新しい心不全治療薬を強く推奨!・JACC
Heart Failure Drug Treatment−
Inertia, Titration, and Discontinuation
Inertia, Titration, and Discontinuation
JACCによりますと、心不全は世界規模の健康生活にとっての問題です。心不全の入院後に、迅速な適切治療を開始する事が重要です。それが心不全の再入院を予防し、QOLの向上に繋がります。ガイドラインでも新しい治療である、SGLT-2阻害薬のフォシーガとエンレストを推奨しています。しかし、それ程普及していないとの調査結果が雑誌JACCに掲載されています。調査は日本、スウェーデン、アメリカで行われました。
1) 心不全で入院後、12か月以内でのガイドラインに沿った治療がなされて
いるかを調べています。治療開始後の12か月以内での薬の中断も調べ
ました。
2) 266,589名が登録されました。新しい治療薬群としてフォシーガと
エンレスト、従来の治療群としてACE阻害薬、ARB、βブロッカー、
MRAです。
心不全で、入院後から治療開始の平均期間を国別に見ますと、
日本では;新しい群は39と44日、従来群は12〜13日
スウェーデンでは;新しい群は44日と33日、従来群は22〜31日
アメリカでは;33日と19日、従来群は18〜24日
12か月以内での中断率は、フォシーガが23.5%、エンレストが26.4%、
ACE阻害薬が38.4%、ARBが33.4%、βブロッカーが25.2%、
MRAが42.2%でした。
3) 新しい治療薬(フォシーガとエンレスト)は、慢性腎臓病においては
特に重要です。エンレストに関しても蛋白尿の若干の増加を認めますが、
腎機能のeGFRの低下を阻止します。
新しい治療薬も、従来の治療薬も中断すると、1年以内での死亡率が30%
増加します。アメリカで薬の中断率が高いのは、以前に急性腎障害の報告
がなされたためと思われます。実際には、急性腎障害は稀でした。
新しい治療薬の開始の遅さは、単に惰性(inertia)かもしれません。
私見)
天下のJACCからの勧告を含めた調査結果です。しかし、私としましては逆に解釈します。日本を含めた多くの臨床家は、新しい心不全治療薬に対して慎重にトライしています。これが臨床家の肌感覚で、決して惰性で診療をしているわけではないと思うんです。
新型コロナが5類相当となります。しかし、2類とどう変わるのでしょうか?
診療スタイルを変えないことも大事です。
心不全 元文献.pdf