2025年02月21日

非重症例のインフルエンザに対する抗ウイルス薬の評価

非重症例のインフルエンザに対する抗ウイルス薬の評価

<短 報>
Antiviral Medications for Treatment of Nonsevere Influenza



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 インフルエンザの今シーズンはアッと言う間に収束し、B型が少し流行している感があります
が、その抗ウイルス薬の治療に関する評価が出ていますのでブログします。


1)CDCは重症例や合併症のある患者には、抗ウイルス薬を推奨しています。
  ランダマイズされた73の研究で、34,332人を解析しています。
  平均年齢は35歳の非重症例が対象です。
  65のトライアルが、発症2日以内に抗ウイルス薬を処方しています。

2)結果
  すべての抗ウイルス薬(ペラミビルとアマンタジンのデータなし)は、低リスク患者の
  入院率に、ほとんど影響を及ぼさなかった。
  高リスク患者の入院については、オセルタミビル(リスク差RD、−0.4%)はほとんど
  効果が見られず、バロキサビルはリスクを低減させた可能性がありました。
  (RD、−1. 6%; )
  つまり合併症のリスクが高い人では入院率が、ゾフルーザは16/1000人で、タミフルが
  4/1000人の低下率でした。
  統計学的には著明ではありませんでした。
  症状緩和までの時間については、ゾフルーザが症状期間を短縮した可能性が高く
  (−1.02日)、タミフルは明らかな効果をもたらさなかった可能性がありました。
  (MD、−0.75日)
  つまり、治療の副作用はゾフルーザにはありませんでしたが、タミフルの方には認め
  られています。(ゾフルーザ(RD、-3.2%)
  耐性ウイルスはゾフルーザで10%認めらますが、タミフルでは結論が出ませんでした。
  合併症のリスクが低い人では、ゾフルーザもタミフルも死亡率と入院率に差はありません
  でした。

3)Jwatchの寸評では、
 本統計の対象者は殆どが若い人で、入院のリスクがない人です。
 本論文の結果は耐性ウイルスの頻度はゾフルーザの方が多く、副作用はタミフルの方が多い
 結果でした。
 両群共に症状の短縮は著明ではありませんでした。
 インフルエンザが重症でなくても重症化のリスクがある人には、抗ウイルス薬の投与が
 必要です。





私見)
 診察時に重症感がなくても、例えは重症化リスクのある人にはゾフルーザで、耐性ウイルス
 を考慮すればタミフルでしょうか。
 AIによる見解では、「重症化リスクが高い患者(高齢者・基礎疾患あり)には、実績のある
 タミフルが優先される。
 ゾフルーザ投与後に症状が長引く場合→ 耐性ウイルスの可能性を考え、追加でタミフルを  
 投与することがあり得る。」

 そそられる文言ではあります。





インフルエンザAntiviral.pdf














posted by 斎賀一 at 19:33| インフルエンザ

2024年12月23日

タミフルはインフルエンザ入院でも直ぐに服用が大事

タミフルはインフルエンザ入院でも直ぐに服用が大事

Benefit of early oseltamivir therapy for
adults hospitalized with influenza
A: an observational study

<短 報>


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 18歳以上のインフルエンザの確診で(PCR検査)入院した患者がすぐにタミフルを
服用した415人と、遅れて服用したか全く服用しなかった425人とを比較した論文が、
雑誌Clinical Infectious Diseasesに掲載されています。


1) タミフル服用群で呼吸器疾患における重症度リスクのオッズ比は0.6、
   集中治療室に入院のオッズ比は0.24、透析や血圧管理のオッズ比は0.4、
   入院中の死亡は0.36でした。

2) 入院直後でタミフルの服用は、呼吸器疾患ばかりでなく、他臓器の合併も明らかに
   低減しています。





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私見)
 タミフルは、発症24時間以内に服用がベストと言われていますが、遅きに失する事はない
 とする論文もあります。
 本論文をfullで読んでいないので、発症後の服用時間に関しては不明ですが、入院の状況
 から、患者は重症感があるものと思われます。
 influenza-likeでのタミフル服用は、実地医家にとっても大事です。



 


タミフルOxford Academic.pdf

















posted by 斎賀一 at 19:16| インフルエンザ

2024年11月25日

インフルエンザにマスクと手洗いは有効か?

インフルエンザにマスクと手洗いは有効か?

Non-pharmaceutical interventions to reduce influenza transmission
in households: a systematic review and meta-analysis



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 インフルエンザのマスクと手洗いの有効性に懐疑的な意見もありますが、日本では推奨して
います。


     https://www.gov-online.go.jp/useful/article/200909/6.html



 今回、中国からの論文を紹介した記事がケアネットに載っていました。
原文を調べて補足説明をします。


1) 2022年3月26日から8月30日までのメタ解析をしてします。
   9個のNPI(非薬物介入;手洗い、咳エチケット、マスク、フェイスシールド、表面の清掃、
   換気、加湿、感染者の隔離、物理的距離の確保) が、家庭内のインフルエンザ感染予防と
   して有効かどうかを評価するために、調査を実施した論文のメタ解析です。

2) 結論的には、9つのNPIに明白な有効性を見出せませんでした。
   マスクだけの場合は RR(相対リスク)0.59、CI(信頼区間) 0.32-1.10でした。
   手洗いだけに場合は RR: 1.07、 CI: 0.85-1.35;でした。




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   #個人的解釈
    相対リスク(RR)の結果を解釈する際、信頼区間(Confidence Interval, CI)が
    重要です。
    信頼区間は、「データの結果がどれくらい信用できるか」を示すものです。
    以下のように考えます。
    広い信頼区間 → 結果がブレていて不確か。
    狭い信頼区間 → 結果が正確で信頼できる。
    1を含む信頼区間 → 効果があるかどうか断定できない。
    信頼区間が0.30〜1.10だった。
    この事は「本当のリスク低減効果(真の値)は0.30〜1.10の間にある可能性が高い」
    と考えられる。つまり、
    0.30 → 感染リスクが70%も減るかもしれない。
    1.10 → 感染リスクが逆に10%増えるかもしれない。という事を意味します。


  本例では、マスクの相対リスク(RR)が0.59だった。
  これは「マスクを使った人は、使わなかった人に比べて感染リスクが41%低い」という
  ことです。

    


3)結論
  本論分には、他の文献に比して比較的長い考察の記載があります。
  最後に結論として、「メタ解析には制限があるが、個人的防護策、環境の方策、
  感染者の隔離、ソーシャルディスタンス、の有効性の乏しさ」を述べています。
  しかし感情移入なしで(mechanistic)、そのNPIには(現時点では)妥当性があるもの
  としています。
  結論としてはインフルエンザの発症初期に、これらの対策をする必要があります。
  (それら全ては不可能ですと、暗示しているようでもあります。)







私見)
  メタ解析は全世界の論文に目を配っていますが、グローバルサウスにも配慮しているのかと
  勘繰りをしてしまいます。
  更に中国のゼロコロナ政策が失敗したのを筆者が暗に非難していると推測するのは、私の
  勘繰り過ぎでしょうか。
  なにしろ本論文は、家庭内感染だけの話ですから。




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本論分.pdf

ケアネット.pdf











   

posted by 斎賀一 at 18:42| インフルエンザ