2025年03月18日

急性冠症候群(ACS)の管理に関するガイドライン・2025

急性冠症候群(ACS)の管理に関するガイドライン・2025
 
2025 ACC/AHA/ACEP/NAEMSP/SCAI Guideline for the Management
Of Patients With Acute Coronary Syndromes
   
<院内勉強用>


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1)急性冠症候群は不安定狭心症、NSTEMI、STEMIを合わせていますが、今回のガイドライン
  では基本的に包括的に記載しています。




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 (心筋壊死はNSTEMIとSTEMIの両者ともに認められますが、NSTEMIは冠動脈の部分閉塞で
  心内膜の梗塞が推定され心電図ではSTの低下を認めますが、STEMIでは完全閉塞でSTの
  上昇を呈します。
  不安定狭心症では心筋壊死はないので、マーカーの上昇はありません。)


2)ACS発症時のリスクの評価が有効との事です。




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 *補足説明
  Killip分類、TIMIスコア、GRACEスコアを活用する事を推奨しています。
  ・Killip分類は急性心筋梗塞の心不全の重症度を4段階にスコア化しています。
   TIMIスコアやGRACEスコアに含まれ、予後予測に使用されます。

   Killip I → 特に心不全なし → 標準的な心筋梗塞治療(抗血小板療法・PCIなど)
   Killip II → 軽度の心不全 → 酸素投与、利尿薬、血管拡張薬(硝酸薬)などを考慮
   Killip III → 重度の心不全(肺水腫)→人工呼吸管理や強心薬(ドブタミン)などが必要
   Killip IV → 心原性ショック → 緊急PCI、補助循環(IABP/ECMO)昇圧薬の投与が必要

  ・TIMIスコアはACS患者の短期的なリスク(心筋梗塞、死亡、または緊急血行再建の
   リスク)を予測するためのシステムで、以下の2つがあります。
   @TIMIスコア(不安定狭心症/NSTEMI)14日以内の死亡、心筋梗塞、または緊急血行
    再建のリスクを評価する。



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    ATIMIスコア(STEMI)30日以内の死亡リスクを予測する。


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  ・GRACEスコアは、急性冠症候群(ACS)の患者の短期および長期の死亡リスクを評価する
   スコアで、より詳細なリスク評価が可能です。
   計算式は、下記にアクセスしてください。

   https://www.mdcalc.com/calc/1099/grace-acs-risk-mortality-calculator


3)症状が出現したら、10分以内に出来るだけ早く心電図をとるべきです。
  もしも症状が継続するなら心電図を繰り返し、所見を比較する事が大事です。
  心電図に所見が認められない場合は、トロポニンテストを優先します。
  陰性でも1〜2時間後、3〜6時間後と経過観察し、増加傾向を確認すべきです。


4)トップメッセージとして
  ・二重抗血小板療法(DAPT)は、急性冠症候群(ACS)の患者に推奨されます。
   経皮的動脈インターベンション(PCI)を受けているACS患者では、エフィエントまたは
   ブリリンタがクロピドグレルよりも優先して推奨されます。


5)SpO₂が90以下の場合は、酸素療法をすべきです。
  90以上では経過をみます。

6)鎮痛
  血圧が90以上あれば、ニトロペンを使用しても良いです。



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7)アスピリンの負荷用量:経口で162〜325 mgを投与。
  可能であれば非腸溶性アスピリンを噛んで服用することで、抗血小板作用の発現を早める。
  すでにアスピリン療法を受けている患者にも、負荷用量を投与するべきです。

  維持用量:75〜100 mgを経口で毎日投与(非腸溶性アスピリン)
  【補足説明;バファリン81mg(非腸溶性)、バイアスピリンは腸溶性】



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8)ACSの患者は初期loadingのアスピリンを始めたら、その後も低用量のアスピリンを継続する
  必要があります。 
  アスピリンにP2Y12(プラビックス、エフィエント、ブリリンタ)を追加すべきです。
  一過性脳虚血発作や脳卒中の既往がある患者には、エフィエントは追加すべきでありま
  せん。
  PCIを受けたNSTE患者は、エフィエント、ブリリンタを処方されることを推奨。
  PCIの予定のないNSTE患者はエフィエントを推奨。
  STEMI患者で緊急PCIを受ける患者は術後管理として、抗血小板療法(DAPT:アスピリン
  +エフィエントまたはブリリンタ)を推奨する。プラビックスでもよい。


9)脂質管理
 主要心血管イベント(MACE)のリスクを低減するため、高強度のスタチン療法を使用する。
 最大耐用量のスタチン療法を受けており、LDLコレステロール(LDL-C)が70 mg/dL以上の
 患者には、非スタチン系の脂質低下薬を追加する。
 指定された非スタチン薬:エゼチミブ、エボロクマブ、アリロクマブ、インクリシラン、
             ベンペド酸

 スタチン不耐症の患者には、非スタチン系の脂質低下療法を使用し、LDL-Cを低下させる。
 最大耐用量のスタチン療法を受けており、LDL-Cが55〜69 mg/dLの患者には、非スタチン系
 の脂質低下薬の追加を検討する。
 ゼチーアの併用療法を、最大耐用量のスタチン療法と同時に開始することも検討できる。
 脂質低下療法の開始後または用量調整後、4〜8週間後に空腹時脂質を測定し、治療反応やアド
 ヒアランスを評価する。


10)βブロッカー
  禁忌でなければ、発症後24時間以内にβブロッカーを推奨する。
  再梗塞と心室性不整脈の予防のため。


11)ARBとACE-i
  ACSの患者で心駆出率が40%以下、高血圧、糖尿病があれば、ARB又はACE-iを推奨する。


12)二次予防のための長期管理について
  退院後の12か月の規定期間(default duration)では、出血のリスクが低い患者にはアスピ
  リンとP2Y12の併用(DAPT)を、少なくとも1年間続けることを推奨する。
  出血のリスクを軽減するために、PCI後1か月が経過したらブリリンタ単独でもよい。
  出血のリスクが高い場合は、DAPTにPPIを併用する事を推奨する。 
  PCI後1か月が経過したらDAPTを漸減してプラビックス単独にすると、出血のリスクを軽減
  できる。
  PCI後1か月が経過したらDAPTの中の一つ(例えばアスピリン単独かP2Y12単独)にすれば
  出血のリスクは軽減できる。
  ACS患者が抗凝固薬の併用(triple)をする場合は、1〜4週間の経過観察後にアスピリンを
  休薬し、プラビックスと抗凝固薬の併用が出血のリスクの軽減となる。


13)ACS患者のMACEの予防に、低用量のコルヒチンは有効である。


14)SGLT-2に関して
 (本論文ではある程度推奨しているようです。)







私見)
 脂質管理には、本論文のACCと以前のブログでも紹介しましたAACEとでは見解が異なります。
 私は流れるままに、気が付いたら消化器内科をしています。
 学生時代から内科の本流は、循環器のドクターです。
 判官ひいきの私は、取り敢えずAECC方式とします。








本論文.pdf

成人における脂質異常症の薬剤管理のガイドライン.pdf














posted by 斎賀一 at 20:22| 循環器