2019年08月09日

咳喘息とアトピー咳嗽

咳喘息とアトピー咳嗽



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 最近は、患者さんが診察前にネットで自己診断してから来院する事が多くなりました。
咳が長引く場合は特にその傾向です。
咳喘息はあまりにもポピューラーになってしまい、診断名が独り歩きしている感もあります。
ワンポイントアドバイスでもこの点を指摘していますので、同時に掲載します。
この機会に書籍より抜粋し纏めましたので、夏休み中に職員の方は勉強してください。



咳喘息の特徴

 ・就寝後、深夜〜早朝に悪化して目を覚ます。
   (感染後咳嗽は寝入りばなに多く、咳でなかなか寝就けない。
    COPDは痰が朝に溜まるので、朝起きた時に多い。逆流性食道炎は昼間、会話中に多い。)

 ・1年の中で季節性がある。
 ・聴診上は異常ない。
 ・気管支拡張薬(サルタノール、ホクナリンテープ、テオドール、ユニフィルなど)が有効
 ・ステロイド吸入や抗ロイコトルエン薬(シングレラ、キプレス)を、最初から使用するのも良い。
 ・シンビコートの吸入を、中等度症状に用いる選択肢もあり。
 ・30%が喘息に移行する。


鑑別としてアトピー咳嗽も重要です。


アトピー咳嗽

 ・時間帯は就眠時、深夜から早朝、起床時、早朝の順に多い。
 ・アトピー素因を有する中年の女性に多い。
 ・喉の掻痒感を訴える。
 ・気管支拡張薬は無効
 ・ステロイド吸入薬が有効
 ・ヒスタミンH1拮抗薬が有効  (アゼプチン)
 ・喘息には移行しない。




私見)
 長引く咳を診断する際に、色々なストラテジーが提唱されています。
 問題点は鑑別疾患を除外した先に初めて咳喘息、アトピー咳嗽、逆流性食道炎などが疾患群として
 現れます。ストラテジーを運用する際には意外に落とし穴があります。





◆参考書籍及び文献

 ・ドクターサロン   文献を下記に直接掲載
 ・Medical practice のone point advice   直接掲載
 ・咳の診かた止め方   羊土社
 ・咳嗽に関するガイドライン 第2版   一部抜粋を下記に掲載
 ・咳喘息と類縁疾患の診断と治療 小児科  V.50 N.5 2009   石浦善久
 ・レジデントノート  V.18 N.6 2016
 ・止まらないせきの診かた   南江堂
 ・誰も教えてくれなかった風邪の診かた   医学書院
 ・長引く咳の診断と治療 日本医師会雑誌   V.142 N.6 2013
 ・長引く咳のアプローチ 小児科   V.58 N.7 2017







咳喘息.pdf

1 咳喘息One Point Advice.pdf

2 咳喘息1.pdf

3 咳喘息.pdf

4 咳噺に関するガイドライン第2版抜粋.pdf

5 吸収剤 止まらないせきの診かた.pdf

6 咳喘息患者に対する早期SMART療法導入治療について.pdf









posted by 斎賀一 at 22:16| Comment(1) | 喘息・呼吸器・アレルギー

2019年07月20日

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪に対するCRP検査の有用性

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪に対するCRP検査の有用性
 
C-Reactive Protein Testing to Guide Antibiotic
Prescribing for COPD Exacerbations 
n engl j med 381;2 nejm.org July 11, 2019



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 雑誌NEJMに、COPDの急性増悪における抗生剤投与に関して、CRP検査がその適否を決める手段
として有用との論文が掲載されています。
COPDは高齢化社会の到来に伴い増加傾向です。また慢性疾患でもあり病状が不安定な時もしばしばあります。
発熱や膿性痰のみで安易に抗生剤を投与しますと、抗生剤の社会全体での効果が耐性菌の出現により損なわれます。
COPDの急性増悪で入院した人の20%は、感染性ではなかったとのデータもあるとの事です。
CRP検査を行う事により、抗生剤の投与なしで安全に急性増悪を管理、治療が出来ると本論文では結論付けています。



纏めますと

1) 対象は40歳以上でプライマリケアにおいてCOPDと診断され、一回は急性増悪の既往がある653名
   です。

2) CRP 検査を行いそれを指針として通常治療を行う群(CRP群)と、通常治療のみを行う群(通常群)
   に割り付けています。

3) 主要転帰は、無作為化後 4 週間以内で COPD の急性増悪に対する患者報告に基づく抗菌薬使用
   (優越性を示す目的)と、無作為化後 2 週の時点での COPD に関連した健康状態(非劣性を示す
   目的)としています。
   短期の4週間とした理由は、急性増悪に関する原因因子を最小限にしてCRP検査の有用性を特出
   させるためと説明しています。

