2018年11月28日

抗アレルギー薬の脳内移行

抗アレルギー薬の脳内移行
              <院内瓦版>



 抗アレルギー薬は鼻炎、蕁麻疹、アレルギー性皮膚炎、感冒、食物アレルギーなど多くの疾患で処方されます。以前の抗ヒスタミン薬ほどの副作用は無く、痰の喀出などにもそれ程影響はないとされています。
 一方でその効果は期待する程でもなく、3/5程度との見方が大方です。
更に鎮静作用を有し脳内移行も心配され、熱性痙攣の乳幼児使用に於いては誘発も懸念されています。
ただ熱性痙攣既往の乳幼児が抗アレルギー薬を服用して、熱性痙攣を誘発したとのエビデンスは無い
ようですが、抗アレルギー薬を敢えてそこまでして処方するメリットは無いとの見解も一般的です。
 しかし実施医家の場合はその必要性が多々あります。
その際は保護者の皆さんに承諾を得て、下記のグラフを参照していただいてます。
取り敢えず本院では、アレジオンを用いる事が多い傾向です。


下記のPDFを参照してください。






抗アレルギー薬の脳内移行 (2).pdf










posted by 斎賀一 at 19:02| Comment(1) | 喘息・呼吸器・アレルギー

2018年10月27日

COPDの急性増悪の予防にテオフィリンは有効か? 【考察その1】

COPDの急性増悪の予防にテオフィリンは有効か?
                 【考察その1】 

Effect of Theophylline as Adjunct to Inhaled Corticosteroids
on Exacerbations in Patients With COPD A Randomized
Clinical Trial JAMA. 2018;320(15):1548-1559
 


1027.PNG

      

 テオフィリン(テオドール、ユニフィル、ネオフィリン等)は、気管支拡張薬として喘息やCOPDには以前
より汎用されていましたが、少量でもその抗炎症作用により他の気管支拡張薬とは異なる併用の利点があります。特にステロイドとの併用では安価のため、今後も有用性が期待されています。
本論文でも記載していますが、ステロイド吸入とテオフィリンを併用すると、その抗炎症作用は100倍以上にもなるとの事です。
 雑誌JAMAに研究TWICSの結果が掲載されています。



纏めてみますと

1) 呼吸機能検査でFEV1/FVC(一秒率、下記のPDFを参照)が0.7以下のCOPD(閉塞性肺疾患)で、
   登録前、年に2回以上急性増悪の既往があり、その後吸入ステロイドを使用している40歳以上の
   方を対象にしています。本研究では更にテオフィリンを追加する事により、その後の急性増悪の回数
   を減らせるかを調査しています。
   急性増悪の定義は、抗生剤や経口ステロイド薬を必要とした場合としています。(2回とは少ない
   感じですが、研究の対象規模との関係のtrade-offを勘案し決めたとの事です。)
   登録は2014~2016年で、その後1年間の経過観察をしています。
   1,567名が登録して、平均年齢は68.4歳で54%が男性でした。

2) 低用量のテオフィリン投与群(200mgを1日1回か2回)とプラセーボ群に振り分けました。
   テオフィリン群は772名、コントロール群は764名です。
   主要転帰(main outcome)は、その後1年間の急性増悪の回数としています。

3) 結果は全体で3,430回の急性増悪が発生していますが、テオフィリン群では、1,727回
   (平均:2.24回)、コントロール群では1,703回(平均:2.23回)でした。 結局効果なし。
   副作用として、心臓関連はテオフィリン群で2.24%、プラセーボ群で3.4%、 胃腸関係はテオフィ
   リン群で2.7%、プラセーボ群で1.3%、頭痛はテオフィリン群で9.0%、プラセーボ群で7.9%
   でした。
   つまりテオフィリンを追加しても効果はありませんでした。
   (心臓関連の副作用がテオフィリン群で少なかったのは意外です。少量の為でしょうか。)

4) GOLDステージ(最重症:FEV1が30%以下、重症:FEV1が30~49%中等度:FEV1が50~79%、
   軽症:FEV1が80%以上)のベースラインに関係なく、吸入ステロイドにテオフィリンを追加しても
   急性増悪の予防効果には寄与関与していませんでした。 (下記にグラフをPDF化しました。)






