2019年10月21日

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

慢性閉塞性肺疾患(COPD)
 
Update on the Pathogenesis of Chronic 
Obstructive Pulmonary Disease
     N Engl J Med 2019;381:1248-56.



1021.PNG

     

 一般的に、慢性気管支炎とは臨床的診断で、肺気腫は病理的診断、COPDは呼吸機能検査における
診断名と私は理解していましたが、COPDに関する最新の総説が雑誌NEJMに載っていましたので纏め
てみます。


1) COPDの原因は喫煙と一般的には言われているが、3分の1は非喫煙である。
   調理、暖房、環境因子、最近では生物体原料のbiomass fuelなどが想定されている。

2) 呼吸機能、特に1秒率は20歳までに最大となり一定の状態が続くが(plateau)、その後は年齢と
   共に減少してくる。



         1021-2.PNG



 
3) COPDでは気流閉塞が本質ですが、重症度により肺組織への好中球、マクロファージ、リンパ球が
   多く浸潤している。しかも重症例ではリンパ球の浸潤はリンパ装置まで形成し、免疫応答が強くなり
   ます。 (解剖学的に終末細気管支にはバイバスがあり、隣の終末気管支と連絡し合って相補的に
   ガス交換をしています。)
   COPDの中等度では細気管支の数が40%減少し、重症例ではなんと80%まで減少するとの事
   です。


  1021-3.PNG   (左図ではバイバスは記載されていません。)



4) 肺気腫形成の病態は、COPDとはやや異なります。
   肺気腫では、活性化した好中球によってproteaseとantiproteaseのバランスが異常となり、末梢
   肺組織の破壊が生じます。

5) 肺組織の形成は、成長過程の早期に決まってしまいます。
   妊娠中の喫煙、早産児、因子などです。
   成人になっての心不全を始めとした肺の循環障害も、COPDや肺気腫に影響を与えます。
   タバコ以外の環境因子、呼吸器感染症、関節リウマチを始めとした免疫疾患等は、重症型のCOPD
   には至らないと思われます。
   重症型はやはり喫煙が主に関与しているとしています。

6) 炎症の繰り返しが更に気道組織の抗体を形成し、組織変化(リモデリング)を誘発し不可逆的な
   COPD、肺気腫へと進展する。
   COPDの重症度に比例して、細胞浸潤と気道組織のリモデリングとしての増殖を示しています。
   下記のPDFにグラフを掲載します。

7) 肺組織の老化と年齢とは必ずしも並行しない。
   色々なサイトカイン(炎症と関連する生体内の物質)により、肺組織は老化を起こしている。
   (senescent)
   この過剰な細胞老化がCOPDの主因でもある。






私見)
 本論文の主旨は
  ・肺組織は20歳でピークとなり、それ以降は退行していく。 
  ・従って、その時期から組織の老化現象は始まっている。
  ・喫煙が最もCOPDの重症化に関与している。
  ・COPDの軽症〜中等症に関しての原因及び促進因子に関しては、今後の研究課題
   今後も早期での禁煙を推奨していきましょう。 






本論文より.pdf






 


posted by 斎賀一 at 20:58| Comment(0) | 喘息・呼吸器・アレルギー

2019年10月11日

3剤配合剤吸入薬(ステロイド+LABA+LAMA)の有効性 喘息のコントロール不良に対して

3剤配合剤吸入薬(ステロイド+LABA+LAMA)の有効性
喘息のコントロール不良に対して
 
Single inhaler extrafine triple therapy
in uncontrolled asthma (TRIMARAN and TRIGGER)



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 コントロール不良の喘息に3剤配合の吸入薬が有効との論文が、雑誌LANCETに掲載されています。
3剤とは吸入ステロイド剤、長時間作用性吸入β刺激剤、及び長時間作用性吸入β刺激剤です。
大まかに喘息治療の主体は気管支の拡張です。そのため直接的な長時間作用性吸入β刺激剤の
LABAと、間接的な長時間作用型吸入抗コリン剤のLAMAが有効です。
炎症を抑制する吸入ステロイド剤を加えた3剤のタッグは、更に強力です。
 (下記のネット情報をご参照ください。)