4) 結果として抗菌薬使用を報告した患者は、CRP 指針群のほうが通常治療群よりも少なかった。
   (57.0% 対 77.4%,補正オッズ比 0.31)
   2 週の時点におけるCOPD に関連した健康状態の合計点の差の平均は −0.19 点(両側 90%
    CI −0.33〜−0.05)で、CRP 指針群の方が良好であった。

5) 副作用
   6か月経過してからの入院率を比べると、CRP群が26/304の8.6%に対して通常群では28/301の
   9.3%でした。
   6か月経過での肺炎合併は、CRP群が9/305の3.0%に対して通常群は12/302の4%でした。
   抗生剤による副作用出現率は、両群で差がありませんでした。
   つまりCRPにより抗生剤の投与を減らすことは出来ますが、それによって転帰への悪影響はありま
   せんでした。

6) プライマリケア診療所における、COPD の増悪に対する CRP を指針とした抗菌薬処方によって、
   抗菌薬使用を報告した患者と、臨床医から抗菌薬処方を受けた患者の割合が低下し、害があること
   は示されなかった。





私見)
 CRPはCOPDの増悪の判定に有用なばかりでなく、小児や腹部症状の重症度の判定にも本院で多用
 しています。
 しかし、下記のsuppleからのPDFを参照しても分かりますが、COPD急性増悪の80%は細菌性感染が
 関与しています。本論文ではCRPの値が20を閾値基準にしていますが、単に抗生剤が必要かどうかの
 判断基準とした方が良さそうです。
 また、大人と子供ではCRPの判断基準が異なる事も経験しています。
 COPDの場合に、本院ではCRPが 5 以上で抗生剤を考慮し(パセトシン、オーグメンチンなど)、10以上
 でワンランク上の抗生剤投与(メイアクト、キノロン系など)とします。
 胸部レントゲンの適否は経過で判断と考えています。







COPDとCRP.pdf








posted by 斎賀一 at 17:23| Comment(0) | 喘息・呼吸器・アレルギー

2019年06月17日

閉塞性肺疾患(COPD)における吸入剤

閉塞性肺疾患(COPD)における吸入剤 LABA+LAMAとLABA+ICSの比較
 
Comparative Effectiveness and Safety of LABA-LAMA vs
LABA-ICS Treatment of COPD in Real-World Clinical Practice



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 以前の私のブログ(COPDで検索)をご参照ください。
(気管支拡張には交感神経が関与しています。その反対の副交感神経を抑制すれば、間接的に気管は
拡張します。交感神経を刺激する方が、副交感神経を抑制するより効果は高い事が予測できますが、交感神経の刺激は心臓をも興奮させてしまう懸念があります。また、現在の交感神経刺激薬は気管支に特化していると言われています。長期に持続して作用する交感神経刺激薬がLABAで、副交感神経抑制薬がLAMAです。)
 ブログで紹介した以前の論文と同様の結果ですが、今回の論文でも再確認してみます。


1) COPDの治療は、ガイドラインでLABAとLAMAのどちらかが最初に勧められていますが、コント
   ロールが不良の時には更にstep-upして、LABA+LAMAを推奨しています。
   今回の論文ではLABA+LAMA とLABA+吸入ステロイドとの比較研究です。

2) 2002~2015年に懸けて、55歳以上(平均72歳)のCOPD患者を登録しています。
   LABA+LAMAの群が1,977名で、LABA+吸入ステロイドの群が同数の1,977名です。
   両群とも平均で3か月間は初期の治療を継続しています。
   1年間の経過観察で、中等度以上のCOPD急性増悪の頻度(ステロイドの全身投与か入院を
   増悪と定義)を主要転帰としています。

3) LABA+LAMAはLABA+吸入ステロイドと比較して、中等度の急性増悪の危険率は1.04で、重症
   の危険率は0.94でした。
   入院を必要とする肺炎の危険率は0.66でした。(LABA+LAMAが5人/100人でLABA+吸入ステ
   ロイドが8人/100人)

4) 急性増悪の予防効果は両群で同程度でしたが、肺炎の危険率は LABA+LAMA に比べてLABA+
   吸入ステロイドの方が悪い結果でした。





私見)
 COPDの治療でstep-upの時には、LABA+LAMAが有効との結果です。
 喘息を合併していたり、好酸球増加がある事はステロイド吸入を追加する選択肢もあります。
 そのような時には最近発売になっています LABA+LAMA+吸入ステロイドの3つの合剤も利便性が
 ありそうです。
 但し若干の肺炎の合併にも注意が必要となります。









1 Treatment of COPD.pdf

2 気管支拡張薬外用剤型一覧(1).pdf

3 テリルジー 3成分配合.pdf












posted by 斎賀一 at 21:16| Comment(0) | 喘息・呼吸器・アレルギー