ピロリ除菌・その2
文献を調べ、纏めてみました。
1) クラリスに対する耐性は、2002年より日本ヘリコバクター学会によるサーベイランス
開始となり、 2002年18.9%、2003年21.1%、2002~2006年24.7%、
2010~2011年31.0%、2013~2014年度38.5%と明らかに上昇傾向を示している。
呼暖器科領域、耳鼻咽喉科領域に加え小児科領域でも頻用されるなど、小児期のクラリス
使用の増加が原因と考えられている。
2) 2015年にタケキャブが上市されてからは、除菌率は2015年78.5%、2016年85.5%、
2017年89.7%、2018年90.8%と、2014年を底に反転上昇傾向を示した。
3) 国内の二次除菌療法の除菌率が高水準である理由で最も重要な因子は、フラジール耐性菌
の少なさである。
日本へリコバクター学会によるサーベイランスで、フラジール耐性菌は2002年の調査開始
以来、3%程度の水準で推移していたが、2015~2016年のサーベイランスでは5.6%と
上昇傾向にあったため、今後の動向が注目される。
他の国の状況と比較すると、中国韓国は共に60%と高率であり、その他の国でも40%前後
という国が多いため、日本の状況は特殊であるともいえる。
現在、ボノプラザンの登場によりほとんどの施設でAMPC+ MNZ + P-CABに移行して
いる。
東京HP研究会の後方視的データでは、AMPC +M NZ+ P-CABはAMPC+ MNZ+ PPI
よりも有意に除菌率が高い結果となっているが(90.4% vs.8 6.2%)、その差は
実地診療で実感できる差異ではなく、一方でPPI/P-CABの選択は除菌率に影響を与えない
とする報告も散見される。
(AMPC;ペニシリン系、MNZ;フラジール、P-CAB;タケキャブ)
4) 三次除菌
STFXの感受性の有無にかかわらず、LVFX含有レジメンよりもSTFX含有レジメンの使用が
勧められる。
(STFX;グレースビット)
5) 機能性ディスペプシアは、最新のROME IV 診断基準では感染を伴う場合、除菌後
H. pylori6〜12 カ月で症状が消失または改善すればH. pylori関連ディスペプシア
症状が改善しないか再燃した場合には機能性ディスペプシアと診断するため、診断および
治療に除菌治療が必要となる。
6) 除菌率に大きく影響するクラリス(CAM)耐性菌については、培養法による最小発育阻止
濃度で薬剤感受性検査が可能であるが、時間を要し地域により保険適用で実施できない
こともあり普及していない。
しかし、最近便を用いて短時間で診断可能なPCR 法が報告され、胃液を用いても同様に
短時間で精度高く検査可能と報告されているため、臨床現場で使用可能となれば、便や
胃液を用いて短時間で感染の有無、耐性菌の有無を調べることが可能となり期待されて
いる。
7) 10年以上の経過観察で胃がん発症率が低下していることが報告されており、感染源となる
リスクや消化性潰瘍のリスクも低下することから、高齢者に対しても除菌治療の意義は
ある。
8) ペニシリンアレルギーの既往がある場合の除菌治療としては、AMPC を除いたPPI または
PCAB+CAM+MTZ による除菌治療が可能であり、その際はペニシリンアレルギーの病名
と症状詳記を行う。
他にはPPI またはP-CAB+MTZ+STFX も有効である。これらの除菌率は、CAM+MTZ が
PPI で50%、P-CAB で92.3%、MTZ+STFX では、PPI で100%、P-CAB で92.3%
と報告されており、ペニシリンアレルギー患者に対する除菌治療は、まずは保険適用で
P-CAB+CAM+MTZ で行うことが望ましい。
◆参考資料
・診断と治療vol.110-no.7 2022 (6)
Helicobacter pylori 感染症と除菌療法 Author 森英毅 鈴木秀和
・日消誌2021;118:905―910
H. pylori 除菌治療のup-to-date 間部克裕 加藤元嗣
私見)
文献紹介のため、不本意ながら全文コピペであることを陳謝いたします。
次回は本院での取り組みをブログします。