慢性腎臓病にRAS阻害薬を継続してもいいかも?
Renin–Angiotensin System Inhibition in Advanced Chronic Kidney Disease
[This article was published on November 3,2022, at NEJM.org.]
[This article was published on November 3,2022, at NEJM.org.]
降圧薬のRAS阻害薬はACE阻害薬とARBがありますが、降圧薬の主役です。
RAS阻害薬は腎臓の保護作用があるとも言われていますが、一方で腎機能の低下した慢性腎臓病
においては、腎機能の悪化を誘発するため中止する事をガイドラインや専門家は、推奨して
います。
以前のブログでも紹介しましたが、腎機能と低カリウムに注意すれば中止までしなくて良いと
する論文もあります。
今回はそれを後押ししてくれる、私にとってはありがたい論文が雑誌NEJMに掲載されています。
1)方法
腎機能のeGFRが30以下の軽度〜中等度の慢性腎臓病を対象にしています。
RAS阻害薬を継続する群と中断する群に分けています。
主要転帰は3年後のeGFRです。
二次転帰は末期腎不全(ESKD)への悪化、eGFRの50%以上の低下、透析の導入、入院、
血圧、QOL、活動力です。
2)結果
411人が対象です。(中断群は206人、継続群は205人の同数です) 経過観察は3年間
末期腎不全又は透析への移行は、中断群で62%(128人)で継続群では56%(115人)、
中断による危険率は1.28でした。
副反応は両群で同じでした。
心血管疾患の発生は、中断群で108人、継続群で88人です。
死亡は中断群で20人、継続群では22人でした。
3)討論
中断群の臨床的なメリットはありませんでした。
これは以下のサブグループでも言える事でした。
・年齢 ・慢性腎臓病の程度 ・糖尿病 ・蛋白尿 ・血圧
研究の最初の1年間は中断群の方が血圧低下が認められていますが、これはRAS阻害薬から
他の降圧薬に変更したためで、その後は両群共に同程度でした。
RAS阻害薬が中等度で慢性腎臓病のeGFRの低下を抑制する事は示せますが、進行性の腎臓病
に全く有効か、までは言えません。
結局は最も大事な点は、血圧コントロールかもしれません。
しかし他の大規模研究では、RAS阻害薬の中断が心血管疾患の増大と死亡率を上げることも
指摘されています。
4)結論
RAS阻害薬の中断により、中等度の慢性腎臓病において腎機能低下を遅らせることは出来ま
せんでした。
私見)
慢性腎臓病において、腎機能の推移と血清カリウムのチェックは特に大事です。
最近のガイドラインを含め一般的にeGFRが30以下では、RAS阻害薬は禁忌の印象でした。
しかし今回の論文の対象者は30以下です。
慢性腎臓病の患者さんには2〜3か月の血液検査は必要かもしれません。
しかし、十把一絡げでRAS阻害薬の休薬はやや過剰反応でしょうか。
他の論文.pdf
慢性腎臓病とRA系阻害薬.pdf
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