2021年07月12日

急性細気管支炎

急性細気管支炎




最近、小児を中心とした急性細気管支炎が流行っています。
主にRSウイルスが原因ですが、その他の原因ウイルスも想定されます。
uptodateを中心に纏めてみました。



1) 急性細気管支炎は2歳以下に起き、一般的な鼻水などの感冒症状が2〜3日続いて下気道に炎症を
   引き起こします。その結果、聴診上は喘鳴などの所見が認められます。(wheezing,crackles)

2) 病理所見は終末細気管支が主体で、その上皮が浮腫、過剰な粘液分泌から細気道の閉塞、無気肺
   が生じます。生検や動物実験からは細気管支上皮の壊死、繊毛の崩壊(ciliary disruption)
   リンパ球浸潤を認めています。

3) 原因ウイルスは第一にRSウイルスで次にライノウイルスです。
   入院した乳幼児では1/3が2種類以上のウイルスに混合感染しています。
   稀ながらマイコプラズマ症も合併している場合があります。

4) 原因ウイルスとして
   ・RSウイルス
    秋から冬にかけて流行する。世界のどこでも発生しているが亜熱帯や熱帯では雨季に流行する。
   ・ライノウイルス
    しばしば2つのウイルスの混合感染が認められている。
    春と秋の二相性である。
   ・パラインフルエンザウイルス
    クループ症候群が一般的である。
   ・ヒトメタニューモウイルス
    他のウイルス感染と合併することが多い。
   ・インフルエンザウイルス
    RSウイルスとの鑑別は困難
   ・アデノウィルス
    下気道ばかりでなく他の器官に波及する。(disseminated)

5) 危険因子
   ・未熟児
   ・低出生体重児
   ・生後3か月以内
   ・基礎疾患

6) 一般的には自然治癒する。多くの例は入院が必要なく、4週間で軽快する。
   上気道感染である鼻水が2~3日続き、その後に細気管支症状が出現する。そのピークは3〜5日で
   徐々に軽快するが咳は1〜2週間続くことが多い。20%の人に1か月症状が続くこともある。

7) 合併症で注意する点は脱水、誤嚥性肺炎、無呼吸、中耳炎
   しかし細菌感染の合併は1.2%で、抗生剤は一般的に必要ない。
   従ってレントゲン検査は推奨していない。
   発熱に関して、RSウイルスはアデノウィルスより低い。

8) 注意点
   ・多呼吸、陥没呼吸、サチュレーション




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9) 鑑別診断
   ・recurrent viral-triggered wheezing
   (所謂、小児ぜんそくで風邪の時に繰り返して喘鳴を起こす乳幼児がいます。)
   ・細菌性肺炎





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私見)
 治療に関しては気管支拡張薬、吸入、ステロイド薬、抗ロイコトリエン薬、
 抗生剤など、すべてが有効とのはっきりしたエビデンスがないようです。
 ほとんどの患児は外来で対応できますが、重症化に注意が必要となります。










posted by 斎賀一 at 21:28| Comment(0) | 喘息・呼吸器・アレルギー

2021年07月09日

中等症以上の喘息治療は3剤併⽤療法が有効?

中等症以上の喘息治療は3剤併⽤療法が有効?
 
Triple vs Dual Inhaler Therapy and Asthma Outcomes
in Moderate to Severe Asthma



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 喘息治療の吸入剤には2剤併⽤療法(吸⼊ステロイド(ICS)、⻑時間作⽤型β2刺激薬(LABA)と3剤
併⽤療法(ICS、LABA、⻑時間作⽤型抗コリン薬(LAMA))がありますが、最近では3剤併⽤療法の
有効性が指摘されており医療現場で汎用されています。
LABAとLAMAに関しては私の以前のブログを参照ください。

