2018年07月07日

気管支喘息吸入薬の吸入ステロイド+LABAは安全

気管支喘息吸入薬の吸入ステロイド+LABAは安全
 
Combined Analysis of Asthma Safety
Trials of Long-Acting β2-Agonists
N Engl J Med 2018;378:2497-505



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 長期作用型の気管支拡張吸入薬(LABA)が上市された時は、その効果と使用方法に驚愕を受けたことを覚えています。
しかしその後黒人を中心とした死亡例の報告があり(SMART試験)、アメリカのFDAの警告によりwarning boxに入ってしまいました。その後はLABAと吸入ステロイドを併用すれば重大な副作用は無いとされ、混合薬が使用されています。
しかし、少数例ながら併用でも重大な事象の懸念から、FDAは各メーカーに市販後調査を命令しました。アストラゼネカ(シムビコート)、グラクソスミスクライン(アドエア、レルペア)、メルク、ノバルティスの4社
です。FDAの管理下で同様なプロトコールの基で調査を行いました。この管理委員会に雑誌NEJMも加わっています。
(尚、予め混合したものと別々に併用したのかが明白でないため、ブログでは混合薬とか併用薬と記載しますが、同じ意味に解釈してください。)



論文を纏めますと

1) 主要転帰(一次エンドポイント)は喘息に関連した挿管や死亡、副次的転帰(二次エンドポイント)は
   重篤な喘息関連の状態、喘息発作などとしています。

2) 対象は36,010人を吸入ステロイド+LABAの併用療法の群と吸入ステロイド単独の群の2群に
   分けています。

3) 喘息に関連する挿管が 3件(吸入ステロイド群 2 件、併用療法群 1 件)と、喘息に関連する死亡
   が 2 件(いずれも併用療法群)ありました。
   これは1/7,200人の発生です。
   重篤な喘息関連イベント(入院、挿管、死亡の複合)の副次的解析では、1件以上の複合イベントが
   吸入ステロイド群 18,006 例中 108 例(0.60%)と、併用療法群 18,004 例中 119 例
   (0.66%)で発生し(併用療法群の相対リスク 1.09)、1 件以上の急性喘息増悪発作が、吸入ステ
   ロイド群の 2,100 例(11.7%)と、併用療法群の 1,768 例(9.8%)で発生した。
   (相対リスク 0.83)
   明らかに併用療法の方が有効でした。

4) LABA+吸入ステロイド併用療法では、吸入ステロイド単独と比較して重篤な喘息関連イベントの
   リスクが有意に高まる結果とはならず、喘息発作が有意に少なかった。
   これは併用の方が喘息増悪を17%減少していました。

5) 併用の方で増悪する場合がありましたが、これは治療に対する反応が悪い喘息のパターンもあり、
   対象が多くなればこのような一群が存在するのは仕方ないと説明しています。

6) 結論として、LABA+吸入ステロイド併用療法では吸入ステロイド単独と比較して、重篤な喘息関連
   イベントのリスクが有意に高まる結果とはならず、喘息発作が有意に少なかった。

7) 論文の最後にLABA+吸入ステロイド併用の併用療法はFDAのwarning boxから解き放されたと
   しています。





私見)
 LABA+吸入ステロイドの合剤が無罪放免となり嬉しい限りですが、更に発作の時だけ吸入ステロイドに
LABAを使用したり、更にお許しが出ればLABA単独の発作時使用も可能な時が来ないかと夢見ながら。

お休みなさい。




吸入薬.pdf

配合剤.pdf













posted by 斎賀一 at 15:30| Comment(1) | 喘息・呼吸器・アレルギー

2018年06月22日

扁桃腺摘出術後の長期予後

扁桃腺摘出術後の長期予後
 
Association of Long-Term Risk of Respiratory, Allergic,and
Infectious Diseases With Removal of Adenoids and Tonsils in Childhood
JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. doi:10.1001/jamaoto.2018.0614
Published online June 7, 2018.



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 扁桃腺摘出後の短期的なリスクや予後は報告がありますが、長期的な予後に関してはあまりないよう
です。
今回、雑誌JAMAより論文が出ましたので掲載します。


纏めますと

1) 1979~1999年にかけてデンマークで生まれた1,189,061人を対象に、10歳までに扁桃腺摘出を
   行った人を30歳まで経過観察しました。
   内訳は、扁桃腺摘出が11,830人、アデノイド摘出が17,460人、扁桃腺・アデノイド両方摘出は
   31,377人でした。

2) 一般的に扁桃腺摘出は、繰り返す扁桃腺炎や中耳炎のために行います。
   扁桃腺は経時的に萎縮するので、摘出をしても問題ないとの観点から扁桃腺摘出が行われていま
   した。しかし若年層での摘出には、生涯における免疫力の低下も懸念されます。
   そこで、28疾患についてそれぞれ相対性リスク、絶対的リスク、NNTで評価しました。

3) 結論的には、扁桃腺摘出により上気道感染症は3倍の危険率でした。
   上気道感染症とは、喘息、インフルエンザ、肺炎、COPDの類も含まれます。
   絶対性リスクも18.61%増加していました。
   アデノイド摘出に関してはCOPDが2倍の危険率、上気道感染症と結膜炎も2倍に近い危険率
   でした。
   アデノイド及び扁桃腺摘出では、中耳炎や副鼻腔炎が4〜5倍の危険率でした。
   結果的には、扁桃腺摘出の効果は短期的でしかなく、長期予後に関しては小児の免疫機能を司る
   扁桃腺、アデノイドを摘出してしまうデメリットが大きいと指摘しています。
  
