心房細動;クライオアブレーション(冷凍焼灼術)について
Progression of Atrial Fibrillation after Cryoablation or Drug Therapy
[N Engl J Med 2023;388:105-16.]
[N Engl J Med 2023;388:105-16.]
心房細動は、増悪と再発を繰り返す進行性病変です。その進行性は、電気的又構造的リモデリングを繰り返し、慢性の心房細動となります。3タイプあります。
発作性心房細動;発作のように、一時的に心房細動が出現し、7日以内に
自然停止する場合です。
持続性心房細動;7日以上持続して不整脈が続くが、1年以上は持続して
いない場合です。
慢性心房細動; 1年以上心房細動の状態が続いている場合です。
リズムコントロール、つまり心房細動を洞調律にできれば、その後の脳卒中を予防でき、QOLの向上に繋がります。
今回、雑誌NEJMにクライオアブレーションの効果についての論文が掲載されています。EARLY-AF研究と名称されています。
1) 対象は、未治療の発作性心房細動患者です。初回リズムコントロール治療
として、クライオバルーンアブレーション(冷凍焼灼術)を行う群と、
抗不整脈薬療法を行う群に無作為に割り付けた試験の、3年間の追跡調査
の結果を報告しています。
試験組入れ時に、全例に植込み型心電計を植え込み、毎日転送される
データと、6ヵ月ごとの対面診察により患者を評価しました。
主要転帰として、持続性心房細動(持続期間が 7 日間以上、または
48時間〜7日間であるが、停止に電気的除細動を要する)の初回
エピソード、再発性心房性頻脈性不整脈(30秒以上持続する心房細動、
心房粗動、心房頻脈と定義)、心房細動の負荷(心房細動の状態に
あった時間の割合)、QOL指標、医療の利用、安全性としています。
2) 303例が登録され、154例が初回リズムコントロール治療として、
クライオバルーンアブレーションを受ける群、149例が抗不整脈薬
療法を受ける群に割り付けられました。36ヵ月の追跡期間中、
持続性心房細動のエピソードは、アブレーション群の3例(1.9%)
に発生したのに対し、抗不整脈薬群では、11例(7.4%)です
(危険率0.25)。
再発性心房性頻脈性不整脈は、アブレーション群の87例(56.5%)と、
抗不整脈薬群の115例(77.2%)に発生しています(危険率0.51)。
心房細動の状態にあった時間の割合の中央値は、アブレーション群で
0.00%(四分位範囲0.00〜0.12)、抗不整脈薬群で0.24%(四分位
範囲0.01〜0.94)です。3年の時点で、アブレーション群の8例
(5.2%)と、抗不整脈薬群の25例(16.8%)が入院しています
(危険率0.31)。重篤な有害事象は、アブレーション群の7例(4.5%)
と抗不整脈薬群の15例(10.1%)に発現しました。
3) 発作性心房細動の、初回治療としてのクライオバルーンを用いた
カテーテルアブレーションは、抗不整脈薬投与と比較して、3年間の
追跡期間中、持続性心房細動、または再発性心房性頻脈性不整脈の
発生率が低い結果です。(一部日本版コピペ)
4) 討論
EARLY-AF研究は、3年間の経過観察です。心房細動の初期治療として、
クライオバルーンを実施することにより、持続性心房細動の発生を抑制
しています。本研究は、植え込み式デバイスにより監視しています。
肺静脈の心房細動の発生部位からの放電が、カルシウムなどのイオン
チャネルの異常を引き起こし、構造的リモデリングとなります。
クライオバルーンは、肺静脈の派生部位を隔離することにより、
トリガーの働きをなくします。
アブレーション後の抗凝固薬中断を前向きに、試験で行ったスタディは
ありませんので、本研究では、抗凝固薬は継続しています。
私見)
アブレーションは、クライオアブレーションが主体の様ですが、患者さんにより選択肢があります。ともあれ、早期での介入が大事の様です。又、アブレーション後も抗凝固薬のDOACは必要です。
https://www.bostonscientific.com/en-EU/medical-specialties/electrophysiology/arrhythmias/single-shot-ablation.html