食物アレルギー・2021年ガイドライン・その1
ケアネットより・聖路加国際病院 岡田正人氏
NHKの番組で放送になった食物アレルギーについて、患者さんから質問されることがありま
した。
まず第一弾として、大まかな内容をケアネットから纏めてみました。
1) 食物アレルギーは、新規発生においては年齢により異なります。
卵アレルギーにおいても幼少期では卵白ですが、成人になると卵黄に変化します。
小児期では木の実類が多くなり成人になるにしたがって小麦、甲殻類の頻度が増します。
落花生は木の実ではありません。最近では木の実が増えています。
特に最近ではクルミが増加傾向ですが、カシューナッツはアナフィラキシー反応を起こす
ために注意が必要です。落花生は木の実ではありませんが、比較のため図に載っています。
2) 食物依存性運動誘発アナフィラキシー
特定の食品(小麦、甲殻類、セロリ、貝類、果物、ナッツ類など)摂取して2〜4時間以内
に運動(軽作業や入浴でも生ずる)を行うと、アナフィラキシーを呈する事もある。
特に鎮痛解熱剤、体調不良、飲酒などで高頻度となる。
本疾患は再現性が低いので、再発防止を理解すれば原因食物の継続摂取は可能である。
3) アレルゲンコンポーネント
(ガイドライン・ダイジェスト版より)
アレルギーを起こす原因の物質(原料)から抽出された粗抽出アレルゲンの中には、様々な
構成成分が含まれており、その構成成分一つ一つをアレルゲンコンポーネントと呼びます。
アレルゲンコンポーネントには大きく分けて2つの特性があります。
@交差反応性(*)があるコンポーネント
A種に特異的なコンポーネント
(*)交差反応とは、アレルギーの原因物質(アレルゲン)に似た構造を持つ別の物質に、
身体が誤ってアレルギー反応を起こすこと。
上の図のハンノキ/シラカバ、モモ/リンゴ、大豆のように、
@交差反応性があるアレルゲンコンポーネントを持っていると、ハンノキ/シラカバの
花粉症をきっかけに、モモ/リンゴや大豆のアレルギーも出てくることがあります。
(以上ネットより)
小麦に関しては
小麦のアレルギーのコンポーネントを表します。
HVは健康な人です。一般的なアレルギーの検査だけではアナフィラキシーを診断できません
が、コンポーネントのω-5グリアジンを調べると精度が上がります。
卵に関しては
オボアルブミンは加熱すればアレルゲンが低下しますが、オボムコイドは加熱しても低下
しないため、オボムコイド陽性に場合は注意が一層必要となります。
例えば症例Bは加熱すれば卵は食べれますが、症例Aは加熱しても卵を摂取出来ません。
4) 深夜のアナフィラキシー(遅れて反応が出るので注意)
豆乳、納豆、アニサキス、マカロン、猪肉が原因としてあります。
5) 花粉―食物アレルギー
・口腔アレルギー症候群
花粉アレルギーと新鮮な果物、野菜の交差反応によります。
桃→サクランボ→ナシなどの様に次々に増えていく傾向があります。
多くは自然に軽快しますが、抗アレルギー薬で対応できます。
・アナフィラキシーを起こす場合として、下記の例がありエピペンが必要となります。
カバノキと豆乳、ヨモギとセロリ、ニンジン、スパイス
6) ラテックス-フルーツ症候群
以前は医療従事者に多く見られましたが、現在では天然ラテックスは使用されておらず
合成ゴムのため頻度は低下しています。
バナナ、アボカド、栗、キウイはアナフィラキシーを起こします。
その他、リンゴ、ニンジン、セロリ、メロン、ジャガイモ、トマト、イチジク、
パパイヤ、メロン、マンゴ、パイナップル、モモがあります。
7) pork-cat症候群
一般的には猫アレルギーは時々ありますが、犬アレルギーは稀とされています。
猫アレルギー皮膚抗原のため他の動物とは交差反応は少ないとされていますが、唾液の
中のアルブミンによる経皮感作が原因で、犬とも交差します。
8) α-Gal症候群
マダニ咬傷によりα-Galが感作され、獣肉の摂取後に遅延性アレルギーが誘発される。
ウシ、ブタ、ヒツジ、ジビエなどの摂取から2〜6時間後にアナフィラキシーを起こす。
抗腫瘍薬のセツキシマブ(アービタックス)もα-Galが含まれているので、静注の場合に
即時型反応を呈する事がある。
9) 納豆アレルギー
納豆を摂取してから5〜14時間で発症する遅発型の重篤な反応で、
70%は意識消失を伴う。
納豆の発酵過程で生ずるPGAが原因で、PGAはクラゲの触角にも含まれており、本疾患の
80%がサーファーです。
夜間から早朝の原因不明のアナフィラキシーの場合は注意が必要です。
PGAを含む製品としては、
・化粧品
・減塩醤油
・かまぼこ
・ドレッシング
・保存剤、甘味料、カルシウム吸収促進剤
10) パンケーキ症候群
日本ではお好み焼き症候群です。
開封後の砂糖などミックスした小麦粉にダニが繁殖し、耐熱性のコナヒョウダニ抗原に
よって起こります。家ダニに感作されている人は注意です。
たこ焼きも増加傾向です。
11) コチニール色素
口紅やアイシャドーに使われる色素で感作された人が、フランス菓子のマカロンを摂取
して全身性のアレルギー反応を誘発します。
殆どが若い女性です。
12) アニサキスアレルギー
多くの抗原は胃のペプシンで不活化されますが、アレルギー反応は摂取直後から12時間と
幅があります。
2021年版のガイドラインは下記より
https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_8.html
私見)
近年、食物アレルギーは多岐にわたりコンポーネントを含めますと、原因に到達するには
かなりの診断力が問われます。
意識消失も含めて、食物アレルギーは鑑別疾患の一つと捉える必要がありそうです。
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