 現在日本では、テリルジーとビレーズリが上市されています。但し何れも日本での適応疾患はCOPDで、
喘息は適応外となっています。



LANCETの論文を纏めますと

1) コントロール不良の喘息には、ステロイド(BDP)+LABAに更にLAMAを追加する事が推奨されて
   います。本論文の主旨は、ステロイド+LABAがLAMAを追加する事によりどの程度効果が増加
   するかと、もう一つはステロイド+LABAにLAMAを追加するよりも、最初から3剤を合剤として
   吸入した方が患者にとって有効性(アドヘアランス)が増加するとの推定で、2つの研究(study)
   のTRIMARANとTRIGGERを纏めて掲載しています。

2) ・TRIMARAN 研究は、中等度のステロイド(BDPを100μ)を用いています。
    2剤合剤と3剤合剤の比較試験です。尚LAMAはグリコピロニウムを使用しています。
   ・TRIGGER研究は高用量のBDP(200μ)を用います。
    2剤合剤群と3剤合剤群(LAMAはグリコピロニウム)と、2剤合剤にLAMAのスピリーバを追加
    吸入する群の3群の比較試験です。

3) 対象者は18~75歳で研究の1年前に少なくとも1回以上の急性増悪があった人です。
    (入院もしくはステロイド服用、または点滴)
   期間は2016~2018年間、26週間の経過観察です。

4) 結果は2剤合剤と比較して3剤合剤の中等度以上の急性増悪の軽減率は、
   TRIMARAN では15%でTRIGGERでは12%でした。
   (TRIGGERの方が高用量のステロイドのため差は縮小します。)
  重症の急性増悪に絞りますと、軽減率は23%でした。
  何れも3剤合剤が有効であることを証明しています。
  但し十分な患者選択が出来ないとの研究の制限から、LAMAの合剤か追加かの差は十分には認め
  られなかったようです。
  詳細は下記のPDFのグラフをご参照ください。







私見)
 以前の私のブログをご参照ください。  (LAMAで検索)
 注意して頂きたいのは、日本では3剤合剤の適応はCOPDだけです。
 私の様に何事も直ぐに勘違いする方は、それいけとばかりに突っ走らないでください。 
 それにしましても、ACOSとはなんと良い響きなのでしょうか!







1 Efficacy and safety of dupilumab in patients with severe chronic rhinosinusi.pdf

2 本論文より.pdf

3.pdf

4ビレーズトリ(LAMA_LABA_ICS)の作用機序:テリルジーとの違い【COPD】 - 新薬情報オンライン.pdf

5 ビレーズトリ.pdf

6 テリルジー.pdf














posted by 斎賀一 at 19:26| Comment(1) | 喘息・呼吸器・アレルギー

2019年10月03日

軽症喘息には合剤(ICS+LABA)の頓用(as needed)が有効

軽症喘息には合剤(ICS+LABA)の頓用(as needed)が有効
     <短 報>
  
Budesonide-formoterol reliever therapy versus maintenance
budesonide plus terbutaline reliever therapy in adults with mild to
moderate asthma (PRACTICAL):




 ニュージランドからの報告です。
軽症喘息の患者885名(18~75歳)に対して、喘息増悪の予防のために連日吸入ステロイド剤を行っている人と随時(as needed)合剤(吸入ステロイド+持続性β刺激薬)を使用した人では、増悪の予防効果は合剤の方が優位との結果です。
 増悪とは、経口ステロイドが3日間必要な場合としています。
52週間の経過観察で、増悪の年間発生率は0.119対0.172で合剤が優位でした。
ステロイドの吸入があれば炎症を鎮静化できますし、β刺激薬で症状の緩和にも繋がるので合剤が有効です。
一方で吸入ステロイドを連日行っているかも不確かなために、この結果を招いたとも解釈されるようです。




         1003.PNG





本論文.pdf

ICSとLABA.pdf
















  
posted by 斎賀一 at 13:46| Comment(0) | 喘息・呼吸器・アレルギー