RSウイルス、ヒトメタニューモウイルスと喘息
臨床とウイルス Vol.49 No.5 2021.12
橋本浩一 福島県立医大 小児科学講座
橋本浩一 福島県立医大 小児科学講座
最近の日本でのRSウイルス論文を調べてみました。
やはりRSウイルス感染症の重症例と喘息との関連性を調べています。
1) RSウイルス感染症は温帯地方では秋から春に流行しますが、最近の日本では夏から
12月にかけて流行し、更に通年性の傾向もみられます。
正期産児であっても、母からの移行抗体が存在する出生後でも早期から感染し、生後1歳
までに50%以上、2歳までに100%が初感染を受けます。
1〜2%が入院し、その中の15%が集中治療室での治療となっています。
毎年6〜63%の小児が再感染を経験します。
2) 接触又は飛沫感染によります。
4〜5日の潜伏期を経て上気道感染となりますが、更に15〜50%が2〜3日後に下気道感染
へと悪化します。
3) 感染により種々のサイトカインが誘発され、未発達な乳児の気道が障害を受けます。
生後6か月以内が重症化し、生後1か月では突然死もあります。
高齢者も重症化しやすいです。
4) 本論文では3歳以下の下気道炎で入院した412人の内、入院時に喘鳴を呈した80人と
喘鳴を呈しない136名を3年間追跡調査しています。
退院後3年間の反復性喘鳴は、入院時に喘鳴を呈した群ではRSウイルス感染症が44%、
入院時に喘鳴を呈さなかった群では40%でした。
つまりRSウイルス感染による下気道炎で入院した場合の40〜44%は、その後3年間に
反復性喘鳴を起こします。
5) 海外の文献も紹介していますが、1歳までに重症のRSウイルスに感染した乳児では
7歳までに喘息を発症するのは30%前後としています。
しかし、10歳までには6.2%(対照は4.5%)と減少し、対照と有意差はなくなります。
6) 重症のRSウイルス感染による細気管支炎の全てが喘息を発症するわけではなく、また
成長に伴い喘鳴は軽快する傾向です。喘息の発症には「2ヒット・シナリオ」が提唱
されています。
つまり遺伝的背景とRSウイルス感染の重症とが相まって免疫応答が生じ、未発達な
乳幼児の肺組織に障害が起こるとしています。
私見)
前回の海外の論文主旨は、軽症のRSウイルス感染でも小児喘息の原因となるとの事でした。
学童になれば軽快しますが、やはり1歳未満でのRSウイルス感染には注意が必要です。
新型コロナ感染が収束傾向ですが、それに代わって他の感染症が本院外来でも流行して
います。夏かぜと相まって、5類で“ホット”とはいかないようです。