タミフルは入院率を低下できない?
Evaluation of Oseltamivir Used to Prevent Hospitalization
in Outpatients With Influenza
A Systematic Review and Meta-analysis
in Outpatients With Influenza
A Systematic Review and Meta-analysis
インフルエンザの治療にタミフルは主要な選択肢ですが、その効果は発熱期間の短縮のみで
入院を阻止できないとする論文が、JAMAに掲載されています。
タミフルが上市されてから、2022年1月4日までの論文のメタ解析です。
今まではタミフルに関してのメタ解析がなかったとの事です。
1) 4,643の文献から2,352を選んで、更にタイトルと要約を読み2,269を除外し、
残りの83をフル文献として読んでいます。その中から7文献を採用しています。
ロッシェ社からの報告文献も含め8文献を追加し、合計15文献が最終的に採用されて
います。
15文献中9文献はバイアスが低いと評価され、5文献が問題あり、1文献はバイアスが
高いとの評価です。
2) 対象となった人はITT集団(下記のPDF参照)の6,295人で、タミフルを服用した人は
3,443人(54.7%)でした。 平均年齢は45.3歳、53.6%が女性です。
6,079人中3,668人がインフルエンザAでした(60.3%)
3) 結果
全体として、ITT集団でタミフル服用患者の入院リスク軽減は0.77に留まっていました。
更に65歳以上の高齢者では0.99のリスク比で、65歳以下では0.72のリスク比でした。
リスクの高い層、つまり基礎疾患のある人でもリスク比は0.90です。
この結果は、メーカーからのデータとはかなりかけ離れています。
その原因として、論者は下記の点を推測しています。
メーカーの診断はインフルエンザウイルスの培養に依っていますが、多くの文献は
迅速診断やPCR検査のため、擬陽性や既に軽快している患者も含まれている可能性が
あります。更にメーカーの文献では、確定診断には抗体値の4倍増加を取り入れて厳格化を
示しています。
また最近ではタミフルの耐性化も有効率に関与しているかもしれないとしています。
更に実臨床では入院はインフルエンザ感染の最終段階で、その頻度はコントロール
グループでも0.6%と、現実では稀です。
それでも今回の論文のメタ解析では、入院予防にタミフルは効果がありませんでした。
逆に副反応の消化器症状は下記の如く顕著です。
私見)
毎年出るインフルエンザのガイドラインでは、タミフルは治療のコーナーストーンです。
天下の雑誌JAMAにケチをつけるつもりは浅学の私にはありませんが、バイアスがある
と言ってバッタバッタと論文を切り捨てれば、信長の様に言いなりの文献が集まりはしないか
と勘繰ってしまいます。
タミフルの文献の一つとして、注目するに留めておきます。
タミフル JAMA.pdf
ITT解析.pdf