   ・持続する消化器症状(腹痛、嘔吐)
   このクライテリアは、消化器系にアレルギー物質が晒される場合を想定しています。

B 血圧の低下
   収縮期血圧が90以下、もしくはベースラインから30%低下
   ・接種前に血圧を測定しておくことが肝要です。
    このクライテリアはアレルギー物質が明白な場合に適応されます。
    しかもたった一つの臓器、つまり循環器症状の血圧に絞っての診断です。

 以上、3つのクライテリアのすべて満たさなくても迅速かつ適切にアナフィラキシーを診断し、エピネ 
 フリン注射を実施しなくてはなりません。
 この診断方法は感度が95%で、特異度は71%です。


 もう少し詳しく症状を見ますと
  ・皮膚粘膜症状は90%出現します。
   全身の蕁麻疹、掻痒感、紅潮、口唇・舌・口蓋垂の腫脹、眼瞼浮腫、結膜浮腫・充血です。
   しかしこれらの症状は時間とともに消失し、診断を誤ることがあるので十分な問診が大事です。
  ・呼吸器症状は85%に出現します。
   鼻漏、鼻閉、くしゃみ、咽頭や耳のかゆみ、声がかすれる、喉の閉塞感、喘鳴、咳などです。
  ・消化器症状は45%に出現します。
   嘔気、嘔吐、下痢、腹痛発作
  ・循環器症状は45%に出現します。
   循環障害・collapse、失神、失禁、めまい、頻脈、血圧低下


診断の落とし穴 pitfalls
アナフィラキシーの診断は容易ではありません。過少診断の傾向です。
・ある臨床家は低血圧やショックがないと、なかなかアナフィラキシーの診断を下さない傾向です。
 早めの診断が、その先の重大な段階を阻止します。
・血圧低下は、最初は頻脈のために覆い隠されてしまう場合があります。
 またエピネフリン注射の後では、血圧は回復していることもあり低血圧があったか不確かとなります。
・低血圧や低酸素症ははっきりした症状でなく、呼吸困難、喘鳴、意識障害、見当識障害、失禁などの
 非特異的症状の場合があります。
・皮膚症状は診断の要ですが、10%が認識されなかったり、訴えなかったり、見逃されたりしてしまい
 ます。
・喘息の既往のある人は、いつもの喘息だと思って他の症状との合併だと思わない傾向があり、ショックの
 前段階との認識がない事もあります。
・その他の基礎疾患、つまり認知症、抗不安薬服用、抗アレルギー薬の服用、が症状を見誤ってしまい
 ます。 (花粉症の時期は特に注意が必要です。)


基礎疾患の問題
・持続性の喘息 ・CPOD ・心血管疾患 はアナフィラキシー反応を増悪させます。
・βブロッカー(経口薬と点眼薬)、降圧剤のACE阻害薬はアナフィラキシー反応を増悪させるとの報告が
 ありますが、新しいエビデンスありません。
 しかしβブロッカーとACE阻害薬の併用は現在でも十分に注意が必要ですし、特にβブロッカーはエピネ
 フリン注射の効果を減弱します。
・鎮痛解熱剤(NSAIDs)や麻薬鎮痛薬(オピオイド)は、マスト細胞を賦活化させます。


治療に関して

・失神で倒れ掛かった人を抱きかかえるのは、小さな親切大きな迷惑です。
 循環障害・collapseが起きているので、そっと寝かせて足を高くしてあげることが大事です。
・エピネフリン注射が基本です。注射部位は大腿中央外側、つまり外側広筋と明言しています。




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グルカゴンについて 
・βブロッカーを服用している人は、エピネフリン注射の効果が減弱していると言われていますが、789人
 のエビデンスではエピネフリン注射の効果は充分にあり、追加のエピネフリン注射は必要ありません
 でした。
 そのため第一選択はあくまでもエピネフリン注射です。グルカゴンは第二選択です。
 グルカゴンの静注は、5分かけてゆっくりと1~5rを投与します。
  (日本の文献では0.5〜1.0mgの筋注か静注となっています。)
・H1ブロッカー、H2ブロッカー、吸入気管支拡張薬、ステロイドは、エピネフリン注射の補完的な意味
 合いで、決して第一選択薬でもなければアナフィラキシーの生命予後に効果はありません。
 エピネフリン注射の後の症状緩和のために使用してください。
 抗アレルギー薬もエピネフリン注射の効果増強に役立ちますが、その使用はあくまでもエピネフリン注射
 の後に使用すべきです。





◆参考文献  UPTODATE

   Anaphylaxis: Acute diagnosis
   Anaphylaxis: Confirming the diagnosis and determining the cause(s)
   Anaphylaxis: Emergency treatment







私見)
 基礎疾患のある方は、ワクチンを控えたほうがいいといった話ではありません。
 アナフィラキシーを起こした場合に重症化の危険があるということで、これからワクチンを接種する場合
 とは別の次元と解釈してください。
 つまり、基礎疾患のある方はアナフィラキシーの診断のクライテリアを下げる必要があります。
 更に喘息の既往のある方は、呼吸器症状以外の症状が出現したら、アナフィラキシーと診断すべきかも
 しれません。もちろんβブロッカーは継続服用を指導します。
 次回のブログで診断基準を纏めてみたいと思います。







外側広筋.pdf












posted by 斎賀一 at 20:26| Comment(3) | 喘息・呼吸器・アレルギー