私見)
 色々な意味で、テオフィリンは逆風が吹いていると感じています。
 Real worldの世界では(僕の世界)効果を実感していますが、暫くは反論が出るのを期待するもの
 です。 それまではUPTODATEの記載を頼りにします。
 下記に要約のみをPDFしてみます。
 (吸入ステロイドの喘息における早期介入は失敗に終わりましたが、テオフィリンのCOPDに対する急性
 増悪には効果は無いが、その都度使用することにより炎症をある程度抑制し、肺のリモデリングを予防
 できるのでは、と期待しているのですが...。)





本論文及びUPTODATEから.pdf











posted by 斎賀一 at 15:20| Comment(0) | 喘息・呼吸器・アレルギー

2018年09月25日

アスピリン喘息

アスピリン喘息
 
Aspirin-Exacerbated Respiratory Disease
    n engl j med 379;11 nejm.org September 13, 2018



0925.PNG


      

 アスピリンに限らず、一般的な鎮痛解熱剤(NSAIDs)を服用すると、喘息を誘発したり増悪傾向になる事が以前より知られています。しかも鼻茸のある人では高頻度です。
 一般的なNSAIDsはCOX-1とCOX-2の両方を阻害します。選択的COX-2阻害薬としてはセレコックスがあります。 (COXに関しては、下記のやさしい薬理学のPDFを参照)
雑誌NEJMにアスピリン喘息の総説が載っていました。私にとって新知見が多く、ブログで纏めてみました。
その前に、アスピリン喘息の機序は煩雑のため、書籍より引用しましたので事前に参考にして下さい。
アメリカではアスピリン喘息をAERDとして、一般的に認知されています。



纏めますと

1) AERDは後天的疾患で如何なる年齢でも発症しますが、多くは30歳代です。
   50%が上気道の症状です。

2) AERDは殆ど全てのアルコール摂取で症状が悪化するが、特にビールとワインの頻度が多い。
   アルコールの摂取を超えた何かがあるかもしれない。

3) 鼻茸の外科的処置をしてもAERDは直ぐに再発する。

4) AERDでは喘息と副鼻腔炎が重症化する場合があり、治療管理で困難なケースがある。
   その際は、気道と鼻粘膜のリモデリング(基底膜の構造変化)が生じている。

5) 家族性や新生児では稀である。

6) 診断は
   ・24時間蓄尿でのロイコトルエンE4(LTE4)の測定が、診断価値は高い。
   ・アスピリンの服用負荷テストと呼吸機能検査(チャレンジテスト)が一般的に採用されている。
    (しかし、論者も指摘していますが専門医のみが行う事としています。)
   ・既往歴のみでの診断では、80%の正解率

7) 治療は原則的に喘息と同じ
   難治例では、抗ロイコトルエン薬(オノン、シングレア、キプレス)や経口ステロイドを追加する。

8) アスピリン減感作療法
   最初はアスピリン40.5mgより開始して、1〜3日毎に増量する。
   目標は325mg (本院では勿論、実施しません。)

9) 機序については、下記の「本論文」と「アスピリン喘息の薬理」のPDFをご参照ください。

   尚、追加事項として
   ・アスピリンは48時間以上COX-1を阻害して、新しい酵素が産生されるまで作用する。
   ・NSAIDsは服用後、腸管で吸収され30~90分で全身に循環される。
   ・COX-2阻害薬のセレコックスは、AERDを起こしにくい。
    それはCOX-2阻害薬の分子が大きいので、より小さいCOX-1チャンネルにはフィットしないため
    である。





私見)
 本院ではAERDを診断するには問診しかありません。
 十分に注意するため、過剰診断も仕方ないかもしれません。
 その際は、比較的影響の少ないアセトアミノフェン(カロナール)かセレコックスを処方します。




 【参照書籍】
  いちばんやさしい薬理学 : 成美堂出版





いちばんやさしい薬理学.pdf

本論文グラフより.pdf










posted by 斎賀一 at 20:22| Comment(0) | 喘息・呼吸器・アレルギー