アルコール性肝炎
Alcohol-Associated Hepatitis
[n engl j med 387;26 nejm.org December 29, 2022]
[n engl j med 387;26 nejm.org December 29, 2022]
雑誌NEJMに総説が載っていましたので纏めてみました。
アルコール性肝炎の重症化の基盤は、細菌性感染症です。慢性の経過中に、ある日突然の急性増悪を呈し、短期間で死に至る場合もあり、3か月以内に20〜50%の死亡率です。特にコロナ禍では、急性増悪が増加傾向です。
その際の治療の基本はステロイド剤ですが、長期的な改善があるかはエビデンスがありません。
1) アルコール性肝炎の多くの患者さんは軽症の経過を辿りますが、
進行性の線維化から肝硬変に移行し、合併症を伴うこともあります。
その原因は、遺伝的背景か、環境因子か不明です。特に女性は、
重症化リスクが高いです。
アルコールの過剰摂取は、腸管での透過性を増長し、腸内細菌叢の
変化を誘発し、細菌感染と真菌感染も起こします。この事が更に、
肝細胞やジヌソイド細胞の周辺の基質の変化を起こし、門脈圧亢進
となります。更に免疫機能低下から、肝障害や多臓器不全となります。
組織学的には、細胆管の反応をおこし、肝細胞も偽胆管増生になります。
これが黄疸の病態です。総ビリルビンは3以上となり、ASTはSLTの1.5倍
となります。
中等度の場合でも、3か月以内での死亡は3〜7%で、1年後では
13〜20%ともなります。その多くの原因は、合併症と感染症です。
やはり、予防的治療の主体は禁酒です。
2) 組織学的診断では、肝細胞周辺とジヌソイドの線維化
(chicken-wire appearance;下記の図参照)ですが、
非アルコール性肝炎(NASH)でも認められる所見です。
(下記にRubinの教科書より参照)
絶対的な鑑別所見はありません。現在、非侵襲的検査として
血清ケラチン18分画(keratin-18fragment)が有力視
されています。
3) 重症化リスクとして黄疸、浮腫、腹水があります。
多くの患者さんは、入院時にはSIRS(SARSではありません。
下記PDFを参照)を疑われます。微熱、好中球増多です。
当初は、感染症は疑われず、無菌性と思われてしまいます。
プロカルシトニンが、感染性の有無の鑑別に有効です。
4) アルコール性肝炎の低栄養状態も深刻で、栄養指導も重要となります。
5) 感染症のコントロールのために、ステロイドの使用は禁忌では
ありませんが、アルコール性肝炎の重症化には、16%までも感染症が
関与しており注意が必要です。
若い人やステロイド治療により、侵襲的真菌感染症も増えています。
6) 早期での肝移植が推奨されています。
(以下省略)
私見)
アルコール性肝炎の患者さんには、黄疸、浮腫、腹水の3徴候がチェックポイントとなります。日頃の体重測定も管理として利用できます。
本論文で新たに認識できた点は、アルコール性肝炎と感染症の関係でした。
禁酒の指導はなかなか手ごわい任務です。患者さんに嫌われても、信頼される
医療を目指したいものです。
上の図はchicken-wire appearance
上の図はRubinより
SIRSの診断基準.pdf