 今回、雑誌JAMAに2剤併⽤療法と3剤併⽤療法の比較試験が載っていましたので簡単に纏めて
みました。


1) 中等症ないし重症のコントロール不良の喘息がある⼩児(6歳から18歳)および成⼈患者を検討した
   無作為化試験(RCT)20件(計1万1894例、平均年齢52歳、⼥性57.7%)を対象としています。
   主要評価項目は、急性増悪、喘息コントロール(7項目の質問票;ACQ-7、各項目0-6点で点数が
   ⾼いほどコントロール不良)、QOL(喘息関連QOL質問票で測定)、死亡、有害事象です。

2) 2剤併⽤療法と比較して、3剤併⽤療法は急性増悪リスクの低下
   (3剤併⽤22.7% 対 2剤併⽤27.4%、危険因子は0.83)、喘息コントロールの改善は
   (ACQ-7平均差−0.04点)と有意な効果が認められています。
   QOLの改善は認められませんでした。





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3) 3剤併⽤療法には、⼝腔乾燥および発声障害との関連が認められています。
   (3.0% vs. 1.8%、リスク⽐1.65)治療関連の有害事象と重篤な有害事象は両群に認められま
   せんでした。

4) 考察
   LAMAは気管支痙攣の刺激を抑制します。
   喘息のコントロール不良の場合に、追加治療としては経口ステロイドよりもLAMAは安全です。
   以前の研究では、喘息のコントロールにLAMAは有効だが、急性増悪の抑制には効果がないとして
   いました。しかし本研究では急性増悪の頻度を低下させています。
   一般的に急性増悪の既往歴がある人は12か月後に25%の確率で急性増悪を起こしますが、既往
   がなければ8%と言われています。
   この事からも、一番に過去に急性増悪の既往があることがLAMAの追加適応となります。

5) 結論として、小児から成人にかけて3剤併⽤療法は急性増悪に効果があり、喘息コントロールにも
   ある程度有効です。QOLに関しては差がありませんでした。








私見)
  喘息がコントロール不良の場合はICSとLABAを増量しますが、場合により躊躇なく経口ステロイドを
  短期的に追加します。急性増悪を繰り返す傾向の場合には、3剤併⽤療法の出番と考えます。
  最初から3剤併⽤療法に軸足を置くのは、いささかミーハーと思われないかと気にします。










喘息 triple.pdf

LAMA一覧表.pdf

ブログ1.pdf

ブログ2.pdf














posted by 斎賀一 at 19:18| Comment(1) | 喘息・呼吸器・アレルギー

2021年05月26日

食物によるアナフィラキシーの原因

食物によるアナフィラキシーの原因

 
Global patterns in anaphylaxis due to specific foods:
a systematic review



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 世界規模での食物アレルギーにおけるアナフィラキシーの調査が進行中です。
アナフィラキシーを引き起こす8つの食物アレルギーが、以前から知られていました。
小麦、甲殻類、卵、魚、ピーナッツ、大豆、牛乳、ナッツです。
これらはアナフィラキシーの原因の90%を占めていました。しかしそれらが確定されたのは、今から十数年前の事です。
現在では十分なデータは限定的です。世界規模で考えますと、その地域差は明白のようです。
世界的には牛乳、魚、甲殻類、ピーナッツ、ナッツが一般的ですが、アメリカとヨーロッパではピーナッツとナッツが多く、一方でアジアでは稀のようです。
小麦は世界では稀ですが、中国ではアナフィラキシーの原因として多いようです。
アジアでは魚と甲殻類が一般的ですが、アメリカではピーナッツの頻度が高いようです。
大豆は世界的にその頻度は少ないとのことです。







私見)
 アナフィラキシーは実地医家にとって重要な病態です。
 しかし単なる食物アレルギーの場合でも、日本は世界と異なる印象を持っています。








Global patterns in anaphylaxis due to specific foods_ a systematic review.pdf









posted by 斎賀一 at 19:21| Comment(0) | 喘息・呼吸器・アレルギー