COPDガイドライン・2023
Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease 2023 Report:
GOLD Executive Summary
GOLD Executive Summary
新しいガイドラインは若干の変更がありました。
・診断基準は呼吸器症状、気道および肺胞の組織変化、呼吸機能検査としての一秒量と一秒率
の3点から判断します。
・COPDをACOPD、BCOPD、ECOPDの3群に分けています。
Eの意味は exacerbation(急性増悪)のEです。
ECOPDは14日以内に増悪する呼吸苦、咳嗽と喀痰です。
気道感染、大気汚染、その他気道の障害が原因です。その重症度は、呼吸苦の程度、呼吸数、
心拍数、サチュレーションにより決定します。
・繰り返す急性増悪の場合は、CT検査を推奨しています。
個人的に注目した文献の細部を記載しますと
1) 雑誌NEJMの論文を以前の私のブログでも紹介しましたが、呼吸機能の発達のピークは
若い時で、その後は早い時期から退行していきます。
2) COPDの原因として感染症も重要ですが、その中でも緑膿菌が注目されています。
3) COPDに新しい概念
Early COPD、mild COPD、young COPD、Pre-COPD、PRISm等がありますが、
未だ明白な定義と病態は解明されておらず、今後の研究が待たれます。
PRISmに関しては下記のPDFをご参照ください。
4) 胸部レントゲンでは診断に限界があります。
・横隔膜の平坦化、透過性の亢進、血管影のtapering
・寧ろ他の疾患との鑑別に有用です。
CTを推奨しています。
5) 吸入療法が主体ですので、前もってデバイスの教育を十分にしておく事が大事です。
患者の好みや適応力にも関係してきます。
6) どの吸入を用いるかは、下記の図表を参考にして下さい。
要点を纏めますと
・初期治療はLAMAかLABA
・次のステップはLAMA+LABA
・次は好酸球を参考にして、吸入ステロイド(ICS)を加える。
好酸球の基準にはグラデーションがあり、吸入ステロイドが有効の時もあり、
好酸球の数だけで決めるのは絶対的ではない。
LABA+ICSの長期使用はあまり勧めない。寧ろ好酸球が多ければ、
LAMA+LABA+ICSの導入が基本。
・LAMA+LABA+ICSの効果が認められない場合や好酸球が増多していない場合は、
経口薬のroflumilast(日本では上市されていないようです)を処方。
喫煙者でない場合はジスロマックを処方。
7) COPDは慢性気管支炎の合併が27~35%存在します。
8) ECOPDは結局のところ、臨床家の事後評価です。
初期治療ではSABAもしくはSAMAを使用する。
9) 経口ステロイドも有効で、40mgを5日間が基本です。
好酸球増多がない場合は、効果が乏しいようです。
10) 抗生剤はアモキシリン+クラバモックス。
時にマクロライド、キノロン系を使用します。
11) 心血管疾患で選択制のβ1-ブロッカーの適応があれば、COPDが合併している場合に
使用してもよい。
私見)
本ガイドラインから、本院が参考になった点は
・吸入のデバイスの指導は出来れば事前に時間を掛けて、患者さんの好みを把握しておく
ことが大事です。
・好酸球は変動します。慢性気管支炎、喘息、COPDの患者さんには定期的に末梢血液像から
好酸球の変動を調べておくことが大事です。
・COPDの診断には患者さんの呼吸器症状の診察と、鑑別疾患の検索が大事です。
COPDガイドライン.pdf
PRISm 呼吸器内科医.pdf
Japanese_CAT_combined.pdf
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