2023年06月02日

急性心不全のラシックスの効果減弱

急性心不全のラシックスの効果減弱

  
The blunted loop diuretic response in acute heart failure is driven
by reduced tubular responsiveness rather than insufficient tubular
delivery. The role of furosemide urine excretion on diuretic
and natriuretic response in acute heart failure



        50602.PNG


 心不全に利尿薬のラシックスは、急性の場合も慢性の場合も定番と認識しています。
今回、慢性の使用によりラシックスの効果が減弱(鈍る)するとの論文が掲載されています。


1) ラシックスの効果は色々な因子によって影響されます。
   ・ラシックスの用量 ・血圧 ・消化管からの吸収 ・腎機能
   ・電解質 ・RAS系 ・体液量などです。

   先ずラシックスの効果が減弱するのに、二つの仮説を立てて研究しています。
   一つは心不全そのもの、もう一つはループ利尿薬であるラシックスの慢性使用における
   対応の低下です。
   それに関して二つの機序が想定されます。


  ・ラシックスによる尿細管への移送(delivery)の減少
   ラシックスが利尿効果を発揮するには、尿細管の電解質チャンネルに十分な薬剤量が到達
   しなくてはなりません。健康人ではラシックスの65%が未変化として尿に排出されます。
   心不全の場合には、ラシックスがこのイオンチャネルに活性的に伝達・到達していないの
   ではとの仮説です。

  ・尿細管の反応の低下
   心不全においては、イオンチャネルが構造的、かつ機能的に障害されている。
   更に傍糸球体装置のイオンチャネルを、ラシックスそのものが抑制する。


2) 50人の心不全患者に、新たにラシックスを投与した新規群(28人)と、慢性に投与して
   いた慢性群(22人)に分けて調べました。
   利尿効果と尿中のラシックス濃度を調べました。
   新規群の方が、慢性群よりも尿量は明らかに多い結果でした。
   腎機能を補正してからの尿中のラシックスの絶対量は、新たな群と慢性群とではほぼ同じ
   でした。しかし尿中ラシックス濃度(1㎍/ml)当たりの尿量は新規群では148.6mlに
   対して、慢性群では50.6mlと明らかに利尿効果に対する反応の鈍化が認められました。





        50602-2.PNG
    


   新規群では尿量が多いので尿中のラシックス濃度は低いのですが、それが一定の値
   (閾値)に達すると利尿効果が発揮されます。
   下記のグラフでも表示していますが、慢性群ではラシックスの量を増加しなくては尿量
   増加が期待されません。
   (慢性処方の場合には、ラシックスの増量が必要とまでは本論文で示唆していません。)




        50602-3.PNG 
  
             赤が新規群、黒が慢性群です。






私見)
 心不全に利尿薬、特にラシックスは必要ですが、慢性心不全にはその効果が減弱している
 ことを念頭に置かなくてはなりません。
 本論文ではラシックスの増量と、それに代わる薬剤の選択までは言及していません。
 本院では増量は選択肢にはなく、ラシックスの筋注、利尿薬の変更、他の薬剤へ追加
 (SGLT-2阻害薬、エンレスト)を考慮する必要がありそうです。
 勿論、心不全増悪の原因を精査する事も大事となりますが。






ループ利尿薬.pdf









posted by 斎賀一 at 20:47| Comment(1) | 循環器
この記事へのコメント
食パンの乃が美が何年か前に市原にもできて、申し訳ないのですが私の中で乃が美の食パンのmyブー厶も去ってしまっていたもので(^_^;)
1度もそこの店舗には行ってなかったのですが、今日閉店になってました(-_-;)

このご時世で1本1000円近い食パンもなかなか厳しいかもですね。
Posted by at 2023年06月10日 23:35
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