  詳しい結果は下記のPDFの表をご参照ください。





私見)
 ある論評では、この結果はバイアスがかなりありそうだとの指摘です。
 更に「経過において喫煙、アルコール摂取などの因子は考慮されておらず、本論文は観察研究である。
  (観察研究ではデータの仮説に対しての提唱には適していますが、実証には適していないとされて
   います。)
 しかも、現代では手術の適応が再発性の扁桃腺炎ではなく、閉塞性睡眠時無呼吸症候群である。
 保護者は、この結果から扁桃腺摘出を躊躇してしまうかもしれない。このような論文もある、との参考
 程度にするには良いかもしれないが。」としています。

 私のような実地医家にとっては、このような論文はかなりの価値です。
 本論文の筆者が、最初から色眼鏡で扁桃腺摘出を考えていたとしても...。




扁桃腺摘出の本論文.pdf

リスク.pdf









posted by 斎賀一 at 20:00| Comment(1) | 喘息・呼吸器・アレルギー

2018年05月21日

軽症喘息の場合はシムビコートの頓用(as needed)は有効

軽症喘息の場合はシムビコートの頓用(as needed)は有効
 
Inhaled Combined Budesonide–
Formoterol as Needed in Mild Asthma
n engl j med 378;20 nejm.org May 17, 2018



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 ある程度コントロールされている喘息の場合、配合剤のシムビコートを必要な時だけ短期で吸入する
事は、(as needed)継続吸入に比較して非劣性(劣っていない)である。
との論文がNEJMより掲載されました。   (SYGMA-1研究)



纏めますと

1) 軽症喘息の定義として
   ・発作時に短期作用型気管支拡張薬(SABA)の吸入を使用
   ・低用量のステロイド吸入を持続している。
   ・抗ロイコトルエン薬の服用のみ     
     以上でコントロールしている場合をいいます。
    
   このような軽症喘息は、喘息患者の50~75%を占めている。
   軽症と言えども気道炎症は持続しており、30~40%が増悪や入院の危険がある。
   しかも短期作用型気管支拡張薬の吸入(SABA)は、喘息の増悪を誘発する可能性が指摘されて
   いる。


2) 12歳以上の軽症喘息患者を対象に、52週間の二重盲検試験を行った。
   患者を次の3群に割り付けた。

   ・プラセボ 1 日 2 回投与+テルブタリン(0.5 mg)頓用(テルブタリン群)
   ・プラセボ 1 日 2 回投与+ブデソニド・ホルモテロール配合剤(ブデソニド 200μg、ホルモテ
    ロール 6μg)頓用(ブデソニド・ホルモテロール群)
   ・ブデソニド(200μg)1日2回投与+テルブタリン頓用(ブデソニド維持療法群)

    尚、テルブタリンとはSABAで日本では発売されていません。
   ブデソニド・ホルモテロール配合剤はシムビコート、ブデソニドはパルミコートです。
   ついでにホルメテロールは長期作用型気管支拡張薬(LABA)、ブデソニドはステロイド吸入薬


3) 3,849 例を無作為化し、3,836 例(テルブタリン群 1,277 例、ブデソニド・ホルモテロール群
   1,277例、ブデソニド維持療法群 1,282 例)

   コントロールが良好であった週の割合の平均に関して、ブデソニド・ホルモテロール配合剤はテルブタ
   リンに対しては優越性を示したが、ブデソニド維持療法に対しては劣性を示した。
   (34.4% 対44.4%、オッズ比 0.64)

   重度の増悪の年間発生率はテルブタリン群で0.20、ブデソニド・ホルモテロール群で0.07、ブデソニ
   ド維持療法群で0.09 でした。
   ブデソニド・ホルモテロール群における1日のステロイド定量噴霧吸入量の中央値(57μg)は、ブデソ
   ニド維持療法群(340μg)の 17%であった。


4) 結論として、シムビコートの頓用はSABAの頓用より明らかに有益性であり、パルミコートの継続吸入
   に対してもほぼ同程度の有益性をしました。(非劣性)しかもステロイドのトータルとしての吸入量は
   1/5に減少出来ている。
   これは頓用と言えどもステロイドが配合されているので抗炎症作用が期待され、更にステロイドの副
   作用も軽減できている。
   下記のPDFに結果のグラフを掲載しました。





私見)
 本院でもシムビコートの頓用を軽症喘息患者さんには行っています。
 その際に注意点として、軽快しても血液循環の回復のため3日間は吸入の継続を勧めています。
 最近、1年ぶりに来院された患者さんがいました。シムビコートで順調との事でした。しかし今後は喘息
 日誌に記載してもらう等注意が必要だと感じました。
 (時々しか来ない子供に対しては、少し説教をしたくなります。そうすると来なくなるのは分かっているの  ですが、心の中では縁の切れ目が金の切れ目だと思ってしまします。)

 以前よりSMART研究と言うのに二つほどありました。
 一つはLABAを使うと喘息死が増加するので必ずステロイド吸入を併用しなくてはいけないとするものです。 もう一つが、シムビコートの頓用が有効との研究です。
 なにやら真逆の感じですが、其々注意が必要と感じています。

 (スマートには2つの意味がありそうです。そういえばグラマーにも・・・・・イケナイ イケナイ!
  何時ものように今流行のセクハラが始まってしまいました。)
 



シムビコート.pdf








posted by 斎賀一 at 20:17| Comment(0) | 喘息・呼吸器・アレルギー